されど罪人は竜と踊る
ジャンル:SF,アクション,ダーク・ファンタジー,
題材:ドラゴン・竜,
以下はWikipediaより引用
要約
『されど罪人は竜と踊る』(されどつみびとはりゅうとおどる)は、浅井ラボによる日本のライトノベル。イラストは宮城。科学監修は亜留間次郎。第7回スニーカー大賞〈奨励賞〉受賞作(応募時のタイトルは「されど咎人(とがびと)は竜と踊る」)。通称「され竜」。『このライトノベルがすごい!』作品部門では2006年版で8位を獲得している。当初は角川スニーカー文庫から発行されていたが、その後小学館ガガガ文庫へ移籍した。ガガガ文庫版については『されど罪人は竜と踊る Dances with the Dragons』を参照。
「咒式」(じゅしき)という科学と魔法が融合した独特の技術を基にしたファンタジー。残酷ともいえる物語と表現方法、演出の仕方により「日本で最初の暗黒ライトノベル」と称される作品。小学館ガガガ文庫からは正式に「暗黒ライトノベルの始祖にして最終作」としてセールスされている。
あらすじ
量子世界の基本単位である、作用量子(プランク)定数hを操作し、森羅万象を生み出す力、咒力。これを操るものたちは咒式士、その力を人殺しやバケモノ退治に使う者たちは攻性咒式士と呼ばれる。掃き溜めの町エリダナ在住の二人の(ダメ)咒式士たち罪人と、頭のイカれた依頼人・友人・権力者・犯罪者・同業者たち人格破綻者と、"異貌のものども"の物語。
登場人物
声優が列記されている場合はテレビアニメ版/ドラマCD版。
アシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所
ガユス・レヴィナ・ソレル
声 - 島﨑信長 / 谷山紀章
所属:ダラハイド咒式事務所→アシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所
魔杖剣:断罪者ヨルガ(自動弾倉式)、贖罪者マグナス(回転弾倉の魔杖短剣)
主人公の一人。ヘタレ赤毛眼鏡。長身で、俳優の故ラグマノフ似の美形。地の文における「俺」。化学練成系咒式士であり、咒式士階級において到達者に位置される第十三階梯(1巻の時点では十二階梯、最初のニドヴォルク襲撃の後に十三階梯に承認される)。二つ名は持たないが、物語序盤ではギギナに「錬金術士」と呼ばれた。23歳。
護衛職としては申し分ない身体能力を持っているが攻性咒式士としては体格が足りないと言われる事も多い。しかし咒式に関して非常に豊富な知識を持っており、それらの知識を戦闘に応用する明晰な頭脳を備えている。没落貴族ソレル子爵家出の準爵で、リューネルグ咒式大学中退。現在はギギナとコンビを組み、エリダナに事務所を構える。相棒の浪費癖と凶悪な仕事に喘ぎつつ、塾講師のバイトをしながら生活している(ちなみに教え方はかなりうまいらしく、時折講師に転職するかどうか悩む場面も)。ギギナの非常識さに辟易してる彼も学生時代は曰く"歩く非常識"と呼ばれていたらしい。基本的に不運で浮気性、そして隠れ努力家。化学練成系咒式士にありがちな理屈詰めかつ悲観的な性格。戦争で失った妹のアレシエル、そして過去の恋人クエロやダラハイド咒式事務所での裏切りを今でも引き摺っている。モルディーンに赤色の「宙界の瞳」と呼ばれる指輪を渡され、時折それが彼が狙われる原因となることも。幼い頃から母親が家事放棄したために料理は全てガユスが作ってきたらしく、料理の腕はすでに職人級。ギギナ曰く「性格が大絶滅している」。
『このライトノベルがすごい!』女性キャラクター部門では2006年版で3位、2007年版で7位をそれぞれ獲得している。
ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ
声 - 細谷佳正 / 松風雅也
所属:ダラハイド咒式事務所→アシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所
魔杖剣:屠竜刀ネレトー(回転弾倉式、竜を倒す目的で作られた大剣)
主人公の一人。竜を屠ることを生業とするドラッケン族と人間のハーフ。銀髪に鋼色の瞳、白皙の肌、196cmの長身に完璧に近い鍛え上げられた肉体と、この世の物とは思えない程の美形。階級は到達者である第十三階梯(ダラハイド咒式事務所時代は十一階梯)で、エリダナにおいてラルゴンキンと双璧を成すと畏怖される。自らの肉体を強化する生体強化系咒式士であり、生態系咒式の中でも特に治癒咒式を扱う「剣舞士」に分類される攻性咒式士。24歳。
戦闘狂で剣術の達人。ガユスとの付き合いは前事務所を入れれば4年程。きわめて傍若無人で傲岸不遜、ガユスによると己以外の人間が交流不可能なほど性格が捻じ曲がっているとの事。財務状況を無視した凄まじい浪費癖があったり、ガユスに簡単に騙されたりと一見鈍い思考の持ち主だが、戦闘などの非常時においては護衛や治療などの役割も果たし的確な判断もこなすなど、高位咒式士として恥ずかしくない知能を持つ。ガユスとの言語合戦では向こうを張る。家具蒐集家で、お気に入りの家具には名前をつけて愛でている。一番のお気に入りは椅子の「ヒルルカ(♀)」。我が娘と呼び大変愛情を注いでいる(椅子に)。その容姿から異性にはモテまくるが、本人は夜の暇つぶし程度にしか考えていない様子。お相手は消防署勤務の女性からラルゴンキン事務所の受付、酒場の歌い手と手広い。しかし、故郷に居る許婚には全く頭が上がらないらしく、普段の漁色がバレると無限空中コンボ(過去のお仕置き例)だけでは済まないという。ガユス曰く「性根が原子崩壊している」。
エリダナの人々
ジヴーニャ・ロレッツォ
声 - 日笠陽子 / 長沢美樹
1巻から登場。ガユスの恋人。尖った耳を持つ、アルリアン人と人間のハーフ。白金色の髪の色白の美女で、尻の大きさを気にしている。ガユス曰く「俺にはもったいない程のいい女」。製薬会社に勤めているOLさん。親しい者からは「ジヴ」と呼ばれる。基本的に正義感が強く、お人好しで騙されやすい。そのためガユスによくからかわれるが、それが一定レベルを超えた場合、ものすごく黒く邪悪な一面が表に出てくることがある。そのときの状態は「黒ジヴ」「黒き魔女皇」(ガユス談)「悪魔」(ジャベイラ談)「邪悪な闇の女皇」(ツザン談)などと呼ばれ、ガユス、ギギナをはじめとする数多くの高位咒式士をも廃人寸前に追い込むほどの恐怖を与える存在となる(ガユスやギギナ以上の毒舌、ガユス曰く「幼少時に精神的外傷を受けていないとありえないような」罰ゲームを考え、更にそれを笑いながら執行する等)。その恐ろしさはギギナの許婚以上らしい。咒式を使う事は出来ないが、ガユスに教わった護身格闘術を使いこなすなど身体能力は高い。料理は割と下手。
ロルカ・クレム・バグフォット
ホートン
ベイリック
声 - 高橋英則 / -
所属:エリダナ市警
ガユスの友人である警察官。階級は警部補。年齢にしてはかなり出世している方らしい。頭が良く、警察官としての誇りが在るんだか無いんだかわからない立ち回りをしている。情報提供や仕事斡旋・協力と、何かと話によく出てくる男。味覚がおかしいのか、署の泥水のような(とガユスは思っている)珈琲が大好き。
イアンゴ
ヴィネル
声 - こぶしのぶゆき
所属:不明
エリダナでも高名な情報屋で正体不明(性別含)。高位数法系咒式士で道化師の格好をしており、いつも電子画面でのみ登場する。電子に入り込みエリダナの全ての電子が彼の眼であり耳。しかし誰の情報でも構わず売るため敵も多く、決して実体が誰かの前に現れることはない。
ツザン・グラル・デュガソン
イムホテプ
ラルゴンキン咒式事務所
ラルゴンキン・バスカーク
声 - 西凜太朗 / 内田直哉
所属:ラルゴンキン咒式事務所(所長)
魔杖剣:剛毅なるものガドレド(長大な魔杖槍斧)
2巻「灰よ、竜に告げよ」から登場。ランドック人の巨漢で、栗色の髪と顎髭を持つ。化学鋼成系の咒式を操る重機槍士。ガユスより頭二つは高い215センチメルトルの身長を誇る。エリダナ中の尊敬の的である人格者。エリダナ一の巨大事務所の所長にして、ギギナやパンハイマとエリダナ一咒式士の座を争う、エリダナ四大咒式士の一人「巌のラルゴンキン」。ジオルグとはライバルであり戦友でもあった。また、妻と三人の娘が居り、家族サービスも欠かさない良き父親。イーギーを拾い育てたのも彼で、ギギナやガユスにも父親のように優しく厳しく接するが、当の二人からはあまりいい印象は持たれていない。
ヤークトー・ペジメテ
イーギー・ドリイエ
声 - 下野紘 / 福山潤
所属:ラルゴンキン咒式事務所(第二部隊隊長)
魔杖剣:左利きのレグルスス(左手用)、右廻りのラカッド(右手用、以前は右鳴りのラカーススを使っていたが、大禍つ式ヤナン・ガランとの戦闘で破壊されたため交換)
2巻「灰よ、竜に告げよ」から登場。第十二階梯の咒式士で、咒式植物を召喚する生体生成系の華剣士(彼が使う一部の咒式は、ガユスさえ知らないものらしい)。典型的なアルリアン人。割ととがった性格をしており、ギギナやガユスとの衝突が絶えない(がギギナと同じく咒式具マニアなので、意外と話が合う)。ジャベイラに想いを寄せ、また、所長ラルゴンキンを「親父」と呼び慕う。生まれたイージェスの地で迫害を受けており、その傷は今も残っている。ガユスとは、彼がダラハイド咒式事務所に所属していた時代に一度会っている。ジヴにはそのジャベイラへの想いを利用した凄惨な試練を与えられ、結果失神してしまった。「ルップフェット」というアルリアン特有の卑語(魔除けの呪文らしい)をよく言う。
ジャベイラ・ゴーフ・ザトクリフ
声 - 松本梨香 / 浅川悠
所属:ラルゴンキン咒式事務所(第三部隊隊長)
魔杖剣:光を従えしサディウユ(細い刀身の魔杖剣)
2巻「灰よ、竜に告げよ」から登場。第十二階梯の咒式士で、電磁光学系咒式を操る光幻士。ガユスを超える咒式制御力を持ち、最大時は第六階位の咒式を三重発動する事も可能。美女ではあるが、人格が一定しない偽造多重人格者。離婚歴があり、息子と娘が居る。ザトクリフは夫の姓。攻性咒式士になる前はジヴーニャと同じ製薬会社に光学咒式技師として勤めていた。ツザンとはいとこ同士。イーギーとは仕事上の相棒で、生涯の親友(本人談)。ガユスには異性として興味を抱いているが5巻以降はガユスを気遣い、あえて距離を置いている様子。"禁断の数字"においてジヴーニャには一度精神を崩壊させられるほどのダメージを与えられたが、その後山篭りの修行を経て(口論、厭味合戦で)善戦を繰り広げた。人格には電波少女や軍人や中年親父などがある。ある禍つ式を倒す際に「ジャベイガ」なる人格が発動。魔法少女そのものの衣装というとんでもない格好での登場となる(ジャベイガはジヴーニャに忠誠を誓っているらしい)。本来は後衛咒式士であるが、前衛とも互角に渡り合えるほどのいい拳を持つ。
ダラハイド咒式事務所
ジオルグ・ダラハイド
声 - 古川登志夫
所属:ダラハイド咒式事務所(故人)
魔杖剣:慈悲深きシメイシス(魔杖十字槍)、凍てつきしルフェニエ(魔杖尖剣、名刀匠が打った七振りの名魔杖剣の一振り)
「Assault」より登場。エリダナ四大咒式士に数えられた、エリダナで最も尊敬される十三階梯咒式士の一人「氷蒼の道化」。十三階梯の凄腕だが二つ名の通り、少々道化めいた所を覗かせる事もある。独立の為の金を用意してやるなど、少々お人好しが過ぎ、経営能力はあまり無いよう。だらしない風貌の糸目の中年男で気迫は全く無いが、命を狙ってきた咒式士を屠った際には殺伐とした一面を覗かせることもある。数々の超有名な咒式士を育てている(レメディウスの家庭教師を務めたこともある)。部下を心から愛し、父親のように優しく見守る。ガユスとギギナ、そしてクエロやストラトスの師。実力はすさまじいの一言。「自分ぐらいになると咒式を放つだけでは面白くない」と語っている。電磁誘導を組み合わせ精密さを兼ね備えた氷凍系咒式を操る。物語中で詳しく語られてはいないが、死亡しているようである。
名前の由来は機動戦士ガンダムに登場するモビルスーツ、ジオング。
クエロ・ラディーン
声 - 戸松遥
所属:ダラハイド咒式事務所(副所長)→?
魔杖剣:雷哭のイルディラ(魔杖短槍)、内なるナリシア(二巻以降所持、膨大な咒式干渉力を持つ)
蜂蜜色の肌に、灰白の髪を持つ美女。電磁系十三階梯の咒式士(ダラハイド事務所時代は十一階梯)の雷轟士で、強かで高潔。「不殺」の信念を掲げていたが。現在は処刑人と呼ばれる非情なる殺し屋。新進気鋭ながらその躍進ぶりは、すぐに四大咒式士に並ぶであろうと云われている努力の天才だが、女性だということも合わせて周囲の嫉妬を買って悲劇を招いたことも。車に乗ると性格が豹変する。ガユスとは同い年で恋人同士だったが、現在は彼を憎んでいる。ダラハイド咒式事務所の解体後はエリダナを離れていたらしいが、現在はエリダナに戻り汚れ仕事を引き受ける凄腕咒式士として暗躍している。第七階位咒式を二重発動することすら可能。名前の由来はフランスの検索エンジン「Quaero」
ストラトス・ローエン・クンデラ
声 - 藤堂真衣
所属:ダラハイド咒式事務所→?
魔杖剣:絞首刑のググリュプ(渦を巻いた刀身の魔杖短剣)、毒婦ミジャーチャ(波うつ刀身の魔杖短剣)
黒い瞳に黒い髪、死者より陰鬱な表情を持つ少年。数法系咒式士で、相手の能力を下げて拘束する事に特化した厭怨士。幼いながら十階梯に到達した才能だけならレメディウスにも並ぶと称される天才。咒式以外にもあらゆる事柄に関して優れた才能を発揮するが、故に世界への興味がかなり薄く、それ故の空虚さに理想的な自殺を追い求めている。脈絡もなく自殺をしようとしては止められ、時に仲間に一緒に自殺をすることを提案する。とある事件までは仲間をただの背景としか見ていなかったが、その後「誇り高き自殺の日まで生きてみる」という事を誓った。しかし、ジオルグの死の前後に廃人になったとの事(現在も生存中と思われる)。死んだはず。
sパンハイマ咒式警備会社
パンハイマ・ルヴァ・アミラガ
オボロホ
旅で出会う人々
アナピヤ
魔杖剣:請願者ヤンダル(ガユスから貰った魔杖短剣)
4巻「くちづけには長く、愛には短すぎて」より登場。とある旅一座に拾われ、その一座が咒式士強盗に襲われた時にガユスとギギナに救助された記憶喪失の少女。すさまじいまでの咒力を持つ。千三百年以上生きた鋼竜ムブロフスカに狙われ、また大量の咒式士を雇ってまで彼女を奪おうとする者も居り、正体が疑問視される。誰かを気遣い、愛されたい欲求が強い少女。
実は竜と人間のハーフで、精神支配咒式士製造計画の唯一の成功体である。彼女はその研究所にて他の実験体の少女達とともに繰り返し性的虐待や解剖実験などの道具にされており、ただ一人生き延びて意図して精神支配咒式を使えるようになった。記憶が戻るまでは無意識に発動していた場面もみられる。
国家の最重要人物とその周辺
モルディーン・オージェス・ギュネイ
ゼノビア・イルム・ジェスカ
ヘロデル
レメディウス・レヴィ・ラズエル
声 - 杉田智和 / 杉山紀彰
咒式総合商社ラズエルの御曹司で、チェルス将棋に関しては最年少大陸王者となるほどの腕前。年齢はガユスよりも少し年上。
咒式結界を張りながら六つの咒式の並行展開が出来るなど、類稀な才能を持つ数法系咒式士でもある。モルディーンとも一度チェルスで勝負して見事に勝利している。あらゆる事柄をすべて記憶する天才。若くしてモルディーン枢機卿の十二翼将に直接誘われるほどの逸材だったが、唯一の肉親(後見人)である叔母カルプルニア(声 - 定岡小百合 / -)の意向とラズエルへの義務感のために断っている。その後は、ラズエルの兵器開発主任として魔杖剣「平和の担い手バロレック」などの開発に携わっていたようだ。魔杖剣に関していくつもの特許を取得しており、物腰も穏やかで正義感が強い好青年だった。ラズエルが砂漠の国の独裁者ドーチェッタに武器を売っていたために恨みを買い、反政府組織「曙光の戦線」に誘拐されてしまう。
ドーチェッタ
声 - 松本大
砂漠の国ウルムンの独裁者。
元は高位の数法系咒式士であり、民衆によって選挙で選ばれたがその後豹変して独裁者になった(モルディーン談)。軍の武力を背景に圧政を敷き、自らに逆らう者には容赦しない。国政に関しては彼なりに思うところがあるが、その政策は血も涙も無い等級社会であり、性格は冷酷非情で残忍なサディストなため自国の市民はおろか遠い外国の人間にさえ「最悪の独裁者」と呼ばれる。ウルムンの反政府組織「曙光の鉄槌」が起こした咒式爆弾アヴァ・ドーンを使用したテロのターゲットとなり、暗殺される。
モルディーン十二翼将
サナダ・オキツグ
ヨーカーン
声 - 田村睦心 / -
モルディーン十二翼将第二席「大賢者」。虹色の瞳を持つ。見た目はかなり若く中性的で、外見から年齢や性別を割り出すことは不可能。作品の中で、数千年前から生きていたような描写が見られる。大陸第二位の咒式士で、魔杖剣なしで咒式を展開する異常な能力を保有している。全系統の咒式を完全に会得し、さらには超定理咒式まで会得している人物。自分の回りには八つの宝珠が浮遊しており、それぞれに強力な"異貌のものども"が封印されているらしい。唯一モルディーンを呼び捨てにし、気まぐれで主を殺そうとするなど翼将としての忠誠心は無いに等しく、他の十二翼将との折り合いは非常に悪い。性格はやや皮肉屋で、飄々としている。オキツグ、バロメロオ、クロプフェルの3人のみが抑える事ができ、オキツグには首を落とされた事もあるらしい。クロプフェルと交代でモルディーンの防御結界を担当している。
バロメロオ・ラヴァ・レコンハイム
クロプフェル・セイン・デズデモイ
カヴィラ・アレイド
シザリオス・ヤギン
モルディーン十二翼将第七席「英雄」。ランドック人の巨漢。破壊に特化した戦略兵器。身長は289センチメルトルとかなり巨大。ラペトデス七都市同盟出身だが龍皇国に仕える。本職は大学教授にして博士号も持っている。「ドレイドンの惨劇」の生き残りである英雄。超正義漢(翼将曰く、「異常な正義漢」。どのように言葉がかかっているかは本人だけが知らない)で細かいことは考えず、豪快を絵に描いたような性格。語尾に必ず「!」をつける。戦闘時には赤い甲冑を纏い「宇宙の絶対正義の代行者にして狂信的正義の化身シザリオン」になる(決めポーズも存在する)。咒式の原理を一切知らず、「正義の味方はやたらめったら強い」という思いこみのもと、無意識に膨大な生体強化咒式や、高位重力咒式を恒常的に発動させている。
ウフクス・ジゼロット
イェスパー・リヴェ・ラキ
声 - 星野貴紀 / 大川透
魔杖剣:九頭竜牙剣(本人の用途にあわせて、9つ宝珠がついている)、九頭竜爪剣(魔杖短剣、やはり九つ宝珠がついている)
モルディーン十二翼将第九席。「皆殺しのラキ家」当主の侯爵。黒髪と眼帯が特徴。無骨で実直な性格だが、それが過ぎるのも欠点で、モルディーン関連のことで取り乱すと壊れてしまうという妙な一面を持つ。恋愛もそれなりにしているが、二つのことを同時に考えられないという性格から、全てがモルディーン優先となってしまい結局破局。勇猛果敢で、モルディーンへと絶対の忠誠を誓い、命を投げ捨てることすら厭わない。父親のイェルドレドは元十二翼将だが、裏切りを企てた後自決している。主に化学鋼成系の咒式で魔杖剣を変形させて戦う機剣士。
ベルドリト・リヴェ・ラキ
ジェノン・カル・ダリウス
キュラソー・オプト・コウガ
声 - 南條愛乃 / 小林沙苗
魔杖剣:夜鴉(黒い刀身の魔杖刀)、魔杖叉
モルディーン十二翼将第十二席。黒髪を短く切った東国の女性。忍びの集団「コウガ」の党首にして忍群を独自の部下として持つ。故国から追い出された時にモルディーンに拾われ、現在は諜報屋と秘書官を務めている。一巻時での実力はギギナといい勝負(本人曰く、平地での純粋な剣技の競い合いでは一歩劣る)で化学系の咒式士としてもかなりの実力者であったが、Dances with the Dragons4巻時には、単身古き巨人を撃破するまでになっており、ヨーカーンに「他の翼将と同じくらいおもしろくなった」と評された。モルディーンの秘書的な立場にもあるが、翼将きっての常識人のためいつも苦労を強いられている可哀想な人。自分が畑で育てた野菜の漬物をモルディーンに褒められるとつい胸を張ってしまったり、あまりない胸を気にしているそぶりを見せたりと、かわいらしい一面もある。コウガ忍者としての名前は「久蔵」。
竜
ニドヴォルク
イムクアイン
曙光の鉄槌
二巻に登場。前身は「曙光の戦線」
ズオ・ルー
声 - 石田彰
魔杖剣:名称不明(鈍色の魔杖剣)
ウルムンの革命組織「曙光の鉄槌」の党首代理、緑の瞳と傷だらけの肉体を持つ老将。通称「砂礫の人喰い竜」、到達者級の咒力を持ち、異次元の生命体「禍つ式」を操る。ズオ・ルー本人も人体のアミノ酸を変性させて一度に大量の人間を皆殺しにするスイー・トリーの咒式を操り、かなりの戦闘能力を持つ。名前の由来はウルムンの伝説にある革命の竜、ズオ・ルーに因む。
正体はラズエル社に所属していた咒式博士レメディウス・レヴィ・ラズエル。「曙光の戦線」に拘束されるが、そこで自身が設計した魔杖剣「平穏の担い手バロレック」が民間人への虐殺に使われている場面を見てショックを受け、「曙光の戦線」に協力することを決意する。やがてその才能を生かし「曙光の戦線」を導くがある日軍に捕縛され、ウルムンの独裁者・ドーチェッタにより組織は崩され、自身もひどい拷問を受け、恋人のナリシアはレイプされて処女を失った。その後ナリシアと捕縛された仲間と一緒に荒れ果てた土地に放逐され仲間が次々と息絶える中、遂に限界を迎えるが、ナリシアと死別した際、彼女の遺志を継ぐため彼女の肉を食して生き延びた。
そのためか自らの魔杖剣に内なるナリシアと名づけている。一度見たもの、聞いたもの、その時の空気までも鮮明に記憶するという才能を持つが、そのために休みなく過去の悲劇の記憶に苛まれている。ドーチェッタ暗殺後もウルムンの為に戦い続けるが、クエロに暗殺される。
禍つ式
ヤナン・ガラン
アムプーラ
アナピヤを狙う咒式士達
四、五巻に登場。クエロに「やっかいな連中」といわれるほどの癖者揃い。
ユラヴィカ・イシュドル・タルク・エルレイン・ゾソ
チェデック
アインフュンフ
メルツァール
バモーゾ
依頼主
声だけで登場、咒式士達を操る謎の男。禁断の「小天使」計画の復活を目指し、その完成品であるアナピヤを狙っている(また彼の計画には「大賢者」と呼ばれる高名な咒式士が協力している)。ただ、「争いの無い愛のある世界」を作ることのみを目的としている。現実を忌避し、自分が犠牲にした他人の苦しみを想像しない冷酷さの持ち主。
かつてはベギンレイムという処刑された咒式士だったが、アナピヤの養父アズルピを始めとした「人形」を操っていた。ギルフォイルという中継体を駆使し、計画を実行する。ギルフォイルの身体は六人目の咒式士であるクエロに処刑されるが、脳は生き延びて海中に沈んだまま生き延びる。そのままアナピヤの脳組織から遂に自分だけの楽園を作り上げるが、自分の選んだ「愛」が実は永遠の孤独でしかないことに気付き、クエロに脱出手段を破壊され、絶望の地獄に堕ちていく。
黒社会の者達
デュピュイ・ミワ・ブランネル
その他、ガユスとギギナと戦うことになる咒式士達
ユーゴック・ナザ・ラスム
イエッガ
メーデン・マヘッソ
キクチ・サダノリ
ソリダリ
マズロー・ブレトン・ゴッスム
設定
咒式
本作は咒式と呼ばれる通常のファンタジーともSFとも異なる独特の設定に基づいて書かれている。
「咒力」と呼ばれる力を扱う咒式士達が組成式を書き出し、人工的にプランク密度を作り出して基本物理定数を変異させる。それによって生み出されるのは全て実在する化学現象である。咒式は主に、化学系咒式(化学物質や金属を生む)、生体系咒式(生物に関係する物質や器官、もしくは生物自体を生む)、電磁系咒式(電気やレーザーを生む)、重力系咒式(重力場を生み出す)、数法系咒式(確率を変化させ、さまざまな現象を起こす)の5系統に分けられる。
扱うには生来的な才能と物理学の素養が必要とされる。本作の世界では咒式技術が広く浸透しており、軍事以外にも医学、産業、算術と幅広い分野で応用されている。
咒式は「階位」と呼ばれる単位でランク分けされており、最高階位である第七階位の咒式は特殊な高位咒弾と使用者の脳を焼くような負荷を与えて発動される。しかし極一部の高位咒式士や、竜や禍つ式のような"異貌のものども"のように、第七階位を楽々と操る者も存在する。
咒式の名前は主にレメゲトンの悪魔から取られている。
魔杖剣
魔杖剣(まじょうけん)は、咒式を戦闘や破壊作業等で使用するために必要な兵器。銃器に似た構造の機関部と刀身を持つ。
咒式の精密な制御を司る演算装置である法珠を備えている。咒式を発動させるために必要な重物質が詰め込まれた咒弾(じゅだん)を装填し、組成式を書き出して引き金を引くことで咒式士は咒式を発動させる。これによって咒式は近距離戦闘でも使用できる程に高速かつ正確・精密なものとなる。
咒式を使用する場合、通常の咒式士が発動するには魔杖剣と咒弾の二つが必須となるが、"異貌のものども"や特殊な才能の持ち主などは、魔杖剣無しで強力な咒式を発動することも可能である。
剣以外にも、槍や短剣、狙撃用の弓といった形状のものもある。
咒式士
咒式を扱う者を「咒式士」(じゅしきし)という。作品世界中において生活する人々の半数はなんらかの咒式士であるとされる。「龍理使い」(ろんりつかい)という蔑称で呼ばれることもある。
咒式士には階級があり、この世界ではそれを階梯と呼ぶ。一 - 十三まで存在し、一般には九階梯以上が高位咒式士として扱われる。特に十三階梯でも上位の到達者は、竜や大禍つ式をも上回る力を持ち得るとされる。
また、咒式士の中でも戦闘を担当する者は「攻性咒式士」(こうせいじゅしきし)と呼ばれ、直接敵と近接戦闘を行う前衛咒式士と、攻撃用咒式を使って前衛を援護する後衛咒式士の二つに分けられる。また、高位咒式士の中には遠近両方の戦いに長けた咒式士も存在する。
異貌のものども
人間以外の、人間に仇なす生物の呼称。猛獣と最も違う点は、その身に咒式を宿していることである。後述する竜、禍つ式、“古き巨人”を筆頭に、人狼や人虎などがこれに分類される。
竜
太古より地上の覇者と称される、最凶の能力と誇り高き魂を持つ種族。人間をはるかに超える知性を持ち、人語を解することの出来る知性を持つ竜と、飛竜などに代表される高位竜に使役される獣の二種類に大きく分けられる。現在はギ・ナランハの統べる賢龍派(ヴァイゼン)と人間の間でティエンルン条約が結ばれ、不可侵の緩衝区の線引きをし、世界に共存している。
汎ドラッケン測定法により、その体長によって年齢をおおよそ特定することが出来る。竜は星霜を重ねるごとにその咒力と肉体を強化していき、1000年を生きた竜は長命竜(アルター)と呼ばれる。人間に対しては絶大な恐怖の象徴として描かれるが、人間の汚泥のような悪意に対して敗北することもある。人間の姿へ化身することも出来るが、竜族はこの能力をあまりよしとはしていない。強力な咒式干渉結界、恒常発動している超再生咒式、高位咒式に、種族によって様々な死の息吹と呼ばれる凶悪な能力を保有している。また、万年を超えた竜は龍と称され、この世の始まりから世界を見てきた、神に等しい力を持つと伝えられている。
しかし現時点では龍は六頭しか存在していないと言われ、現時点で名前が判明しているのは、ツェベルン龍皇国の皇都ギネクンコンの皇宮にてツェベルの神剣イシカに封じられている黄金龍ガ・フーイ、竜の大部分を占める賢龍派の長白銀龍ギ・ナランハ、この世すべての天候を統べると言われる空の覇者天龍グ・ルケシュ、名を口にするだけで不幸が訪れるという災龍ゲ・ヅァイターンとその子孫である黒竜派首領黒緇龍ゲ・ウヌラクノギア、そして名も無き龍の六頭。
禍つ式
太古より悪魔や邪神と呼ばれたものの総称。熱的崩壊に瀕する何処かの世界より奇跡的な確率で干渉してくる。
人間界を滅ぼし新たな地にせんとする混沌派(ケイオス)、人間界を高度な能力により完全統治せんとする秩序派(オルドネン)、そのどちらにも属さない無派に分けられる。膨大な情報量を持つ高次元の生命体であり、三次元である人間の世界に顕現するには特定の物体を媒介にし、身体の情報を作り変えて降臨せねばならない。その性質から、彼ら自体が咒式であるのではという説も出され、彼らを禍々しい咒式、略して禍つ式と称するようになった。
下級の禍つ式ですら異貌のものどもの中で上位の力を有するが、形式番号を持つ大禍つ式(アイオーン)と呼ばれる上位禍つ式は、長命竜にすら匹敵する咒力を持つと言われている。人間により、形式番号ごとに爵位で区別されている。大禍つ式は極めて高度な知性を持つが同時に情報体のため、規則に反する行動は取ることが出来ない。
エリダナ
ツェベルン龍皇国三十五州の一つ、エリウス自治郡の郡都。国土の東端で、ラペトデス七都市同盟との国境にあり、四十年程前から両国家の交流のため共同で委任統治されている。観光と貿易と外交の都市。
ルルガナ内海に面し、七つの運河と七十七の橋がある。街の中央を流れるオリエラル大河の西岸が皇国系住民、東岸を七都市同盟系住人と住み分けている。
異なる土地から咒式士が多く集う街であり、街を知り尽くした情報屋「ヴィネル」など、咒式士相手に商売する者もいる。しかし、咒式士の道の過酷さや職を得る困難さから挫折する者も多い。現市長はヒルベリオ氏。
ゴーゼス経済特別区では「ファルモア剣友会」「ノイエ党」「ロワール」「三旗会」などの犯罪組織が幅を利かせており、多くの咒式士が彼らの下僕となっている。その組織力と残虐性は到達者であるガユス達もおいそれと手を出せないほどである。また、治安も良くなく、作中では猟奇殺人事件も何度か発生している。
ガユスは「行き場のない奴らが最後に辿り着く街」と評している。
既刊一覧
小説
- 浅井ラボ(著) / 宮城(イラスト)、角川書店〈角川スニーカー文庫〉、全8巻
- 『されど罪人は竜と踊る』2003年1月30日発売、ISBN 4-04-428901-8
- 『されど罪人は竜と踊るII 灰よ、竜に告げよ』2003年5月30日発売、ISBN 4-04-428902-6
- 『されど罪人は竜と踊るIII 災厄の一日』2003年11月29日発売、ISBN 4-04-428903-4
- 『されど罪人は竜と踊るIV くちづけでは長く、愛には短すぎて』2003年12月27日発売、ISBN 4-04-428904-2
- 『されど罪人は竜と踊るV そして、楽園はあまりに永く』2004年7月31日発売、ISBN 4-04-428905-0
- 『されど罪人は竜と踊るVI 追憶の欠片』2004年12月28日発売、ISBN 4-04-428906-9
- 『されど罪人は竜と踊るVII まどろむように君と』2005年6月30日発売、ISBN 4-04-428907-7
- 『されど罪人は竜と踊る Assault』2006年4月28日発売、ISBN 4-04-428908-5
漫画
- 浅井ラボ(原作) / 宮城(キャラクター原案) / 灰原薬(作画) 『されど罪人は竜と踊る』 角川書店〈角川コミックス・エース〉、2006年6月22日発売、ISBN 4-04-713833-9
ドラマCD
キャスト
- ガユス・レヴィナ・ソレル(谷山紀章)
- ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ(松風雅也)
- ジヴーニャ・ロレッツォ(長沢美樹)
Sneaker CD Collection されど罪人は竜と踊る
- モルディーン・オージェス・ギュネイ(坂東尚樹)
- キュラソー・オプト・コウガ(小林沙苗)
- ベルドリト・リヴェ・ラキ(朴璐美)
- イェスパー・リヴェ・ラキ(大川透)
- ヘロデル(千葉進歩)
- ニドヴォルク(斎賀みつき)
Sneaker CD Special されど罪人は竜と踊る 禁じられた数字
- イーギー・ドリイエ(福山潤)
- ジャベイラ・ゴーフ・ザトクリフ(浅川悠)
- ツザン・ギュラル・デュガソン(山田美穂)
参考文献
- 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい!2006』宝島社、2005年12月10日。ISBN 4-7966-5012-1。
- 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい!2007』宝島社、2006年12月6日。ISBN 4-7966-5559-X。