妖怪の飼育員さん
漫画
作者:藤栄道彦,
出版社:新潮社,
掲載サイト:くらげバンチ,
レーベル:BUNCH COMICS,
発表期間:2015年3月27日 -,
巻数:既刊13巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『妖怪の飼育員さん』(ようかいのしいくいんさん)は、藤栄道彦による日本の妖怪コメディ漫画。新潮社のウェブコミック配信サイト『くらげバンチ』にて2015年3月27日より掲載が開始された。動物園を模した妖怪園を舞台に、そこで飼育、公開されている河童、牛鬼といった妖怪たちと新人飼育員の奮闘を描き、妖怪たちの生活と現代人との対比によって「人間」を浮かびあがらせる。
妖怪を題材とする漫画は数多く存在するが、妖怪が施設で展示されているという設定は珍しい。数多くの妖怪を登場させる舞台としてはうってつけだとフリーライターの川俣綾加は指摘する。また、川俣は本作を“展示系”妖怪コメディ漫画と呼んでいる。本作では妖怪を生物として捉えることで、描写をリアルにすると共に魅力的に描写している。また、鬼、天狗、雪女などといった人間型の妖怪が見世物となって妖怪園にいる理由付けもされている。
OBSラジオ番組『アニマジン』(2016年10月2日放送回)で本作が採り上げられ「ネット上では早くもアニメ化を希望する声がある」と紹介されている。
『月刊コミック@バンチ』2016年1月号(2015年11月21日発売)に出張版が掲載された。
あらすじ
妖怪が普通に人間と共存している世界。その世界ではどの大都市にも必ず一か所ほど妖怪たちと触れ合える妖怪園が営まれている。
舞台となる西東京妖怪公園でも鳥月日和たち飼育員が妖怪たちの世話をしながら客たちとの対応に追われる日々を過ごしている。
一方、烏天狗の青北風は海外の妖怪の侵入に気づき、戦いに備えるべく知人の妖怪の助けを求め始めていた。
主な登場人物
西東京妖怪公園の飼育員
鳥月 日和(とりつき ひより)
陸奥 吾郎(むつ ごろう)
平木 直穂梨(ひらき なおり)
大源 壮悟(たいげん そうご)
コミックス2巻26話から登場した新人飼育員。人間の女性よりも妖怪の女性を好み、園内外の女性妖怪にアプローチする。
身体は丈夫で、大きな怪我や病気とは縁がなく、生半可なことでは死なないので、体を張る危険な仕事を任されることも多々ある。嫉妬深い寒梅にしばしば刺されているが、それでも元気に働いている。
気が多く、園内のほとんどの女妖から言動を気味悪がられる。妖怪なら老婆や明らかな人外まで愛せるが子供は恋愛の対象外で、現役中学生のつぶらや見た目が幼い色鳥には手を出さない。女性妖怪への異常な偏愛を除けば、仕事ぶり自体はいたって真面目である。
コミックス2巻の著者後書きページに依れば、鳥月は能動的に動くタイプではないので、能動的に動いてストーリを展開させやすい登場人物として大源を登場させたとのこと。キャラクターデザインは『サイボーグ009』の009との類似性を著者自らが後書きページでネタにしている。
登場する主な妖怪
複数話に登場している妖怪、固有名を持つ妖怪のみを挙げる。
すねこすり
雪女
つらら女
烏天狗(からすてんぐ)
主に関東や信州に生息する、日本古来の天狗。人間とは比較にならないほど長命であり、剣術の達人で、知能も高く、空を飛び、神通力も持つ。気位が高いので、人間を相手にしないことも多い。
固有名は青北風(あをぎた)。またの名を「鞍馬山僧正坊」といい、茶の花や神野悪五郎からは「鞍馬山」の通称で呼ばれる。園では比較的新参者だが、少なくとも平安時代以前から生きているらしく、遮那王とも面識があり、巌流島での宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘も目撃している。
剣術の達人で、普段は長い寿命を活用して書や剣術の修練をしている。自分よりアホな人間が運営する妖怪園に留まっているのは、人間が身の回りのことをやってくれるので作業に集中できるからではないかと言われているが、真偽は不明。職員を無視して作業に没頭することもあるが、愚かで短命な人間に対して寛容であり、客から無礼があっても見逃す。
ナタリアの弟子入りを渋っていたが、鳥月のアドバイスで態度を改めるようになったのを見て剣術の指導を始め、精神修養についても説く。また、九尾の狐の襲撃以来、世界中の妖が動き回る時が来ていると危惧しており、悟色に術を教えたり、全国の妖怪園を回って様子を確認し、神野から配下の魔物を借りて戦力を整えようと動いている。
ケンタウロス
神話にも登場するギリシャ出身の半人半馬。本来は気の良い性格をしているが、気性が荒っぽく、人間関係でモメることが多いため日本国内の妖怪園にはほとんどいない。多くは粗暴で好戦的だが、高い知能を持つ者もいる。馬と同じで足の骨折は致命傷になり、蹄葉炎を発症して死に至る。
閉園になるギリシャのモンスターランドから、自らの希望によって父親と娘とで西東京妖怪公園に移住してきた。固有名は父がハリー、娘がナタリア。
ハリーは鬚をたくわえ眼鏡をかけたカーネル・サンダースにも似た紳士然とした人物 であるが、いざという時には眼鏡を外しテンガロンハットと裸にベスト衣装のテキサス・ブロンコと化す。大変な親日家で、前年に妻を亡くしたことを機に、娘に礼儀作法を身につけさせるべく昔からの友人である陸奥を頼って日本へ移住する。
ナタリアは文字通りのジャジャ馬な性格。来園時に河童たちにケンカを売ったが、青北風と寒菊に懲らしめられる。その際に脚を骨折するが、河童から秘薬を提供されて快癒する。以降、青北風に弟子入りを志願。最初のうちは青北風から「何のために剣術を学ぶのか」「教わる心根ができていない」と言われて断られたが、その後、鳥月のアドバイスによって、いっしょに剣の素振りをするようになり、直接の指導も受けられるようになった。師匠が強すぎるせいであまり実感できていないが、数年の修行で着実に強くなっており、剣道有段者の太源に勝つほどに成長している。
なお、同じモンスターランドにいた同朋たちはサーカスに再就職して世界中を回っている。
石猿
火山島の仙石から生じた卵から生まれる猿の妖怪で、孫悟空の同類。人類史上たった2匹しか確認されていない神話級の妖猿である。
固有名は悟色(ごしき)。西之島の噴火から生まれ、船に忍びこんで東京までやって来た。名付け親は青北風で、由来は空即是色と孫悟空のもじり。来園当初は人の頭くらいの大きさしかない子猿で、素質はあっても修行していないので孫悟空ほど多彩な術は使えなかったが、呑み込みが早いらしくすでに体毛から分身を作り出す身外身の法を使うことができ、青北風に師事して雲に乗る術などを教わっている。
鳥月に懐いており、彼女しか世話ができない。肉親を持たないためか、一時期両親のいる子供を羨んでいたずらをしかけることが多くなった。
座敷童(ざしきわらし)
鬼族
あやかし一般の呼称ではなく、いわゆる角を生やして金棒を持った「鬼」。正式名称「ニホンオニ」。雄は平均で身長280センチメートル、体重500キログラムくらいになる。本州・四国・九州に生息する。契約によって園で生活しているタイプであり、園の鬼ヶ島エリアで展示されている。
発声器官の違いから人間の言葉を発することはできないが、手話による意思の疎通は可能で、人間のスマートフォンなどの操作も行える。共通の性格として、欲望に正直で、ちょっと抜けていて、お人好しであり、昔話で最終的に人間に出し抜かれるのもそのためである。なおかつ非常に神経質で、節分の豆まきや柊鰯を怖がるのは自分が拒絶されているのを理解してしまうから。人間を襲う事故が発生することもあるが、これは人間が鬼のテリトリーを荒らすのが原因で、現在はかなり数を減らしている。
食事と飲酒と花札遊びを好む、平和的な性格。契約には1人1日あたり馬肉や鹿肉を5キログラム、玄米10キログラム、半斗の酒の供給も含まれる。時に人間も食べる対象となるが、前述の神経質さから好んで食べようとはせず、中年男性が自殺志願で自分を食べろと乱入した際には「ヤニ臭いので食べられたものではない」「なにか病気を患っていそう」「子供には安全な食材を食べさせたい」などの理由で食べるのを拒否していた。
衣装はフェイクファーであり、伝統的な虎縞柄が好まれているが、若い女性の鬼族のなかには豹柄、キリン柄なども流行っている。野生下では本来鹿などの毛皮を着る。
集団生活し、仲間内でケンカすることもあるので、自分より大きい相手に勝つための戦い方を身につけている。
二口女(ふたくちおんな)
人間が妖怪化したもので、後頭部にもう一つ口があり、髪を手のように動かして口に食べ物を運ぶ千葉県の妖怪。民話では継子を憎んで餓死させた母親が変化するとされ、最近の医学会では感染症の一種だと言われているが、原因は不明。物を食べない嫁を欲しがる男の所に山姥が化けた二口女が来たという昔話もあり、その話では食べ物を全部食べられてしまったという。
人間名は須田 美奈(すだ みな)。別に継子殺しをしたこともなければ、周囲に他に妖怪化した人間もいない。平日は普通のOLとして企業に勤めており、週末と祝日のみ妖怪園でショーに出演している。これは後頭部の口が食べる莫大な食費を負担してもらうことと引き換えの契約である。
濡れ女
コロポックル
日本人魚
スクーグクロー
北欧出身の樹木の妖怪。背中が樹木状であり樹洞のような穴も空いているが、服を着てしまえば人間の女性と見分けがつかない。光合成で栄養を賄えるので食事は不要だが、冬季(11月〜3月)は温室の中で過ごす必要があり、光合成ができない雨の日は体調が崩しがち。人間の男性にとても好意的で、たき火の番をしてくれたり幸運を与えてくれたりするが、見返りに愛を求める。
固有名はマーヤ。スウェーデンからマンドラゴラ飼育の技術指導のために来ている。自分の背中にコンプレックスがあり、他人に体を見せたがらない。梅雨が苦手。例によって大源に言い寄られ、本人も最初は満更でもなかったが、さとりによって「冬季は寒梅、夏季にマーヤと時期をずらして付き合える」という本音が暴露されたため、懇々と人の道を説くことになる。
ぬらりひょん
単眼族
文字通り単一の大きな目を持つ、俗に言う「一つ目小僧」で、妖怪を代表する存在。全国に生息しており、出会って顔を見ると驚くが、人間に危害を加えることは無い。種族特性として「5.0が普通」と言われるほどの優れた視力を持つが、人間同様に不摂生で視力を低下させてしまうこともある。
一族で園に住んでいる。単眼であること以外人間と大差はなく、感性も人間に近いことから、ボランティアとして、来園客の案内係や、園内の妖怪と職員の橋渡し役も務める。
つぶらは園から人間の中学校へ通学している13歳の少女。漫画が大好きで、漫画談議になると熱が入りすぎるので学校では少し浮いているが、同級生たちからは好かれている。最近は『無用ノ介』にハマっている。BL漫画の執筆が密かな趣味。ただ趣味に耽りすぎて視力と成績が落ちている。大源からは中学生であることを理由に守備範囲外と認識されている。創作活動をしているからか、語彙が豊富。
さとり
河童
日本人にとって一番身近な水辺の妖怪。呼称は「かわわっぱ」が変化したもの。頭の上にお皿があり、お辞儀をするとお皿の表面の水が落ちて力が抜けてしまう。相撲好きで、仲間内でも相撲をとって遊ぶ。本場所開催期間はテレビの前に群がっているため、鑑賞には適さない。知能は高く、人間と意思の疎通も取れる。食事は鮎などの鮮魚と胡瓜などの野菜を好む。
打ち身や骨折をあっという間に治癒してしまう「河童の秘薬」(別名「猫山アイス」「岩瀬万能薬」)と呼ばれる薬を製造している。人間に接骨法を教えたとも言われる、いわば「骨折のプロ」であり、陸奥が匙を投げたケンタウロスの骨折でも1週間で治す。
冬期は毛が伸び、冬眠形態の山童となる。手足と口先以外は長い毛に覆われるので、1ツ目にも見える。この形態でも動くことはでき、山中で木こりの仕事を手伝ってくれたりもする。
集団で飼育エリアに住んでいる。冬眠中は展示されず、上記の通り本場所中は鑑賞には向かないので、見に来るなら4月・6月・8月が最適。
河童が属する水霊長類は妖怪の中でも群を抜いて種類豊富であり、下位分類に河童属・川猿属・川男属がある。河童科の中で最小の妖怪は、身長5cmほどの「浪小僧」である。
吸血鬼
世界各地に伝承の見られるポピュラーな吸血妖怪。蘇った死者、もしくは不死の妖怪で、小説『吸血鬼ドラキュラ』が有名。特にキリスト教文化圏では宗教上の理由から迫害の対象となり易いため、妖怪園に住んでいるのはそうした偏見の少ない日本だけとされている。
医学的には死んでいるアンデッドなので食事は必要ないが、1日500ccほどの血液を摂取する。他の吸血妖怪同様、食事が特殊なことが妖怪園でもネックになっており。血液感染由来の病気も罹患する可能性がある。不死性があるため病気で本人が死亡(消滅)することはないが、永遠に病苦にさいなまされる。血を吸われた人間も吸血鬼になるとされるが、吸血対象の吸血鬼化については「起こりうる」程度で確実ではない模様。
吸血鬼の女性ドロシーはアメリカで暮らしていたが、今の大統領になってから移民や異種族への風当たりが厳しくなってきたことから来日。食事の確保のため、平木のアイデアに基づき「吸血鬼アイドル」として売り出され供血を募った。その縁で防衛大が開発した代替血液を提供してもらえるようになる。
デュラハン
アイルランドに伝わる死を司る魔物。首のない男の姿をしていて、首のない馬が曳く馬車に乗る。自分の首を抱え、人の家を周り、死が訪れることを告げるとされる。乗っている馬車は水を渡れないので、川を渡って逃げると助かるという。姿を見ると目を潰される。重力の制約を受けないので宙に浮くことができる。
固有名はキリアン。剣の達人であり、真っ二つに斬られたハエが死んだ事に気づかず動き続ける程で、青北風も力量自体は認めている。長い年月をかけて人の登れぬ高みに至り、その技を比べることを望んで、世界各地を回り強者を探して決闘を繰り返している。かつては人間も相手にしていたが、せいぜい50年程度しか修練を積めない者を相手にするのに飽きて、現在は妖怪の強者を探している。他人と比べなければ実力を計れない精神的な未熟さを持つが、本人は気にしていない。青北風との決闘を望んで来日し、接戦の末に相手の得物を弾いて勝利を確信したが、密かに恋人の復讐を誓っていたソフィアに背後から刺されて絶命する。
魔
神野 悪五郎(しんの あくごろう)
「稲生物怪録」に名前の出てくる魔物の王の一柱。真野・神ン野とも。明確な意思を持つ魔としては異質な存在。魔の長としてはまだ歳若く、すぐにカッとなるのが欠点。
海外の妖怪による日本侵攻に備えて、青北風が茶の花を通して協力を依頼する。500年前から青北風とは折り合いが悪く、依頼は物別れに終わりそうになったが、自身の感性を正確に理解してみせた鳥月に興味を抱き、彼女個人を対象に支援を行うことを決めて、刑天・太歳との戦いで餓者髑髏を貸し与える。
その後、山本から人間に対する理解、考察の不足を指摘されたため、力を大幅に削いで人間・亞 心五郎(つぐる しんごろう)として、西東京妖怪公園のアルバイトを行うようになる。なお、青北風らには正体はバレているものの、口外しないように頼んでいる。出自の関係から妖怪や魔物に詳しいので、飼育員たちからも頼りにされている。
餓者髑髏(がしゃどくろ)
中国妖怪
九尾の狐(きゅうびのきつね)
「山海経」に登場する、中国大陸出身の狐のような妖怪。その名の通り9本の長い尾を生やし、赤子のような声で鳴き、人を喰らうが、逆にこれを食べると邪気を退けるという。暗黒属性の妖怪で、人間に化ける能力を持ち、口からは触れると体が腐れ落ちる瘴気を吐く。
牛魔王の頼みで中国から飛来し、座興で平木に化けて西東京妖怪公園の人間に危害を加えようとしたが、青北風に看破される。本性を現して大暴れしたものの、青北風、子啼爺、悟色の尽力で左目を潰されて撃退された。その後、再び来日して新宿駅前に現れるが、居合わせた鳥月が自分と同じ属性で相性の悪い餓者髑髏を召喚したため休戦を提案。コイントスで勝負に負けたため、憶測も交えて牛魔王の計画について情報を提供した。
一目五先生(いちもくごせんせい)
刑天(けいてん)
太歳(たいさい)
蛟龍(こうりゅう)
中国に生息する龍の幼生。日本の「ミズチ」とは別物。龍なので多少神聖性を持つ。生まれたての時は人間の赤ん坊のような顔をしているが、成長するほどに顔つきが龍に近づき完全な飛行能力も習得する。物の持つ運動エネルギーを吸い取って成長し、エネルギーをゼロにされた物体は時間が停まったかのように静止してしまうが、熱という形でエネルギーを補う、つまり温めることで動き出す。また、エンジンなどのそれ自体が発熱する機械を完全に停止させるには時間がかかる。一度に吸えるのは1カ所からだけなので、効率を重視してエネルギーが大きなものを優先して狙う。
東京から鳥取へ向かうフライト中、飛行機に積み込まれた中国の貨物の中から孵化して機体を攻撃する。搭乗していた鳥月が呼んだ餓者髑髏をも行動不能に追いやったが、姥ヶ火の援護を受け復活した餓者髑髏の攻撃を受けて負傷。生まれたばかりで善悪の区別がつかなかったという事情から見逃され、とどめを刺されず何処かに逃げ去った。
牛魔王(ぎゅうまおう)
「西遊記」などに登場する中国の魔王。孫悟空と実力伯仲の存在で義兄弟であり、「平天大聖」「大力王」とも呼ばれる。孫悟空の他にも5人の義兄弟がおり、羅刹女との間に紅孩児という息子も設けている。
数百年表に出てこなかったが、地獄に行く人間が多すぎて獄卒が潰れそうになったため、厄災や疫病を引き起こして人間を殺し、地獄落ちが確定する前にもう一度人間道でやり直させることで獄卒の負担を減らそうとした。色々しがらみのある中国では実行できず、また絶望的に手が足りていないようで、手下の魔物を使わず自ら九尾や太歳に直接依頼して日本に派遣する。進捗が思わしくない2名を呼び寄せるも、苛立つ九尾に自分でやればいいと逆に文句を言われ、太歳には不慣れな異国ではなく中国本土で災厄を起こしてはどうかと提案される。
紅孩児(こうがいじ)
牛魔王と羅刹女の息子。「西遊記」では聖嬰大王とも呼ばれる。自制のきかない跳ねっ返りの問題児として知られ、相手が誰だろうと(親やスマートフォンでも)他者から指図されて動くのを嫌う。火の属性を持ち、長さ1丈8尺(=5メートル)に及ぶ火炎槍の使い手で、水では消せない三昧真火を目や口から出して操る。菩薩に蓮の花の罠で捕らえられているので、蓮にトラウマがある。
仏門に帰依した際に牛魔王との縁は切れていると思われていたが、父が手配した妖怪たちが相次いで失敗したのを受けて饕餮を連れて来日。九尾を痛めつけて道案内させ、西東京妖怪公園を襲撃して三昧真火で悟色と寒菊に大火傷を負わせるが、戦う前、不用意に茶の花が持っていた蓮の実入り胡麻団子を食べていたために蕁麻疹が出て撤退する。
用語
妖怪
人間とは価値観が異なる場合が多く、言葉を喋れる妖怪でも人間とは語彙や文脈の使い方が違うので意志が読み取りにくい。人間由来の妖怪も多いこともあり幽霊との分類は難しく、呼び名より、人間らしいか妖らしいかという「らしさ」、つまり人のしがらみに捉われているかどうかが重要。一度人間と妖怪の間で約束事が成立した場合、その「縁」を切るのはかなり大変。生物とは少し概念が違うが死や病気は存在し、死ぬと肉体も何も残らず消滅する。自分の名前を知られるのを嫌うので、園にいる妖怪たちの固有名もまた仮の名前であり、中には仮の名前ですら付くのを嫌がる妖怪もいる。
妖怪化した人間を除いて戸籍や住民票がないので、選挙権もない。また、人間と妖怪の結婚は法律では認められていない。一方で、道路交通法など、妖怪にも適用されるように改正された法律も存在している。
目的不明の行動をするものが多く、行動すら不明なものも珍しくない。多くの妖怪はなぜか甘酒を好む。妖怪同士にも様々な関係性があり、野生下で共生している牛鬼と濡女のような例があるのに対し、一方の存在を許すともう一方が存在できないという妖怪の関係を「反共生関係」と呼ぶ(例:天井が低いと床にぶつかってしまう天井下がりと、天井が高いと天井をなめられない天井嘗)。妖怪の存在が人間の快適さを損なうこともまた反共生関係といい、人間に迷惑をかけてでも認識されないと存在できない妖怪もいる。逆に人間社会の変化でいなくなってしまう妖怪もいる。人間に負の影響を及ぼす妖怪の保護はそれ相応の設備が必要で、危険妖怪を設備なしで展示することは許可されていない。
人間同様、高齢化問題を抱えており、数の多い老婆の妖怪は国から可能なら介護保険に加入するよう言われている。基本的に人間の高齢者と同じ扱いなので、集団生活は特別養護老人ホームに準じ、レクリエーションや創作活動を通じて喜びや生きがいを生み出すよう行政側から通達されている。なお、爺の妖怪に比べて婆の妖怪が圧倒的に多い。平均寿命が長いから、女の方が妖怪に近いからなど諸説あるが、真実は藪の中。
日本の妖怪が基本的にのほほんとしているのに対し、西洋の妖怪には凶悪なものが多い。また、中国の妖怪は疫病や災害に絡むものも多く、とにかく損得勘定で動くため、労力と報酬が見合わない相手とは極力戦わず、状況次第で人間相手とでも交渉して妥協点を見出だそうとする理性的な面も持つ。
魔物
妖怪と違い、人間に対する害意しかないとされる存在。辻神やひょうすえなどのように、疫病や災厄をもたらす。多少なりとも意思がある存在はかなり異質であり、魔王はどうにもならないのばかりで、話ができる山本の方が例外とされる。
怪異
それ事態は妖怪ではない、不可思議な出来事のこと。だが、原因となっているものが妖怪の場合はある。一例に歩く二宮金次郎像、化け灯篭、迷い家など。
魔物
怪異
妖怪園
舞台となる多摩の西東京妖怪公園(1958年開園)には、ふれあい広場といった妖怪と触れ合える施設や、バスに乗って棲息エリアを周遊するような施設もある。展示妖怪は105話で300種族に到達する。西東京妖怪公園以外にも、上野妖怪園や東武妖怪公園の名前が登場している。
妖怪園は妖怪が過ごしやすい環境を提供するほか、人間または人間以上の知能をもつ妖怪とは契約を行い、園内で生活してもらっている。妖怪たちの衣食住は保証されているが現金は渡していないので、特別に欲しいものがある時は閉園後にアルバイトをしていることもある。動物園と違って生態にもバリエーションが多いので、脱走対策の訓練は種類別に行われ、職員の負担が大きい。妖怪を通して人間のあり方を学ぶ場所なので、匂いや汚れも展示のうちであり、見せ物ではなくお金を払って学ばせてもらうと考えるべきとされる。特に妖怪がらみの相談を受け付けているわけではないが、他に相談できるところがないためか、妖怪の問題で困った客がよくやって来る。
食事は動物園と同じように飼料担当がまとめて用意したものをそれぞれの担当が部署へ持っていく形が基本。人間型の妖怪には仕出し弁当が配られるが、味付けの好みが人間とは全然違うことも多い。また、鬼のように食材を渡せば自分で調理するものもいる。偏食の妖怪のために職員が身を削ることもあるが、可能な限り代用品を用意して対応している。
妖怪園では妖怪の貸し出しは行っておらず、テレビの妖怪番組に出演しているのは妖怪を専門に扱うプロダクションで調達した個体。また、動物型の妖怪は園で訓練をなにもしていないので、飼育員も指示はできず言うことを聞かない。
書誌情報
- 藤栄道彦『妖怪の飼育員さん』新潮社〈BUNCH COMICS〉、既刊13巻(2023年6月8日現在)
- 2015年12月9日発売、ISBN 978-4-10-771856-3
- 2016年12月9日発売、ISBN 978-4-10-771939-3
- 2017年11月9日発売、ISBN 978-4-10-772023-8
- 2018年5月9日発売、ISBN 978-4-10-772079-5
- 2018年11月9日発売、ISBN 978-4-10-772134-1
- 2019年5月9日発売、ISBN 978-4-10-772188-4
- 2019年11月9日発売、ISBN 978-4-10-772232-4
- 2020年8月6日発売、ISBN 978-4-10-772307-9
- 2021年3月9日発売、ISBN 978-4-10-772370-3
- 2021年10月8日発売、ISBN 978-4-10-772370-3
- 2022年3月9日発売、ISBN 978-4-10-772483-0
- 2022年10月7日発売、ISBN 978-4-10-772537-0
- 2023年6月8日発売、ISBN 978-4-10-772612-4