パルムの樹
以下はWikipediaより引用
要約
『パルムの樹』(パルムのき)は、なかむらたかし原作・脚本・監督による日本のファンタジーアニメ映画。2002年3月16日より、有楽町スバル座ほか全国東宝洋画系にて公開。
第52回ベルリン国際映画祭正式出品作品、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002招待作品、第26回香港国際映画祭招待作品。
概要
本作は、『AKIRA』などの作画監督で知られるアニメーター・なかむらたかしが監督を担当したオリジナル長編アニメ映画である。
構想に7年、制作に3年半をかけて長編アニメ映画として完成した。当初はテレビシリーズ用として企画されたが、諸事情でタイトル変更を余儀なくされるなど、紆余曲折を経て劇場公開にこぎつけた。
異世界を舞台に、人間になりたいと願うロボット人形の少年の揺れ動く感情を丁寧に描いた長編ファンタジーで、彼と他のキャラクター達によるドラマが重層的に展開される。一見するとキャラクターや美術設定などからファミリー向けの冒険ファンタジーのエンターテインメント作品のように思われるが、実際は異なる。なかむらが「最初はアクションあり冒険ありの楽しいエンターテインメントを作るつもりで始めても、きれいにまとまっているものよりもたとえ荒削りでも中心に何か本質を掴むようなものがある作品を選んでしまう」と語っているように、本作の描写に甘さは一切なく、彼は「生きることの辛さ」「満たされない想い」「エゴ」といったものと正面から向き合って物語を紡いでいる。しかし、単純に悲惨な話でもなければ徹底したペシミズムで作られているわけでもない。むしろ悲惨なだけの悲劇の物語であったなら、逆に観客にも容易に受け入れられたであろうが、それほど単純な作品ではない。「観客が作品世界に行って、登場人物と何かを解決することによって、現実世界で立ち直ることができる。そういったものとして、ファンタジーをとらえたい」と語っているように、なかむらはファンタジー作品を病気になって休む体験に近いものとして考えて「ファンタジーこそが現実と向き合っていくための精神的な支えになる」という発想で作っている。
エンターテインメントに収まらず、深いテーマを追求した内容は、大きく評価が分かれた。個性あるキャラクターデザインや作画、背景美術のレベルの高さにより、一部ファンの間では根強い支持があったものの、公開当初はさほど話題にならなかった。しかし、公開から2年半後の2004年11月に米・サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の注目の映像を取り上げる企画『The Seventh Art』で上映されたり、2005年1月14日からテキサス州ヒューストンのライス・シネマでのプレミア公開を皮切りにボストン、サンフランシスコ、ナッシュビル、ハートフォード、ポートランド、オースティンといった都市部を中心とした限定公開が行なわれるなど、作品そのものの評価は高い。
あらすじ
不思議な生物と街が存在する地上世界アルカナ。植物学者フォーが心を病んだ妻シアンを慰めるために作った木製の機械人形パルムは、母のように可愛がってくれたシアンの死後、心を閉ざしてしまった。
ある日、二人の住む小屋に女戦士コーラムが現れ、天界トートから持ち帰った、万物の源となるトートの卵を地底世界タマスに届けるように言って姿を消した。しかし、卵を託されたフォーは彼女を追ってきたモヒ族に襲われ、深い傷を負ってしまう。最後の力を振り絞ってパルムの腹部に卵を隠し、コーラムが卵とともにくれたクロスカーラをパルムの体内に注入したフォーは、卵をタマスに届けるよう言い残して息絶える。目覚めたパルムは、地底世界・タマスへの旅に出る。その途中でパルムは、地底人の少年・シャタやその仲間たち、シアンの面影を持つ少女ポポらと出逢い、心を通わせる。そしてパルムは、タマスに行けば自分も人間になれることを知るが…。
登場人物
主要人物
パルム
声 - 平松晶子
本作の主人公。シアンの情緒を安定させるためにフォーが造り出した人形。クルップの樹から造られ、クルップの樹から採れる燃料油・カーラ油を原動力として動く。シアンに愛され、その想いを一身に受けて心が芽生え始めるが、彼女の死でその心を閉ざして機能を停止してしまう。それから数十年後、コーラムが現れた時から、彼女にシアンを重ねあわせて再び動きだす。フォーの頼みでコーラムから託された「卵」を地底世界タマスに届ける旅をする。ポポの母から人形であることを罵られた事などから、人間への憧れや劣等感を抱くようになる。地底世界タマスに行けば自分も人間になれるかもしれないと知ってからは、そのことに強い執着をみせるようになる。
ポポ
声 - 豊口めぐみ
雑貨商ダルマ屋の娘。自分の意思を主張はできないが、生き物を愛する優しい心の持ち主。気性の激しい母親から虐待を受けて心を閉ざしてしまい、唯一、亡き父から教わったリュートを奏でる時にだけ心の安らぎを感じている。それでも自分を育ててくれた母のことを記憶の中の父とともに愛している。彼女にシアンの面影を重ねたパルムに詰め寄られて恐怖を覚え、拒絶するが、後に和解して共に旅に出る。次第に人間になることに執着しはじめたパルムとすれ違うようになるが、最終的にはパルムの思いを認め、共にソーマの元を目指す。
小説版では実質的に主人公の役割。
シャタ
声 - 阪口大助
フラミンゴの街で窃盗団を率いている地底人ソル族の少年。子供を売る大人を嫌っており、人買いに売られた子供を助ける指示を仲間にしている。実はコーラムの息子だが母を知らずに育った。幼い頃に自分を置き去りにした母親を恨む一方で、恋しくも思っている。パルムがソル族の紋章の付いた剣を持っていたことと、危機に陥ったパルムを守るコーラムの幻影を見たことから、共に旅に出る事を決意する。
小説版で浮浪児であったことが描写されており、当時は地底人というだけでフラミンゴの町の住人から酷い虐めを受けていた。ソル族の戦士の証のブローチを持っていたが、固いパンと交換してしまい心に深く悲しみが現れて号泣していた。父親に関しては知られておらず、ロアルトとどうやって出会ったかは不明である。コーラムがパルムに卵を託したことに嫉妬心を抱いていたが、ホタから卵をソーマに与えると危険であることを教えてられ急いでパルムを追うが、自分を敵視したパルムに短剣で腕に傷をつけられてしまう等理不尽に巻き込まれることもしばしばある。
パルムの仲間と関係者
フォー
シアン
プー
声 - かないみか
アルカナに住む獣人カポテ族の男の子で、ムーの双子の兄。少年窃盗団のメンバー。孤児となってさまよっている時に人買いジャモジにさらわれてフラミンゴの街に来たが、シャタ達に助けられて行動を共にするようになる。臆病で少しばかりずるいところがあるが、パルムやポポのことを気遣う優しい一面もある。
ムー
バロン
ガラ(通称:ダルマ屋)
声 - 横尾まり
ポポの母親。小さな交易船で雑貨商を商う。若かりし頃、有名な踊り子だったという過去を持つ。採掘工の男と結婚してポポを産むが平凡な人生に耐えられず、夫につらく当たっていた。火事で夫が亡くなった後は弟とダルマ屋を始めるが、華やかな想い出と現在の人生とのギャップに不満を持ち、その原因を今度は娘のポポが生まれたことに転嫁して彼女を虐待するようになる。しかし、心のどこかで、それが娘のせいだけでないことに気付き始めている。パルムを人形だからと馬鹿にしたが、ポポに反発される。パルムに誘われたポポが旅立つことに反対していたが、最後は父親の写真を与えて旅に出ることを許した。
地底人ソル族
コーラム
ガンテル
ソル族
ソル族
地底人モヒ族
フラミンゴの街の住人
窃盗団の子供達
ロアルト
声 - 山口勝平
窃盗団の一人で、シャタに次ぐ存在。ムードメーカーだが血の気が多い。シャタを尊敬しており、一番の理解者でもある。人買いから子供を助けようとするシャタの考えには必ずしも賛同していない。シャタがフラミンゴを去ることを知り、ポポを人質に取りパルムの油を要求する。最終的に必ず帰るとシャタに言われ、涙ながら見送った。
小説版ではシャタが母親のコーラムのことを探っているという事情を知っており、シャタが旅立つ前にお金を渡していた。映画版より少し大人びた感じである。
テジナ
ボサボサ
カイゾク
ゲリラたち
世界観
本作の世界は、地表の広大な大地・アルカナとその地下に広がる地下世界のタマス、そして星を覆う天蓋の外にある天界トートの3つに分けられている。アルカナの地表と天蓋は、ロロ・キキ・チチ・ココ・ルル・トトと名付けられた6本の巨大な石柱で支えられている。
地上世界アルカナ
地底世界タマス
天界トート
トリュフ
フラミンゴの街
ドラフ川流域
トロイの谷
ソーマの泉
用語
クルップの樹
クロスカーラ
ソーマ
トートの卵
ラーラ
ソル族
モヒ族
スタッフ
- プロデューサー - 真木太郎
- 原作・脚本・監督・キャラクター原案 - なかむらたかし
- 美術監督 - 小関睦夫
- キャラクターデザイン - 井上俊之
- 作画監督 - 佐々木守
- 作画監督補佐 - 田中孝弘 桝田浩史 安彦英二 海谷敏久 遠藤正明
- 演出 - 古川順康
- 色彩設計 - 西香代子
- 動画検査 - 大谷久美子
- 撮影監督 - 安津畑隆
- 撮影 - アズハタプロダクション
- 編集 - 掛須秀一 ジェイ・フィルム
- 音響監督 - 三間雅文
- 音楽 - ハラダタカシ
- 音楽プロデューサー - 佐々木史朗
- 音楽ディレクター - 福田正夫
- アニメーションプロデューサー - 山口克巳
- 録音 - 安藤邦男
- 効果 - 倉橋静男
- 特殊効果 - 谷口久美子 鈴木さち 榊原豊彦 糸川敬子
- 3D CGIアニメーション - 大野克尚 小林武人 相馬揚介 江村豊秋
- デジタルVFX - 吉岡宏夫 唐戸光博 藤田賢治
- 音響制作 - テクノサウンド
- 制作チーフ - 張田輝廣
- 製作担当 - 佐藤尚樹 大澤信博 神部宗之 松尾光広
- アニメーション制作 - パルムスタジオ
- 制作 - ジェンコ
- 製作 - 「パルムの樹」製作委員会(ジェンコ、角川書店、WOWOW、IMAGICA、日本出版販売、電通、東宝)
楽曲
ミニアルバム『劇場用アニメーション「パルムの樹」ミニ・サウンドトラック PALME songs』収録。
エンディングテーマ
- 新居昭乃『空の青さ』(作詞・作曲:新居昭乃、編曲:保刈久明)
挿入歌
- 新居昭乃 with ハラダタカシ『シアンの歌』(作詞:なかむらたかし、作曲・編曲:ハラダタカシ)
- ハラダ タカシ『Java d’Alma』(作詞・作曲・編曲:ハラダタカシ)
映像作品
DVD
- 『パルムの樹』(2002年12月21日発売、東宝)規格品番 TDV-2700D
メディアミックス
小説
みづきゆうによるノベライズ作品が出版された。アニメ映画の物語をポポの視点で描いたサイドストーリーとなっている。
- なかむらたかし(原作)、みづきゆう(著)『パルムの樹』(富士見書房、2002年5月1日発売)ISBN 978-4-82-917495-1
漫画
なるもみずほによるコミカライズ作品が出版された。アニメ映画のラストから数年後の未来を描いたオリジナルストーリーとなっている。
- なかむらたかし(原作)、なるもみずほ(漫画)『パルムの樹』(角川書店あすかコミックスDX、2002年3月1日発売)ISBN 978-4-048-53495-6