ブレンパワード
以下はWikipediaより引用
要約
『ブレンパワード』(Brain Powerd)は、1998年4月8日から11月11日まで、WOWOWで放送された日本のテレビアニメ。全26話。総監督は富野由悠季。
概要
本作は1996年秋頃から永野護と富野由悠季の間で進めていて、当初は長編映画の企画だった。その時点では監督・富野が感じるガンダム的要素が強かったようで、テレビ用企画への再編集を行う際にそういう要素を排除しつつ纏められていった。劇場版『新世紀エヴァンゲリオン』によるWOWOW加入者増加の追い風もあったこともあり、WOWOW初のオリジナルアニメとして、さらにテレビ放送を前提にまとめられ、本作品の放送が決定している。
また、『機動戦士Vガンダム』以降、精神的な疲労により、一線を退いていた富野由悠季が5年ぶりに制作したテレビアニメシリーズでもある。めったに自作を褒めることのなかった富野由悠季が自ら「第二のデビュー作」と語ったほど、自信を見せた。本作を「リハビリ」と公言した通り、富野自身の再生の過程でもあり、それまでの富野作品に見られたような殺伐とした雰囲気や残酷な描写は極力抑えられ、美しい自然を基調とした作風が本作の特徴の一つとなっており、この牧歌的な作風は『∀ガンダム』、『OVERMANキングゲイナー』へ受け継がれていく。放送期間と話数が合わないのはWOWOWの都合ではなく、製作したサンライズ第1スタジオと富野側の都合で、週1放送のペースに間に合わないことがあったからである。
ロボットデザインには『ファイブスター物語』の作者で『重戦機エルガイム』、『機動戦士Ζガンダム』といった富野作品でデザインを担当していた永野護を起用した。一方、キャラクターデザインには、いのまたむつみを起用。永野・いのまたが「メインデザイン」と連名になっているのは、「人物もメカもひっくるめてキャラクターであるわけだし、両方とも描ける人間が本来のデザイナーだと思う。だから、今のデザイナー志望の若い人には『専門のデザイナー』を目指すのは間違いだと言いたい」という永野の意向によるものである。永野はデザイナーとしての作業に専念して、演出・脚本には全く意見を挟まなかった。サンライズ・スポンサーからは「自由にやっていい」と言われたので、永野は「正に好き勝手にデザインした」と振り返っている。富野は、いのまたの描くような「大きな眼」のキャラクターが苦手であり、アニメーションデザインを担当した重田敦司にも眼を小さく描くように指示を出している。
オープニングは主人公が登場せず、メカも主役機においてすら僅かに1カット登場するのみであり、それに代わってメインに描写されているものは作品に登場する女性キャラクター(比瑪、カナン、ヒギンズ、コモド、アイリーン、クインシィ、シラーの7人)たちの裸体となっている。エンディングもまた写真家荒木経惟による植物の写真が映されるという、当時としてはユニークな構成となっている。それには富野由悠季が荒木経惟の作品や撮影スタイルに感銘を受けた上で、彼に会いたいという願望もあったという経緯がある。アイキャッチは長めで、リバイバルするプレートに登場人物の顔が次々と浮かび上がるというものである。アニメ技術的には、過去の富野作品・サンライズ作品、また、ロボットアニメで多用されていたストロボがほとんど使用されていないことが、特徴の一つである。
全般的に多彩な女性キャラクターたちが物語の主役であり、祖母、母、姉、妻といった女性の役割と、「女」としての自我が生み出す葛藤に苦しむ姿が如実に描かれている。各キャラクターは富野の過去作のそれに比べ、ほとんどの者が生還している。また、直子とゲイブリッジ、翠とジョナサンなど、大人の恋愛を直接的な性描写なしに露骨に表現している。
放送時のキャッチコピーは「頼まれなくたって生きてやる」。
WOWOWの加入契約促進ポスターは「普通のテレビじゃ、ここまでやれない」。
あらすじ
自然災害で荒廃した近未来の地球。海底で発見された謎の巨大遺跡オルファンを巡って、世界は混乱と争いに見舞われていた。オルファンを浮上させて宇宙への進出を目論むリクレイマーは、オルファンに呼応して世界各地に出現したプレートをリバイバルさせることで巨大人型兵器グランチャーを産み出し、戦力の拡大を図っていた。リクレイマーを指導する伊佐未ファミリーの一人伊佐未勇は同僚のカナン・ギモスと共にプレート回収の任に当たっていた。その際、プレートのリバイバルが始まり、グランチャーの宿敵ブレンパワードが産み出される。たまたまそこに居合わせた孤児の少女宇都宮比瑪がブレンパワード(ヒメブレン)と心を通わせる様子を見て、勇はある決意を固める。
それから月日が流れ、浮上を開始したオルファンにより事態はいよいよ深刻化していた。くり返される地震と津波により沿岸の都市機能は麻痺し、人類の多くは難民となっていた。比瑪はヒメブレンと共に、リクレイマーに対抗すべく国連主導で建造された新鋭鑑ノヴィス・ノアの一員となっていた。そんな比瑪の前に、水色のブレンパワード(ユウブレン)に乗った勇が現れる。勇はオルファン内で廃棄されていたブレンパワードと心を通わせ、オルファンを出奔したのだった。勇は祖母直子も乗り込むノヴィス・ノアに迎え入れられ、勇を追ってきたカナンもまた加わる。だが、身内から裏切り者を出したことに憤る勇の姉クインシィ・イッサー(伊佐未依衣子)は、勇をライバル視するジョナサン・グレーンと共に、容赦なき追撃戦を繰り広げ、戦いは激化の一途を辿る。
人々の意思が様々に交錯する中、浮上を続けるオルファン。直子、翠、依衣子の3世代にわたる根深い確執により、身内同士で争うことになった伊佐未ファミリー。一方、生き別れの息子を思うアノーア・マコーミックノヴィス・ノア艦長と、母親の愛情を受けずに成人し歪んだ情念を抱くジョナサンの親子。2組の家族の人間模様を軸にしながら物語は展開する。
登場人物
ノヴィス・ノア
伊佐未 勇(いさみ ゆう)
声 - 白鳥哲
本作の主人公。オルファン内で家族と共に暮らしていたが、彼らの主張に疑問を持ち、密かに調整していたブレン(ユウ・ブレン)でオルファンを出奔した後、比瑪と接触したことがきっかけでノヴィス・ノアに居つき、部隊の主力となる。思春期と複雑な家庭環境から神経質で自己中心的な面があり、当初は周囲と馴染めなかった。比瑪やクマゾーたちの無邪気さに触れる中で落ち着き、家族内の対立という狭い問題から、人類と地球を救うという大きな問題に目を向けることができるようになる。リクレイマー時代にコンビを組んでいたカナンを説得してノヴィス・ノアに寝返らせるが、その後はジョナサンやシラー、クインシィといったかつての仲間や肉親との戦いを続けていく。比瑪との関係においては挨拶と称して自らキスするなど積極的な反面、なかなかうまくかみ合わず擦れ違うが、戦闘においては最高のパートナーとして能力を発揮する。ほとんど全編を通し、白いハイネックのシャツに青いジャケットというスタイル。
宇都宮 比瑪(うつみや ひめ)
声 - 村田秋乃
本作のヒロイン。天真爛漫な性格で誰からも愛される少女。ほとんど全員から「比瑪ちゃん」と呼ばれる。ブレンやオルファンのような無機生命体を人間同様に扱い、意思疎通ができる不思議な少女。孤児院でクマゾーらと暮らしていたが、ヒメ・ブレンのリバイバルに立ち会い適任者となる。その後ノヴィス・ノアの乗員となり、勇とノヴィス・ノアとの繋がりを作った。両親と死別しているが、孤児院で親代わりとなった教師らの許、屈折したところのない明るく逞しい少女に育っている。孤児院ではクマゾーら年少者の世話をしていたことから、面倒見がよく世話好きで、時として過干渉だが、そんな彼女の持つ優しさが、不幸な過去を背負い孤立しがちな勇をはじめとするノヴィス・ノアの人々を支えた。恋愛に奥手で子供じみた所があるが、感情をストレートに表現できる。服装には頓着がなく、Tシャツに作業ズボンが基本。
アノーア・マコーミック
声 - 磯辺万沙子
ノヴィス・ノア艦長。部下や乗務員をまとめる厳しい性格。ジョナサンの母(精子は精子バンクのような所からの提供)だが、仕事にかまけて交流が乏しかったため心が通い合わず、生き別れになっていた。彼女自身はジョナサンを気にかけていたが、ジョナサンが潜入してきた際に心情をぶつけられ、精神的に不安定になり、最後は半ば自暴自棄になって自らプレートの捕獲を試みた際、プレートの暴走に巻き込まれ行方不明となる。
カナン・ギモス
声 - 朴璐美
元リクレイマー。オルファンでは勇とコンビを組んでいた。勇を追い、オルファンへ連れ戻そうとするが、裏切りと判断されてシラーに撃墜され、比瑪に助けられノヴィス・ノアに投降する。勇とはパートナー以上の関係だったことが示唆されるが、勇は恋人ではないと否定している。両親から望まれて生まれてこなかったという境遇が枷になり、自分の殻に閉じこもる場面もあった。しかし勇を突き放してラッセの好意を受け入れ、自らの生を見つめ直してゆく。勇に対し姉のように振る舞うため、比瑪との三角関係には発展しなかった。双子のブレンと出会ったことで本来の素直な自分を取り戻し、ノヴィス・ノアの中核として活躍する。ファッションセンスは奇抜で、首に赤いスカーフがトレードマークだが、着物や帯を愛用する。
ラッセ・ルンベルク
声 - 三木眞一郎
北欧系で金髪細身の二枚目。ナンガとコンビを組むことが多い。白血病を患っているが、すでに作中の時代では治療可能な病気になっていたにもかかわらず、ある決意から放置したままにしている。自らの犠牲を省みない無謀な戦法を採っていたが、カナンとの関係が深まる中で考えを改め、生きようという意志を示す。
ナンガ・シルバレー
声 - 辻親八
大柄なラテン系。天真爛漫で本来戦闘には向かない比瑪や、無謀なラッセを支える兄貴分。ドレッドヘアーとピアス、金のロザリオが特徴。また夜でもサングラスをかけているが、はずすと頑強な見た目に反してつぶらでかわいい目をしている。助けたことがきっかけとなり、コモドと良い関係になる。
ヒギンズ・サス
声 - 川村万梨阿
初期はキメリエスの艦載艇・コンガイールのパイロットだったが、途中からブレンのパイロット候補生としてノヴィス・ノアのクルーとなる。双子ブレンのリバイバルに立ち合い、片方とアジャストする。レイト艦長とは熱烈な恋人同士であり、その迷いのない積極性がカナンを促した。共に双子のブレンを操るカナンとは良いコンビで、私生活でも仲が良いライバル。胸に薔薇のタトゥーをしている。黄色を基調としたパンツスタイルが基本で、女性用戦闘服を除きスカートを履いている場面はほとんどない。小柄でスレンダー。
ユキオ / クマゾー / アカリ
コモド・マハマ
ウィンストン・ゲイブリッジ
声 - 佐古正人
理知的な人物で、常に自己の信念と理想に基づいて行動している。元アメリカ軍第7艦隊司令長官。オルファンの第一次調査に参加している。いち早くオルファンの危険性を警鐘し、その対抗策としてオーガニックエンジンの試験艦としてノヴィス・ノア建造を提案し、建造後は同艦の司令官となる。なお、勇の祖母・伊佐未直子とは旧知の仲であり、ノヴィス・ノアでそれを知らない者はいない。青年時代には伊佐未直子と交際しており、彼女にプロポーズをしているが、アメリカに帰る際に別れることとなった。実はリクレイマーの指導者「ガバナー」であり、オルファンをアメリカの53番目の州として属領とすることに成功すると、正体を現してオルファンに帰還する。
アイリーン・キャリアー
声 - 名越志保
ノヴィス・ノアの医師。整体師でもあり、鍼・灸の心得がある。後に「体の全てを見られているから」という理由で艦長代理に就任する。アノーア艦長とは違うまとめ方で、クルー達の評判は良かった。副官の補佐もあり、オルファン側との戦闘もこなした。保身家の俗物と見て当初は眼中になかったモハマドが男気を発揮していくのを見届けた。
ナッキィ・ガイズ
声 - 冬馬由美
3体のブレンと1体のグランチャーを連れてノヴィス・ノアにやってくる。グランチャーとブレンを同時に操ることができた。少年期は貧しく、母親にケーキを盗んで届けようとするも叶わなかったなど暗い過去を持つ。そのため皮肉屋で、初めは周囲との距離をとって行動することが多かった。比瑪たちの明るさに助けられ、仲間たちとの共闘を模索するようになり、ノヴィス・ノアに溶け込んだ。主にカントとコンビを組む。中期以降の主力パイロット。服は黄色や黒を多用した毒々しい色合い。
カント・ケストナー
声 - 佐々木るん
10歳で博士号を取得した天才少年。彼自身は周囲の子供達と普通の友達としての付き合いを望んでいたが、周囲からは敬遠されていた。オルファンを一個の生命体と捉え、その真意が人類を滅ぼすものでも地球環境を破壊するものでないと結論する。自らの仮説を証明するため、世界を救うため、また知的好奇心からブレンのパイロットとなる。誰に対しても敬語を使う。セーラー服のような上下揃いの服(半ズボン)を愛用しているので、女の子のように見える。
レイト
声 - 中村秀利
潜水艦キメリエスの艦長。スキンヘッドがトレードマーク。ヒギンズとは深い愛情でつながっており、戦闘用意の召集が掛かっている時に艦長にキスをしているところを見られても、言い訳をするどころか堂々と胸を張っているほど。混迷の時代に生きる逞しい人物。
ノヴィス・ノア副官
オルファン
バロン・マクシミリアン
クインシィ・イッサー / 伊佐未 依衣子(いさみ いいこ)
声 - 渡辺久美子
勇の姉であるが、勇とは違いオルファンの熱烈な主義者。勇に対しては姉らしい気遣いを見せる一方、主義に執着しているため、オルファンへ戻ってくることを願っている。勝ち気で短気。オルファンに選ばれた存在として両親とも対立する。ジョナサンとは恋愛とは違う利益関係で繋がっている。「クインシィ・イッサー」は、「女王として相応しい名」としてジョナサンから与えられたものであり、依衣子という本名を嫌い、自ら名乗る。彼女のグランチャーは数々の戦闘で傷つき、遂にはノヴィス・ノアに拿捕される。そこで勇と和解し、クマゾーらとの交流で頑なだった自分を反省し、優しさを取り戻すが、自分を愛するグランチャーの求めでオルファンに復帰、再リバイバルでバロンズゥに進化する。伊佐未家3代の女性につきまとう運命に翻弄される。小柄でヒギンズほどではないがスレンダー。ノヴィス・ノアに滞在していた時の私服は可愛らしいワンピースで回想に登場した祖母・直子の若い頃によく似ている。
ジョナサン・グレーン
声 - 青羽剛
オルファンのグランチャー乗り。幼少期の孤独で不幸な体験から、母アノーアに対して愛憎入り混じったマザーコンプレックスを持ち、鬱屈した性格になっている。クインシィ・イッサーら伊佐未ファミリーを手中にし、オルファンを我が物にする野望を持っている。翠とは愛人関係にあり、クインシィをも自分の意のままに操ろうとする。パイロットとしての腕は立つが、勇との対決では直情的になり敗北するシーンが目立った。戦闘の際の特徴的なセリフや上目遣いのいやらしい目線、わきわきと指を動かす仕草が印象的。宿敵・勇の前に敗北を重ねていたが、バロン・マクシミリアンと出会い、バロンズゥを託されたことで自分の素質を自在に扱えるようになった。
勇と様々な部分で対称的なキャラクターであり、ライバルとしてだけでなく「家族」に関しても勇と通ずるところが少なからずある。また、コンプレックスをストレートに口にしたり、普通は言えないような相手の弱みに付け込んで舌戦を見せたり、独特なセリフ回しをする。
シラー・グラス
声 - 田中敦子
グランチャー乗り。貧しい育ちで、弟妹たちを育てるためオリンピックに出場して賞金で養おうとしたが飢え死にさせてしまったという、物語中でもかなり悲惨な体験をしている。そのため、宇宙に出て理想の世界を手に入れるべくリクレイマーとなる。伊佐未家の人間を憎んでおり、離反した勇やかばうカナンに敵意を募らせる。かなり筋肉質。
伊佐未 研作(いさみ けんさく)
伊佐未 翠(いさみ みどり)
声 - 叶木翔子
勇と依衣子の母親でオルファンの研究者。口先では2人の子供を気遣うが、夫と共に研究材料として扱うことがほとんどであり、母の直子を体よく利用したりと我が儘な面が目立つ。その結果、家族関係が崩壊してしまっている。オルファンに取り憑かれた夫をサポートする一方で軽蔑している。幼くして父を失ったことで、男を利用しようとする打算的な女に成長するが、女であることを捨てきれず、ジョナサンと肉体関係を持っていた。
ケイディ・ディン
声 - 千葉一伸
最初期のグランチャーパイロット。作戦行動中にカナンを誘惑しようとするが、その言動はオルファンの抗体として浸食が進んだものであり、かえってカナンを不安にさせた。直子の家を爆撃したことで、怒った勇に撃墜される。後半ではノヴィス・ノアにスパイとして潜入し、改心したのかいつの間にかノヴィス・ノアのスタッフになっていた。子供達にドーナツを作ってやるなど懐かれており、投降して身を寄せていたクインシィを呆れさせた。ちょんまげと点のような目が特徴。
エッガ・ブランカン
声 - 難波圭一
リバイバルしたばかりのグランチャーにアジャストするも、力を制御できず取り込まれて暴走し死亡する。名前の付いた登場人物で死が描かれたのは彼一人である。ジョナサンたちを倒して自らがオルファンの指導者となるという野心を持っていた。
フィジシスト
ヌートリア艦長
その他の登場人物
ネリー・キム
声 - 高萩晴子
自らの死期を悟り、家族と別れ人里離れた土地で一人で暮らしていたところ、勇と出会う。後にブレン同士の再リバイバルに巻き込まれ、ブレンと一つになる。名前の由来はソビエトの体操選手ネリー・キム。
伊佐未 直子(いさみ なおこ)
ミスターモハマド(漫画版ではムハマド)
声 - 塩屋翼
アラブ系の大富豪。ノヴィス・ノアを訪れ、莫大な金塊で避難船として買い取ろうと持ちかけた。しかしそれは自らの保身を考えていたわけではなく、彼なりの信念を持っての行動であり、特に子供達のことを真剣に考えていた。アイリーンに好意を持ち、積極的に迫る。
源野 三尾(みなもとの みつお)
桑原(くわばら)
伊佐未 勇(いさみ いさむ)
オルファンの少女
アンチボディ
作中に登場する大きな人型の存在を「アンチボディ」または「オーガニックマシン」と呼ぶ。「アンチボディ」とは本来、「抗体」を指す医学用語である。
オーガニックエナジーと呼ばれる、動植物の生体エネルギーで動く。人間で筋肉に相当する部分は、多層積層の板ばねのようになっており、弾性力を蓄勢させて行動する。
バイタル・グロウブ(=オーガニックエナジーの流れ)に乗って、超高速移動「バイタル・ジャンプ」を行うことができる。移動する距離が長いほど、エネルギーの消費は大きくなる。
一見いわゆる「巨大ロボット」だが、多少の傷なら自然に治癒したり(ただし、足や腕を失うなどの大怪我を負った場合は元には戻らず、義足や義手をつけて運用される)、意思を持っていたりと生体のような特徴を持っている。
アンチボディはいずれも、プレートと呼ばれる巨大な円盤から「リバイバル(再生)」することにより生まれる。ごく稀ではあるが双子も誕生する。リバイバル時、ブレンパワードはブレンバー、グランチャーはソードエクステンションという武器も一緒にリバイバルする。
ブレンパワード
「ブレンパワード」とはアンチボディの一種で、劇中では大抵ブレンと略される。リクレイマーの使用するアンチボディ「グランチャー(Grand Child)」とは対立している。
リバイバルに立ち会った人間をコクピット(人間の子宮の場所に当たる部分)に搭乗させる。各個体は基本的に初めて搭乗した者の名を付けて「〜ブレン」と呼ばれる。言葉は発しないが、目やコクピットの筋状の溝に光を明滅させることで意志や感情を示す。ブレンの特徴は長く突き出したウサギ耳型の二本角にある。
ユウブレンは勇猛、ナンガブレンは臆病など、個体差がある。意志を持って自律行動をとったり、混乱や恐怖から迷走したり、時にはパイロットに逆らって行動する。また、デッキブラシで擦られ、手入れされて喜ぶという一面も見せた。パイロットは機体を操作するだけでなく、ブレンを褒めたりなだめたり励ましたりして戦うのが基本。他のブレンとの合体攻撃を使ったり、協力して大規模な防壁を展開することもできる。
ユウブレン
ヒメブレン
ラッセブレン(初代)
ナンガブレン
ブレンチャイルド(カナンブレン)
ブレンチャイルド(ヒギンズブレン)
ネリーブレン
ナッキィブレン
ラッセブレン(2代目)
カントブレン
グランチャー
グランチャーはブレンパワードに比べて気性が激しいと言われている。また、グランチャーが突然変異したものに「バロンズゥ」がある。
グランチャーには搭乗者ごとの呼称は無い。
グランチャー(ジョナサン・グレーン)
グランチャー(クインシィ・イッサー)
グランチャー(シラー・グラス)
グランチャー(カナン・ギモス)
グランチャー(エッガ・ブランカン)
グランチャー(ケイディ・ディン)
グランチャー(伊佐未勇)
グランチャー(ナッキィ・ガイズ)
アーミィグランチャー(米軍パイロット)
バロンズゥ(ジョナサン・グレーン、バロン・マクシミリアン)
クインシィ・バロンズゥ
武器・装備
ブレンパワード用
ブレンバー
ブレンブレード
ショーター
ミサイルランチャー
マイクロウェーブ発振器
チャクラシールド
チャクラベルト
グランチャー用
ソードエクステンション
ブレードヒルト
ミサイルランチャー
プレート運搬用ワイヤー
義手
スタンバー
バロンズゥ用
変形翼
メカニック
ノヴィス・ノア
イランド戦闘機
V5ウェッジ
双胴潜水艦キメリエス
機動艦載艇コンガイール
オルファン
映画版企画時からの全富野メモ共通のラストは、オルファンのオーガニック・エンジン的なものが地球のエネルギー問題の解決になる、というのであったが最終的にそこの部分はぼかされることになった。
用語
アンチボディ
オーガニック・プレート
オーガニック・エナジー
抗体
ビット
スリットウエハー
チャクラ光(チャクラフラッシュ)
リバイバル
フリュイドスーツ
リクレイマー
バイタル・グロウブ
ビー・プレート
スタッフ
本作では「キャラクターデザイン」「メカニックデザイン」という名称はなく、両者を合わせてメインデザインと称されている。
- 企画 - サンライズ
- 原作 - 矢立肇、富野由悠季
- 総監督 - 富野由悠季
- メインデザイン - いのまたむつみ、永野護
- アニメーションデザイン - 重田敦司
- メカニカルデザインサポート - 沙倉拓実
- 美術監督 - 佐藤勝
- 美術設定 - 平澤晃弘
- 色彩設定 - 加瀬結起
- 撮影監督 - 大神洋一
- 編集 - 辺見俊夫
- 音響監督 - 浦上靖夫
- 音楽 - 菅野よう子
- メインロゴデザイン - 熊川明久
- エンディングスチル - 荒木経惟
- プロデューサー - 富岡秀行、海部正樹、池口和彦
- 製作 - サンライズ、WOWOW、バンダイビジュアル
主題歌
オープニングテーマ「IN MY DREAM」
エンディングテーマ「愛の輪郭(フィールド)」
挿入歌「天神さんの子守唄」
CMソング「Light of love」
各話リスト
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 |
---|---|---|---|---|---|---|
第1話 | 1998年 4月8日 |
深海を発して | 面出明美 | 斧谷稔 | 森邦宏 | 重田敦司 |
第2話 | 4月15日 | 運命の再会 | 富野由悠季 浅川美也 |
原田奈奈 | 戸部敦夫 | |
第3話 | 4月22日 | 勇の戦い | 渡邊哲哉 | 重田敦司 | ||
第4話 | 4月29日 | 故郷の炎 | 隅沢克之 | 西森章 | 小林智樹 | 津幡佳明 |
第5話 | 5月6日 | 敵か味方か | 面出明美 | 越智浩仁 | 佐久間信一 | |
第6話 | 5月13日 | ダブル・リバイバル | 富野由悠季 高橋哲子 |
斧谷稔 | 森邦宏 | 戸部敦夫 |
第7話 | 5月20日 | 拒否反応 | 富野由悠季 浅川美也 |
原田奈奈 | 瀬尾康博 | |
第8話 | 5月27日 | 寄港地で | 面出明美 | 西森章 | 津幡佳明 | |
第9話 | 6月17日 | ジョナサンの刃 | 隅沢克之 | 土器手司 | 渡邊哲哉 | 重田敦司 |
第10話 | 6月24日 | プレートの誘惑 | 富野由悠季 高橋哲子 |
越智裕仁 | 筱雅律 | |
第11話 | 7月1日 | 姉と弟 | 面出明美 | 西森章 | しんぼたくろう 中田栄治 | |
第12話 | 7月8日 | 単独行 | 富野由悠季 | 西森章 | 斧谷稔 森邦宏 |
佐久間信一 |
第13話 | 7月22日 | 堂々たる浮上 | 隅沢克之 | 竹之内和久 | 岩崎良明 | 戸部敦夫 |
第14話 | 7月29日 | 魂は孤独? | 面出明美 | 川瀬敏文 | 渡邊哲哉 | 津幡佳明 |
第15話 | 8月5日 | 一点突破 | 富野由悠季 高橋哲子 |
越智浩仁 | しんぼたくろう 中田栄治 | |
第16話 | 8月12日 | 招かれざる客 | 富野由悠季 浅川美也 |
西森章 | 真野玲 | 瀬尾康博 |
第17話 | 8月19日 | カーテンの向こうで | 面出明美 | 赤根和樹 | 森邦宏 | 佐久間信一 |
第18話 | 8月26日 | 愛の淵 | 山内重保 | 西森章 | 重田敦司 | |
第19話 | 9月16日 | 動く山脈 | 富野由悠季 高橋哲子 |
香川豊 | 渡邊哲哉 | しんぼたくろう 中田栄治 |
第20話 | 9月23日 | ガバナーの野望 | 隅沢克之 | 南康宏 | 佐久間信一 | |
第21話 | 9月30日 | 幻視錯綜 | 西森章 | 筱雅律 | ||
第22話 | 10月14日 | 乾坤一擲 | 浅川美也 | 森邦宏 | 瀬尾康博 | |
第23話 | 10月21日 | スイート・メモリーズ | 富野由悠季 高橋哲子 |
越智浩仁 | しんぼたくろう 中田栄治 | |
第24話 | 10月28日 | 記憶のいたずら | 隅沢克之 | 赤根和樹 | 渡邊哲哉 | 佐久間信一 |
第25話 | 11月4日 | オルファンのためらい | 面出明美 | 香川豊 | 南康宏 | 戸部敦夫 |
第26話 | 11月11日 | 飛翔 | 西森章 | 重田敦司 |
メディア展開
漫画版(角川書店・連載は月刊少年エース)
小説版(ハルキ文庫)
ゲーム
その他
- この作品でデビューした声優の朴璐美は『∀ガンダム』で主人公ロラン・セアックを演じた。
- 本作はWOWOW初期の有料アニメ(スクランブル放送)である。
- 「企画初期の富野のメモでは、ブレンは奥多摩のヘルスセンター地下で作られた気孔(気功の誤記か)で動くロボットで、勇はそこの合気道道場へ通って気孔を身につけているという設定だった」と河口佳高が語っている。その後、河口の意見と永野護のアイデアが採用されて、設定が変更されたらしい。
- 一部キャラクターの名前は、監督である富野由悠季自身や家族が由来となっている。
- 伊佐未勇=富野由悠季の「由」
- 伊佐未依衣子=著書『だから僕は…』等での長女「富野アカリ」の仮名「衣々子」
- アカリ=富野の長女「富野アカリ」
- ユキオ=富野の次女「富野幸緒」
- クマゾー=富野の飼っている犬「熊三」
- 富野はコンテ段階で、アンチボディを飛行させる時に立たせたポーズを取らせていた。しかし、現場の演出家が、富野に無断で横飛びのポーズに変えてしまった。これは「その演出家が悪い」という失敗談ではなく、かつてのガンダムシリーズなどで「飛行しているロボットが突っ立ったポーズをしているというコンテを無数に修正してきた」という富野と、それを知るスタッフ達全体の「リハビリ」を端的に示したエピソードであり、同書では「演出を考える時に別の判断基準を持ち込まない」という事の教訓として語られている。作中のアンチボディは、立ち飛び・横飛びの両方をしており、横飛びと言えそうな飛行シーンは第1話からある。
- 伊佐未勇=富野由悠季の「由」
- 伊佐未依衣子=著書『だから僕は…』等での長女「富野アカリ」の仮名「衣々子」
- アカリ=富野の長女「富野アカリ」
- ユキオ=富野の次女「富野幸緒」
- クマゾー=富野の飼っている犬「熊三」