ナポレオン -獅子の時代-
漫画:ナポレオン -獅子の時代-
作者:長谷川哲也,
出版社:少年画報社,
掲載誌:ヤングキングアワーズ,
レーベル:ヤングキングコミックス,
発表期間:2002年12月28日 - 2010年12月28日,
巻数:全15巻,
漫画:ナポレオン -覇道進撃-
作者:長谷川哲也,
出版社:少年画報社,
掲載誌:ヤングキングアワーズ,
レーベル:ヤングキングコミックス,
発表期間:2011年1月29日 -,
巻数:既刊24巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『ナポレオン -獅子の時代-』(ナポレオン ししのじだい)は、長谷川哲也による歴史漫画。その名の通り、ナポレオン・ボナパルトの生涯を扱ったものである。2003年から『ヤングキングアワーズ』(少年画報社)で連載されている。
概要
『ヤングキングアワーズ』2003年2月号から連載開始。当初はアウステルリッツの戦いから物語が始まったが、この戦いの終わりと同時に物語はナポレオンの誕生直前にまで遡り、以後はブリュメールのクーデターに至るまでのナポレオンの生涯に沿った物語を描いた。話の都合上、フランス革命の展開もじっくりと描き込まれている。
2011年連載分、単行本16冊目から、『ナポレオン -覇道進撃-』(ナポレオン はどうしんげき)と題名を改め、執政政府および第一帝政と大陸軍(グランダルメ)の戦いの軌跡を扱った物語を描いている。これについてもこの項で扱う。
作者は本作以前にも『コミックトムプラス』でナポレオンの生涯を扱った『青年ナポレオン』を描いているが、本作では作風が一変し、劇画調の異様に濃いタッチの画風になっている(作者は『北斗の拳』の作者・原哲夫のアシスタント経験者でもある)。そのため、個性の強いキャラクター設定(とはいっても、登場人物のほとんどが実在した人物である)、漫画全体を漂う“男臭い”空気、史実とかけ離れた演出や印象深いセリフなど、他の漫画には見られない独特の空気を醸し出している。
2011年以降、『アワーズ』の新年最初の発行号(3月号)巻頭カラーを務めているが、表紙に他漫画の美少女キャラを据えた上でその1ページ目にはグロテスクなシーンを描くという、一種の「お遊び」が展開されている。
また、同じくナポレオンを扱った漫画として池田理代子の『栄光のナポレオン-エロイカ』(『ベルサイユのばら』続編)があるが、作者ホームページによれば、長谷川は『獅子の時代』を書く上でこれを多少参考にしているとのことである(人物の造形やストーリーの一部に、史実ではなく池田の創作によっていると思われる部分があり、多少の影響が見られる)。
当作品を『アワーズ』に推薦したのは平野耕太であり、長谷川いわく「平野さんは恩人」とのこと。
登場人物
それぞれ作中のフィクションとしての人物解説であるため、一部史実にそぐわないものもある。詳しくは各人物の項を参照されたい。声優は「CRナポレオン -獅子の時代-」のもの。
主人公
ナポレオン・ボナパルト
声 - 杉田智和
主人公。出世志向が強く、軍人としての才にも長けている。自身がコルシカ島出身であることにこだわりを持ち、フランスへの復讐を目指していたが、パオリとの決別後は自身がコルシカ人であることを捨てる。
物語がフランス革命期のパリでの政争にスポットが当てられていたころは、主人公であるにもかかわらず、ほとんど出番がなかった。トゥーロン攻囲戦で功績を上げるが、その後は軍籍を剥奪され、一時本屋で働いていた。その後、ヴァンデミエールの反乱鎮圧に起用され、出世街道に復帰する。その直後、総裁政府の五総裁の1人ラザール・カルノーの推薦によりイタリア方面軍司令官に任命され、オーストリアをあと一歩のところまで追い込んで赫々たる戦果を遂げる。
国民から絶大な支持を得るも、その影響力を恐れたバラスら総裁政府から遠ざけられるようになる。局面打開のために子供のころからの密かな野望であった、アレクサンダー大王のようなエジプトやトルコ、インドまでの大遠征を決行。しかしフランス艦隊を失い、アフリカで孤立してしまう。多くの兵士と将校から反感を買いながらも、わずかな可能性を信じ、エジプト・シリアを攻略するも結果、失敗する。アブキールの戦いで勝利した後、フランスが危機的状況に陥っていることを知ってわずかな側近を連れてエジプトを脱出し、ブリュメールのクーデターで権力を掌握。第一執政となる。
アウステルリッツ編では背も低く描かれているが、青年期では比較的スマートに描かれている。第一執政になってからは短髪となる。1804年、フランス皇帝として即位した。
持病の痔に悩まされている。
ボナパルト家・親族
レティツィア
カルロ
ジョゼフ
リュシアン
ポリーヌ
声 - タザワリイコ
ナポレオン二番目の妹でありルクレールの未亡人。兄への敬愛が強く、義姉ジョゼフィーヌに敵意を抱き、執拗にいやがらせを行う。かなりの美形であり、ジュノーはじめとする多数の男性のあこがれの的である。性に奔放であり、結婚後も兄の政敵であるモロー、部下のマクドナルドはじめ複数の愛人と関係している。
1801年、一連の不倫スキャンダルとジョゼフィーヌのナポレオンへの密告により、夫ともども黒人による反乱が勃発しているハイチに派遣されてしまう。この地で夫は黄熱病に倒れ、ポリーヌの献身的な看護の甲斐なく死亡。このときポリーヌは夫が死んだことに気付かず、死体となった夫を看病し続けていた。
カロリーヌ
ジェローム
ジョゼフィーヌ
声 - 浅井晴美
ナポレオンの最初の妻。美貌、社交性、愛嬌、幸運に恵まれた「幸運の女神」。古参兵や国民から絶大な人気を誇る。
カリブ海のマルティニーク出身。最初の夫・ボアルネ子爵との間には2児をもうけるも離縁される。恐怖政治時代は元夫をギロチンによって失い、自身も投獄される。釈放後は一時バラスの愛人となるも、ナポレオンの熱烈なアプローチに押され再婚した。元はローズと呼ばれていたが、ナポレオンが自分だけの名前で呼びたいために「ジョゼフィーヌ」となった。結婚時は年齢を4つほど若く申告し、夫のナポレオンは2つ年齢を高くしていた。この結婚はボナパルト家から強い反対にあい、結婚後も義母や義妹から敵意を抱かれ、嫌がらせを受けている。
イタリア遠征ではなかなか夫に同行しようとせず、ナポレオンを苛立たせた。東方遠征中にシャルルとの浮気が発覚し、家から追い出されそうになるも我が子2人と3人がかりで謝罪し復縁に成功した。
激務に励む夫を励まし、人脈強化のために努力しているが、その反面大変な浪費家であり、常に金に困っている。コミックス15巻においては、(顔つきと服装が『ミナミの帝王』の主人公、萬田銀次郎に似た人物から)借金の返済を迫られたり、報酬目当てに夫の周囲の情報をフーシェにリークするシーンもある。
ナポレオンが世襲を意識しはじめたことから不妊に悩むようになり、その妥協案として娘オルタンスと義弟ルイとの結婚を受け入れた。1804年、フランス皇后に即位した。かつては不貞で夫を悩ませた彼女だが、だんだんと夫の浮気に悩まされることとなった。さらに夫の愛人マリア・ヴァレフスカの妊娠で自身の不妊が明らかになり、ますます追い詰められる。
ヴァグラムの戦いの後の1810年、ついにナポレオンとの離婚に合意。国民に惜しまれつつ、14年間の結婚生活に終止符を打った。
マリー・ルイーズ
ウジェーヌ
ジョゼフィーヌと、その前夫ボアルネ将軍の息子。母を愛しているものの、軽薄な行動を恥じる一面も。義父ナポレオン、妹、妻子らを愛する好青年である。
ヴァンデミエールの反乱鎮圧後、父の形見である剣の返却をナポレオンに嘆願し、度胸試しの後に剣の所持を認められる。母ジョゼフィーヌがナポレオンと結婚したため、ナポレオンの義息となる。イタリア遠征にも顔を出し、東方遠征からナポレオンの副官として本格的に再登場する。このときはまだ半人前扱いであり、ハーレムで贅沢三昧を送っていたが、ところが母の浮気が新聞で報じられているのを知り発奮。一人前の男、そして兵士になるために試練を求め奮闘する。兵士たちから「熱血バカ副官」と呼ばれるほどであり、若者らしいまっすぐな行動が目立つが裏目に出ることもある。試練を求めるあまり絶食するなど、多少のマゾヒズムを行動ににじませる。長じてからは誠実な軍人として、ナポレオンを支える。
1806年、バイエルン王女・アメリと結婚。夫婦は仲むつまじく幸せな家庭を築き、7人の子に恵まれた。
オルタンス
ジュリー・クラリー
フランス軍
フランス帝国元帥
ナポレオンの皇帝即位と同時に、ベルティエ、マッセナ、オージュロー、ミュラ、ベシエール、ベルナドット、スルト、ネイ、ランヌ、ダヴー、モンセイ、ジュールダン、モルティエが元帥に昇進。名誉元帥にはセリュリェ、ケレルマン(父)、ペリニョン、ルフェーブルが任命された。
1804年任命
平民、元貴族、反ボナパルト派、共和主義者、王党派、カトリック、無神論者など、あらゆる人物が取り入れられた人選である。
ベルティエ
ヴァンデミエール編で、ナポレオンが勤める本屋に客として訪れた際に、孫子の兵法書を購入し顔見せ登場。その後イタリア編から本格的に活躍する。鼻をほじる癖がある冴えない風貌の小男だが、有能な参謀であり指揮能力も高い。軍務の裏方やナポレオンの命令系統の伝達などの技量に関しては他者の追随を許さない。提出書類にこだわる官僚的側面や、自分の評価を執拗に気にする面を持つ小心なところのある人物であり、上司にあたるナポレオンの横暴や部下の無神経さに振り回され気味である。人使いの荒いナポレオンの元ではオーバーワーク気味で、周囲からも悲惨な境遇だと驚かれるほどである。限界を超えた疲労によるミスも。
独身だがイタリア名門貴族のビスコンティ夫人と愛人関係にある。東方遠征時には恋しさのあまりホームシック気味になり、彼女を崇拝する祭壇まで作って祈る始末であった。ナポレオン皇帝即位時、元帥に昇進した。
クーデター後第一執政となったナポレオンから陸軍大臣に任命されるも、マレンゴの戦いに際して司令官に戻される。カルノーの辞職に伴い、再度陸軍大臣に復職した。
ナポレオンの勧めによりバイエルン王の姪と結婚。同時期に未亡人となったビスコンティ夫人と妻妾同居を始める。妻と愛人は良好な関係であった。
マッセナ
声 - 髙階俊嗣
トゥーロンに派遣された援軍の指揮官で、デュゴミエの部下であった。幼いころは叔父のもとで石けん作りを手伝っており、そこで身につけた腕力をいかしマッセナ団というギャングを結成していた。石鹸を一定の大きさに切るための鍬状の道具を凶器(武器)として振るう。略奪を好み、自身から奪われる・奪われた物を返却されることを異常に嫌う。極めて物欲が強く、密貿易で懐を潤している。部下への年金すら惜しむ吝嗇さは「ドケチ」と軽蔑されている。
戦場まで愛人を同行するほど好色な人物であり、スルトら部下から猛反発を受けることも少なくない。欠点も多いが沈着冷静で極めて有能な指揮官である。
トゥーロン攻囲戦では敵の金庫を襲うべく、ラルティック要塞を襲撃する。イタリア編でも金銭への執着は相変わらずであり、略奪や軍の補給品の横流しを散々やらかした挙句に男装させた愛人を前線に連れて来るなど、問題行動も多かったが随所で活躍した。東方遠征中はスイスで防衛に当たり、ロシア軍のスヴォーロフ相手に粘り強い戦いぶりを見せた。その後圧倒的な不利の中、ナポレオンの救援を待ちながらジェノバで篭城する。限界まで粘る中でもはったりと凄みを見せ敵相手に有利な交渉を行い、ついに開城した。ナポレオンが第一執政となった後は、反ナポレオンの動きを見せるようになる。第一執政時代の兎狩りが原因で隻眼となった。ナポレオン皇帝即位時、元帥に昇進した。
ポルトガル遠征ではウェリントン相手に苦戦し、ウェリントンがリスボン北方に築いたトレス・ヴェドラス線(英語版)を攻めあぐね大敗。罷免され、軍人としての経歴を失意のうちに終えた。
オージュロー
声 - 千葉繁
イタリア方面軍の師団長。粗暴かつ横柄な性格で、母親がドイツ人のためか訛った口調で話す。独特のファッションセンスの持ち主であり、上半身裸か素肌に直接軍服を着用するのが気に入っているようで、乳首毛専用の小型櫛を携帯している。自ら戦うことを好み、サーベルや二挺拳銃で戦闘に参加することも多い。
フリュクチドールのクーデターでは実働部隊として活躍。東方遠征には不参加。ブリュメールのクーデターでは、彼と同じくジャコバンであるベルナドットと共に監禁拘束された。その後は執政政府に忠誠を誓うも、過激なジャコバン派である彼は、カトリック教会の復権を初めとする宗教政策などが原因で徐々にナポレオンに反発を抱くようになる。
書類を一切提出しないなどおおざっぱな性格であるために、神経質なベルティエとは諍いが絶えなかった。一方でランヌと懇意である。ナポレオン皇帝即位時、元帥に昇進した。
気前がよく人情に篤い性質からか部下に大変慕われており、愛妻家である優しい一面も持つ。高熱に浮かされていたアイラウの戦いでは、亡妻の幻を見ていた。
ミュラ
声 - 成田剣
ヴァンデミエール編から登場。猟騎兵連隊隊長。ナポレオンの義弟。
おしゃれで派手好きな長身の美男子で、女にもてるため恋愛には自信を持っている。自分の美貌に誇りを持っており、顔に傷つけられることをひどく嫌っている。一度、ナポレオンが店員を勤める本屋に客として訪れたが、ヴァンデミエールの反乱で彼と再会し、立場が逆となる。以後、ナポレオンの副官の一人として彼に付き添う。
イタリア編では単騎で敵中に取り残された味方の将軍を救出し、敵からの称賛に恍惚とした表情を浮かべる、自分より目立つ者を妬むなど、軽薄で目立ちたがり屋な側面を見せる。性格的にそりの合わないランヌと対立し、妻となるカロリーヌをめぐっては激しい鞘当てを繰り広げた。ナポレオン皇帝即位時、元帥に昇進した。ナポレオンの義弟であることからも順調な出世街道を歩み、パリ司令官、フランス大公、ベルクおよびクレーヴ公などを歴任、ナポリ王となる。皇帝の義弟として権勢を誇るものの、妻カロリーヌの野心と策謀に振り回される。ナポレオン不在時にはタレイランやフーシェに傀儡として担ぎ上げられ、クーデター未遂を起こされている。
ベシェール
ベルナドット
イタリア編末期にイタリア方面軍に転属となった将軍。過激なジャコバン派であり反ボナパルト派の思想を持つ。ナポレオンの兄・ジョゼフの妻ジュリーの妹デジレと結婚しており、ボナパルト一族の一員である。
一見紳士的で誠実であるが、実際はかなりプライドが高く、蔭でナポレオンやオッシュの活躍に対する妬みや、自身を高く評価しない上層部への不満を小声でぶつぶつと呟き続けるという、狭量な印象を与える癖がある。ブリュメールのクーデターではシェイエスから首謀者に加わるよう勧誘されるが断り、当日はナポレオンに監禁拘束された。ナポレオン皇帝即時、元帥に昇進しのちにポンテコルヴェ公となった。
深刻な軍令違反で味方を窮地に追いやったため、ナポレオンは何度も罰しようとするが、妻・デジレへの後ろめたさから処断できずにいる。
ダヴーはじめ周囲の同僚からは嫌われており、軍人としての素質も優れてはいないが、紳士的な寛大さを持ち合わせている。スウェーデン軍兵士への寛大な処置は相手に深い感銘を与えた。後継者を失ったスウェーデン王室の要請により、スウェーデン王太子となる。
フランスがロシアと戦端を開いた後は、かつての祖国を裏切り秘密裡にロシアと手を結んだ。
スルト
ネイ
燃えるような赤毛が特徴の将軍。ドイツ語に堪能。樽職人の家に生まれるものの、伝説に残るような英雄になりたいと願ってきた。そのため家業を継ぐことを嫌がり兵士となる。性器名称を好み、やけに口にする癖がある(これは史実準拠)。モローの配下から第一執政となったナポレオンの配下に加わり、ナポレオン皇帝即位時、元帥に昇進した。
女性関連では失敗が多く、モローの愛人イダ、サーカスの娘ジャンヌら相手に失恋を繰り返しては自殺未遂を繰り返していた。マリー・アントワネット侍女の娘にあたるアグラエを娶り、やっとこの悪癖は落ち着いた。酒癖が悪いのも難点。これさえなければ「理想の上司」と部下からは評されている。
戦争と名誉を神聖視し、敵味方問わず勇敢な者を重んじ負傷兵を見捨てるようなことはしない。馬鹿かと思えば賢く、厳しいかと思えば優しく、大胆かと思えば繊細と、はかりかねる部分の多い規格外の男である。非常に勇猛果敢であるがやや思慮に欠ける点があると自他ともに認めており、勇み足で味方を窮地に追い込むこともある。
ランヌ
イタリア編より登場。禁欲的な人物で常に「どこでも戦える兵士」たらんと意識している。身体能力も高く、行軍の際に素早く山を駆け下りたり、市街戦の際にオーストリア軍のバリケードに設置された大砲から発射された釘と銃弾を二角帽子で受け止め拡散を防いだりするなど、常人離れした運動能力の持ち主として描かれている。極めて勇敢・実直な性格ではあるのだが、粗暴な一面も併せ持ち、頭に血が上れば無抵抗の女子供をも容赦なく虐殺しかねないため、「狂犬」と非難されることもある。口ばかり動かして働かない奴や軽薄で自分勝手な人間を嫌っており、ミュラと対立している。ミュラの妻となるカロリーヌをめぐっては激しい鞘当てを繰り広げた。ナポレオンに高く評価されており、また彼もナポレオンに心酔しており、階級を越えた真の友人同士である。
積極的で勇猛果敢な性格ゆえに、しばしば前線で部下を叱咤激励し、さらには自ら突撃をも繰り返す。そのため負傷も多く、東方遠征後半で受けた傷が元で首が曲がる障害を負ってしまう。それでも驚異的な生命力の持ち主であるため回復が早く、すぐに前線に復帰する。彼の部下もまた、勇将のもとで類い希な勇気を発揮する。粗暴でけんかっ早いトラブルメーカーでもある。金銭感覚にルーズな面も持ち合わせていて、軍資金から30万フランを無断で使い込みが発覚した際は、ポルトガル大使に左遷されるも、ナポレオン皇帝即位時には元帥に昇進した。なおこの時、トレードマークであったおさげを断髪した。負けん気が強いせいか同僚と対立することが多く、ミュラ、ベシェール、スルトと仲が悪い。特にミュラは「うんこミュラ」と呼ぶほど嫌っているが、何かと行動を共にすることが多い。半島戦争から厭戦傾向を見せるようになる。
最初の妻とは妻側の不貞が原因で離婚。カロリーヌの本性に幻滅したこともあり女性不信気味であったが、ナポレオンの勧めで再婚した愛妻・ルイーズとは温かい家庭を築いた。
アスペルン・エスリンクの戦いで両膝に砲弾の直撃を受け、右脚切断の重傷を負い壊疽が悪化して死亡した。
ダヴー
声 - 大羽武士
作品冒頭アウステルリッツの戦いにて初登場。通称“不敗のダヴー”。ナポレオンの義弟にあたるルクレールの妹と結婚しており、ボナパルト一族の一員である。
貧乏貴族の家庭に生まれる。幼年学校時代にも登場し、ナポレオンとフェンシングで勝負している。「ダヴー外伝 禿鬼」では、頭髪がよく抜けることを気にしながらも、派遣議員暗殺の真相とデュムーリエ将軍の裏切りと内通を見抜くという鋭さを見せた。なお、この作中でダヴーがフェルニッヒ姉妹(英語版)を殺害しているが、史実ではない。
東方遠征編においてドゼーの部下として再登場。身なりに無頓着な性格のためか、頭髪が乱れがちで、服も臭うことがある。初めはナポレオンに反感を抱くものの、その軍人としての力量に圧倒され、熱烈に崇拝するようになる。エジプト遠征の帰路にて、ビクトルらとともに英国海軍に捕縛されるも解放された。
執政政府では調査室長に任命され、ナポレオン皇帝即位時、最年少34歳で元帥に昇進した。元帥の中でもトップクラスの指揮能力を持ち、イエナ・アウエルシュタットの戦いでは倍のプロイセン軍を相手に一歩も退かず見事勝利を収めた。
ブリュヌ
名誉元帥として、長年の功績が認められた以下の老将軍が任命された。
セリュリエ
トゥーロン攻囲戦
ジュノー
声 - 関幸司
ナポレオンの部下。ボナパルト家がコルシカ島から落ち延びた後に住み着こうとした家の先住者。ナポレオン達が家に侵入してきた際、妹・ポリーヌに出会い一目惚れするが、彼女に「私に会いたかったら男らしくなって」と言われ、以後ナポレオンの隊に歩兵として加わり、イタリア遠征時からシャルルに替わってルクレール配下の騎兵となる。極端に無口で、「ポリーヌ」「うが」以外の台詞をほとんどしゃべらない。ジョゼフィーヌの侍女・ルイーズと一時期親密な仲になりかけたことがあるが、そのせいで失恋してしまうこととなる。東方遠征ではナポレオンから置き去りにされた。帰国後はロール・ペルモン(愛称ルウルウ)(Laure Junot, Duchess of Abrantès)と結婚し、パリ司令官に任命される。ナポレオン皇帝即位時の元帥昇進からは外された。
ミュラの妻でありナポレオンの妹にあたるカロリーヌと密通し、大いに揉めた。スペイン攻略を目指したナポレオンによりポルトガルに派遣されるが苦戦する。
妻の不貞によるストレスと、肉体の痛みを軽減するため、麻薬を服用していた。ロシア遠征のころには、深刻な麻薬中毒の症状が出始めている。
マルモン
カルトー
ドッペ (François Amédée Doppet)
デュゴミエ
ルクレール
フランス革命期
イタリア遠征
トマ=アレクサンドル・デュマ
イタリア方面軍所属の将軍。サン=ドマング(現在のハイチ)で黒人の母と白人の父との間に生まれたムラート(混血)。三銃士やモンテ・クリスト伯(巌窟王)の著者である文豪アレクサンドル・デュマ・ペールの父親でもある。
セリュリエと共にマントヴァ攻囲軍の指揮を執っており、マントヴァに籠城するオーストリア軍部隊に少量の肉とダルヴィンチ軍敗走のニュースの載った新聞を投げ込み、降伏を勧告する。また、規律の緩みがちな攻囲軍将兵に対して厳しい訓練を施す鬼軍曹的な側面を持つ。
エジプト遠征では兵士を労らないナポレオンに不満を抱き、命令違反を犯した上に遠征を批判して除籍される。帰国途上で難破しナポリ王国に二年間監禁された挙げ句、毒を盛られ衰弱。失意のまま軍人としての経歴を終えた。
東方遠征
クレベール
ドゼー
第一執政時代 ・フランス第一帝政以降(これより「覇道進撃」)
マルボ
デュポン
ロシア遠征
海軍
ブリュイ
ヴィルヌーヴ
ビクトルおよびオリジナルの兵士たち
ビクトル
本編オリジナルの人物。連載開始時から登場し、一兵士として裏の主役とも言える人物である。そそっかしく、迂闊なところが最大の特徴。ナポレオン、フーシェ、ダヴー、ランヌ、ネルソンら主要人物とトラブルをしょっちゅう起こしたり、巻き込まれたりする。兵士としては無能であったが、過酷な従軍の中でしぶとく強靱な脚力と度胸を身につけていく。
処刑人サンソンの手伝いをしていたが解雇され、トゥーロン攻囲戦からナポレオンの率いる部隊に従軍する。トゥーロンでは派遣議員のふりをして敵を陽動し、イタリア遠征ではひたすら移動しながら連戦という戦線の過酷さを体験した。東方遠征では敵に捕虜として捕まり、貞操を奪われてしまうが、後に「尻の仇」を討つことに成功する。ナポレオンのエジプト脱出後は、他の大勢の将兵と共にエジプトに置き去りにされるも、やがて疫病神扱いされて追い出された。フランスへの帰路、ドゼー、ダヴーらとともに乗船がネルソンによって捕獲される。その際、ドゥノンからもらったエマ・ハミルトンの裸体画をめぐりネルソンと争い海に転落。捕虜となった。その後、船員を経てポルトガルで投獄されたところをランヌに救い出され、資金援助を受けビストロを開店。この店ではサンソンの口利きでスルトがパン職人として働いていた。しかし「ビストロ・ビクトル」はカトゥーダルによる第一執政暗殺計画に巻き込まれ火災が発生、一夜にして燃え尽きてしまった。
その後、ゆきだおれていたのをサンソンに介抱され軍をやめるよう説得されるも、ビトーという徴兵拒否者の身代わりに新兵として再び従軍。スパイとして疑われるも、ダヴーにより嫌疑が晴れた。
敵味方問わず重要人物を銃撃することが多い。ツーロンでのフッド提督、イタリア遠征時のラアルプ将軍、エジプト遠征時のフェリポー、イエナ・アウエルシュタットの戦いのブラウン・シュヴァイク公、ボロディノの戦いのバグラチオン将軍など。さらに彼からツーロンで狙撃を習ったキリーという水兵が、ネルソンを撃ち致命傷を負わせた。
恋の悩みを持つ相手に「三人で仲良くナニしたら」と助言した結果、酷い目にあうことも多い。
単行本巻末では彼と作者との対談が書かれ、カバー下に「ビクトル戦報」が書かれることもある。
でぶ野郎
ビクトルの仲間(のちの店主)
東方遠征編(11巻)から頻繁に登場し、ビクトルと共にエジプト、シリアで戦った戦友の片割れ。彼はアクル包囲戦中、農家の台所を借りてビクトル達に豪華料理を振る舞った。飯屋兼ホテルを営業すべくパリで修行していた腕前であり、戦友は「パリの高級食堂の味」と評価した。この食事会に飛び入りで参加していたランヌは「夢の前に怖気ず、あの男(ナポレオン)の様になれ」と激励を送った。のちに彼はフェリポーによって負傷したランヌを救助している。エジプト遠征からの帰還後は念願のレストランを開業。店は繁盛しているようだが、しばしば客によって乱闘が発生しているようである。ついにはフーシェの手回しにより王党派粛清の「お誕生会」に店を利用されて大破してしまった。このとき彼はその場に居合わせたナポレオンを痛罵するも、レジオン・ドヌール勲章を与えられ、感激している。
双子の鼓笛少年兵
ナポレオンの近臣・ 側近
タレイラン
片足に障害を持つ、貴族出身の元僧侶。ナポレオンからは「タイユラン」と呼ばれている。享楽的な浪費家であるため、常に金銭を求めている。
僧侶でありながら革命に積極的に参加するも、混乱を避け、恐怖政治の間はアメリカに亡命していた。帰国後、愛人のスタール夫人の勧めでナポレオンと総裁政府に接近する。本作ではスタール夫人と共に、フリュクティドールのクーデターの黒幕として暗躍したとされている。
スタール夫人とバラスの尽力で総裁政府の外務大臣となるも、その腐敗ぶりを早くから見切り、次期政権発足に使えそうな駒を探していた。そしてエジプト遠征から帰還したナポレオンの知嚢として活躍、ブリュメールのクーデターを成功に導き政府を支える。有能であるが忠義の士とは到底言いがたく、常に陰謀がつきまとう人物。ナポレオンに美女を愛人として紹介することも。田舎夫婦にキスの手ほどきを行なったり(結局叩き出され、「亡命生活で舌先が鈍った」と語る)、妊娠8ヶ月のスタール夫人と関係を持つなど、かなりの好色家であるが、愛人との間に子供が産まれたことをきっかけに結婚した。
政治的には「各国の勢力均衡による平和」を志向し、他国への寛大な措置を求め、大陸封鎖令にも乗り気ではなかった。そのため、「欧州の政治的・経済的統合による平和」を目指すナポレオンはだんだんと彼の助言を退けるようになっていく。ティルジットの和約締結後、密かにナポレオンの暴走を止めねばならないと方針を転換。「ヨーロッパの死刑執行人になりたくない」とメッテルニヒに告げ外務大臣を辞任。その後は匿名でオーストリアにフランスの機密情報を漏洩。半島戦争時のナポレオン不在中にミュラを担いだクーデターを企画する。裏切りを知ったナポレオンは彼を「絹の靴下に詰まった糞」と罵倒し、外務大臣から罷免した。その後ナポレオンはマリー・ルイーズとの婚礼では彼の力が必要になり、政界に復活。ただタレーラン自身は、ナポレオンに忠誠を誓っているわけではなく、独裁者は滅びると確信している。
フーシェ
国民公会議員で、陰謀の天才。リヨンでの反乱関係者虐殺を咎められるのを恐れ、バラスやタリアンをけしかけてロベスピエールに対するクーデターを画策する。クーデター後は政治の表舞台から離れてバラスの密偵となり、ナポレオンにも接近する。ちなみに初登場シーンでは、リヨンで虐殺が行なわれている最中に変装して死体の流れる川で釣りをしていたが、ツーロンに向けて従軍していたビクトルに川に蹴り倒され、怒りに震えていた。
ナポレオンの東方遠征中、タレーランの暗躍を危惧するバラスに警察長官の地位を要求して政治の表舞台に返り咲き、ブリュメールのクーデター以降は本格的にナポレオンの懐刀となる。もっとも、ジョゼフィーヌに賄賂を送り情報を得る、ナポレオン死亡後を想定して陰謀を企むなど、不審な行動が多い。ナポレオンの皇帝即時前には、警察省を法務省に合併される形で大臣職を失うものの、のちに復職。国王処刑に賛成したためブルボン朝復活を警戒し、ナポレオンに対してジョゼフィーヌとの離婚および別の相手との再婚を執拗にすすめる。その一方で、離婚後のジョゼフィーヌには同情的であった。
マレンゴの戦いでナポレオンの戦死報が届いた時は、ベルナドットを次の権力者にしようと暗躍するも、誤報とわかったため陰謀をもみ消した。半島戦争時のナポレオン不在中にも、ミュラを担いだクーデターを企画し皇帝に察知される。
度重なる裏切りにも関わらず罷免されなかったが、1810年ついに失脚。隠居に追い込まれる。
各種の陰謀で暗躍する一方で愛妻家であり、また夭折した長女ニエーヴルを思い続けるなど、人間らしい一面も見せている。
サヴァリ(Anne Jean Marie René Savary)
ブーリエンヌ
フランス政府
フランス革命の志士たち
ミラボー
ロベスピエール
声 - 銀河万丈
ジャコバン派の領袖で、革命の勃発から恐怖政治期までの期間における、フランス最強の男。特定の人物ではなく市民と革命を愛するが故に、童貞である。エベール派・ダントン派を粛清した後、さらに恐怖政治を加速させるが、他の議員の反感を買い、テルミドールのクーデターで失脚、処刑される。その最期まで私情に囚われず、全ての者が平等に語らう社会の実現を望んでいた。
ルイ16世の戴冠式の帰途、ラテン詩での祝詩を送った少年時代の思い出を懐かしく回想しておきながらその直後に、ルイ16世の処遇を「死刑」と即断で宣言するシーン、サン・ジュストに「私は」「童貞だ」と打ち明けるシーンは、作中の名場面の一つに数えられる。
肖像画では省かれているものの、実際には着用していたという色眼鏡が特徴的な風貌である。この色眼鏡はサン・ジュストを介して、ナポレオンの手に渡ることになる。
15巻でのシェイエスの回想で再登場し、さらにカバー裏には雑誌掲載時の処刑シーンが復刻掲載されている。
クートン
ダントン
ジャコバン右派。恐怖政治の停止を求めるが、ロベスピエール一派によって逮捕に追い込まれる。裁判では豪胆な演説で市民を味方につけるが、結局同派のデムーランと共にギロチン送りとなった。
怪力で、さらには愛妻家として描かれており、夜中に妻の死体を掘り起こして抱きしめるシーンがある。
エベール
フーキエ・タンヴィル
カリエ
タリアン
サンソン
パリの死刑執行を担当する死刑執行人(ムッシュ・ド・パリ)。恐怖政治下、数多くの人の処刑を実行するが、本人は心優しい人物でシャルロット・コルデーとの交流時などにその性格の片鱗がうかがえる。しかし、ダントンからは「人間ではなくギロチンの部品」と吐き捨てられている(故に怨みを買うこともなければ、気に病む必要もないという皮肉)。政治的には国王を尊敬している王党派であり、ひそかに国王の追悼ミサを続けていた。
ビクトルは彼の助手を務めていたが、シャルロット・コルデーの切断された首を殴打したため解雇された。しかしその後もたびたびサンソンの世話になっており、ビストロを焼失し、倒れていたところを介抱されている。なお、史実ではテルミドールのクーデター後に息子に処刑人の座を譲り引退しているが、本作ではカトゥーダルを処刑している。
引退後偶然ナポレオンと出会った際、臆することなく質問に答えた。その数ヶ月後世を去った。
総裁政府
バラス
声 - 郷里大輔
国民公会議員。サン=ジュストと共にトゥーロンに派遣され反乱関係者を多く処刑するが、そのことをロベスピエールに追及されるのを恐れ、フーシェと共にテルミドールのクーデターを画策する。クーデターの際、ロベスピエールらを逮捕するために赴いたパリ市庁舎においてクートンの自爆に巻き込まれ、顔に大火傷を負うと共に左手を失っており、顔の包帯は12巻時点でも取れていない上に、左手には義手を付けている。
クーデター後は総裁政府の中心となり、ヴァンデミエールの反乱鎮圧にナポレオンを起用するなど、彼の庇護者となる。ジョゼフィーヌの愛人であったが、後にナポレオンに譲る。
ナイフ投げが得意であること以外は、作中で特に秀でた能力は見受けられない。場違いな権力者として描かれており、作者も「バラスはボロクソに描いても心が痛まない」と言っている。
ブリュメールのクーデターで失脚後、本作では生存していたサン=ジュストによって殺害されたことが(明確では無いものの)示唆されている。
カルノー
革命戦争期のフランスの軍制改革を強力に指導し、ロベスピエールの時代からフランスの軍事面を支えた人物であり、「勝利の組織者」の異名を持つ。ナポレオンをイタリア方面軍司令官に任命する以前から高く評価しており、彼の作戦計画をイタリア方面軍司令官に送りつけていた。
史実ではカルノーも公安委員会のメンバーであったが、サン=ジュストを始めとするロベスピエール派と対立していたことと軍略的才能を惜しまれたため、ギロチン送りを免れて総裁政府でも登用された。
法治主義者ゆえにフリュクティドールのクーデターを認めず、パリから逃亡する際、自作の武器を駆使してオージュローと互角に渡り合いながら、自分の定めた軍制を守らずだらしない服装をしているオージュローを咎めた。
その後しばらく雌伏していたが、第一執政となったナポレオンの元、過去を水に流しベルティエの後任として一時は陸軍大臣に任命される。復帰の際は滑車で窓を突き破りながら名乗り、気炎を吐いた。祖国愛が強く誠実な人物ではあるが、秘密裏にナポレオン死亡を想定した場合に後継者となることを承諾したりと、決して清々としただけの人物ではない。ナポレオンが終身執政となる案が出された時や皇帝即位時には、断固反対した気骨ある共和制支持者である。
反ボナパルト派
サン・ジュスト
ロベスピエールの同志。軍人としてのナポレオンを評価する人物であり、彼の昇進を助けている。テルミドールのクーデターでは逃げ延び、後にタリアンを暗殺。続いてバラスの暗殺を謀るが、ナポレオンによって阻止される。死亡したかと思われたが、失脚し故郷へ去ろうとするバラスの馬車を乗っ取り、馬車を断崖絶壁に向けて走らせていった。カドゥーダルの第一執政暗殺計画にも参加している。なお、史実ではテルミドールのクーデターの翌日にロベスピエールと共に処刑されており、従って作中で彼に暗殺される人物は史実においては全員生存している。
史実ではナポレオンを高く評価していたのはロベスピエールの弟・オーギュスタンであり、キャラクターのモデルとしてオーギュスタンがサン・ジュストに統合されている可能性がある。
スタール夫人
文筆家、女性政治活動家。ルイ16世の財務長官であったネッケルの娘にあたる。人類史上トップクラスの知能を持つ。頭部が極めて大きく頭身が極端に低い、特異な容貌に描かれている(コミックス10巻巻末の小話において、映画『スター・ウォーズ』に登場するハット族に例えられる)。ナポレオンの才能を見抜いてラブレターを送るが、拒絶される。
革命を守るために画策し、タレーランと共にフリュクティドールのクーデターの黒幕となる。その後、クーデターの際に逃亡を図ったカルノーと鉢合わせした際に「クーデターは共和国を守るためのもの」と主張したが、クーデターに憤慨していたカルノーに顔面を複数回殴打された。
第一執政となったナポレオンの野望を共和制を崩すものとして危険視。政治体制とカトリックを痛烈に批判した『デルフィーヌ』を出版し、ナポレオンの暗殺すらはかった。ナポレオンによりパリから追放され政治的に抹殺されるも、その生涯を掛けて破滅させることを誓う。
モロー
ブルボン家・王党派
ルイ16世
マリー・アントワネット
アンギャン公
その他のフランス人
文化人・芸術家
マルキ・ド・サド
ダヴィッド
ヴィヴィアン・ドゥノン (Vivant Denon)
民間人など
パスカル・パオリ
ルイーズ
先生
ポーラ・フーレス
フランス以外の人物
ロシア
アレクサンドル1世
クトゥーゾフ
声 - 乃村健次
ロシア陸軍将軍。アウステルリッツ編以降登場。座った椅子を壊すほどの巨体の持ち主。老練な用兵家として描かれており、ウルムの戦い後に指揮した退却戦は、ナポレオンをして「教本に載せたいような見事な離隔」と言わしめた。アレクサンドルや若い将軍たちには軽んじられているが、ナポレオンには警戒されている。アウステルリッツ戦前夜、ナポレオンの暗殺を謀って刺客を送り込んだが、失敗に終わっている。
アレクサンドル1世は彼に嫌悪感を抱きつつも、その実力は認めている。
バグラチオン
ブクスホーデン(ラテン文字:Friedrich Wilhelm von Buxhoeveden、キリル文字:Фёдор Фёдорович Буксгевден)
スヴォーロフ
バルクライ
プロイセン
ルイーズ王妃
シャルンホルスト
ブリュッヒャー
グレートブリテンおよびアイルランド連合王国
ネルソン
イギリス海軍提督。トゥーロン編で顔見せ初登場。議員に変装していたビクトルに人妻を愛した男はどうすればいいか、と問いかけている。この質問はネルソンの愛人エマ・ハミルトンとその夫ウィリアム・ダグラス・ハミルトンとの三角関係についてのものである。この時、「(ビクトルの返答が)あまりにいい答えだったのでつい」ビクトルの足の指をへし折った。のちにビクトルと再会した際は、彼がエマの裸体画を所持していることに激怒、斬りかかって海に転落した。
トゥーロン後、コルシカ島で陸上戦闘で右目を、テネリフェ島攻略作戦で右腕を失い隻眼隻腕となる。敗北と障害を気に病み、引退する旨をセント・ヴィンセント伯に伝えるほどであったが、ナポレオンを乗せた艦隊の出撃の報を聞いて闘志を燃やし、追跡任務を受領した。トゥーロン出航後は困難にもめげずに執拗な追跡を行う。
アブキール湾に停泊していたフランス艦隊を発見すると、敵の予想に反し座礁の危険を冒してまで夜間戦闘を強行。左前頭部にボルトの直撃を喰らい、頭皮がめくれ上がる大けがを負うものの、フランス艦隊に壊滅的打撃を与えることに成功する(ナイルの海戦)。
エジプト遠征の帰路にあったドゼー、ダヴー、ビクトルらの乗る船を捕獲。その際、議員と勘違いしたビクトルの身体検査を行い、彼が自慰に使用していたエマ・ハミルトンの裸体画を発見。激高し丸腰のビクトルに切り掛かった挙げ句、海中に転落した。
1805年、トラファルガーの海戦では「ネルソンタッチ」で果敢に戦い、フランス・スペイン連合艦隊に圧勝するも、狙撃手の銃弾により致命傷を負い戦死。彼の勝利はイギリスを救うも、その死は多くの国民に衝撃を与えた。
フランス出身以外の人物で唯一、単行本の表紙を飾っている(覇道5巻)。
オハラ (Charles O'Hara)
フッド
トーマス・グラハム (Thomas Graham, 1st Baron Lynedoch)
ベリー (Edward Berry)
シドニー・スミス
イギリス海軍海佐、タイガーを指揮する。海軍士官でありながら、イスラム情勢に明るく陸戦が得意。ネルソンには互いに性格的に反発を覚えている。
トゥーロン攻囲戦でフランス艦を焼き討ちしたため逮捕され、脱出不可能とされた牢獄に収監されるも、そこから脱走し母国に帰還した。なお本作においてはトゥーロン攻囲戦での活躍は回想シーンのみであり、エジプト編での初登場となる。
オネェ言葉を使用し、心情を色で表現したり、自分の妄想で勝手に会話する癖がある。普段は飄々としているが、戦闘時は極めて有能かつ策略に富み、敵に回すと大変厄介なイギリス軍人の典型である。親友であるフェリポーと共にジェッザー・パシャの応援に当たり、ナポレオンの野望を阻む。アクル戦後、市民の取った行動(詳細はジェッザー・パシャの項)を見て、「この国に革命を輸出するのは無理」だと嘲笑した。アブキールの陸戦ではランヌとミュラに挟撃されるも、機転を利かせ九死に一生を得る。その後も軍人としてだけではなく、外交官としてもフランスに敵となる。
フェリポー (Antoine Le Picard de Phélippeaux)
アーサー・ウェルズリー
オーストリア
ボーリュー (Jean-Pierre de Beaulieu)
ブカソビッチ (Joseph Philipp Vukasović)
ヴルムザー (Dagobert Sigmund von Wurmser)
カスダノビッチ (Peter Quasdanovich)
ダルヴィンチ (József Alvinczi)
カール大公
メラス (Michael von Melas)
現イタリア領
ビナスコ村のクロイセ
ビスコンティ夫人
ポーランド
イベリア半島
カルロス4世
ゴヤ
ホセ・デ・パラフォックス(José de Palafox y Melci)
エジプト・トルコ
コライム
アレクサンドリア長官。フランス軍を蛮族と見下している。自身も勇猛な騎兵であり、その前近代的な一騎駆けはナポレオンに酷評される一方、ミュラやランヌといった猛将たちを奮い立たせた。デュマと壮烈な一騎討ちを演じて敗死。
ムラード・ベイ
イブラヒム・ベイ
史実との相違
- 作中ではテルミドールのクーデターの際、クートンは自爆し、サン・ジュストは逃げ延びているが、史実では2人とも逮捕され、ロベスピエールと共にギロチン送りとなっている。作中の「アデュー」という別れの言葉は史実ではギロチンにかけられる直前に発したもの。
- 史実ではバラスと共にトゥーロンに送られた派遣議員は、サン=ジュストではなくルイ=マリ・スタニスラ・フレロンという人物であり、彼もバラスやフーシェ、タリアンらと共にテルミドールの反動に加担する。
- 史実では、メルダはサン=ジュストに殺されることはなくテルミドール後も生存し、フランス革命軍およびナポレオン軍で地道に昇進を続け、准将にまでなっている。ロベスピエールの顎を砕いたのは、実際にはロベスピエールの自殺未遂(傷の出来方からの推測)を自分の手柄だと偽っただけのようである。
- 漫画ではクートンの自爆によってバラスは左手に義手を着けているが、史実では自爆自体がなかった。バラスの木製の義手は人間の手に似せて成形されており、指にも関節が設けられているが、義手の指は右手で動かさねばならない。義手の形状は、ナポレオン3世の時代にカマロンの戦いにおいて戦死した外人部隊の士官、ジャン・ダンジュー大尉のものに似ている。
- サン・ジュストによって暗殺されたタリアンだが、史実ではそのようなことはなかった。生き延びた彼は、ナポレオンのエジプト遠征の際、調査団の経済学担当として参加している。
- 単行本第2巻(獅子)で、死刑執行人であるシャルル=アンリ・サンソンは法律によって他の住人から離れた場所に住まなければならなかったとあるが、ムッシュ・ド・パリはこの法律が適用されておらず、実際にはパリ市内に豪邸を構えて住んでいた。サンソンの家として描かれている建物はシャルル=アンリ・サンソンの異母実弟でプロヴァンの処刑人だったルイ=シル=シャルマーニュ・サンソンが住んでいたプロヴァン市郊外の家である(この家は現存する)。
- 単行本第2巻(獅子)でビクトルが処刑人の助手としてシャルロット・コルデーの首をひっぱたいたが、史実では大工のフランソワ・ル・グロという人物である。彼は漫画のビクトルのようにコルデーの首をひっぱたき、その場でサンソンに殴り倒されて首になっている。
- 単行本第12巻(獅子)ではナポレオン軍がアレクサンドリアを攻略した直後にナイルの海戦(アブキール湾の海戦)が発生したが、史実ではナポレオン軍がカイロを攻略した後に行われた。これはその回が月刊誌の増ページの回であったため、話を盛り上げるよう編集側に指示されたので、順番を入れ替えることにしたと巻末の「ビクトル対談」で語っている。
- 単行本第14巻(獅子)において、イブラヒム・ベイはヤッファでペストに感染発病し、ヤッファ陥落直後に病死したが、史実では1817年まで生き延びている。
- 単行本第4巻(覇道)におけるカドゥーダルの陰謀では、史実では暗殺・拉致計画は未然に防がれている。またカドゥーダルとアンギャン公処刑の順序、ピシュグリュの死因が変更されている。またアンギャン公を拉致したのは、ダヴーでもネイでもなくコランクール少将である。
- 演出のため、史実では戦死・殺害されていない人物が死亡または生死不明とされている場合がある(タリアン、バラス、フェルニッヒ姉妹、トーマス・グラハム、ポーラ・フーレス、フェリポー、ブクスホーデン、サラゴッサの乙女など)。
書誌情報
「獅子の時代」編・全15巻と「覇道進撃」編・18巻までが発売中。毎回販促用のオビに有名漫画家のアオリ文がつくことで知られ、過去に安彦良和、平野耕太、小池一夫らもアオリ文句を寄稿している。特典ページとして、軍事研究家の兒玉源次郎による時代背景や人物解説「大陸軍戦報」や、巻末コメントとしての「ビクトル対談」がつく。また「獅子の時代」12巻からカバー下に「ビクトル戦報」も始まり、「覇道進撃」でも継続されている。
韓国語版・フランス語版・台湾版、イタリア語版も出版されており、下記は日本でのコミックの発売履歴。別冊に収録された番外編も含まれることがあったが、毎回、ほぼ月刊誌の6回分が1冊に収録されるため、年2回のペースで発売されている。また、番外編のうち「ミュラ外伝 色僧」は下記単行本には収録されず、2022年2月25日に単独で電子書籍化された。
- 長谷川哲也『ナポレオン -獅子の時代-』 少年画報社〈ヤングキングコミックス〉、全15巻
- 2003年10月24日発売、ISBN 4-7859-2366-0
- 2004年6月28日発売、ISBN 4-7859-2437-3
- 2005年2月10日発売、ISBN 4-7859-2512-4
- 2005年9月12日発売、ISBN 4-7859-2577-9
- 2006年3月27日発売、ISBN 4-7859-2628-7
- 2006年9月27日発売、ISBN 4-7859-2686-4
- 2007年4月28日発売、ISBN 978-4-7859-2769-1
- 2007年10月9日発売、ISBN 978-4-7859-2863-6
- 2008年4月9日発売、ISBN 978-4-7859-2932-9
- 2008年9月29日発売、ISBN 978-4-7859-3033-2
- 2009年2月26日発売、ISBN 978-4-7859-3119-3
- 2009年10月7日発売、ISBN 978-4-7859-3237-4
- 2010年3月31日発売、ISBN 978-4-7859-3347-0
- 2010年10月30日発売、ISBN 978-4-7859-3494-1
- 2011年2月16日発売、ISBN 978-4-7859-3571-9
- 長谷川哲也『ナポレオン -覇道進撃-』 少年画報社〈ヤングキングコミックス〉、既刊24巻(2023年4月28日現在)
- 2011年8月30日発売、ISBN 978-4-7859-3685-3
- 2012年2月10日発売、ISBN 978-4-7859-3782-9
- 2012年9月6日発売、ISBN 978-4-7859-3916-8
- 2013年2月14日発売、ISBN 978-4-7859-4020-1
- 2013年8月30日発売、ISBN 978-4-7859-5116-0
- 2014年2月24日発売、ISBN 978-4-7859-5219-8
- 2014年9月13日発売、ISBN 978-4-7859-5371-3
- 2015年2月16日発売、ISBN 978-4-7859-5492-5
- 2015年8月29日発売、ISBN 978-4-7859-5616-5
- 2016年2月29日発売、ISBN 978-4-7859-5730-8
- 2016年9月30日発売、ISBN 978-4-7859-5875-6
- 2017年2月28日発売、ISBN 978-4-7859-5970-8
- 2017年8月30日発売、ISBN 978-4-7859-6067-4
- 2018年2月28日発売、ISBN 978-4-7859-6167-1
- 2018年9月29日発売、ISBN 978-4-7859-6297-5
- 2019年2月27日発売、ISBN 978-4-7859-6389-7
- 2019年9月2日発売、ISBN 978-4-7859-6509-9
- 2020年3月2日発売、ISBN 978-4-7859-6619-5
- 2020年8月31日発売、ISBN 978-4-7859-6737-6
- 2021年2月27日発売、ISBN 978-4-7859-6869-4
- 2021年8月30日発売、ISBN 978-4-7859-6981-3
- 2022年2月28日発売、ISBN 978-4-7859-7088-8
- 2022年9月1日発売、ISBN 978-4-7859-7224-0
- 2023年4月28日発売、ISBN 978-4-7859-7380-3
パチンコ
- CRナポレオン -獅子の時代-(2011年、豊丸産業)。