鞠夫シリーズ
漫画:人形はこたつで推理する
原作・原案など:我孫子武丸,
作画:河内実加,
出版社:ソニー・マガジンズ,
掲載誌:きみとぼく,
レーベル:ソニー・マガジンズコミックス,
巻数:全2巻,
話数:全5話,
以下はWikipediaより引用
要約
鞠夫シリーズ(まりおシリーズ)は、我孫子武丸による推理小説のシリーズ。幼稚園教諭妹尾睦月と、腹話術師朝永嘉夫、その操る人形にして自我を持つ鞠小路鞠夫を中心に描く。シリーズ1作目の『人形はこたつで推理する』は漫画化された。我孫子自身は『人形はこたつで推理する』を、自身初の短編小説集としている。
概要
シリーズ1作目『人形はこたつで推理する』が『野性時代』で1990年5月号から1990年8月号にかけて連載され、角川書店よりカドカワノベルズレーベルで単行本化、シリーズ2作目『人形は遠足で推理する』、シリーズ3作目『人形は眠れない』がカドカワノベルズレーベルで書き下ろしとして単行本化、後に3作が講談社より講談社文庫レーベルで文庫化された。シリーズ3作目『人形は眠れない』講談社文庫版後書きにてシリーズの一旦の一区切りである旨が告知された。
期間をおいて『メフィスト』1998年10月号より連載、書き下ろしの「腹話術師志願」追加の上『人形はライブハウスで推理する』として、講談社ノベルズレーベルで単行本化、従来のシリーズ文庫版同様、講談社文庫レーベルで文庫化された。本編の他、推理小説の一読者として鞠夫シリーズを注目していた腹話術師いっこく堂との対談も収録された。講談社文庫版あとがきでは完結ではない旨が告知された。
あらすじ
人形はこたつで推理する
人形はこたつで推理する
園長から朝永の自宅を聞き出し、朝永の自宅を訪ねた妹尾は、朝永の芝居に関する感想を話し始めた。話の途中、朝永が手にしていた人形が相槌を打ち始めた。妹尾は、朝永が腹話術の芝居を始めたのだと思ったが、朝永の様子から次第に人形が独りでに喋り、朝永が動揺している状況であることを理解する。朝永は白状し、妹尾に自身の意志から生まれた「鞠小路 鞠夫」を改めて紹介する。
12月24日。めぐみ幼稚園で飼っていたうさぎの「ユキコ」が亡くなった。妹尾は園児たちと手製の墓を作って埋葬した。
年が明けた1月3日、妹尾がうさぎの飼育小屋を確認すると、ユキコの墓が掘り返され、土葬したユキコの遺骸の腹部が裂かれていた。園長に報告のため駆け出した妹尾の前に朝永が現れた。朝永とともに園長に報告した妹尾と朝永は、めぐみ幼稚園を後にした。妹尾が朝永と会話を交わしていると鞠夫が茶々を入れてきた。妹尾と朝永は、朝永の自宅に向かった。正月初め、鞠夫は朝永の自宅に用意されたこたつに入った妹尾と朝永の前で事件に関する推理を始めた。
人形はテントで推理する
動揺を隠して妹尾が、楽屋でカーニバルのメンバーたちと寛いでいると、楽屋に不在のメンバーが殺害されたという報告が入った。被害者は、メンバーのパンダ五反田。犯行現場の関係から柿沼が容疑者になる。対面後の不快さを忘れ、妹尾は柿沼の身を案じた。
人形は劇場で推理する
小田切は現在抱えている事件を紹介し、被害者が日記に「ジークフリート」にまつわる夢を書き綴っていたという。小田切は、被害者殺害のヒントは『ジークフリート』にあるのではないか、との推察をしていることを明かした。小田切が事件の詳細を明かすと、妹尾、朝永、柿沼がそれぞれ小田切に推理を披露するも、結論には至らず、その場は解散となった。帰り道、柿沼の自宅は妹尾と朝永の自宅と逆方向の関係から、柿沼とは別れ、妹尾と朝永の2人だけになった。妹尾と朝永は、自宅に置いてきた鞠夫に事件の解決を頼んだ。
人形をなくした腹話術師
人形は遠足で推理する
幼稚園バスがなく、公共交通機関のバスを頼らざるを得ないめぐみ幼稚園は、人気の少ない平日に園児を連れてバスに乗り込んだ。乗り込んだ後、乗客の1人が拳銃を出した。男の名は日野崇。日野は、拳銃を掲げバスジャックの宣告をした。
妹尾は園児を宥めつつ、動機を日野に尋ねると、日野は狼狽し始めた。しばらくして日野は友人の「てるみ」を殺されたこと、そのてるみの仇討ちにバスジャックを行ったことを理解し、日野は今度は、目的を遂行させるためバスジャックの宣告を改めて行う。妹尾は、日野を説得し、日野から無謀なバスジャックを止めさせると共に、自身と園児たち解放への道を模索していくことになった。
人形は眠れない
8月。幼稚園教諭の1人香坂厚子(旧姓:柏木)の結婚式に、独身の妹尾は野坂と共に他の式後のパーティーに出席する下心を打ち明けられ香坂の結婚式に参加することになった。式のお開き後、野坂の予告どおりパーティーに参加する中で妹尾は花婿香坂側の知り合いだという関口昌樹という男に誘われる。妹尾は関口の誘いに適当に相槌を打って核心への追求をかわした。
パーティー後、妹尾の自宅にある電話が鳴った。関口からだった。電話番号を教えた覚えがない驚きと、馴れ馴れしい様子に苛立ちを覚えつつ、妹尾は関口の相手をした。
妹尾の自宅の電話が再び鳴った。今度は女性からだった。女性は、関口の母を自称し、関口を弄んでいると妹尾を攻め立てた。妹尾はその後、巷で放火事件の発生している話題の中、関口と、その母を自称する女性からの電話攻めに遭うことになる。
妹尾が関口とその母親を称する女性の電話の件で悩んでいる中、電話が鳴った。今度は朝永からだった。安堵する妹尾に、朝永から、小田切から事件解決の依頼を受けたという。事件の内容は連続放火事件に関してであった。妹尾は小田切の下へ向かった。
鞠夫誕生秘話
自宅に帰って腹話術の練習に励み、熟睡する中、部屋の中で喋り声がした。見ると、喋っていたのは小道具として使用していた人形だった。朝永は状況を否定しようとするも、人形の喋る内容に否定できず、人形の喋りを止めることはできなかった。
人形はライブハウスで推理する
人形はライブハウスで推理する
しばらくして妹尾の自宅に、葉月が拘留されたという知らせが入った。妹尾は葉月の身元引受人として警察を訪れることになった。
ママは空に消える
瑠奈の両親の件で風邪をこじらせた妹尾は自宅で寝込んでしまった。朝永を想いつつ寝込んでいる妹尾を、野坂が見舞いに訪れた。野坂は、朝永に関する冷やかしと共に相沢親子の近況を知らせた。妹尾は、相沢親子の真相を知るべく朝永の自宅へ電話した。
ゲーム好きの死体
腹話術師志願
しばらくして、妹尾がとった電話から弟子入りを志願していた男が重要参考人として警察署に拘留されていたという知らせが朝永から入った。コンビニで強盗殺人事件が起こり、その付近に居合わせ、多額の現金を所持していたためだという。妹尾と朝永は、男が拘留されている警察署に向かった。
夏の記憶
登場人物
主要人物
妹尾睦月(せのお むつき)
幼稚園の幼稚園教諭。1月15日生まれ。血液型はAB型。年齢は「人形はテントで推理する」時点で21歳。資格のため上京して短大を卒業後、めぐみ幼稚園に勤務。担任するクラスは『人形はこたつで推理する』時点でもも組。『人形はライブハウスで推理する』時点でさくら組。名前の由来は1月の睦月から。園児や鞠夫からは、苗字の末尾「お」と下の名「むつ」の読みをつないだ「おむつ」、旧友からは「おむっちゃん」と呼ばれている。鞠夫不在時には、鞠夫に代わり推理を展開することもある。「人形はテントで推理する」では朝永を小田切に紹介時、朝永振一郎と加藤嘉を持ち出し、変わっていると評される等、家族環境の影響で古い価値観を持つ。視力が0.5以下と悪く、眼鏡を持っていることが『人形はこたつで推理する』冒頭で語られるが普段はかけていない。
朝永嘉夫(ともなが よしお)
鞠小路鞠夫(まりこうじ まりお)
朝永が芝居に用いる操り人形。体長は80センチ前後。朝永の人格から生まれ、意志を持つ。普段はおとなしくして、朝永の腹話術に従うが、勝手に喋ったり動いたりして朝永を困らせることもある。妹尾と朝永の身の回りに起きる事件に推理を披露していく人形探偵。朝永の人格のため、朝永を媒体として妹尾と対話を行うこともできる。
朝永もしくは鞠夫自身による創作の人物設定として、自身の家系は由緒ある男爵家の出身。家族構成として、父は鞠小路鞠之介(まりこうじ まりのすけ)、母は鞠小路鞠子(まりこうじ まりこ)、祖父は鞠小路鞠之進(まりこうじ まりのしん)という設定を有する。鞠夫以外は未登場。名前の由来は「鞠夫」が朝永、「鞠小路」を鞠夫が考案したことによる。
作中では、既に朝永の手にあり、自宅で練習時の小道具として使用されている段階であるため、入手経路や製作者等は不明。
柿沼遥(かきぬま はるか)
めぐみ幼稚園
柏木厚子(かしわぎ あつこ)
人形はこたつで推理する
人形はテントで推理する
人形は劇場で推理する
人形をなくした腹話術師
人形は遠足で推理する
人形は眠れない
人形はライブハウスで推理する
人形はライブハウスで推理する
ママは空に消える
ゲーム好きの死体
腹話術師志願
漫画
シリーズ1作目『人形はこたつで推理する』名、ソニー・マガジンズより河内実加作画として「きみとぼく」に連載、コミックス化された。河内初の原作付漫画作品で、河内は原作小説をカドカワノベルズ版から注目していた。
原作話からは『人形はこたつで推理する』から「人形は劇場で推理する」以外の3話、『人形は眠れない』から「鞠夫誕生秘話」、『人形はライブハウスで推理する』から「ママは空に消える」が使用された。「ママは空に消える」は「人形は劇場で推理する」が漫画制作上の都合上漫画化されず、代わりとしての漫画化となった。2度目の一区切りとした原作小説に対し、本漫画版は全2巻の完結作となっている。
連載時からコミックス収録時の変更点として「人形はテントで推理する」は連載時に前後編の2話で連載され、コミックス収録時に1話にまとめられた。2巻目は、連載時に「誰が人形を殺したか」「ママは空に消える」「鞠夫誕生秘話」の順に連載されたが、コミックスには「ママは空に消える」「鞠夫誕生秘話」「誰が人形を殺したか」の順で収録された。
テレビスタジオを舞台とした「誰が人形を殺したか(後編)」では「Cooperation」の1つとして「Fuji-TV」がクレジットされている。
- 我孫子武丸(原作)・河内実加(作画)『人形はこたつで推理する』ソニー・マガジンズ〈ソニー・マガジンズコミックス〉、全2巻
- 1996年9月7日初版第1刷発行、ISBN 978-4-7897-8040-7
- 1999年8月7日初版第1刷発行、ISBN 978-4-7897-8119-0
書誌情報
- 『人形はこたつで推理する』(1990年8月25日初版発行、角川書店〈カドカワノベルズ〉、ISBN 978-4-04-782201-6)
- 『人形はこたつで推理する』(1995年6月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-185976-0)
- 『人形は遠足で推理する』(1991年4月25日初版発行、角川書店〈カドカワノベルズ〉、ISBN 978-4-04-782202-3)
- 『人形は遠足で推理する』(1995年7月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-263001-6)
- 『人形は眠れない』(1991年9月25日初版発行、角川書店〈カドカワノベルズ〉、ISBN 978-4-04-782203-0)
- 『人形は眠れない』(1996年4月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-263227-0)
- 『人形はライブハウスで推理する』(2001年8月5日第1刷発行、講談社〈講談社ノベルズ〉、ISBN 978-4-06-182191-0)
- 『人形はライブハウスで推理する』(2004年8月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-274835-3)
- 『人形はこたつで推理する』(1995年6月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-185976-0)
- 『人形は遠足で推理する』(1995年7月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-263001-6)
- 『人形は眠れない』(1996年4月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-263227-0)
- 『人形はライブハウスで推理する』(2004年8月15日第1刷発行、講談社〈講談社文庫〉、ISBN 978-4-06-274835-3)
評価
サントリーが運営していたウェブサイト「ウィスキーミュージアム」は『人形は眠れない』収録の「鞠夫誕生秘話」で朝永と波多野が酒を呑み交わすシーンを紹介し、同シーンに適切な酒として朝永が注いだウィスキーの通り「ウィスキーのようなスピリッツ」を勧めていた。