ロック冒険記
以下はWikipediaより引用
要約
『ロック冒険記』(ロックぼうけんき)は、手塚治虫によるSF漫画作品。
『少年クラブ』1952年(昭和27年)7月号から1954年(昭和29年)4月号まで連載。加筆修正を経て、1955年 - 1956年に鈴木出版より3分冊で刊行された。
概要
文明と文明の対立を描いたSF活劇作品。ストーリーや人間関係が複雑すぎて難解と受け取られ、連載は中途半端な形で終了してしまった。そのため、単行本化の際に、連載では生きたままのロックを死ぬことにするなど、大幅な描き変えを実施している。
本作は、カレル・チャペックの『山椒魚戦争』をヒントに描かれたものである。
あらすじ
19XX年。ディモン博士は太陽の近くに未知の惑星を発見した。発見者の名をとって「ディモン星」と名付けられたその惑星は、地球に接近して地球全体に大暴風雨を巻き起こし、大惨事をもたらしたあげく、地球の引力にとらわれ、第二の月となった。その混乱のさなか、ディモン博士は、息子のロック少年に、遺言でディモン星に関する権利をゆずり渡して死亡した。
ロックは、暴風雨で吹き飛ばされてきた日本人孤児・伴大助の親を探すため、ディモン探検隊の隊長を引き受ける。ところが、ディモン星を訪れた探検隊員たちは、身体の一部がふくれあがる謎の熱病に次々と襲われる。病気への恐怖にかられた隊員の一人が錯乱し、ロックと大助をディモン星に残したまま、ロケットを地球に戻してしまった。
ロックは、粘土のような不定形の知的生物「ねん土人」(ルボルーム)に遭遇する。彼等は、どんな形にも変形できるために、ディモン星におけるもう一つの知的生物、鳥から進化した「鳥人」(エプーム)の奴隷として扱われていた。大助が鳥人にさらわれたため、ロックは捜索の旅に出る。途中でロックは鳥人の出産に立ち会い、その子・チコの父親代わりとなり、さらに鳥人たちに地球の文明を教え始める。
その頃、地球では、望遠鏡によるディモン星の観測の結果、石油が大量にあることが発見された。そのことをかぎつけた自称「東洋人」の野心家・東南西北(トンナンシーペイ)は、石油王のオイル卿にその話を伝える。オイル卿は自らロケットで探検を試みるが、ロケットは発射直後に謎の爆発を起こし、オイル卿は爆死してしまう。その遺産は、執事のヒゲオヤジと、東西南北のものとなった。石油利権を追い求める東南西北は、第2次ディモン探検隊を組織し、当初は乗り気でなかったヒゲオヤジも、息子の大助がディモン星に取り残されたままであることを知り、第2次探検隊に参加することになる。
ところが第2次探検隊は、ディモン星への到着直後、鳥人の軍隊による攻撃を受ける。この攻撃で東南西北が重傷を負ったため、彼等は数羽の鳥人を捕虜として地球に引き返す。帰還中、鳥人の血液が人間に輸血可能であることが判明し、東南西北は一命をとりとめる。地球に戻った東南西北は、鳥人を地球復興のための奴隷、および食肉用家畜とすることを発案し、鳥人シンジケートを組織する。
1年後。ロックと大助はディモン星で地球学校を作り、着々と文明化を進めていた。そこへ鳥人シンジケートの派遣した大量のロケットがディモン星に現れ、ロックたちと遭遇する。ロックと大助はこのロケットで地球に帰ることになり、チコも地球への留学生として同行することになった。ところが、ロックは途中で、鳥人シンジケートの目的が鳥人の奴隷化であることを知り、ロケットをディモン星に引き返させようとする。しかし、父親に遭いたい一心の大助がロックの行動を妨害し、ロケットはそのまま地球に戻った。
地球に戻ったロックは、東南西北に対し、ディモン星の権利は自分にあることを主張し、奴隷狩りを中止するよう抗議する。だが東南西北は全く聞き入れようとせず、それどころか、ひそかにロックの殺害をもくろむ。
ロックの危地を救ったのは、ロックとともに地球に来ていたが、行方不明になっていたチコであった。チコは、鳥人の逃亡奴隷たちを組織し、地球人に対する反撃を計画していたのである。チコは、すでに鳥人側が大量の武器を準備していること、ディモン病を生物兵器として使うつもりであることを明らかにし、父と慕うロックに対してディモン星に避難することを薦める。だが、ロックはあくまで、地球人として地球を守ることを宣言し、その場を去る。地球とディモン星との全面戦争が始まろうとしていた。
用語解説
ディモン星
鳥人(エプーム)
空を飛ぶことができる。くちばしの中に歯があり、トサカから変形した髪の毛を持つ。翼の先の五枚の羽根が、指の役割をする。卵生で、成長は速く、1年程度で成年に達する。また繁殖率も高く、1年間に1羽から200羽に増える。血液は人間に輸血可能で、しかも、どの血液型にも適合する。肉は美味。地球における中世のような社会を形成している。道具や文字を使用するが、ねん土人を奴隷や道具として用いるようになったため、文明が変則的な形で停滞している。また、火の使い方を知らないため、豊富な石油資源を放置している。
ねん土人(ルボルーム)
ゲルーム
ディモン病
デコーン現象
鳥人シンジケート(鳥人会社)
登場人物
地球人
ロック
デコーン博士
伴 大助(ばん だいすけ)
ヒゲオヤジ
東南西北(トンナンシーペイ)
ヒドロ博士
ワン・マン
スタルリン元帥
鳥人
チコ
結末の変更
最初の単行本化の際、連載時の最終回は再録されず、全く異なる結末が描きおろされた。以後の版も基本的にこれにならっている。連載時の最終回は2002年発行の河出文庫『華麗なるロック・ホーム』に再録されている。また、2011年には小学館クリエイティブから連載版の復刻版が出版された。
連載時の結末は、地球と鳥人との全面戦争がついに始まるが、月と太陽の引力によって偶然にディモン星の軌道が変わり、ディモン星が地球の近くを去ったことで、地球は滅亡を免れる、というものであった。これに対して単行本では、鳥人たちの捕虜となりながらも、最後まで交渉を続けようとしたロックの犠牲によって全面戦争が回避され、ロックを看取ったチコの指示によって鳥人たちは地球を去る、という結末になっている。
単行本
- 『ロック冒険記』(鈴木出版)全3巻
- 手塚治虫漫画選集『ロック冒険記』(鈴木出版)全1巻
- ダイヤモンドコミックス『ロック冒険記』(コダマプレス)全2巻
- 虫コミックス『ロック冒険記』(虫プロ商事)全1巻
- 手塚治虫漫画全集『ロック冒険記』(講談社)全2巻
- 小学館叢書『手塚治虫初期傑作集6』(小学館)全1巻
- 角川文庫『ロック冒険記』(角川書店)全1巻
- 虫の標本箱3『ロック冒険記』(ふゅーじょんぷろだくと)全1巻
- 手塚治虫文庫全集『ロック冒険記』(講談社)全1巻
- 限定版BOX『ロック冒険記』(小学館)全1巻