メトロ2033
以下はWikipediaより引用
要約
『メトロ2033』(露: Метро 2033、英: Metro 2033)は、ロシアの作家ドミトリー・グルホフスキーの小説、およびそれを原作とするコンピュータゲームである。
ゲーム版はウクライナのゲーム開発会社4Aゲームズ(4A Games)が開発し、日本語版は2010年にスパイク(Xbox 360版)およびズー(PC版、販売元はイーフロンティア)から発売された。原作の日本語訳もゲーム版発売後に小学館から上下2巻で発売された。
概要
メトロ2033は2002年にロシアの作家、ドミトリー・グルホフスキーがインターネット上で発表した『終末もの』のSF小説。最終戦争後のモスクワの地下世界を舞台に、ミュータントの襲撃に苦しむ地下鉄駅で暮らす青年が遠く離れた地下都市に助けを求める旅に出る物語。
人生の意義を見いだせない青年が危険な旅に出て、さまざまな主義・思想・理念を持つ人々と出会う中で人生の意義を見いだして行く過程を主題としている。また、文明崩壊後の地下世界の暮らしや社会の仕組み、世界が滅んだあとでも争いを続ける人間達のありさま、オカルトと科学が入り交じったメトロ内外の不可思議な怪現象や生態系、そして何が何でも生き続けようとする人々の描写などが非常に細やかに描かれている点も特徴である。
当初は主人公が使命を達成出来ずに死ぬ悲劇として書かれた。数年後、主人公が生存する結末に改訂されたものが公開され、その後出版社から声がかかり2005年に書籍として出版される。
書籍版はロシア国内で50万部以上を売り上げ、20カ国で翻訳版が発行されている。2007年にはヨーロッパのサイエンス・フィクションの協議会Eurocon(英語版)にて奨励賞を受賞した。
あらすじ
2033年のモスクワが舞台である。数十年前に勃発した最終戦争により、地上は汚染されヒトが住めなくなった。人々は、地下鉄(メトロ)の駅で細々と生き延びていた。だが、人々を地下に閉じ込めていた理由は高放射線被害だけではなく、突然変異で出現した外敵の存在であった。生き延びた人々にとってメトロは生活の場であると共に、存亡を賭した最後の社会基盤でもあった。
モスクワ郊外に近い「博覧会駅」にアルチョムという青年が住んでいた。博覧会駅は新種のミュータントであるチョルヌィの度重なる襲撃によって存亡の危機に瀕していた。アルチョムは故郷の「博覧会駅」を救うため、メトロの中心部にある地下都市「ポリス」へ助けを求める危険な旅に出る事になる。
用語・設定
最終戦争
モスクワ地下鉄
ただし、無法地帯や無人駅なども多い。同盟を結んでいる駅も存在し、複数の駅が一つの国家の様になっている場合もある。また、同じ駅でも路線が違う場合(乗換駅)はそれぞれ別の勢力が支配している事がある。
ミュータント
2033年の地上世界を支配する存在であり、汚染された大気と並んで人類が地上で暮らせない要因の一つである。
ストーカー(スタルカー)
自由商人
また、メトロ内に存在するさまざまな噂話を流布するのも彼等である。
怪現象(アノマリー)
ゲーム版ではアノマリーと呼ばれている。こちらでは強い電気を帯びた光の球やトンネルに引き込まれた死者の影(幽霊に似ている)などの視覚的に分かり易いものが主である。
ゲーム版のみの設定
レンジャー
世界
海外については情報が錯綜しており、不明な点は多い。
ゲーム版では「エクソダス」で実はG7諸国やアフリカ・オセアニア・欧州諸国・南米の各大陸で都市が存続していることが明かされているほか、放射能汚染の影響のない地域が存在している。欧州はスペイン以外に都市が残っており、日本は東北地方に都市が残っている。しかし初期の作品ではポリャンカ駅の2人の人物は「アメリカはもう存在しない」と話している。
海外版の『アンダーグラウンド2033ユニバース』では全世界の総人口は約1億人で、西ヨーロッパを中心に新たなる氷河期が始まっている。サンクトペテルブルク、ムルマンスク、キエフ、ロストフ・ナ・ミニゲ、サマラ、ノヴォシビルスク、エカテリンブルク、グラスゴー、ロンドン、マンチェスター、モロッコ、南極、ポリナーニゾリ、ニジニーノヴゴロド、モスクワ郊外の一部(ノボシビルスク・ソチ)、クラスノダール、ハリコフ、ローマ、ヴェネツィア、ボリソフ、ミンスク、カリーニングラード、ノヴァヤゼムリャ、ムルマンスク州、ウラジオストク、スヴェルドロフスク州、カザフスタン、ミラノ、フェロー諸島、スヴァールバル諸島、ウクライナから物理的に分断されたクリミア自治共和国などにも人は生存している。サハラ砂漠がジャングル化し、ヴェネツィアが砂漠化している。日本列島は、一部を除きおそらく沈没していることが示唆されている。
登場人物
声優の表記は日本語ゲーム版のものである。
原作・ゲーム版共通
アルチョム
日本語音声:てらそままさき
本編の主人公。地上で生まれるものの、幼い頃に地下暮らしを送る事となった読書が好きな20歳過ぎの青年。普段は彼が暮らす「博覧会駅」の見張り番と茶工場の仕事を交互にこなしながら暮らしている。
これまでの人生のほとんどを博覧会駅とその周辺のみで過ごして来たため世間知らずであり、それゆえの臆病さや潔癖性な言動が少なからず見受けられる一方で、危険な冒険に憧れる側面もある。
恐るべきミュータント「チョルヌィ」の襲撃を食い止めるために単身で行動を起こした「ハンター」の頼みを受け、地下都市「ポリス」の仲間にことづてをするための旅に出る事になる。
原作ではそれなりにしゃべるが、ゲーム版では幕間の独白を除き、ほぼしゃべらない。また、ゲーム版ではレンジャーの一員である。
サーシャ
ハンター
日本語音声:乃村健次
サーシャ(アレクセイ)の友人。頭を剃り上げ、あごひげを生やした長身の男。「ハンター」とは役職や職業のことで本名は不明。「俺が戻らなかったときは、此処で起きている出来事をポリスのメリニク(ミラー)にすべて伝えてくれ」とアルチョムに言い残し、チョルヌィ(ダークワン)が侵入してくる北のトンネルをたった一人で爆破しに行くが、二度と戻らなかった。
ブルボン
日本語音声:ふくまつ進紗
アルチョムがリジスカヤ駅で出会う自由商人の中年男性。先に進む為に一時的に協力する事となる。原作においては言動がいちいち不愉快でアルチョムは強い嫌悪感を示していた。
一方ゲーム版においては随所で外の世界に不慣れなアルチョムを気遣っていた。
ハン
日本語音声:高瀬右光
突如アルチョムの前に現れた霊感の持ち主で神秘主義者。チンギス・ハンの生まれ変わりであると自称する。ハンターの霊とおぼしき存在からアルチョムを助けて欲しいと懇願され、彼に力を貸す。
ゲーム版では「カーン」という名前で登場する。
メリニク
日本語音声:間宮康弘
普段はポリスに居る、ハンターの知り合いのストーカー。年齢は50歳程で本名は「メリニコフ」。ゲーム版では「ミラー」という名前の旧ソビエト連邦軍の軍人でありレンジャーチームのリーダー。チョルヌィ(ダークワン)が博覧会駅だけではなくメトロ全体の危機であると考え、彼個人の判断でアルチョムの援軍を買って出る。
ウリマン
日本語音声:奥田啓人
メリニクの部下のストーカーで物語の終盤アルチョムとともに行動する。アルチョムとさほど年齢は変わらないが、人生経験が豊富で心身ともにたくましい青年。
ゲーム版では「ウルマン」の名前でメリニク(ミラー)の部下のレンジャーとして中盤から登場する。原作と異なり、頻繁に軽口を叩くような性格に変更されている。
パーヴェル
ダニーラ
原作にのみ登場する人物
革命家達
マーク
登場する場所
※以下、主な場所のみ挙げる
博覧会駅
アルチョムやサーシャが暮らす駅であり、キノコを材料とする特別な茶の名産地。戦前の本が沢山あり、メトロの中で数少ない「文化」が生き残っている場所でもある。
北側のトンネルからチョルヌィが幾度と無く襲来しており、危機的な状況に陥っている。
リジスカヤ駅
平和通り駅
キタイ・ゴーロド駅
スラブ人が支配する6号線側(カルジスカヤ=リジスカヤ線)とコーカサス(おもにチェチェン人とアゼルバイジャン人)が支配する7号線側(タガンスカヤ=クラスノプレスネンスカヤ線)に二分されている。
プーシキンスカヤ駅・トヴェルスカヤ駅・チェーホフスカヤ駅
パヴェレツカヤ駅
ポリャンカ駅
ポリス
最も豊かで、治安もよく、強大な軍隊を持ち、そしてすぐ上にあるロシア国立図書館から持ち出した大量の書物によりもたらされる優れた文化が生き残り続ける駅。
ロシア国立図書館
クレムリン
ノーヴィ・アルバート通り
キエフスカヤ駅
勝利公園駅
D6・メトロ2号線
ゲーム版では"D6"が秘密のミサイル基地の名称となっている。
植物園駅
オスタンキノ・タワー
登場する勢力・団体
劇中に登場
ハンザ
アルチョムは劇中何度か環状線の駅に訪れるが、厳密には環状線から他の路線に繋がる「乗換駅」側が殆どで、ハンザ側の駅に入る機会は少ない。なお、ゲーム版では最後までハンザに入る事がない。
名前の由来はハンザ同盟から。公式の名称は別に存在するのだが「あまりに大げさ」なものだったらしく、次第にハンザの通称で呼ばれるようになった。
共産主義者
原作ではかつてハンザと戦争をしていた。ゲーム版では第四帝国と戦争中である。
第四帝国(ファシスト)
ポリスのカースト制
パラモンとクシャトリヤはかつて対立していた。現在もあまり仲は良くない。
人喰い族
また、彼等は「偉大なる大蛇」と呼ばれる独自の創造神をあがめており、彼等の領域には大蛇を模した壁画が描かれている。
噂話にのみ登場
この作品の世界は通信手段がほとんど無く、立ち入る事の出来ない場所が沢山存在するため、根も葉もない噂話が無数に存在する。そして、そのほとんどは最後まで真偽が明らかになる事が無い。
悪魔崇拝者
クリシュナ教
エメラルドの街
名前の由来は『オズの魔法使い』に登場する「エメラルドの都(Emerald City)」から(ただし、これはメトロ2033ユニバースにおける『共和国』ではないかという説もある)。
影の監視者(オブザーバー)
ゲーム版
2010年の3月にXbox 360およびPC(Windows)用のゲームとして発売された。
コール オブ デューティシリーズなどに代表される物語や演出をプレイヤーに体感させる事に重きを置いた、一人称視点のアクションシューティングゲーム(FPS)になっている。
他のFPSゲームと異なるのはHUD(画面表示)の描写であり、画面に極力テレビゲーム的な表示(主人公の体力や武器の弾薬数)を排除し、映画を体験させるような演出を目指している点である。物語ありきの小説が原作ということもあってか、2010年のアクションシューティングゲームとしては珍しくオンライン対戦や協力プレイを実装しておらず、一人用専用になっている。
原作の設定や描写の多くがゲーム版にも反映されており、「弾薬を通貨代わりにする」「地上が放射性物質で汚染しているため防護が必要」「手で回す自家発電機の付いた懐中電灯を使う」などの部分がゲームのシステムとして登場している。これらは、汚染された未来世界での生き残りをかけた戦いという「原作の内容を体感させる演出」としての面と、「色々な管理をしながら計画的に行動や戦闘をしていく楽しみ」というゲームの遊びとしての面の両立を実現するもので、他のゲームとの差別化にも貢献している。
また、舞い上がるホコリや光と影の演出や、生活感溢れる散らかったメトロの各所を高水準のグラフィックス(当時)で表現し、物語やシステムだけでなく美術面においても原作の世界を体験させる事に力を入れている。特にPC版はDirectX 11に対応しており、それが顕著である。
難易度は2010年の欧米のゲームとしては高めである。
日本語版は2010年の5月にスパイクからXbox 360版が、6月にズー/イーフロンティアからPC版が発売され、音声はオリジナルのロシア語、ロシア語訛りの英語、そして日本語吹き替えの3種類が収録されている。字幕は日本語と英語字幕が存在する。
ゲーム版におけるアルチョムの人物描写について
一人用のFPSでは、プレイヤーを物語の世界に没入させるための手法として主人公を無口にさせる事が多い。そのためか、原作では台詞の多いアルチョムもゲーム版においては無口である。とはいえ、やはり小説原作という事もあってか、ステージ間にあるロード時間には彼自身の複雑な心境の吐露や細かい状況の解説といった「文学的」な内容のナレーションを行う。
ゲームのアルチョムは義父アレックス(原作のサーシャ)の友人であるハンターを尊敬しているが、彼が偵察から生きて戻らなかったために生まれて初めて故郷から外へと出ることとなる。この旅立ちの件は義父には内緒であり、真実を言わずに故郷を後にしたことを案じたり、危険なメトロを通過することへの恐怖を語るなどの原作に準じた描写もある。そのため、「無口なFPSの主人公」としては人間らしさの描写が多い。
なおゲーム版では彼自身の事にあまり言及されておらず、箱のイラストなどでも素顔が明かされない(基本的にガスマスク姿)。ほんの一部のムービーパートではガスマスク越しの彼の姿が写し出されるが、痩せた黒髪の青年とまでしか表現できない。
登場する敵
野盗
共産主義者
ファシスト
ノサリス(Nosalis)
人間同様手足があるが、大抵4足歩行で突進してくる。腕力は強く、爪や牙も鋭い。肉体も強靭である程度の銃撃にも耐えるが、頭が弱点らしくそこを狙えば速やかに無力化できる。
ムササビのような羽を生やした進化型などの亜種がいくつか存在する。
ハウラー(Howler)
ラーカー(Lurker)
ライブラリアン(Librarian)
デーモン(Demon)
アメーバ(Amoeba)
ダークワン(Dark One)
最後にはダークワンの作り出した幻想的な精神世界の中に引き込まれる事になる。
装備品
ガスマスク
ガスマスクはフィルターにより機能しており、これは定期的に交換しなければやがて機能を失うこととなる。また、激しい運動などで息が荒れればマスクが曇ることもある。
ライターとクリップボード
ヘッドライト
ナイトビジョン
万能充電器
ナイフ
スローイング・ナイフ
リボルバー
バスタード・サブマシンガン
一発あたりの威力はリボルバーをかなり下回るため、敵によってはあまり有効でない場合もある。
AK74
トンネルガイド(取り扱い説明書)ではAK-47とあるがこれは誤記で、使用する弾薬が5.45㎜なのでAK-74である。
VSV
KALASH 2012
ダブルバレル・ショットガン
オートマチック・ショットガン
弾倉の構造上、一回の装填で6発全てを装填できない場合もある。
ヘビー・オートマチックショットガン
ティハール
ヘルシング
ボルトドライバー
ゲーム版のおおまかなあらすじ
※固有名詞はゲーム日本版の表記に準ずる。
プロローグ
第1章:旅の始まり
そんな中、野外活動を行うレンジャーである「ハンター」がエキシビジョンにやってきた。彼は状況を把握するため偵察に出るが、二度とアルチョムたちの前に戻らなかった。アルチョムは彼の伝言をポリス駅のミラーという人物に伝えるため、隣のリガ駅へ向かうキャラバンの護衛に加わり、これまで出ることが無かった故郷を後にした。
第2章:ブルボン
第3章:カーン
アーモリー駅に到着したアルチョムは、不審者と見なされ駅を支配する共産主義者たちに身柄を拘束される。だがここでカーンの友人アンドリューに救出される。此処から出てポリスへ行くには、共産主義陣営の新兵を乗せたトロッコに紛れてファシストとの戦場に行くしかないとの事である。アルチョムはアンドリューたちの支援を受け、共産主義とファシストとの最前線へ向かった。
第4章:戦乱
第5章:希望
第6章:D6
第7章:テレビ塔
原作とゲーム版の相違点
ゲーム版は改変がかなり多い。ここでは主だった物のみ挙げる。
- 登場人物がかなり減っている。
- 原作では「20歳過ぎ」と曖昧だったアルチョムの年齢がゲームでは「20歳」と明言されている。
- 最終戦争の起こった年が西暦2013年であると明言されている。
- 原作ではメトロ内にミュータントはほとんど侵入していないが、ゲームでは大量に流入している。
- レンジャーはゲーム版のみの設定。原作では単に「見張り」、「警備員」などと表現されている。
- ブルボンが金銭トラブルを抱えている。彼と共に地上に出る機会がある。またハン(カーン)と知り合いである。彼に待ち受ける結末が異なる。
- ゲーム版は原作よりも地上に出る回数が多い。
- 原作では人間同士で殺し合いをする場面は非常に少ないが、ゲーム版では頻繁に殺し合いをする事になる。
- 原作ではAK47、AK74共に登場するが、ゲーム版ではAK74のみが登場する。
- ゲーム版のみ「戦前に製造され、金銭となる高品質な弾薬」と「戦後に製造され、金銭にならない低品質な弾薬(ただし交換所で高品質の弾薬と交換することは可能なので間接的には金銭になる)」の2種類が存在する。また、高品質な弾薬は銃器に装填して撃つことにより低品質な弾薬よりも高い威力を発揮するが、同時に金銭を撃ち出しているという事にもなるので、残弾管理には注意が必要である。
- ゲーム版においては、先述のバスタードマシンガンなどのような後退した技術により作られた手製の武器が多数登場する。
- 前述の通り、怪現象(ゲームではアノマリーと呼ばれる)がゲーム独自のものに変更されている。
- ゲーム版ではポリスにおけるカースト制度の表現が一切ない。
- キエフスカヤ駅および勝利公園駅での重大な出来事が省かれている。
- D6がミサイル基地の名称になっている。
- ゲーム版ではパーヴェルが死亡し、ダニーラは生き残る。
- 原作とおおむね同じ結末と、原作と全く違った結末の2つが用意されている。
日本語版
日本語字幕の他、日本語吹き替え音声も収録されている。
続編
ロシアでは本作の続編『メトロ2034』が2009年に発行され、6ヶ月で30万部を売り上げた。4A Gamesもゲーム版の続編『メトロ ラストライト』を製作、2013年5月に発売された(日本は同年8月1日)。また、 本作と『メトロ ラストライト』をPlayStation 4及びXbox One向けに高画質化したうえで1本にまとめた『メトロ リダックス』も開発されている。