あずみ
漫画
作者:小山ゆう,
出版社:小学館,
掲載誌:ビッグコミックスペリオール,
レーベル:ビッグコミックス,
発表期間:1994年,2008年,
巻数:全48巻、全24巻,
話数:350話,
以下はWikipediaより引用
要約
『あずみ』は、小山ゆうによる日本の漫画。長編のアクション時代劇として高い評価を受け、映画や舞台化もされている。
概要
『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて1994年から2008年にかけて連載され、「第1部・完」となった。単行本は全48巻(小学館ビッグコミックス)。引き続いて、幕末を舞台にした続編『AZUMI』が同誌にて2014年まで連載された。
江戸幕府初期、泰平の世を作り上げるため、内乱の芽を摘む暗殺集団の一人として「爺」(小幡月斎)に育てられた少女・あずみの戦いと苦悩を描く。戦国から泰平の世へと移りゆく中で必要とされなくなった武人たちの不満にスポットが当てられており、過渡期ゆえの社会不安が物語のベースとなっている。
作者の小山によれば続編『AZUMI』で舞台を幕末に移したのは、この時代の有名人をあずみが殺し尽くしてしまったことが理由の一つで、一方幕末にはあずみの標的になりそうなのがウジャウジャいるのでそっちに移したという。また「第1部・完」と未完で終わらせた件について後年『漫道コバヤシ』に客演した説明では、これ以上連載を続けても「今後の大きな舞台は島原の乱ぐらいしかなく、それでは年齢が30歳を越えてしまい新鮮さに欠けてしまう」こと。あずみの結末を想像した場合「大量殺戮してきたあずみが、平穏な幸福で終わる結末は考えられない。だとしたら、いずれは幕府に殺処分される絶望的な未来しかない」ため、そこまで描くのは読者も望まないだろうと考え、あえて中途で終わらせたと答えている。
1997年度第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞のほか、1998年には第43回(平成9年度)小学館漫画賞青年一般部門を受賞した。
上戸彩の主演で映画化(2003年、2005年)、黒木メイサの主演で舞台化(2005年初演)された。2015年には続編『AZUMI』が『AZUMI 幕末編』として舞台化された。
登場人物
主人公
あずみ
本作品の主人公。凄腕の美少女刺客。幼いころに小幡月斎により拾われ刺客としての純粋培養で鍛え上げられて育てられ、常人を遥かに超える俊敏さと武術の腕を持つ作中で最強の存在である。月斎が凄腕刺客として育てた10人の子供らのうちの一人だが、彼女はその中でも傑出した実力を持ち、唯一の生き残りである。周りが男の子ばかりの環境で育ったので一人称は「俺」である。
【容姿】
稀有な美少女であり、作中の多くの男性たちからその美しさを指摘されている。普段の髪型はポニーテール。父親が異人というハーフであるため、瞳は青みが掛かっており、頭髪は茶色っぽく、肌の色も透き通るように白い。
腕と脚が丸出しの紫のノースリーブの着物を着ており、後に月斎との旅路で南蛮織のマントを買い与えられて以後はその上にそれを羽織るようになり、トレードマークになる。途中からは脚絆を着けて腿だけが露出するスタイルとなる。
【武器】
武器は双頭刃の刀を主に使用しているが、敵の刀を奪って使用する時も多い。補助的に腰に取り付けた4本の手裏剣を使用する。鉤縄も保持しているが、彼女は高い跳躍力で身一つで簡単に木の上など高いところへ登っていくことができるので使用している描写はそれほど多くない。
【戦闘能力】
作中無類の強さを誇り、彼女に勝利できた者はいない。宮本武蔵との果たし合いのみ途中で兵助が割って入って勝敗が明確にならない形で終わったが(ただ、あずみは無傷で、武蔵は左手と左肩を斬られて負傷していた。しかし、あずみは兵助が止めに入らなければ自分は武蔵に切られていたと心中で語っている)、他は全ての戦いに勝利している。一対多勢の時も多いが、どの戦いでもかすり傷一つ負わず敵を全滅させている。作中では特に柳生剣士26人斬りと毘沙門天一味5,60人斬りのことが彼女の強さの語り種になっている。
手裏剣は投げ付けられても素手で簡単にキャッチでき、背中に投げつけられても刀で弾いており、彼女にとってはまるで脅威にならない。鉄砲も素早く動き回ってまず当たらず、鉄砲隊を発見すると真っ先に始末に向かう。彼女の足は非常に速いので2発目を撃つ時間的余裕はなく、初弾を外した段階で鉄砲隊は彼女に皆殺しにされることが多い(踏み込んできて手当たり次第に喉笛や後ろ首を刺しまくる)。
跳躍力も常人離れしており、簡単に人間を飛び越えることができるため、敵を頭上から斬り付けたり、斬りたくない相手を飛び越えて回避したり、逃げようとした標的の前に飛び降りたりしている。
山奥で育った彼女は視力や聴力はもちろん、鳥や獣の動き、虫の音など僅かな変化を敏感に感じ取り、人の気配を察知する能力が常人よりはるかに優れていると作中で解説されている。
最終話までずっと処女であり、色仕掛けで敵を倒すことはなく、男も太刀打ちできない卓絶した武術だけで敵を倒していく。美少女なので強姦しようとする男たちも数多く現れたが、強すぎて犯せた男はいない。あずみ当人も月斎の教えに疑問を感じることは増えても、圧倒的な武術の腕を身に着けさせてもらったおかげで男たちに陵辱されずに済んだことは最終盤まで感謝していた。
【性格】
刺客でありながらピュアな心を持つ。初期には月斎の洗脳下に近い状態にもあったが、様々な体験を経て月斎の言っていることに疑問や反発を感じるようになり、次第に自我を形成し、成長後は井上勘兵衛から「心に菩薩を抱いている」と表現されるほど慈愛に溢れた心優しい聖女のような性格になる。
親しい者や情を移した者が苦しんでいるのを放っておけない質で、柳生などあずみの命を狙う者たちからは人質作戦といった形でその性格を利用される。また親しい者が惨たらしく殺されると怒りを制御できなくなり、殺した集団を皆殺しにしてしまうことがしばしばある。
非常に誇り高い少女で、雪国編ではサディストの静音と忠音の罠にかかって捕らわれの身となり散々に「調教」されたが、どれほど衰弱しようと家畜として餌を食うことは拒否し続けた。家畜化したフリをして油断を誘う手もあったが、そんな真似をするぐらいなら衰弱死する覚悟を決めていた(結局がっちに救出されて助かる)。兵助から使命をやめて自分の専業主婦になることを求められた時も何もせず兵助の厄介になることなどできないと断っている。また身分も身寄りもない女は女郎になるしかないが、女郎は誇りを捨てねばならないとしてなりたがっていない。そのため人殺しが好きなわけではないが使命を続けるしかないようである。
誇り高いが高慢さはなく、人当たりがいい。ただ、自分の強さには絶対の自信があり、いたずらに自慢はしないが、自分を狙う刺客や強姦しようと迫る男たちに対しては自分には絶対勝てないので彼らが斬られて死ぬことを前提とした自信満々の警告を発することが多い。
子供の面倒見が良く、使命や道中で知り合った子供たちとは大抵すぐ仲良くなっているが、子供が自分に巻き込まれて殺されるのを恐れ長く一緒にはいない。また全編を通して子供を斬ったことはなく、弦太を刺客として送ってきた騙し討ちの一族の頭からも「あずみは子供は殺せんと見た」と分析されている。月斎の洗脳下にあった連載初期の段階でも下谷の村虐殺において赤ん坊を殺すことは躊躇っている(代わりにうきはが赤ん坊を殺害し、他の村の子供たちもひゅうがなどが虐殺したので、彼女は大の男以外は手にかけずに済んだ)。なお女性を殺す描写もほとんど見られないが、西国編では紫苑を斬っているので、こちらは特に禁忌にしているわけではないようである。
【好きな男性のタイプ】
闇の世界でしか生きられない彼女は夢を持つことができないため、夢や理想を持つ男性に惹かれ、陽のあたる存在である彼らを影から守りたがる。本作品では理想や夢を語ることが多い俊次郎、兵助、武信などに惹かれていた(ただし、いずれとも性交する関係には至っておらず、処女のままだった)。この傾向は続編『AZUMI』のあずみにも引き継がれており、同作品では新時代への夢を語る坂本竜馬に惹かれ、また双子の俊介も恋愛対象ではないが似たような存在になっていた。
【趣味】
自分の指の上で独楽回しするのが趣味で暇つぶしや憂鬱な気分を紛らわせるためによくやっている描写がある。狙った場所に正確に独楽を投げて回すことができ、刀の刃先の上で独楽を回す芸当も可能で曲芸師に成りすますときにはその芸をよく披露している。本人によれば独楽は自作で年季が入っているらしい。
【その他】
江戸時代初期の有名人の多くを彼女が手にかけた。月斎のもとでの「枝打ち」の使命で浅野長政や加藤清正を暗殺し、親しくなった豊臣秀頼の望みで彼の自害の介錯を行い、月斎が殺された後は井上勘兵衛や秀頼の無念を晴らすため徳川家康を暗殺し、その後天海のもとでの使命の中で伊達政宗の自害の介錯をしている。
あずみの名前は月斎が信濃の安曇野から付けたものだが、月斎はあずみをどこで拾ったか覚えておらず故郷かどうかは不明。終盤に天海のもとを離れた後、自分の故郷探しの旅に出て安曇野の異人の隠れ里を訪れたが、そこが故郷であるという情報を得ることはできなかった。しかしそこの異人たちと親しくなり、あずみ当人はそこが自分の故郷だと思うことに決めた。
続編『AZUMI』の主人公あずみとの関係は不明だが、本作品であずみが訪れた安曇野の異人の隠れ里が続編のあずみの故郷であると設定されている。本作品と続編のあずみでは、前髪に違いがあり、武器や衣装も一新された。
【容姿】
【武器】
【戦闘能力】
作中無類の強さを誇り、彼女に勝利できた者はいない。宮本武蔵との果たし合いのみ途中で兵助が割って入って勝敗が明確にならない形で終わったが(ただ、あずみは無傷で、武蔵は左手と左肩を斬られて負傷していた。しかし、あずみは兵助が止めに入らなければ自分は武蔵に切られていたと心中で語っている)、他は全ての戦いに勝利している。一対多勢の時も多いが、どの戦いでもかすり傷一つ負わず敵を全滅させている。作中では特に柳生剣士26人斬りと毘沙門天一味5,60人斬りのことが彼女の強さの語り種になっている。
手裏剣は投げ付けられても素手で簡単にキャッチでき、背中に投げつけられても刀で弾いており、彼女にとってはまるで脅威にならない。鉄砲も素早く動き回ってまず当たらず、鉄砲隊を発見すると真っ先に始末に向かう。彼女の足は非常に速いので2発目を撃つ時間的余裕はなく、初弾を外した段階で鉄砲隊は彼女に皆殺しにされることが多い(踏み込んできて手当たり次第に喉笛や後ろ首を刺しまくる)。
跳躍力も常人離れしており、簡単に人間を飛び越えることができるため、敵を頭上から斬り付けたり、斬りたくない相手を飛び越えて回避したり、逃げようとした標的の前に飛び降りたりしている。
山奥で育った彼女は視力や聴力はもちろん、鳥や獣の動き、虫の音など僅かな変化を敏感に感じ取り、人の気配を察知する能力が常人よりはるかに優れていると作中で解説されている。
最終話までずっと処女であり、色仕掛けで敵を倒すことはなく、男も太刀打ちできない卓絶した武術だけで敵を倒していく。美少女なので強姦しようとする男たちも数多く現れたが、強すぎて犯せた男はいない。あずみ当人も月斎の教えに疑問を感じることは増えても、圧倒的な武術の腕を身に着けさせてもらったおかげで男たちに陵辱されずに済んだことは最終盤まで感謝していた。
【性格】
刺客でありながらピュアな心を持つ。初期には月斎の洗脳下に近い状態にもあったが、様々な体験を経て月斎の言っていることに疑問や反発を感じるようになり、次第に自我を形成し、成長後は井上勘兵衛から「心に菩薩を抱いている」と表現されるほど慈愛に溢れた心優しい聖女のような性格になる。
親しい者や情を移した者が苦しんでいるのを放っておけない質で、柳生などあずみの命を狙う者たちからは人質作戦といった形でその性格を利用される。また親しい者が惨たらしく殺されると怒りを制御できなくなり、殺した集団を皆殺しにしてしまうことがしばしばある。
非常に誇り高い少女で、雪国編ではサディストの静音と忠音の罠にかかって捕らわれの身となり散々に「調教」されたが、どれほど衰弱しようと家畜として餌を食うことは拒否し続けた。家畜化したフリをして油断を誘う手もあったが、そんな真似をするぐらいなら衰弱死する覚悟を決めていた(結局がっちに救出されて助かる)。兵助から使命をやめて自分の専業主婦になることを求められた時も何もせず兵助の厄介になることなどできないと断っている。また身分も身寄りもない女は女郎になるしかないが、女郎は誇りを捨てねばならないとしてなりたがっていない。そのため人殺しが好きなわけではないが使命を続けるしかないようである。
誇り高いが高慢さはなく、人当たりがいい。ただ、自分の強さには絶対の自信があり、いたずらに自慢はしないが、自分を狙う刺客や強姦しようと迫る男たちに対しては自分には絶対勝てないので彼らが斬られて死ぬことを前提とした自信満々の警告を発することが多い。
子供の面倒見が良く、使命や道中で知り合った子供たちとは大抵すぐ仲良くなっているが、子供が自分に巻き込まれて殺されるのを恐れ長く一緒にはいない。また全編を通して子供を斬ったことはなく、弦太を刺客として送ってきた騙し討ちの一族の頭からも「あずみは子供は殺せんと見た」と分析されている。月斎の洗脳下にあった連載初期の段階でも下谷の村虐殺において赤ん坊を殺すことは躊躇っている(代わりにうきはが赤ん坊を殺害し、他の村の子供たちもひゅうがなどが虐殺したので、彼女は大の男以外は手にかけずに済んだ)。なお女性を殺す描写もほとんど見られないが、西国編では紫苑を斬っているので、こちらは特に禁忌にしているわけではないようである。
【好きな男性のタイプ】
【趣味】
【その他】
江戸時代初期の有名人の多くを彼女が手にかけた。月斎のもとでの「枝打ち」の使命で浅野長政や加藤清正を暗殺し、親しくなった豊臣秀頼の望みで彼の自害の介錯を行い、月斎が殺された後は井上勘兵衛や秀頼の無念を晴らすため徳川家康を暗殺し、その後天海のもとでの使命の中で伊達政宗の自害の介錯をしている。
あずみの名前は月斎が信濃の安曇野から付けたものだが、月斎はあずみをどこで拾ったか覚えておらず故郷かどうかは不明。終盤に天海のもとを離れた後、自分の故郷探しの旅に出て安曇野の異人の隠れ里を訪れたが、そこが故郷であるという情報を得ることはできなかった。しかしそこの異人たちと親しくなり、あずみ当人はそこが自分の故郷だと思うことに決めた。
続編『AZUMI』の主人公あずみとの関係は不明だが、本作品であずみが訪れた安曇野の異人の隠れ里が続編のあずみの故郷であると設定されている。本作品と続編のあずみでは、前髪に違いがあり、武器や衣装も一新された。
主要人物
小幡 月斎(おばた げっさい)
あずみをはじめとする10人の子供を幼少より刺客として育てあげた剣の達人。戦によって掛け替えのない仲間たちを亡くした経験を持つ。深く尊敬している天海の命を受け、天下平定のための「枝打ち」をする刺客にするため、あずみたちを拾って育てた。あずみは初期のころは彼の洗脳下にあったが、やがて彼が言ってることへの疑問や反発を強めていき、自我を形成していく。天海からの使命はほとんど果たしたと言っても過言ではないが、使命の中であずみ以外の子供たちは全滅。さらに柳生宗矩の陰謀によって駿府城で捕らえられる。あずみによって救出されたが、彼女とともに追われる身となる。あずみと2人でどこかにひっそりと隠れ住むことを考えるようになったが、その矢先に宗矩率いる柳生剣客集団に橋の上で包囲される。あずみに対して「お前は、どこまでも生き抜くのだ!!」と川に放り出し逃がした後、大勢の柳生剣客を相手に奮戦するも最期は宗矩らによって惨殺された。
飛猿(とびざる)
井上勘兵衛に仕えていた忍者。赤鼻、繋がり眉毛、丸い目、剃り込みと横に跳ねた髪が特徴。あずみに関わった登場人物は敵味方かかわらずほとんど死んでしまう本作品では珍しく、物語初期から最終盤まで登場し続けながら死ぬことがなかった稀有な人物。
卓越した忍び技を持ち、あずみには及ばないものの剣や武術の腕も高いので幾多の修羅場をくぐり抜けている。また鼻がとても利く(血の臭いも嗅ぎ分けられる)。
初期にはあずみが勘兵衛の主である加藤清正を狙っていたので彼女と敵対関係だったが、月斎が死んだ後あずみは勘兵衛と行動を共にするようになったので親しくなっていく。
徳川家康暗殺を狙っての偵察中、徳川家の忍たちに捕まるも、あずみが忍たちを全員斬り捨ててくれたおかげで命が助かっている。その時に彼女の速すぎて刀に血もつかないほどのスピードを目撃し、彼女のことを「恐ろしいほどに強い」と認識を改めた(それ以前は一対一なら負けないと思っていた)。あずみが家康を暗殺する際には松井凛太郎と貢喬助の足止めするサポート役に回った。
父のように慕っていた勘兵衛が死んだ後は暫く無気力だったが、天海に出会い、天海のために働こうと決意を新たにし、同じく天海の刺客となったあずみと使命を共にするようになる。やがてあずみが最も気を許す仲間の一人となっていった。天海配下の刺客たちの中ではあずみに次いで強く、仲間を失うことを恐れるあずみも彼とは安心して使命の分担ができたが、あずみほど絶対的な強さではないので羅刹鴉や安部蔵人などの強者には敗れて負傷させられている。その治療のため使命から外れた時期もあった。あずみを見守り続けたがっており、彼女が天海のもとを離れた後も彼女と一緒に行動しようとした。
あずみからは友情や信頼は深く寄せられているが、恋愛対象とは見做されていないようで、飛猿もあずみから相手にされないことをわかったうえで陰から彼女を見守り続けているという。
千代蔵(ちよぞう)
お鏡の弟。「庭内」を取り仕切る番人的な存在。大柄だが、耳がまったく聞こえず、まともな言葉もしゃべれず、顔が歪んでいる(何らかの発達障害を抱えていると思われる)。あずみの強さには及ばないものの、作中でも非常に強い人物である。あずみによれば千代蔵は彼女のように自分の身体を素早く動かせるわけではないが、腕力で長刀を振り回す速度が速いのが強さの原因であるという。
彼には姉のお鏡が世界の全てであり、お鏡の命令であれば何でも言うことを聞くため、お鏡は千代蔵の武力を元に力をつけ庭内を統括していた。身体は大きいが知能と性格は幼児と変わらず、感情に任せ滅茶苦茶な行動をとってしまうことも多い。お鏡の死後はあずみがお鏡の代わりとなって引き取り、ともに天海の密命を果たしていくことになった。その類い稀な剣の腕により数々の死線を越えあずみの頼れるパートナーとなっていった。あずみは仲間が死ぬことを恐れて仲間に戦いを任せたがらない質だが、千代蔵の腕は信頼して色々任せている。
幕間のある道中で柳生宗矩が放った刺客団に襲撃された際、刀を持っていなかったあずみに自らの長刀を投げ与えて無防備となり、あずみはすぐに刺客団を全員斬り伏せたものの、その間に刺客たちに腹や頭部を斬られて致命傷を負い、あずみに抱かれながら絶命した。彼の死がきっかけとなり、あずみは天海のもとを離れて一人旅に出ることになった。
やえ
弟の太助とともに横暴な親方のもとで曲芸師として生活していた。控えめで優しい性格をしている。佐敷三兄弟に親方と弟の太助を殺された後輪姦された。その後駆けつけたあずみたちに保護され、あずみ、ひゅうが、月斎と共に旅をすることになる。ひゅうがに想いを寄せられているが、やえは気づいていない。
後にあずみらと別れて母親の住む丹後に向かう。あずみは井上勘兵衛が死んだ後は、残された最後の知古であるやえに会うことだけを生きがいに丹後への旅を始める。
やえは結局丹後まで行かず、京で女郎になっており、そこであずみと再会。当初2人は再会を喜びあっていたが、あずみを追って京へ来ていた倉石左近と女郎屋で知り合い彼に好意を寄せるようになり、左近があずみに想いを寄せていることを知ったのをきっかけにあずみを強く拒絶するようになり2人の関係に亀裂が入る。
あずみと彼女の命を狙う幕府旗本たちの戦いに巻き込まれ、旗本たちにあずみを誘き出すための人質に取られた。あずみは救出に駆けつけたが、あずみの負担になるまいと自ら舌を噛む。死んだかと思われたが、すぐにあずみと左近が旗本たちを斬り捨てて解放され、舌を噛み切るには至ってなかったので一命を取り留めた。その後あずみと和解し、左近からも傷つけたお詫びとして女郎屋に払った借金の肩代わりの証文を贈られた。左近の想いがあずみにあっても構わないので左近と一緒に暮らしたいと望んだが、左近はやえの制止を振り切ってあずみとの果たし合いに臨み命を落とした。
きく
柳生が放った、親しくなってから騙し討つという暗殺一族の一人。男の体と女の心を持つ。得意技はすり。当初はあずみを騙し討ちにするつもりで彼女の旅に同行していたが、一緒に旅を続けるうちに、あずみの優しさがきくを変えていった。あずみと旅を続けたいという思いと、あずみを殺すよう迫るお頭との間で苦悩し、ついにお頭を殺害して一族から逃亡。以降お頭の悪夢を見てうなされるようになる。
「あずみとずっと一緒にいたい」という思いはかなわず、毘沙門天一味の人質となり、青龍らによって散々な暴行を加えられて非業の死を遂げる。その悲惨な遺体を見て怒りに燃えたあずみは毘沙門天一味の本拠に斬り込んで毘沙門天ら5,60人の男たちを皆殺しにした。勘兵衛があずみに人の道を教えたとすれば、きくはあずみに友情を教えた人物であり、あずみの人間形成に大きな影響があった人物だった。
南光坊天海(なんこうぼうてんかい)
徳川家康のブレーン。川越・喜多院の住職。また、天台宗の大僧正でもある。家康に「お坊を知るのがあまりにも遅すぎた…」と評されたという。素性は謎に包まれ、生年はハッキリとしない。
関ヶ原の戦いの後、これ以上の大戦を阻止するために月斎に不穏勢力の除去(枝打ち)を行う刺客集団の育成を要請し、そのために月斎はあずみたちを拾って育てた。月斎は天海から枝打ちの指令を受けてあずみたちを使ってそれを行っていく。
月斎の死後、柳生に追われながら放浪生活を送る身になっていたあずみと京都で逢い、彼女を庇護した。以降あずみは終盤に千代蔵の死がきっかけで離れるまで天海個人の刺客として活動することになる。
その直前に勘兵衛の配下であった甲賀忍者の飛猿とも逢い、彼も刺客として召抱えた。飛猿は勘兵衛の死後無気力になっていたが、天海のことを「徳川や豊臣といったものを超越した、はるかに高いところから天下のことを考えている」と評価し、彼のために働くことを決めた。
将軍秀忠やその側近の柳生宗矩からは疎まれる存在で、天海の抱える刺客たち(あずみや飛猿ら)や僧兵団は、各地で柳生剣客団と死闘を繰り広げることになる。
井上 勘兵衛(いのうえ かんべえ)
加藤清正の側近。幼いころに両親と姉を徳川家康に惨殺され、その復讐に生涯を捧げる。あずみによって主君の清正を討たれ、旗頭と仰いだ豊臣秀頼も失ってしまう。大坂城落城の際には、徳川本陣に単独で斬り込み、家康に届くところまで単身で突進をしたが、相手方の体当たりにより、灯りの火に突っ込み、身体に火が燃え移ってしまう。半身を炎に巻かれながら射た矢は家康に届くことは無かった。あずみによってその場を助け出され火傷の治療を受けることになる。月斎の教えに迷いが出ていたあずみに「世のためではなく自分の意志で守るべき存在のために戦え」と人の生きる道を教えた。
その後は勘助という偽名を名乗って駿府の小野忠明のもとで下働きとして働き、家康を討つ機会を狙っていた。月斎が死んで当てのない身となったあずみは、生き方を教えてくれた勘兵衛に会おうと彼がいる駿府へやって来て彼と行動を共にするようになる。
家康の側近である本多正純が忠明の道場を訪れた際に、素性を見抜かれる。松井凛太郎と木刀での一騎討ちをさせられ、両腕を折られ、刀を握ることも出来なくなったが、悲願であった家康への復讐は、あずみが彼の代わりに家康を打ち取ることによって果たされた。これを見届けた後、生きる目的を終えた勘兵衛は、あずみに殺されることを願い、主君清正の仇として、あずみに勝負を挑み散って逝った。仕えていた飛猿によって埋葬された。
史実では加藤清正の家臣に井上勘兵衛吉弘がいるが、本作品の井上勘兵衛が彼なのかどうかは不明。
柳生宗矩(やぎゅう むねのり)
将軍剣法指南役で2代将軍徳川秀忠の参謀役として権勢を誇る。柳生新陰流の実質的な支配者で多くの弟子たちを擁する。
秀忠に実権を掌握させるため、あずみを家康暗殺に駆り立てるべく月斎を惨殺。その後計画通りあずみが家康を討つと用済みになったあずみを消すため柳生新陰流の弟子たちや養っている様々な技を持った各地の一族を次々と刺客としてあずみに差し向ける。以降物語の最後まで延々と刺客を送り続けてくる作中最大の敵。
宗矩があずみ暗殺に送り込んだ弟子たちには自分の剣の腕に誇りを持って堂々と彼女に果たし合いを申し込んだ者もいれば、鉄砲隊を潜ませたり人質作戦を取った卑劣漢もあったりと様々だったが(卑劣漢が多いのであずみは柳生剣士からの果たし合いの申込みは疑ってかかることが多かった)、結局誰もあずみには敵わず全滅させられている。
宗矩当人は無刀取りができるとされ、強いことは強いが、あずみに太刀打ちできるレベルではないので卑劣な策略を弄す。物語途中であずみと一対一で戦わねばならなくなった際には弁を弄して勝ち目がない真剣での対決を避け、先に打たれても男女の腕力差で強引にねじ伏せられると踏んだ木刀で対決したが、結局腕の骨をへし折られて敗北を喫した。多くの弟子たちが見てる前で女の子に負けるという屈辱を味わわされたためさらにあずみへの憎悪が増し、物語の最後まであずみ抹殺に執念を燃やし続けた。
月斎に育てられた子供たち
ひゅうが
小幡月斎によって育てられた10人の刺客の1人。繋がり眉で前髪と後ろ髪を留めているのが特徴。小柄ながらも二刀を難なく使いこなす。明るく快活な性格だが、かなり口が悪い。性のことには人一倍関心を持ちあずみとやえの入浴を覗いたりと、思春期ならではの行動が目立つ。やえに想いを寄せている。
丹後に向かったやえに別れを告げに行った際に、真田幸村が放った女装の剣豪、最上美女丸と丸腰で出会ってしまい、美女丸の指示で飛猿が貸し与えた一刀のみで戦うことになり、美女丸に腹を斬られて倒れた。サディストの美女丸は彼を少しずつ斬り刻んで苦しめて遊ぼうとしたが、美女丸に虫唾が走っていた飛猿がひゅうがの喉笛を刺して楽にしてやった。ひゅうがの遺体を発見したあずみは、やえが帰っていった街道が望める丘の上に彼を埋葬し、一緒に育った仲間が全員死んで一人になってしまったことを悲しんでいた。この後、あずみは美女丸を斬ってひゅうがの仇をとった。
うきは
小幡月斎によって育てられた10人の刺客の1人。10人の中ではなちと並んで最も長身で美男子である。常に冷静で、いかなる状況におかれても感情に左右されず行動できると月斎に評価されており、月斎は一番強いあずみよりも、うきはの方が自分が目指した理想の戦士となれると期待していた。奥谷で生活している時からあずみに好意を抱いていたが、あずみがなちを好きと感じるようになってからは身を引いていた。このことを話した後に「今でもあずみが好きだ」と告白。あずみと共に崖から落ちた時にはファーストキスを交わしている。囚われたあずみを助けるため、月斎の言いつけを破り、単身で大坂城に乗り込むが罠に掛かり捕まってしまう。偽りの人質交換話からあずみと戦うことになってしまうが、あずみを助けるため、刀が折れるように細工をして自ら死を選んだ。仲間同士の殺し合いを生き延びた5人の中で3番目の死亡者。
あずみを取り巻く男性
真弓 俊次郎(まゆみ しゅんじろう)
武家の次男坊。向学心に燃える青年。学問を志し、師の烏丸天山と共に諸国に旅する夢を持つが、そのために、結果として父と兄を切腹に追い込むことになってしまった。あずみに惹かれており、彼女が毒を受けて動けなくなった時には彼女を探し回って発見し看病にあたった。それがきっかけであずみからも想いを寄せられるようになりキスをした。さらにあずみの方から初体験の性交相手になってほしいとそれとなく誘われたが、彼女が戦う姿を見ていることしかできない無力な自分は彼女の伴侶になる資格はないと思って断った。しかし言葉足らずなせいであずみは自分が血で汚れているから振られたんだと思っていた。その後天山からあずみさんは守ってほしくて誘ったんじゃなくて一時の安らぎが欲しかったから誘ったのだろうになぜ抱いてやらなかったと諭され、あずみの元へ戻ろうと思ったが、あずみを探している左近を発見し、このままではあずみが発見されて殺されると思って左近を殺そうとしたが、返り討ちにあって斬られて倒れた。あずみはそれに気づかず、しばらく物語からフェードアウトした。
実は致命傷をまぬがれており、後に雪国編で再登場し、使命で訪れたあずみと再会する。雪国内で金山奉行として権力を得て理想社会実現に向けて改革を推し進めていた。力を得て今度こそあずみを守れると自信をつけたことで以前より彼女に強引に迫る描写が増え、あずみも困惑している様子だった。理想実現のためには手段を選ばない人物に変貌しており、俊次郎が天山らを投獄させたことや道々の輩の人々を斬らせたことを知ったあずみの心は彼から離れてしまう。信頼していた静音や玄斎にも裏切られ、挫折の果て、麻薬に手を出し、幻覚を見ながら事故死する。あずみは彼の死に気づかず、立ち直ってくれることを期待していた。
倉石 左近(くらいし さこん)
早くから柳生の里では有名な天才剣士であり、17歳で江戸の柳生道場に入門してきた際には、噂を聞き「倉石左近何するものぞ」と待ち受けていた柳生江戸道場の師範代たちを、一本も取らせず、すべて打ちのめしたほどの達人と言われている。終生のライバルと思っていた小野派の竜虎、松井凛太郎と貢喬助に打ち勝ったあずみに対して興味を抱いていた。
柳生宗矩から抹殺を命じられた標的のあずみに欲情するようになり、あずみの面影がある女郎のやえを抱くようになる。遊びと称してやえを女郎屋の外へ連れ出して二人で過ごしたことで、やえから想いを寄せられるようになる。
あずみが柳生の罠にはまって毒で動けなくなった際には強姦しようとしたが、あずみが泣いてるのを見て思いとどまり柳生の追跡から匿った。師匠の宗矩より強いようで、あずみを匿った罪で彼を処刑しようとした宗矩の剣を真剣白羽取りで止めている。
当初あずみは柳生の刺客である彼に冷淡な態度だったが、唯一の生きがいだったやえとの友情が壊れて絶望していた時に彼と言葉を交わしたことで距離が縮まり、一緒に刺し違えて死ぬことを提案する彼にそれもいいかもねと答えた(やえにこの会話を聞かれており、余計にあずみとやえの関係が壊れた)。
幕府からあずみ抹殺の指令を受けていた旗本の長瀬・千堂たちがやえを人質にとった時にはあずみとともに旗本たちや鉄砲隊を斬り捨ててやえ救出に貢献。やえを傷つけたお詫びとして自分の財産を女郎屋への借金返済に充てその証文を彼女に渡した。
肺を病んでおり、残りわずかな命であったため、最後は病で死すより剣士として死にたいと、やえの制止を振り切ってあずみに勝負を挑んだ。戦いの末あずみに斬れられたが、彼女に抱きつく形となり、一緒に逝こうと言い出し、あずみもそれを許可したが、結局それをしないまま倒れ、あずみに止めをさされて死亡した。
梵天丸(ぼんてんまる)
将軍徳川秀忠の落胤。秀忠の生き写しのようなチビの醜男で、性格も醜悪そのもの。父秀忠と同じく悔しい時に「むんむん」と言い、何かにつけて親指をチュバチュバしゃぶるのが特徴。妻のお江与に隠して作った子供なので秀忠は彼の存在を表沙汰にはできなかったが、溺愛されており、彼を大名にするため秀忠と柳生宗矩はどこかの大名家を潰して彼を押し込もうという陰謀を二度企んだが、いずれもあずみの活躍で失敗に帰した。その一つが千代蔵がいた領地だったが、ここで梵天丸は美しくて強いあずみに惚れ込んで妻にしたがるようになったが、当時兵介と恋仲になっていた彼女には全く相手にされなかった。嫉妬した梵天丸は兵介に危害を加えられたくなければ自分の女になるよう強要しはじめ、あずみを苦しめた。あずみはしばらくの間護衛のため兵介に近い場所で生活しなければならなくなった。その後側近の加納の働きで一時的に城主になったが、あずみによって拉致されて宗矩や加納に対する人質に取られた。
武信(たけのぶ)
西国の大名の跡継ぎ。武宗の息子で鈴の兄。頼りない父の代わりに実質的に藩を統治している。家臣や領民からの声望が高い。異国との密貿易を行っており、改易を目論む幕府に対抗するため将軍秀忠が溺愛する次男国千代を誘拐した。初めあずみは彼を斬って国千代を救出するために天海に送り込まれたが、やがて武信に惹かれて彼と一緒に戦うことを決意し、武信もあずみに惹かれていた。この最中金地院崇伝の手先の京極貞麻呂の一団に城を襲撃されたが、あずみの助力を得て撃退した。その後あずみは領地を潰さず武信も死なせないよう天海に働きかけをしたが、天海は首謀者の死だけは譲らず、それを知った父武宗が武信を守るために切腹した。父の決意を知らず悲しむ武信をあずみは励ました。武信はあずみを妻に迎えたがったが、あずみは大名の妻の地位を振って使命に戻っていった。
天海の配下
金井 虎之助(かねい とらのすけ)
かがり
つづら、うつぼ、はつねと共に雪国に潜入していた工作員。寺沢玄斎ら浪人衆に潜り込み調査をしていた。最初のころは、天海から特別に信頼を寄せられているあずみに冷たくあたり、つづらが殺されるのを止められなかったあずみを責める。真弓俊次郎に頼まれて道々の輩の人たちを斬った。玄斎らに捕らわれた際、俊次郎の作る鴉片を服用させられていたために中毒となる。
はつねとは同じ村で育ち、子供のころからずっと一緒で、恋人同士ではないが肉体関係を結ぶ仲であった。
「独眼竜謀略編」でも登場。あずみを仲間と認めるようになり、飛猿、兵介、はつねと共に任務にあたる。
はつねによれば武術の腕は故郷の村の中でも上位だったらしいが、彼と鍔迫り合いした小蝶や登太からは「あいつ大した腕じゃなかったな」と酷評され、実際その後小蝶と登太によって斬られて激痛で涙を流しながらのたうち回った後に止めをさされて死亡した。さらにその後小蝶と登太から、あずみと戦うかに関して「あずみはさっき倒したあの男とは全然腕が違うよ」という表現もされてしまった。
修行時代編
弥衛門(やえもん)
あずみたちが育った奥谷に近い下谷の村の忍者。しばしばあずみたちが暮らす奥谷にやって来て忍術をはじめ色々なことを教えていたが(なち、うきはなどには女性の身体のことも教えた)、あずみたちの強さは知らない。あずみたちは「弥衛門様」とよんでいた。月斎は修行の最終仕上げとしてあずみたちの存在を知る下谷の村人たちを老若男女問わず皆殺しにして口封じすることをあずみたちに命令。村人たちがあずみら5人の子供たちに虐殺されていく光景を見て悪夢を見ているのかと茫然自失としていた。最後まで放置されて生き残らされ、あずみたちに「ご教授ありがとうございました」とお礼を言われた後、茫然自失としたまま、あずみと戦うことになったが、一刀のもとに彼女に首を跳ね飛ばされて死亡した。
枝打ち編
滝沢 柳太郎(たきざわ りゅうたろう)
片桐兵部のもとに参じた剣を頼りに生きる武士。気さくな人物であずみと親しくなる。当時まだ子供だったあずみは彼を「おじちゃん」と呼んでいた。あずみは月斎から片桐兵部一団の皆殺しを命じられていたが、彼とは戦いたがらず、彼を一団から抜けさせようとしたり、彼を襲撃をかける切り離した集団に入らないようにしたり、彼が兵部を守るために立ちふさがってきた時も飛び越えて斬るのを避けようとしたが、あずみを呼び止めて「剣を頼りに生きる者は、こうと決めた道に己の命を賭けるしか生きていきようがないのだ」と教え、戦っていくことを要求した。急所をなかなか斬らせず、あずみに人を斬ることの残虐さを学ばせた。心臓を貫かれた後、これでよかったのだと彼女に告げて死亡した。あずみはどういう意味だったのか月斎に尋ね、月斎は「剣でしか生きて行きようがない者たちは自分より優れた剣客に斬られて死ぬのは本望であり、その男はあずみの強さを認め、あずみを気に入っていたのだ」と教えた。あずみに使命への最初の葛藤を与えた人物だった。
すえ
貧しい小作人の娘。美人の姉きくが身分違いの庄屋の息子に見初められて結婚することになり、その祝言に参加するため父とともに庄屋の屋敷に赴こうとしていたところをあずみたちと出会う。当時子供だったあずみと同じぐらいの年頃だったため親しくなり「すえちゃん」「あずみちゃん」と呼び合うようになった。あずみたちも祝言に参加したが、祝言の最中に野伏せりが略奪に現れ、野伏せりたちはすえの姉や父を殺害した。それを見て怒りに燃えたあずみは野伏せりを次々と斬り殺した。月斎は自分の刺客団の力を見せないため放置するつもりだったが、力を見せてしまった以上やむを得ないと野伏せりを皆殺しにするようひゅうがたちにも指示。野伏せりが皆殺しにされた後、あずみはすえに近づこうとしたが、すえはあずみを恐れて離れた。あずみは何度もすえに謝罪しながら月斎に引っ張られて屋敷を去った。遠目から見送りに出たすえに対し、あずみは独楽をすえの目の前の柵の上に投げて去っていた。
加藤清正(かとう きよまさ)
最上 美女丸(もがみ びじょまる)
真田幸村の放った刺客で居合いの達人。ひゅうがを殺し、小幡月斎にも重傷を負わせるなど非常に強い。女装をしており、言葉遣いも女性のように話す。自惚れている相手をじわじわと痛めつけることに快感を覚える。戦う前に「自分が鍔をつけていないのは受け太刀しないから」と相手に説明する。小幡月斎に止めをさす寸前のところであずみが駆けつけてきて彼女との対決に及ぶ。構えもしないあずみに対して顔面を斬ろうとしたが、切っ先の紙一重の距離で躱されて腹を斬られる。詳細は不明だが母親を憎んでおり、母親と同じ赤い血が自分から流れ出ることに驚いていた。止めをさしてやると言うあずみに対して花を抱いて死にたいと要求し、あずみは近くにあった椿の花を渡してやってから止めをさした。
大阪城落城
月斎との逃亡生活
尾形 太一郎(おがた たいちろう)ら5人の剣客
柳生宗矩の弟子たち。宗矩が月斎暗殺のため送り込んだ最初の刺客。他に名前が分かっているのは土橋又五郎、立野要介、北村左門。はじめあずみは殺さず対処しようと土橋の脚に傷を入れて戦闘不能にし、勝負はついたと言って血止めを勧めたが、土橋は屈辱のあまり自害してしまった。驚くあずみに対し、尾形は果たし合いにおける態度を一喝。月斎も賛同し、あずみに誇りある剣士との果たし合いでは相手の命を断つよう教えた。そのためあずみは残る者たちを全員一刀のもとに殺害した。あずみから「勝負は見えている。それでも命より誇りか」と問われた尾形は、あずみの強さに恐怖しつつも、誇りを選んで彼女に斬りかかり、一刀のもとに首を斬られて死亡した。あずみの相手には全くならなかったが、この戦いで誇りある剣士から果たし合いを申し込まれた時には相手の命を断つべきであることを学んだあずみは以降そうし続けることになる。
伴 左近(ばん さこん)と播磨 小次郎(はりま こじろう)
駿府での家康暗殺編
貢 喬助(みつぐ きょうすけ)
松井凛太郎とともに小野忠明の高弟で小野派一刀流の竜虎と呼ばれる。笛の名手でもある。凛太郎とともに徳川家康の警護に付いていたが、飛猿の罠にかかって沼で喘いでいる間にあずみに家康を討たれ、切腹を免れなくなり、このまま切腹して果てるのでは死にきれぬとあずみに決闘を申し込んだ。あずみはその場では返答しなかったが、彼らの願いに応じて指定された場所に現れた。小野忠明の立ち会いのもとあずみとの果たし合いに及ぶ。凛太郎より先に立ち会ったが、あずみに胸を斬られて膝をつく。その後あずみに挑んだ凛太郎も顔面を斬られて即死。戦えて満足だったとあずみに感謝するとともに剣を競い合ってきた凛太郎と離れないうちに止めをさしてほしいと願い、あずみに止めをさされて死亡した。
徳川家康(とくがわ いえやす)
きくとの旅路
弥吉(やきち)
農民。熱を出したきくの看病のためあずみは彼の家に厄介になった。妻のかいとともに暮らし、実の子ではないが、かいの子供であるちよと平太を我が子のように可愛がっている。大阪の戦いで豊臣方の兵士であり、豊臣家滅亡後に家康を討とうと駿府へ向かう途中に行き倒れになり、かいに救われて一緒にくらすようになった。柳生宗矩があずみ暗殺のために放った土蔵と火蔵に家を襲撃され、その戦いの中で致命傷を負う。その後あずみから家康を討ったことを知らされ、自分が討ち取りたかった家康をあずみのような少女が討ち取ったことに痛快さを感じ、彼女が気に病んでここに留まらないよう自分が致命傷を負ったことを隠すとともに彼女が家の弁償として差し出したお金も受取りを拒否して逃げるよう勧めた。あずみを見送った後に倒れ、かいと子供たちに看取られながら死去した。あずみは弥吉の死に気づかなかったが、優しい人たちを巻き込んで家を壊してしまったことを悔いていた。
土蔵と火蔵(どぞう、かぞう)
柳生宗矩が養っている爆矢の一族の者たち。宗矩の命令であずみが滞在していた弥吉宅を襲撃。2人とも殺気だった異様な目をしており、山の獣や鳥に飽きて人間を殺したくウズウズしている。あずみに限らず弥吉一家も殺そうとした。土蔵は弥吉に落馬させられた後、あずみに爆矢の入った篭を斬って外されるとともに胸を斬られ、すぐに火蔵を斬りに向かうあずみから止めを頼まれた弥吉に鎌で滅多刺しにされて死んだが、死ぬ前に弥吉の腹を貫いて致命傷を負わせた。火蔵の爆矢でちよと平太が爆矢で死んでしまったと思ったあずみは、火蔵の腕と脚と爆矢の篭を斬り落として落馬させた後、火蔵も震え上がる怒りの形相を見せ、火蔵の首を刎ね飛ばした。あずみはちよと平太を巻き込んで死なせてしまったと絶望していたが、ちよと平太が無事だったことを知ると涙を流して喜んだ。
金角(きんかく)
無法者集団の首領。かぶき者。顔に隈取の化粧をし派手な着物を着て、暴虐の限りを尽くしている。女を強姦するのが趣味で、あずみを強姦することに執念を燃やしたが、ついに成功しなかった。とある領国で、浪人集団と道々の輩をまとめて一掃しようとしていた大名の罠にかかって城に誘き出されたが、襲いかかる城侍たちを次々と残忍に返り討ちにし、人質を取って脱出。同じく命を狙われていた道々の輩やあずみが隠れたお堂に入って偶然に合流(道々の輩は城の中で大勢が息を潜めている気配を感じ取ったあずみに止められて城に入らずここに隠れていた)。大名を人質にして脱出することを考えていたあずみに時間稼ぎを託された。当人はそれを引き受けたような感じではなかったが、結果的に襲いかかる城侍と戦って、あずみが城に潜入して大名を人質にして戻るまでの時間を稼ぎ「道々の輩」たちを助けることになった。しかしあずみが戻った時にはすでに致命傷を負っており、あずみに謝罪され抱かれながら死亡した。彼女に犯したかったぜと言い遺した。
村井 晋介(むらい しんすけ)
柳生宗矩の弟子。宗矩からは柳生の精鋭と呼ばれており、宗矩とともに騎乗していることが多いので柳生一門の中ではかなり地位が高いようである。高垣丈二郎とともに宗矩からあずみ抹殺の命を受ける。卑劣漢であり、あずみに剣士同士の果たし合いを申し込んでおいて罠にかけようとしたが、左近の介入で失敗し相棒の丈二郎を斬られた。その後他の宗矩の弟子たちとともに再びあずみを罠にかけようと待ち構えていたが、あずみに見抜かれて剣で彼女と戦うしかなくなった。他の宗矩の弟子たちが彼女に斬られている間に斬りかかろうとしたが、躱されると同時に首を斬られた。しばらく自分の首が切り落とされたことに気づかず、立ち去るあずみの方へ何歩かよろよろと歩いた後に頭と胴体が分離して崩れ落ちた。
金塊強奪篇
研ノ助(けんのすけ)
あずみときくが立ち寄った領地を治める外様大名の家臣の息子。母はおこう。藩の重臣の娘志乃に想いを寄せられている。剣の腕は弱いが、幼馴染の4人の藩士の息子仲間たちとともに藩の危機を救うため毘沙門天一味に斬り込みをかけて一人でも多く斬って戦死しようと決意したが、彼の父親ら藩士たちが先に毘沙門天一味に斬り込みをかけ、白蛇や青龍らに返り討ちにされて全滅し、その凄惨な光景を見て5人とも恐怖で腰を抜かし断念。その後また5人での襲撃を企てたが、その時はきくとおこうの居場所を探ろうと侵入していたあずみが気づいて彼らを救出して断念させた。あずみが毘沙門天一味を全滅させた後は志乃や他の仲間たちとともに大いに喜び、彼女に感謝して見送った。
毘沙門天(びしゃもんてん)
板倉(いたくら)
毘沙門天一味の幹部だが、その正体は幕府のスパイ。梵天丸の領地にするため外様大名の領地を取り潰す口実作りに毘沙門天一味に幕府の金塊行列を襲撃させようとしていた。柳生剣士26人を斬り伏せたあずみがこの領地に来ていることを知り、彼女の妨害で計画が潰えることを恐れ、きくとおこうを誘拐させ、静かな傍観者でいることをあずみに強要した。あずみはそれを約束し、板倉も2人に危害を加えるつもりはなかったが、青龍たちが板倉の制止を無視してきくをいたぶって殺してしまい、あずみの怒りに触れ、毘沙門天一味は金塊行列襲撃前に彼女に全滅させられた。板倉は身を隠して生き延びたが、幕府の陰謀は潰えた。
このあとも柳生宗矩や加納の部下としてしばしば登場。頭は切れるが、あずみに簡単に斬り捨てられてしまう連中の剣も見切れず危うく首を落とされそうになったりしていたので彼自身の戦闘力は低いようである。死んだ描写は特にない。
京都激闘篇
長瀬と千堂(ながせ、せんどう)
泥鵺(どろぬえ)
あずみ暗殺のために幕府に雇われた忍びの一族の一人。蛇や蛙などをそのまま口にするなど、常識からは考えられない異様な男。仲間からも気味悪がられていた。川に体を洗いに来たあずみを水中に引きずり込み気絶させるが、陸に引き上げたところで息を吹き返したために退却。その夜、あずみの隙をついて武器を盗んで隠し、素手のあずみと対決。西田弁蔵が助けに入ったため退却したが、西田があずみに駆け寄ったところを後ろから刺し、致命傷を負わせて彼を殺害。怒りに燃えるあずみから逃げようとしたが、背中を斬られて慌てて土下座して命乞いした。あずみに「二度と俺に近づくな!」と怒鳴られて一度は助命されたが、彼女が西田のところへ駆け戻ろうとした直後に背後から襲いかかったため、あずみに腹を斬られた。再び逃げようとしたが、あずみが投げつけた刀で背中から貫かれて死亡した。
雪国の死闘篇
小西 静音(こにし しずね)と小西 忠音(こにし ただね)
異人の宣教師の落とし子らしく、あずみと同じく目の色が青いなど異人の外見的特徴を有する。普段は下界から断絶された山谷の奥で、育ててくれた乳母と質素な暮らしをしている。雪国の領民たちのキリスト教の教祖であり、浪人衆の旗頭でもあるが、彼らと対立する城侍からも敬意を払われており、雪国内では全ての者から「静音様」と呼ばれ、大きな影響力を持っている。
キリスト教の他者を許す教えを人々に説き、浪人侍が城侍に対してクーデターを起こした際も、双方の間を取り持ち、騒乱が起こらぬように双方の緩やかな和合を目指すなど当初は人格者のように思われた。
しかしその真の目的は全ての者たちの信頼を得ることで人々を戦に扇動し、黒い目の「劣等人種」たちを殺し合わせて楽しむことにあり、やがて本性を露わにして扇動を開始する。
受けた傷が全て一夜にして跡形もなく消えてしまうという奇跡を見せたが、それも実は双子によるトリックだった。双子の兄弟の名は忠音。兄弟揃ってサディスティックな性格で罠に掛けて捕らえたあずみを「調教」と称して様々な拷問にかけて家畜化しようとした。
その後がっちにより救出されたあずみによりまず忠音が殺されたが、静音は彼の前に現れたあずみを味方に引き入れようとし、なぜあずみが女なのにそんなに強いのか、なぜ自分にこれほどの扇動能力があるのか、それは青い神秘の目を持つ選ばれた人種だからだとし、選ばれた人種同士で手を携え、黒い目の「劣等人種」どもを一緒に支配することを誘う。青い目を理由に迫害されて育った静音は、あずみも同じ境遇だと思っていたが、あずみは「俺は迫害など受けず優しい仲間たちと一緒に育った」と言って彼を斬った。
がっち
雪国に住む子供。たえの兄。真弓俊次郎と小西静音を深く尊敬している。父親が足を骨折して働けないため、米泥棒をして妹を養っていたが、屋敷に盗みに入ったところをあずみに見つかってしまう。その際に、盗みを見逃してもらったことがきっかけであずみと仲良くなる。雪国で反乱が起き、家に藩主の嫡男である松千代を匿うことになるが、羅刹鴉に見つかり父親、松千代、家臣らも殺されてしまう。仇討ちのためにあずみを探していたところ、偶然にも小西静音の正体を知ることになり、捕らわれの身となっていたあずみを助けることになる。あずみの口添えで妹のたえと共に西願寺の和尚に引き取られる。この先も雪国で生きていくため、真実を胸に隠していくことを誓い、雪国を去るあずみを見送った。
羅刹鴉(らせつがらす)
黒装束に身を染めた殺人武装傭兵集団。個々に決められた名前は無く、全員を総じて「羅刹鴉」と名乗る7人組。全員が仮面を被っている。それぞれが個性的な殺人武器(巨大なハンドグレネード・ボウガンetc…)を持つ。残虐無比であり、戦闘員・非戦闘員、老若男女問わず誰であろうが容赦なく殺し尽くすことと、戦いに身を染めることのみに生き甲斐を求めている。殺戮を楽しむために旧知の玄斎に招かれて雪国へやって来た。登場早々国境警備に当たっていた大勢の武士たちを皆殺しにし、その後雪国内で殺戮の限りを尽くし、がっちの父親らも虐殺した。がっちから仇討ちを頼まれたあずみが彼らと対決した。殺した人間の数が多すぎて誰ががっちの父親かなど覚えておらず、戦闘中もがっちたちを狙うなど卑劣さを見せた。あずみの怒りに触れ、最期は全員彼女に斬られた。斬られた両腕が皮だけで胴体と繋がった状態であずみの脚に寄りかかる形となったリーダー格は、あずみに見下されてお前たちの殺戮もこれで終わりだと告げられたが、自分たちより大勢の人間を殺してきたあずみは自分たちと同類だと語り、彼女の脚を舐めはじめたが、首を刺されて止めをさされた。
独眼竜謀略篇
伊達政宗(だて まさむね)
有名な戦国武将だった仙台藩主。またの名を「独眼竜」。徳川の世で生きる糧を無くして不平不満を持つ忍びの頭たちを集め、江戸城に侵入し、将軍・秀忠ほか、幕府の中枢人物を討ち取り徳川幕府を大混乱に陥れた上で挙兵し伊達家が天下を取る陰謀を企てている。情報を掴んだ天海があずみを政宗を討つ刺客として送り込む。あずみの活躍で忍びの頭たちを全て討たれて謀略が破れた後、宮本武蔵の護衛で仙台へ逃げ戻ろうとしたが、武蔵に詫びて彼を振り切ってあずみと会うことにした。あずみと会話した後、自害を決意し、あずみに介錯を頼んで果てた。政宗に心を動かされたあずみが天海に懇願したことにより事件を起こして死んだのは政宗を騙る偽物とされ、影武者の政宗による仙台藩の存続が認められた。
宮本武蔵(みやもと むさし)
作州宮本村生まれ。実在した高名な剣士。武者修行中にたまたまあずみの剣技を目撃して驚き、あずみとの手合わせを希望してあずみを追い回すようになるが、あずみの方は武蔵に関心がなく、最初に言葉を交わした時には名前さえ覚えていなかった。それを見た武蔵はあれだけの剣の腕に達するには大変な剣の修行を積んだはずなのに自分にさして関心もないのかと驚愕していた。
徳川に召し抱えられた小野忠明や柳生宗矩に対抗意識を燃やしており、名だたる伊達政宗への仕官ならそれに見劣りすることはないと伊達家への仕官を希望している。政宗が仙台まで戻る護衛を引き受けたが、政宗が武蔵を撒いてあずみと会い、彼女の介錯で果てることを選んだため、伊達家への仕官が叶わなくなった。
政宗の死後、あずみに決闘を申し込み、あずみから承知された。作中で無類の強さを誇るあずみですら互いに剣を抜いて対峙するときにこんなに威圧感の覚える相手は初めてで、まともに戦っては勝ち目はないと戦慄させたほどの猛者。
決闘ではあずみは武蔵の攻撃を躱して左手を貫き、さらに彼の大きな身体を飛び越えて左肩を斬ったのに対し、武蔵は彼女の腰に刀をぶつけたが手裏剣のために斬れなかった。その衝撃であずみが着地に失敗して転び、起き上がってフラつきながら下がっていたところを武蔵はすかさず追いかけて斬りかかろうとしたが、兵介が「もう勝負はついた」と言って割って入ったため、勝負が中断された。あずみは兵介に連れられて去っていった。結果的にはあずみは無傷(あずみ本人はあのまま勝負が続いていれば自分は武蔵に斬られていただろうと独白している)で武蔵は左手と左肩を斬られていたが、武蔵は止めが入らなければあそこで斬れていたはずだから俺の勝ちのはずだ、いや違うのかといった苦悶を延々と繰り返し、自分は勝ったのか負けたのかどっちなんだと叫んでいた。いずれにしても、あずみと戦って生き残った数少ない登場人物となった。
向坂 郡司(こうさか ぐんじ)
伊達政宗の謀反の密会に参じた忍びの頭領の一人。髭を生やした中年の男。弟子思いの心優しい人物。密会の地へは弟子の茂一、小蝶、登太、彦三を連れて現れる。修行に励む弟子たちを食わせる米にも事欠く状態になっており、弟子たちが活躍できる世にするため政宗の計画に参加した。弟子たちがあずみと親しくなったことで、あずみたちの滞在先の宿を突き止めた。兵介を守りながら逃げるあずみを弟子たちとともに追跡したが、手裏剣などを全部防がれて逃げられた。茂一の意気込みに後押しされ、宿に戻ってきたあずみに弟子たちとともに再び挑むが、弟子たちの前で首を斬られて死亡。弟子たちと親しくなっていたあずみは彼を斬ることに強く葛藤していた。
地獄の領地編
加納(かのう)
柳生宗矩の高弟で「庭内」がある領地の重臣。冷徹非道な性格で頭が切れる美男。剣の腕も高いが、剣士の誇りなどにこだわりは一切なく、目的のためには手段は選ばない。宗矩から全幅の信頼を得ており、将軍秀忠の意を受けた宗矩が梵天丸を城主にするための陰謀と天海抹殺のための柳生軍団を編成した際にはその総指揮を任された。お鏡とは肉体関係を持っているが、千代蔵とは相性が悪い。しかしお鏡を通じてしばしば千代蔵に任務を与える。
城主を捕らえて梵天丸を城主にすり替える計画に一時的に成功したが、あずみに梵天丸を人質に取られる。彦四郎を人質にとってあずみに梵天丸との人質交換を持ちかけ、あずみがそれに応じてやって来たところを柳生軍団、庭内のゴロツキ、その他金で雇った者たちに総がかりで彼女に斬りかからせた。しかし軍団を全滅させられ、彼自身も最期は彼女に斬られて死亡した。
卑劣漢系の柳生剣士にしては珍しく非常に強い人物で、あずみや彦四郎に扇動されて金を盗もうとしたゴロツキたちを簡単に全滅させたり、彦四郎を倒したり、最強のあずみを相手にしても随分粘って戦っていた。
辻堂(つじどう)家の父親
柳生に金で雇われた剣客一家辻堂家の父親。2人の息子と行動している。ハンセン病を患っているらしく顔が半分焼けただれたようになっている。思考能力もあまりなく、次男に言われるがままに行動している。常時身体を折り曲げる奇妙な体勢を取り、寝っ転がるように素早く斬りつける剣技を持つ。剣の腕は高く、飛んでいるハエを斬り落としたり、喧嘩になった相手を多数斬り捨てたりしている。一家は彼の病気を治す薬を買うためにあずみ抹殺を柳生から請け負った。あずみとの最初の立ち会いで長男を斬られ、さらに柳生軍団があずみに総がかりで挑んだ乱戦時に次男も斬られ、泣きながらあずみに仇討ちを挑んだが、あずみは加納に斬られた彦四郎のもとに駆けつけることに頭がいっぱいだったので彼の身の上を構っている暇はなく、一瞬で彼女に斬り捨てられてしまった。
辻堂家の次男
辻堂家の次男。理知的な性格ではないが、一家でまともに他者と意思疎通できるのは彼だけなので一家の方針は彼が決めているようである。父の病気を治す薬を買う金を得るために柳生からあずみ抹殺を請け負った。柳生軍団が一斉にあずみに斬り掛かった際、彼と父もあずみを狙って参加したが、その乱戦中しばらくコマが彼の視点になる描写が入った。向かってくる男たちを手当たり次第に斬り捨てるあずみに近づいていき、斬りかかろうとするも躱された後、彼女が自分に向かって素早く剣を一振りする光景が映り、その後落ちる首の視点になって自分に駆け寄る父親の姿が見えたが、次の瞬間には真っ暗になって人生を終える描写である。この編の後も乱戦中にあずみに首を落とされて死ぬ男の視点になる描写が入ることがあるが、彼はその描写をされた最初の人物だった。乱戦の中で斬られたため、あずみは彼を斬ったことを覚えておらず、父親が息子たちの仇と言ってるのを聞いて弟の方も自分が斬ったのかと気づいた。
西国編
京極 貞麻呂(きょうごく さだまろ)
国千代誘拐事件を巡って朝廷の使者として西国の領地に派遣された公家。正体は金地院崇伝の手先であり、崇伝の政敵の天海とその刺客あずみの妨害・抹殺を図るのが目的。武信の城に潜入させた彼の手下たちがきぬ・丈山夫妻や馬琴らを殺したことであずみの怒りに触れ、使命と無関係な彼女の標的となり、滞在先の寺が彼女や千代蔵の襲撃を受けた。応戦させた手下たちを皆殺しにされたが、彼自身は厠の糞尿の中に飛び込んで身を隠してなんとか生き延び、崇伝のもとへ逃げ帰っていった。
西国編の後も崇伝の手下として度々登場する。彼の崇伝への崇拝ぶりには同性愛感情が絡んでいるらしく、同じく崇伝の手下で崇伝と肉体関係がある風魔の汐路をライバル視し、あずみ抹殺の任務をめぐって風魔勢力と張り合っていた。最期は崇伝の計画に失敗したことで崇伝に見限られた上、あずみに斬られて死亡した。
徳川 国千代(とくがわ くにちよ)
将軍秀忠の次男。出来の悪い兄竹千代と違って利発であるため、秀忠とお江与から溺愛を受ける。顔も醜男揃いの秀忠の子供(他に登場するのは竹千代、梵天丸)の中で唯一の美少年であり、醜男の秀忠に全く似てない。家康の命令で跡継ぎは竹千代に定められていたが、武芸・学問・乗馬、何をやらせても兄に勝っているため、承服できない思いを抱えている。西国の領地の取り潰しを目論む秀忠の陰謀を阻止するために武信により誘拐される。性格は意地悪で、また女好きであり、美少女の鈴やあずみにちょっかいを出そうとし、小夜とは実際に肉体関係をもった。天海を竹千代派と見て疎んでおり、あずみにも冷淡(あずみの肉体には関心があるが)。京極と接触を図っており、城が京極の一団に襲撃された時も移動を拒否したため、あずみに気絶させられて無理やり天守閣に運ばれた。
服部半蔵正重(はっとり はんぞう まさしげ)
伝説の忍の服部半蔵正成の次男。兄服部半蔵正就の改易後に半蔵の名を継いだが、彼も後に改易されて他家の預かりの身になり、名誉回復のため国千代救出の任務に参加し、西国の領地に潜入した。強さはそれなりという程度だが、当初夜郎自大であずみを見下して上から目線で話していたが、あずみの強さを目撃して驚愕し、以降ばつが悪くなって彼女とまともに話せなくなり、あずみと敵対関係にはならなかったものの、特に親しくもならなかった。
本作品ではうだつの上がらなさやあずみに尻拭いされる情けなさが強調されるだけの存在だったが、続編『AZUMI』では彼の子孫にあたる服部半蔵正綏と服部半蔵正義の父子が桑名藩の実質的支配者、また訓練を受けた刺客集団(服部一族の兵士)の長として登場し、あずみの敵として立ちふさがる。
一人旅編
茜(あかね)
男性の旅芸者に成りすまして一人旅に出たあずみが立ち寄った旅籠の女郎。この旅籠の用心棒を引き受けている一味は風魔だが、過去に押し込み強盗で茜の両親と弟を殺した者たちであり、彼女は苦痛に耐えながら彼らに抱かれていた。あずみがやって来た後は自分を買ってもらうふりをして彼らに買われるのをやり過ごしていた。旅籠で男性奉公人として働くことを希望するあずみのために女将に取りなし、あずみは旅籠で働くようになった。しかし一味は汐路から得た情報であずみが旅籠で働いていることに気づき、茜といくを人質にしてあずみを誘き出そうとし、あずみにそれを知らせるために茜の左手を切り落として届けさせた。2人の救出に駆けつけたあずみは、縛り付けられた茜といくの縄を斬って開放した後、一味を全員斬り捨てた。自分のせいで左手を斬り落とされたことを謝罪するあずみに対して茜は親の仇を討ってくれたことを感謝した。
いく
茜がいる旅籠に新たに売られた女郎。両親と弟の留次と妹の末の生活のために女郎となった。旅籠にいる間あずみは彼女には喋れない旅芸者で通して女性であることを打ち明けなかったが、留次と末から贈られたお守りを拾ってあげたり、乱暴な大男の客から助けたり、独楽回しを見せたりして親しくなった。後に茜とともに風魔一味にあずみを誘き出すための人質にされた。一味の親分が茜の手を斬り落とそうとした時には憤って殴られる。あずみが一味を全員切り捨てて救出された後、これ以上2人を巻き込まないよう立ち去ることを決めたあずみとの別れを惜しみ、いつでも戻ってきてと伝えた。あずみも茜やいくともっといっぱい話をしたかったと別れを惜しんだ。
書誌情報
- 『あずみ』〈ビッグコミックス〉全48巻
- 『あずみ』〈小学館文庫〉全24巻
他メディア
映画
- あずみ (2003年)
- あずみ2 Death or Love (2005年)
舞台
あずみ 〜AZUMI ON STAGE〜
- 公演日:2005年4月3日 - 26日
- 会場:明治座
- 構成・演出:岡村俊一
- 出演:黒木メイサ(あずみ)、生田斗真(うきは・なち〔二役〕)、長谷川純(豊臣秀頼)、山崎銀之丞(飛猿)、山本亨(小幡月斎)、涼風真世(最上美女丸・淀の方)、清家利一(佐敷三兄弟(長男)佐敷いちろう)、的場浩司(井上勘兵衛) 他
- 制作:アール・ユー・ピー
- 協力:ゆうプロダクション、小学館
あずみ 〜AZUMI RETURNS〜
- 公演日:2006年4月1日 - 16日、4月29日 - 5月4日
- 会場:明治座、梅田芸術劇場メインホール
- 構成・演出:岡村俊一
- 出演:黒木メイサ(あずみ)、生田斗真(うきは・なち〔二役〕)、長谷川純(豊臣秀頼)、山崎銀之丞(飛猿)、山本亨(小幡月斎)、涼風真世(最上美女丸・淀の方〔二役〕)、清家利一(佐敷三兄弟(長男)佐敷いちろう)、赤坂晃(井上勘兵衛) 他
- 制作:アール・ユー・ピー
- 協力:ゆうプロダクション、小学館
AZUMI 幕末編
AZUMI 戦国編
- 公演日:2016年11月11日 - 27日
- 会場:Zeppブルーシアター六本木
- 出演:川栄李奈(あずみ)、鈴木拡樹(うきは)、早乙女友貴(美女丸)、星田英利(猿飛)、小園凌央(豊臣秀頼)
あずみ〜戦国編〜
- 公演日:2020年3月20日 - 29日
- 会場:東京・Bunkamuraシアターコクーン
- 出演:今泉佑唯(あずみ)、瀬戸利樹(うきは)、味方良介・高橋龍輝(飛猿/ダブルキャスト)、神永圭佑(豊臣秀頼)、小松準弥(最上美女丸)
- 当初3月14日が初日の予定だったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を鑑み、初日を3月20日に延期し、3月14日 - 19日の公演を中止。 4月4日 - 5日に「COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール」で予定されていた大阪公演は中止となった。
- 当初3月14日が初日の予定だったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を鑑み、初日を3月20日に延期し、3月14日 - 19日の公演を中止。 4月4日 - 5日に「COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール」で予定されていた大阪公演は中止となった。
ゲーム
- あずみ(ESP、PlayStation 2用ソフト)
- Mobage あずみ(ファンクリック、Mobage用ソーシャルゲーム)
- 戦国大戦(SEGA、アーケードゲーム)にカードとして登場(声 - 三澤紗千香)
パチンコ
- CRあずみ(2005年:サミー)