TUGUMI
以下はWikipediaより引用
要約
『TUGUMI』(つぐみ)は、吉本ばななの代表作である青春小説。英題はGoodbye Tsugumi。
西伊豆土肥海岸を舞台に、性格の悪さを故意に露出する少女つぐみを中心に、少年少女の淡い出会いと別れを描く、現代版「たけくらべ」。
1990年に『つぐみ』のタイトルで市川準監督によって映画化された。
概要
雑誌『マリ・クレール』1988年4月号から1989年3月号まで連載された。1989年3月20日、中央公論社より刊行。
病弱な少女つぐみが、夏に帰省してきた従姉妹のまりあと町で遭遇した日の出来事を描く。1989年に第2回山本周五郎賞を受賞した。その後英語などに翻訳されて各国にも紹介されており、高い支持を得ている。
本書は1989年年間ベストセラーの総合1位を記録した。初版の部数は30万部。日本における平成時代初のミリオンセラーを記録した単行本となった。読者カードによれば、読者の92%が女性で、そのうち24歳以下が70%を占めた。累計発行部数は単行本167万部。挿画を担当した銅版画家の山本容子の名前も一躍高まった。1996年1月の大学入試センター試験では現代文の問題としても使われた。吉本ばななは、背景のモデルを伊豆の土肥温泉と言っている。
あらすじ
お化けのポスト
中学二年の春、祖父が亡くなり、心の底から滅入っていたが、いとこのつぐみが祖父が書いた手紙(筆跡・書き出しが生前と同じ)を持ってくる。しかし、手紙はつぐみが書いたものだった。まりあは激怒するが、つぐみが謝ったことにびっくりする。この出来事をきっかけにまりあとつぐみは、本当に仲良くなる。
春と山本家の姉妹
人生
よそ者
夜のせい
告白
父と泳ぐ
父がバスで町にやってきた。父が海で泳ぐ姿を遠い夢の一部のように感じ、翌日東京へ帰る父を想像し、帰るところがあることを実感する。父がつぐみに運命の女神に語りかけるように、恋に関して語る。翌日、父の見送りに行った帰り、別れをひとつも忘れたくないと、まりあは思う。
祭り
怒り
権五郎がさらわれた。恭一、陽子ちゃん、まりあ、つぐみの四人で探し、つぐみが見つけ出した。翌日、恭一は権五郎をさらった男のうちの一人を見つけ、むちゃくちゃに殴った。しかし、権五郎は再び攫われてしまい四人で探すが見つけられなかった。
穴
つぐみは、権五郎とうりふたつの犬を借りてきて、まりあに権五郎を殺した奴の一人に見せて驚かせてきたと言う。しかし、その後陽子ちゃんにつぐみが庭に穴を掘り、男を閉じ込めていたことを知らされる。まりあは、体力の限界をとっくに超え自分の命を投げ出し、ひとりきりの思考で生きてきたつぐみに気付く。
面影
つぐみからの手紙
登場人物
白河まりあ(私)
山本つぐみ
武内恭一
まりあの父
映画
『つぐみ』というタイトルで1990年に映画化された。松竹製作。監督は市川準。
生まれつき体が弱くわがままに育てられたつぐみと周囲の人々のひと夏の出来事が描かれている。静岡県賀茂郡松崎町で撮影が行われた。市川監督にとっては初めて東京以外を舞台とした作品である。原作者の吉本ばななは、市川が村上里佳子を撮ったドキュメンタリー『Kiss off』がものすごく好きで、『つぐみ』を映画化したいという申し出にためらいなく飛び込んだのは、それを何回も観ていたからだったと述べている。
本作が主演映画2作目となった牧瀬里穂は、本作品で毎日映画コンクール新人賞など各映画賞を総なめにした。ロケ見学をした吉本が牧瀬について「ああしていると自分が創った人間としか思えないや。そのものですよね。よくあんな人、いましたよね。奇跡ですねえ」と言ったという。吉本は市川の死後にも、「今もとてもきれいな人だが、あの頃の牧瀬里穂ちゃんには、やりきれないなにかが爆発しそうな、もやもやした美しさがあった。それを監督はさっととらえて、永遠に消えない形で閉じ込めたと思う」と述べている。
1990年キネマ旬報ベストテン第9位、読者選出第5位。
映画あらすじ
西伊豆の旅館の娘つぐみは、生まれつき体が弱くわがまま放題に育てられた18歳の少女である。容姿端麗だが風変わりで、親しい者には毒舌で暴君のように振る舞い、いつも周囲を振り回していた。
つぐみの従姉妹であるまりあは幼少期から、つぐみの両親が営む旅館に母子で住み込んで暮らしていたが、離れて暮らす父親が前妻との離婚を正式に成立させたため、大学進学と同時に東京で家族3人で暮らすことになる。しかし夏休みにつぐみから誘われたため再び西伊豆に渡り、つぐみとひと夏を過ごすまりあ。
その夏、つぐみは不良グループに絡まれたところを助けてくれた美術館勤務の青年・恭一と恋仲になる。しかし、つぐみが過去に不良のリーダーと付き合っていたために、恭一は不良たちから袋叩きにされた。更に、つぐみの愛犬ピンチをさらって殺す不良たち。
復讐心に燃え、不良たちを一網打尽にするために、病弱な少女には不可能なほど深い落とし穴を掘るつぐみ。だが、体調が悪化したつぐみは緊急入院した。
東京に戻ったまりあに、「皆に迷惑をかけた」と本心からの遺書めいた手紙を送るつぐみ。バイト先で急な電話を受けたまりあは緊張して受話器を取った。しかし、それは持ち直したつぐみからのイタズラ電話だった。
キャスト
- つぐみ - 牧瀬里穂
- まりあ(つぐみの従姉妹) - 中嶋朋子
- 陽子(つぐみの姉) - 白島靖代
- 恭一 - 真田広之
- つぐみの父・正 - 安田伸
- つぐみの母・政子 - 渡辺美佐子
- まりあの父 - あがた森魚
- まりあの母 - 高橋節子
- 恭一の兄・高橋 - 財津和夫
- ケーキ屋店長 - 高橋源一郎
- 医師 - 下條正巳
- 不良グループのリーダー・藤内 - 吹越満
- 歌澤寅右衛門、なんきん、砂川真吾、野々村仁、辻本良紀(現:辻本一樹) ほか
スタッフ
- 監督・脚本 - 市川準
- 製作 - 奥山和由、後藤亘、鍋島壽夫
- 原作 - 吉本ばなな『TUGUMI』
- 音楽 - 板倉文
- 主題歌 - 小川美潮「おかしな午後」
- 音楽プロデューサー - 小針俊郎、佐々木麻美子
- 撮影 - 川上皓市
- 美術 - 正田俊一郎
- 照明 - 磯崎英範
- 編集 - 荒川鎮雄
- スタイリスト - 下田眞知子
- 助監督 - 月野木隆、井上文雄、七字幸久、清水徳久、シーラ・ローエンバーグ
- スチール - 笹田和俊
- 製作デスク - 片岡公生
- ドッグトレーナー - 宮忠臣
- 技斗 - 金田治
- MA - にっかつスタジオセンター
- 現像 - 東京現像所
- プロデューサー - 久保修、吉田多喜男
- 製作 - 松竹富士、全国FM放送協議会、山田洋行ライトヴィジョン
受賞歴
- 第15回報知映画賞監督賞
- 第45回毎日映画コンクール監督賞
- 第14回山路ふみ子映画賞新人女優賞(牧瀬里穂)
- 第15回報知映画賞新人賞(牧瀬里穂)
- 第3回日刊スポーツ映画大賞新人賞(牧瀬里穂)
- 第45回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞(牧瀬里穂)
- 第12回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞(牧瀬里穂)
- 第33回ブルーリボン賞新人賞(牧瀬里穂)
- 第64回キネマ旬報ベストテン新人女優賞(牧瀬里穂)
- 第14回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、新人俳優賞(牧瀬里穂)
映像ソフト
- 『つぐみ』VHS・LD(1991年5月24日発売、松竹ホームビデオ SA-9122)
- 『つぐみ』DVD(2008年12月23日発売、SHOCHIKU CO,LTD)
原作との相違点
- 恭一の姓は高橋で、つぐみより年上の社会人であり、美術館に勤めている。訪ねてきた兄がつぐみの実家の旅館に宿泊している。
- つぐみの飼っている犬の名前が「ピンチ」に変更されている。
- まりあの母がつぐみの母の妹に変更されている。
備考
- ロケが行われた旅館梶寅はこの映画以前にも数々の映画、ドラマに登場しているが、実名で登場するのはこの映画が初めてである。その後旅館の営業は停止し建物は解体された。
- つぐみが不良グループと対決するために落とし穴を掘りに通ったディーゼル工場跡地、実は梶寅のすぐ隣にある。
- 劇中にある燈籠流しの祭りのシーン、実際の祭りは8月に行われるが、撮影はスケジュールの都合で6月であり、地元の人々がエキストラとして参加し、祭りを再現したものである。