輝竜戦鬼ナーガス
以下はWikipediaより引用
要約
『輝竜戦鬼ナーガス』(きりゅうせんきナーガス)は、増田晴彦によるファンタジー漫画。
概要
1991年、エニックス(現スクウェア・エニックス)の漫画雑誌『月刊少年ガンガン』が創刊された際に、ラインナップのひとつとして連載が始まる。以降、1994年10月号に至るおよそ3年間、連載を続けて大団円を迎え、作者の全作品中、最長連載記録を誇る。作者のガンガン掲載作品群の中では、一応の決着が付いた唯一の作品ではあるが、これでさえも明かされるべき謎がいくつも見受けられ、特に終盤は連載終了を急がされたことが察せられる。 もともとの企画では『浦島伝説ナーガス』というタイトルであり、タイトル通り、竜宮城の登場ははじめから決まっていたという。編集長より「お伽噺をストレートにやってはだめ」という意見が出たため、今の形になった。また、作中に宗教ネタ(使われている宗教は架空のものである)が挿入されているが、こちらも企画段階から入れる予定であったという。
主人公・竜輝を中心とする家族構成は、ケルト神話の光神ルーを中心とした祖父殺し神話をモチーフとしている。
作者の得意とするモンスターキャラクターのセンスと趣味が大いに発揮されており、登場キャラクターの過半を非人間型キャラクターが占めている。
コミック版は、1991年、エニックスより新書版サイズで発行された。全9巻構成。
作品世界背景
本作の舞台は現代日本及び魔精界である。
現代日本は、現実世界とほとんど変わりがない。
魔精界は、「地」「水」「炎」「風」の四界で構成される、魔神(ディーバ)の世界である。 魔神とは、人間達から見た神ないし悪魔の総称であり、大自然の営みを司る自然神を指す。魔神は、己の属する界の精霊の力をもって、自然の営みの調整を行ったり、敵を討つ力と成したりする。
本作開始直前において、魔精界の王は水魔神(ハイドロ・ディーバ)である竜王ラージャスが務めていた。その治世は500年に及び、その間、魔精界は平和であった。だが、近年になって、自然破壊によりラージャスの力の衰えが著しくなると、炎界より魔精界制覇を目論む魔神が台頭した。炎界の高位魔神(ベール・ディーバ)ヴァグーラである。
あらすじ
ヴァグーラは炎魔神(パイロ・ディーバ)達を率いて、竜王の本拠地である水界へと侵攻、壮絶な一騎討ちを経て、ついにはラージャスを下し、新たな魔精界の王となった。
だが、竜王は死の直前に、竜(ナーガ)一族に伝わる伝説を残した。
「悠久の平和の後、炎が竜の王を倒す時、炎の孫ナーガスが現れ、炎を打ち消さん」
ヴァグーラは意に介さず、竜王の娘マナーサを妃とする。マナーサはヴァグーラとの間に娘エスリーンをもうけた。
30年が経過し、帝王となったヴァグーラは魔精界のほぼ全てを手中にしていた。竜王直属であった水界の魔神達は、将軍オアンネスを中心とした抵抗を続けていたものの、恐怖によって率いられた地風炎三界の連合軍によって、ついには陥落した。しかし、その直前に、オアンネスの娘ディーナは、父よりナーガス探索を命ぜられ、魔精界と人間界を繋ぐ越界の鏡の守り主であるティアと共に、人間界へと赴くのだった。
人間の少年、霧山竜輝(きりやま りゅうき)は、母こそ幼い頃に亡くしていたものの、父・輝安(てるやす)と幼馴染みの少女・美森沙智(みもり さち)をはじめとした人々に囲まれ、ごく普通の日々を送っていた。しかし、級友が授業中に謎の死を遂げたことを皮切りに、ついにはクラス全体が謎の生物に喰い殺されるという怪異に遭遇する。現れた化け物は魔神ドリワームと名乗り、竜輝の母が人間ではなく魔神の王女であると告げる。そして、ドリワームの触手が唯一生き残った沙智に及んだ時、竜輝の中で魔神の力が目覚めた……。
登場人物
各人物は種族で分類しているが、ハーフなどの分類しがたい者に関しては、本人の認識等に依っている。各説明を参照。
人間
霧山 竜輝(きりやま りゅうき) / 輝竜戦鬼ナーガス
本作の主人公。ごく普通の高校生活を送っていた少年。実は魔神とのハーフであり、人間態での真っ赤な頭髪はヴァグーラの孫である事の名残。魔神化すると全身に竜王ゆずりのウロコ、うなじには炎魔王ゆずりの真紅のたてがみ、背中に出し入れ自由の飛翔用の皮膜翼が収納された、直立歩行の竜人のような姿になる。
父は人間・霧山輝安。母は魔精界の王女エスリーン。そして、祖父母は魔精界の王ヴァグーラと竜王の娘マナーサであるため、伝説にうたわれる「炎の孫」と目される。祖母より竜(ナーガ)の血を受け継いでいるため、鎖骨接合部には竜族の証である竜玉がある。この部位は人間態・魔神態でも変わらない。
もともとは外国人(と思っていた)の母恋しさゆえに海外特派員を目指す(なので英語の成績だけはよかった)、少々気弱なところのある少年だったが、戦いを経て、精神的に成長していく。立ち位置としてはケルト神話のルーに対応する。ちなみに学校生活では保健委員だった。
使用技
流水弾
竜斬鱗
水幕結界
炎竜焼牙
水竜斬刃
水竜渦動衝
美森 沙智(みもり さち)
狢谷 太輔(まみや たすけ)
竜輝の親友にして戦友。出会った時には誤解から敵対したが、すぐにうち解けた。陽気でお調子者。意外にもかわいいもの好き。実家はアパート経営者。
地魔神(ゲー・ディーバ)の先祖返りであるらしく、ムジナのような獣人に変身することができる。その力を利用して妖怪ハンターのまねごとをしている。自分の力に関しては「常人には想像もつかない体験ができて面白い」と語るが、心の奥底では疎外感を持っていた(初恋の相手の前で初めて魔神に襲われて変身し、彼女にも怖がられてしまったため)。
自分の正体を知っても態度を変えなかった沙智に惹かれるが、竜輝との連携を乱さない為にその想いは伏せていた(但し、ディーナとサザナミには見抜かれている)。当の本人はサザナミに思いを寄せられており、彼女によれば浦島子(浦島太郎)に瓜二つだという。また、沙智に言わせれば、ディーナとお似合いとのこと。
使用技
大車輪針
ムジナの最後っ屁
霧山 輝安(きりやま てるやす)
相田 光四郎(あいだ こうしろう)
久野 政玄(くの せいげん)
久野 久道(くの ひさみち)
魔神(ディーバ)
魔神の本来の姿は、自然界を統べる精霊の長である。
太古の地球には魔神は存在せず、精霊だけがいた。精霊を統べる大地母精の下で自然の営みを司り、地に生命を栄えさせていたのである。やがて人間が誕生し、自然を「神」として崇めはじめたとき、まず信仰を集めたのは、恵みを与える大地母精であった。そうして大地母精は大地母神となった。これが最初の魔神である。
人間の信仰の力は信精波として魔神の力「神力(メギン)」(「魔神力(ディーバ・メギン)」とも言う)の源となる。人間の信仰により巨大な神力を得た大地母神は、その力で様々な神々を生み出した(魔精界もこのころ成立したと思われる)。その神々がさらに信仰を集め、信精波を得る代わりに人間に自然の恵みを与え、双方は互いに発展していった。
しかし、人間は文明を進歩させ、もはや自然の力に頼らずとも生きていけるようになった。そうして神々すなわち魔神への信仰は衰え、信精波は乏しくなり、自然は破壊されていった。特に水の魔神達は、水という水が汚されたために、日に日に弱っていくこととなった。逆に炎の魔神達は、神力自体は弱まっているものの、その活力源である炎の力が人間の文明で多用されたがために、全体としてみれば力を増している。
- 神力は単純に魔神の力となるだけではなく、その肉体構成にも密接に関係している。魔神の身体は構成元素と、その構成元素を固定する強力な神力で形作られている。身体を形作る神力は魔神の姿を記憶しており、仮に身体の一部を失っても、速度に個体差はあるが、再生することができる(特に竜族の再生力は群を抜いて強力とされるが、ナーガスのように腕一本を瞬時に再生するほどの者は稀である)。この神力を活動や攻撃に転用すれば、普段の何倍もの神力を発揮することができる。しかし、肉体を構成する神力を使うということは、肉体の一部を永久に失うということを意味し、しかも神力のバランスの崩れが全身の崩壊に繋がる危険性も孕む。諸刃の剣ゆえに最後の手段である。また、死んだディーバは属する構成元素に戻るため、見た目的には水や火などに戻って散っていくことになる。
- なおディーバ (diva) という言葉の語源は印欧祖語 deiw-(輝く)であり、同族言語において光、空、神に関わる単語に、同じ語源を持つものが見受けられる。たとえばギリシア神話のゼウス (Zeus) やローマ神話のユピテル (Jupiter) 、北欧神話のテュール (Tyr) 、バラモン教のディヤウス (Dyaus) 、英語における神性 (Divinity) 、悪魔 (Devil,Demon) などである。詳細は天空神を参照。
- なおディーバ (diva) という言葉の語源は印欧祖語 deiw-(輝く)であり、同族言語において光、空、神に関わる単語に、同じ語源を持つものが見受けられる。たとえばギリシア神話のゼウス (Zeus) やローマ神話のユピテル (Jupiter) 、北欧神話のテュール (Tyr) 、バラモン教のディヤウス (Dyaus) 、英語における神性 (Divinity) 、悪魔 (Devil,Demon) などである。詳細は天空神を参照。
炎魔神(パイロ・ディーバ)
炎魔神は、炎の力を司る魔神である。人間の怒りや憎しみを信精波として己の力とすることができる。本編では説明されなかったが、もともとは「変化」を司る者達であり、世界を大きなエネルギーによって変化させ、循環させていく原動力が、本来の炎魔神の力であった。だが、「変化」の過程上で発生する「破壊」に人間が関心を寄せ、そのような面を崇め始めたことで、作中のような破壊の権化という性格が形になっていった。死ぬとその身体は炎となって散っていく。
作中では敵となる炎魔神だが、はるか昔には、当時の炎魔王と竜王は仲がよく、魔精界の危機に際して共同戦線を張ったという逸話もある。
ヴァグーラ
炎魔皇帝にして現魔精霊界王。前魔精界王である竜王ラージャスの衰弱に乗じ、魔精界制覇に乗り出した高位魔神。全身を炎に包まれた巨人の姿をしているが、あまりに炎が激しいため巨大な火の玉状になっている。
竜王の娘マナーサを強引に妻とし、魔精界を制覇した後は人間界を狙っている。竜輝にとっては母方の祖父なのだが、愛娘の息子であるはずの彼に対しては、「ナーガス伝説の体現者」という一面以外には、一片の関心すら抱いていない。
ナーガス伝説については、ナーガスを産み出す要である娘エスリーンの家出に狼狽える、対抗してギレウスという抹殺者を用意するなど、動じていない風を装いながらも内心は気に病んでおり、この点に関してはギレウスのセリフに曰く、「ケツの穴が小さい」ということになる。
最終決戦においてラージャスとの戦いでさえ見せなかった真の力と自身の城を破壊するほどの超巨体を露わにし、六将軍全ての技を含む超絶の攻撃力を振るった。
冷酷無慈悲な典型的圧政者ではあるが、唯一、娘のエスリーンに対してだけは優しい父である。その立ち位置はケルト神話のバロールに対応する。
使用技
焦熱結界
炎の剣
マグマ
豪炎流星雨
全てを飲み込む火炎の嵐
ギレウス
ヴァグーラの息子で、炎魔神と水魔神のハーフ。エスリーンとは母親違いの弟で竜輝の叔父にあたる。
エスリーンに逃げられたヴァグーラが、彼女にナーガスを生み出され、自らを破滅させられる危機に陥った際の最後の切り札として、自身が暗黒竜族の娘との間にもうけた最強の懐刀にして生まれながらの暗殺者、輝竜戦鬼抹殺者(ナーガスエリミネーター)。不羈たる「諸刃の剣」として、父親にさえも恐れられている。
ナーガスが現れるまでは、人間界にて信精波を確保する任務に付いており、婆倶羅教団の教祖・及川加茂の養子として「及川秀鬼(おいかわ ひでき)」を名乗っていた。
その出自と期待された役割から、皇帝の息子でありながら存在を外部に知らされることなく、ナーガスを迅速確実に抹殺するための「生ける兵器」として、炎界の辺境で戦いだけを叩き込まれ続けた。その境遇に加えて、自身を「母を炎の神力で焼き殺した末に生まれた存在」と吹き込まれていたため、ヴァグーラやナーガスを始めとしたこの世の全てを、何よりも母を殺した己自身を呪い、憎悪している。
ただし、凄惨極まる生を強いられ、憎しみに囚われてはいるものの、闘いには堂々と臨み、口先だけの約束はしないなど、非情ではあっても卑怯ではなく、魔神の戦士としての矜持を失わない、誇り高い男である。また、誰からも己を顧みられずに育った境遇から、母を慕い、愛と友情を求めて止まない、立場に相応しからぬ優しさと弱さを秘めている。
魔神としての姿は「黒いナーガス」というべき容貌である。姿が似ているだけでなく、同じく炎魔神の父と暗黒竜族の母を持つため、胸元には竜族の証である龍玉を持ち、本来なら炎魔神と水魔神双方の魔神力を振るうことができるが、憎しみだけを注がれてきた生い立ちとそれを決定的とする母殺しのトラウマに起因し、愛情に由来する水魔神の神力を行使できない。
覚醒からまだ長くないナーガスを緒戦では完全に圧倒するが、ある意味自己の存在理由そのものであるナーガスのひ弱さに憤慨を覚え、相応しい敵手として力をつけさせるため、また自身が用済みとして始末される事態を避ける保険の意味も兼ねて、竜輝を魔精界へ飛ばした。
ナーガスの力を得てヴァグーラに取って代わろうと企むが、夢の世界でナーガスを助けようとする沙智と顔を合わせたことをきっかけに、その体と心に変調を起こしていく。実はギレウス自身は知らされていないが、火水の神力のバランスが崩れていることで長くは生きられない状態にある。
ナーガスの水竜渦動衝を喰らって粉々になり、一度は完全に死亡するものの、傷つきながらも残った龍玉から、モリガンの胎内で再生(と言うより、新しく産み出してもらい新生)され復活を果たす。同時に、彼女の死をも恐れぬ献身から愛する想いとその強さを実感したことでトラウマを払拭、神力の調和も取り戻し、水の力も行使できるようになった。
最終決戦ではギレウスの参戦が状況を決する形となり、彼もまた『炎の孫』としてヴァグーラを斃す、ナーガス伝説の体現者となった。
終戦後はモリガンと共に(おそらく彼女が望んだとおり)何処へともなく去った。
使用技
火炎弾
閃射炎弾
飛転斬鱗
竜騎槍鱗
炎竜焼牙
豪炎流星雨
水竜盾輪
水竜渦動衝
スグシス
炎魔六将軍
炎魔神の中でも最強を誇る6神。いずれも人間界で力ある存在として崇められてきた者達だが、現在はヴァグーラ直属の将軍としてナーガスに襲いかかる。その炎の神力は沼を一瞬で干上がらせ、大地を溶かすことができるほど。しかしヴァグーラは彼ら6神が束になってかかってもかなわないという。
ネルガル
ウエウエテオトル
水界反乱軍と接触したナーガスを討伐するべく、ヴァグーラの勅命で水界に現れた、炎魔六将軍の1神で最古参。長いこと隠居していたため、世事に疎く、ナーガスのことを知らなかった。かつての水界侵略にも参加していない。いざ戦うとなると味方すら平気で巻き込む残忍さを見せる。
頭にコブラのような巨大な口のあるパーツを乗せた、ひなびた老人の姿をしている。頭の中には、地球の生命の素となった原初の火を備え、その力でかつて活躍した炎魔神を蘇らせ、エネルギーが尽きない限り無尽蔵に増える「千の軍団」として操る。
水界反乱軍の本拠地を壊滅させ大きな打撃を与えるが、頼りきっていた原初の火を頭もろともに切り離されて狼狽のうちにナーガスに斬り捨てられた。
人間界ではアステカで知恵者にして火の神ウエウエテオトルとして崇められ、頭に香炉を乗せた神として認識されていたようである。5巻でのみ「ウェウェテオトル」となっている。
使用技
千の軍団
焦熱結界
ヴァルカン
炎魔神と地魔神のハーフで、マグマの王と呼ばれる。そのふたつ名のとおり、地を割りマグマを操る。スルトの「軍団相手には役に立つが個人相手には大雑把」という言に憤っていたが、実際、ひとりずつちまちま潰していく戦い方は性に合わないようである。
全身が岩塊と溶岩が寄り集まった爬虫類か、火山そのものが形をとったガマガエルのような巨体を持つ。ウエウエテオトルほどではないが年寄りらしい。
竜輝たちの「大いなる力」獲得阻止のためヴァグーラにスルト、アグニと共に召喚されるが、特にスルトと折り合いが悪く単独で竜宮城に攻撃を仕掛け、乙姫の奥の手「海竜砲」で撃破された。
人間界ではローマ帝国で火の神ウルカヌスとして崇められていた。
使用技
マグマ
アグニ
水魔神(ハイドロ・ディーバ)
水魔神は、水の力を司る魔神である。人間の愛を信精波として己の力とすることができる。しかし、人間界の水が汚され、人間達の心も恨みや憎しみ=炎の信精波に傾きがちな昨今、水の神力はその力を減じられてしまった。そこを炎魔神につけ込まれ、攻め込まれて陥落した。だが、わずかに生き残った者達は、救世主ナーガスの伝説を拠り所にし、その後も抵抗を続けている。
竜族
本作では、いわゆる竜/ドラゴンは水界に属する。その強大な力ゆえ、人間界でも多くの神話で神とされ、また悪魔ともされた。本作での竜は二種族あり、片方は輝竜(ナーガ)族、もう片方は暗黒竜(ダーク・ナーガ)族である。
この項目では、竜族の血を引く登場人物を紹介する。ただし、霧山竜輝(ナーガス)、ギレウスについては既出の各項目を参照。
輝竜族は、水界においては最も有力な一族で、おそらく一族の長「竜王」が水界の王を代々務めている。その姿は、純粋な水魔神であれば人間界での東洋の龍が多いようである。混血となると、西洋のドラゴンの形となったり、二足直立の竜人のようになったりもする。が、魔神の姿は多種多様である(特に女性は容姿も人間の姿に近くなる傾向がある)ため、絶対ではない。身体のどこかに竜玉と呼ばれる宝玉を持つ。竜の血が濃いほど大きいようである。力を使う時に光を放ち、その光の色は透き通った青。だが、炎魔の血を併せ持つ者が炎界の要素=怒りや憎しみなど、他人を傷つける破壊的な感情に染まった時には、燃えるように真っ赤な光を放つ。
竜王ラージャス
エスリーン
竜輝の母。ヴァグーラの娘で、炎魔神と水魔神のハーフ。竜王の娘マナーサを母に持つ。ギレウスは母親違いの弟。
冷酷なヴァグーラに唯一可愛がられる存在ではあったが、ナーガスの誕生を恐れられるあまり城からの外出は一歩も許されれず、伝説についてもまったく知らさなかった。しかし、父譲りの奔放な性格が幽閉を我慢できるはずがなく、本編開始より18年前、城を抜け出し、ティアの手引きで人間界へと出奔することとなる。人間界で輝安と出会い、息子・竜輝をもうけるが、炎界の捜索隊に息子が見つかることを恐れ、家を出たところを発見され、炎界に連れ戻された。
家族の安全のため自身の体を水晶と化して封印した状態のままヴァグーラ城に安置されている。
肉親が骨肉の争いを繰り広げる様に耐えきれず、封印を脱して父への情に苦悩しつつも息子を助けることを選ぶ。戦後は人間界で竜輝と暮らす。
名前の由来はケルト神話のバロールの娘エフネ(エスリン)。
暗黒竜族(ダーク・ナーガ)は、邪悪な心を持つ竜族である。自分に逆らう者は人間であろうと魔神であろうと皆殺しにするため、水界では嫌われ者となっている。人間界の伝説で退治される竜の多くは暗黒竜族である。人間界の伝説では、暗黒竜族の多くは炎を吐くが、この理由は、はるか昔に炎魔と混血したためだという。
竜王ラージャス存命の頃は、彼の強大な神力でもって、辺境に封じられていたが、竜王死後は封じの神力が失われ、暗黒竜族がいつ報復に動き出してもおかしくない状況にある。実際には作中で彼らが積極的な行動に出ることはなかったが、一族の女が一人、ヴァグーラの子を孕み、その子の炎の神力で焼き殺されたらしい。
反抗軍(レジスタンス)
竜王が斃れ、水界最後の砦が陥落した後も、水界の者達が炎界に屈することはなかった。残党同士が集まり、ヴァグーラにさらなる抵抗を続けている。しかし、その勢力は、一人の戦死ですら大きなダメージになるほどに衰えていた。魔精界に赴いたナーガスと出会うことで希望を見いだした彼らの戦いは、大きな転換期を迎えることとなる。
この項では反抗軍に属する水界の戦士を紹介する。便宜上、砦陥落前の残党の将であったオアンネスも、この項で説明する。
オアンネス
ラーザニル
水界の反抗軍の副長。カニを魔人化したような姿をしていて、ティアには「カニみそ」「みそ」と呼ばれる。恋人のプエラを殺された日から、死んでもいいつもりで戦い続けてきたが、生き残り、副長にまでなった叩き上げの古兵。
ナーガスを迎えて沸き立つ反抗軍の中にあって唯一ナーガスを認めず、猜疑の目で見続けた。だが、共に行動するうちにナーガスの決意を目の当たりにし、認識を新たにしていく。対ウエウエテオトル戦では、頼りになる戦士として完全に認めていた。力を温存しなくてはならずに苦戦するナーガスの楯となり、一世一代の大勝負を仕掛けるがグライマーと相打ちになる。
名前の由来は作者がアイスランド語の本より抜き出した単語で構成した造語であり、「忠告する者」を意味する。
使用技
発泡素沫射
風魔神(アエロ・ディーバ)
風魔神は、風の力を司る魔神である。また、大気の力や、寒気、暖気、気圧などを己が力とする。例外なく飛行能力を持つ。飛行能力自体は他の界の魔神にも持つ者がいるが、速度では追随を許さない。ヴァグーラの恐怖の支配を受け、あるいは自ら進んで、炎界側に味方している。
ボレアース
モリガン
ギレウスに付き従う風魔神。黒い翼を持つ黒い肌の女神の姿をしていて、カラスを使いとすることができる。
実はギレウスの監視としてヴァグーラから遣わされたのだが、ギレウスには最初からばれていた。それでいてなお自分を傍に置く剛毅さを持ちながら、凄まじい過去を持つギレウスに、モリガンは惹かれていくが……。
ある意味でこの物語の三番目のヒロインと言うべき存在。本来の話運びの予定ではギレウスに倒されるだけのチョイ役だったが、最終的にはレギュラーキャラとなった。
ナーガスに倒されたギレウスの龍玉を自分の子宮内で再生させ、ギレウスを蘇らせた(ギレウスにとって第二の母となる)。
最終決戦ではギレウスにこれ以上の戦い傷つくことを望まなかったが、全ての因縁に決着をつけるため出撃した彼を、沙智たちと共に見守った。
名前の由来はケルト神話の戦女神モリガン。
使用技
蜃気楼
地魔神(ゲー・ディーバ)
地魔神は、地の力を司る魔神である。人間界に存在する大地や岩の力、人間外の獣や虫の力を己の力とする。特有の能力として隠形の術があるが、全ての地魔神が持ち得るものかどうかは不明である。風魔神と同様に、ヴァグーラの恐怖の支配を受け、あるいは自ら進んで、炎界側に味方している。死ぬとその身体は土塊となって崩れていく。
ドリワーム
ヴァグーラの命を受け、ナーガス討伐のために人間界にやってきた地魔神。老人のような顔の頭部から何本もの触手を生やしたカマキリのような姿をしており、配下として環形動物に似た(最大3メートルにもなる海生種で肉食のオニイソメがやや近い)「虫」を操る。
虫は人間の体内に寄生し、備えた鋭い牙によって人間の肉体を食い破る。この虫により、沙智以外の竜輝のクラスメート全員(+教師2名)が無惨な死を迎えた。ドリワーム本体の触手は虫よりは強靱。また、損傷から再生する際に形態を変えることがある(作中では鞭状→牙を持つ蛇状になった)。
名を上げるために竜輝を魔神化させて倒そうと目論んだことがあだとなって、ナーガスの力を目覚めさせてしまう。
クザン
グライマー配下の地魔神。富士五湖の越界の鏡の監視を、人間界側で行っている。鎧武者のような風体をしている。性格的にも狂暴残酷な同僚とは一線を画し誇り高く、形式上は上役のグライマーにも一切媚びへつらいはしない。グライマーよりナーガス討伐を命じられ、ヴァグーラに地魔神の力を見せつけるべく、同僚のガルカイン、バリオンスクスと共にナーガスの前に姿を現す。
両手首から大ぶりの曲刀状の刃、「岩斬剣」を生やしており、実際は岩どころかダイアモンドすら切り刻む硬度を持つ。また、全身を包む鎧もナーガスの爪を受け付けず、サラマンドラバーンにすら耐えたが、超高熱から体内までは守りきれなかった。
名前の由来は「クザンナイフ」から。
なお、同じくガンガンに連載されていた『南国少年パプワくん』に、クザンとの戦闘中にコマ外に書かれた「ナマヅメハーガス」というシャレから生まれたゲストキャラクターが登場する。
使用技
岩斬剣
ガルカイン
グライマー配下の地魔神。クザンらと共に行動している。細長い頭部を備えた頭と、滑空用の皮膜状の翼を持つ、どことなく爬虫類めいた印象の姿をしている。
舌はストロー状になっており、獲物の精気を吸い取ることができる上、自分の意志で根元付近から何本にも枝分かれさせ、獲物を拘束することもできる。また、細長い頭部は破壊しても大きなダメージにはならず、中に詰まっている「吸精銛」という無数の器官で敵を串刺しにし、こちらからも精気を吸うことができる。
ナーガスが現れるまで、竜ヶ岳で退屈しのぎに人間の精気を吸っていたが、ミイラ状の遺体が残るため、謎の怪死事件として話題になっていた。
少女が餌食になる有様は作中屈指のショッキングシーンである。
バリオンスクス
ドーベント
ヴァグーラの侍従長。齧歯類にも似た小動物のような姿をしている。手指は4本で非常に長い。属する界は作中では最後まで不明だったが、実は地魔神である。速い時期ににヴァグーラに取り入って成り上がった、典型的な日和見主義者。忠誠心自体はあまりないようである。
ヴァグーラからは(「いつでも使い捨てられる、便利な道具」という認識かもしれないが)それなりに働きを評価されている模様で、六将軍やボレアースなどを呼び出す役目を与えられたり、ギレウスの秘密を明かされたりしている。しかし最終決戦ではヴァグーラが一切意に介することなく本性を現したことで崩壊した城の下敷きとなって死亡した。
初期設定でのモデル及び名前の由来は、アイアイ (daubentonia) である。
その他の魔神
界の分類が不明の魔神、またはもともと魔神ではなかったものである。
ティア
エルフの様に長く尖った耳を持つ、手のひらサイズの小人の姿をした、属界不明の魔神。見かけとは反して、オアンネスよりもはるかに古い魔神である。水界の砦の内部にある越界の鏡の番をしていて、炎界を逃げ出したエスリーンを人間界に送ったこともある。砦陥落時に、ナーガス探索の使命を受けたディーナと共に鏡を抜け、以降、行動を共にする。
非常に強力な神力を持っており、その力を開放することで何度もナーガスたちを救っている。しかし、力を使う度に少しずつ縮んでいき最後には消えてなくなってしまう(自称)ため、よほど追い詰められた時でないと力を使うことはない。様々な事を知っているが、本人は昔の記憶を忘れてしまっている。その正体は結局作中で明かされることはなかったが、彼女の正体が何らかの伏線だと匂わせる描写は何度かあった。
魔の樹城
夢魔
使用技
この項では、各魔神が使用する、主な技を解説する。
流水弾(りゅうすいだん)
竜斬鱗(りゅうざんりん)
水幕結界(すいばくけっかい)
炎竜焼牙(サラマンドラ・バーン)
ギレウスが使用する際は暗黒の炎で構成されており、しかもギレウス自身が炎魔に傾いているため威力が強い。
水竜斬刃(ハイドラシュレッダー)
竜族に伝わる技の仲でも屈指の威力を誇り、瀬ノ王が会得していたが、水界の衰えと共に後継者もなく、衰えて技を使えなくなった瀬ノ王を最後に失伝する運命であった。怒りや憎しみという炎の心に流されて戦うのではなく、心を水に傾けることで、水の精霊の助力を得たナーガスは、瀬ノ王よりこの技を会得するに至り、グライマーに勝利を収めたのである。
後に水の神力に目覚めたギレウスも使用した。
水竜渦動衝(ハイドラストリーム)
大車輪針
ムジナの最後っ屁
焦熱結界
炎の剣
マグマ
豪炎流星雨(ブレイズ・ミーティア)
全てを飲み込む火炎の嵐
火炎弾
閃射炎弾
飛転斬鱗(ヘル・スピナー)
竜騎槍鱗(ランス・ドラグナー)
水竜盾輪(ハイドラシールド)
炎騎突撃衝(ファイアースタンピード)
千の軍団
熱羽豪嵐(ヒートフェザー)
円月水裂輪(ムーン・ディヴァイダー)
氷霜円舞(アイスロンド)
竜王雷電撃
海竜砲
スパイラル・シェイカー
発泡素沫射(はっぽうすまっしゃ)
転身貫通撃(ボーリングブレイク)
気流刃(きりゅうじん)
風威・墜砕渦動流(ふうい・ついさいかどうりゅう)
雹嵐撃砕射(ヘイル・バスター)
蜃気楼
ちなみに水魔神は遥かに小規模だが、水の微粒子を操って光を屈折させる類似の術を行使でき、衣類を含む自身の姿形をコントロールしてディーナの人間界での変装や、竜輝がナーガスへの変身で服を失うことの対策に活用していたが、術が解けると素っ裸をさらしてしまうことになる。
岩斬剣
裂空砕迅槌
大いなる力
手のひら大の光る珠だが、あまりに強大すぎて何者にもコントロールできない。策略により珠を奪ったアグニはウザテースと見まがう巨人の姿になったが、直後に暴走して身体がはじけ飛んでしまった。ナーガスでさえ、巨神となってスルトを一撃にて打ち砕く力を振るうも、ウザテースの記憶に飲まれて正気を失い、危うく沙智やディーナを殺しかけてしまった。
しかし最終決戦においては、人間であるため神力の直接の影響を受けない沙智が手にすることで、間接的に味方の魔神全てに加護を与えるという方法で竜輝たちを後押しした。