あやしや
以下はWikipediaより引用
要約
『あやしや』は、坂ノ睦による日本の漫画作品。『ゲッサン』(小学館)にて、2012年3月号から2017年6月号まで連載された。
あらすじ
登場人物
綺糸屋(あやしや)
仁(じん)
呉服商綺糸屋二代目当主。12歳。身長138cm。最初期から考えられた三人のキャラの内の一人。赤い長襦袢の上に綺糸屋の黒い従業員の着物を着た暗い目の少年。好物はたまごのご飯。昔からジャンケンが強く負け知らず。母から教わり裁縫が得意。
半年前に起きた綺糸屋事件の唯一の生き残り。顔の無い鬼に母親と店の者を皆殺しにされ、自身も致命傷を負うが、何故かその時に鬼喰いの鬼「だまり」と一心同体の状態になり生き延びた。その不可思議な共生状態による影響から朝に非常に弱く、だまりに反応した鬼導術のダメージも共有する等の副反応がある。まただまりに憑かれて以降空腹を感じない体となり、綺糸屋事件が起こってから半年の間、喉を潤す為のお茶しか口にしていなかった。そのせいかもともとチビ気味だったが絶賛成長が止まっている。仁本人は腹が減らず食えぬと知っても別にそれでも構わないと思っていた。
受けた傷はだまりの鬼の力で塞がる一方、だまりが食事を喰いそこね続け、力が弱まれば事件当夜からこれまでの戦いの傷口全部が開き死んでしまう。
自身の手で皆の仇である顔の無い鬼を討ち、「自分の体と綺糸屋を元に戻す」という綺糸屋の番頭であった正との約束を果たす為、忌々しいと嫌悪するだまりの力を借り、半年の間一人と一匹で鬼を狩り続けていた。鬼狩りには何故か綺糸屋の蔵にあった鋭い切れ味の糸を繰り出す特殊な棍状の武器を使用する。
鬼神族である花により、だまりに感覚ごと体を支配され戦闘に必要のない味覚や食欲など人として生きるための欲求を封じられていたことが判明。仁が望めば抵抗できるという花の助言により、味や満腹感こそ感じることはできなかったが、食事を摂ることができるようになる。その出来事がきっかけで、事件が起きるよりずっと前の日常を思い出し、仇を討たねば決して戻らぬと思っていた自分の欲した日常を真っ先に諦めていたのは自分自身ということに気がついた。絶望だけでなく取り戻したい日常が鮮明であるからこそ、自分の選んだ道を後悔せずに進むことができると意志を強固にし、だまりとの向き合い方についても考えを改める素振りをみせる。
だまり
鬼喰いの鬼。年齢不詳。最初期から考えられた三人のキャラの内の一人。仁にとり憑いた謎の多い魂だけの鬼。一人称は「わっしゃ」。綺糸屋事件のあった日に仁にとり憑き、それ以前の記憶が無く本来の力も失っている。鬼の魂を喰い失った力を取り戻すことで欠けた記憶も戻るかもしれないと仁に力を貸し、半年間鬼を狩り続けていた。仁の体をだまりが維持し、だまりの魂は仁が維持している共生状態。だまりの意思で仁の傷口を開くことも可能だが、短い時間しかできない。
「共生しているわっしゃもキツい」。
普段は仁の影として存在しておりお互いにその状態を忌々しく思っている。魂だけの存在の為通常触れることは出来ないが、鬼神族の“この世でさ迷える魂に干渉できる術”を使えば接触は可能。度々花に抱えられている(ただし触れるのは使用している術者のみ)。花曰く、感触は湯船に浸けたタオルで作るタオルクラゲとそっくり。飯である鬼の魂を喰うことに幸せを感じる為、より強く美味い鬼の魂を求めるなど食い意地が張っている。
楽(らく)
朱い髪の少年。年齢不詳(たぶん仁と同じくらい)。身長150cm。赤子の頃より盗賊の道具として生かされており、そんな生き方から抜け出そうと盗賊の頭を襲撃し逃げ出した過去がある。しかし一度は抗ったものの結局生き方を変えることができなかった。以来、人間を辞め本物の鬼になることを望み、また数年前命を助けてくれた鬼と出会う為、鬼の面と爪を付け朱天童子として人を襲っていた。その際、夜行祭を避けまだら峠に朱天童子を狩りにきた仁と出会う。
出会った当初は鬼門を通り鬼の世界へ行く為に仁を殺し、だまりを自分へ憑かせようとしたが、だまりが鬼喰いの鬼と分かり自身の望む鬼では無いと断念。その際、謎の現象により現れた鬼から傷を負い死を受け入れるが、見殺しに出来なかった仁により命を救われ都へ入った。
翌日、かつて殺したはずの頭率いる盗賊が都を襲撃。殺さずにはいられない憎しみに駆られ襲撃するも、自分の生きる場所は自分達盗賊と同じ所でしかないことを突き付けられ、再び生を諦めようとする。しかしそんな自分に対して「羨ましい」という仁の言葉と手助けに押され、道具ではなく人間として自身の因縁を断ち切った。
名前は無かったが、赤子の時包まれていたという唯一の私物である羽織の紋様から仁により「楽」と名を付けられた。仁の鬼退治に付き合っていれば、いずれ命の恩人である鬼に辿り着く可能性があると考え、綺糸屋に身を寄せることになる。
数年前、まだ盗賊の道具だった頃に鬼門に落とされたことがあり命を落としかけたが、とある鬼に「鬼の施し」を受け助かった。その施しの影響で陰気に対して強い耐性を持った特異体質であり、悪鬼の武器を使って仁と共に夜の都で鬼狩りをする。
花(はな)
鬼神族の少女。14歳。身長151cm(角をのぞく)。最初期から考えられた三人のキャラの内の一人。ふわふわとした白く長い髪に、先端が薄く桃色に染まった二本の角を持つ鬼神の娘。料理上手。
その身に宿るとある「力」を危険視しているが、その力のせいで自ら命を絶つことが出来ない。ある条件を満たし力を封じている目が開く前に、自身を殺してくれる存在を求め「人間に存在を知られてはいけない」という鬼神族の掟を破り、綺糸屋を訪れた。出会った当初は追っ手に追われ猶予が無く、自分を殺すことを躊躇う仁達に向かい妖術を放つ等目的の為なら手段を選ばない非道さを見せる。しかし「あんたは何度も殺してくれと言うが、死にたいとは一度も言っていない」という仁の言葉で自身の心の迷いを認め、生きる者として生への執着に従うか、避けられぬ運命を絶つべく死へ縋るかの答えを出すまでの間、だまりの非常食も兼ねて綺糸屋へ身を寄せることとなる。
目を開く前の女鬼にのみ備わった機能により、目を閉じていても日常生活に支障はない。陰気の集まる場所を探し当て、悪鬼が発生する鬼門の位置を事前に把握する術を使い、仁の鬼狩りへ協力する。鬼導術を「鬼にとってただ死ぬよりも辛く屈辱的なもの」として激しく嫌悪しており、その増悪は鬼導術のようだと呟いた仁の首を締めるほど深い。鬼導隊である咲に対しても最初は激しい嫌悪を向けていたが、あることをきっかけに歩み寄り友達になる。
鬼導隊
【北地区鬼導寮】
咲 (さき)
初対面の花に鬼導隊とそこに属する自分を邪険にされ悪印象を抱いていたが、あることを機に友達となる。実力は半人前だが、兄と同じで鬼導術の素質が強く、感情の浮き沈みが術に反映されやすい。左手首に兄の形見である数珠を付けている。
鬼導隊へ入隊する以前より、兄である明を迎えに北地区鬼導寮を頻繁に出入りしており、涼重や柊とはその頃からの付き合い。戌実のことが苦手。
柊(ひいらぎ)
明が殉職した事件で涼重から「顔の無い鬼」のことを聞いており、今までの鬼導隊の鬼の常識を覆す存在という理由で口止めしていた。綺糸屋事件との共通点にいち早く気づくなど勘が鋭い。
楓という名の奥さんがおり、甘い物を食べ過ぎだと5歳になる娘の桃に懐の菓子を没収されるなど家族に頭が上がらない様子が見受けられる。夜食にたい焼きを作るなどお菓子作りが得意。
明(あき)
しかしその約束が果たされることは無かった。
その晩の任務帰り、綺糸屋を襲った鬼とは別の「顔の無い鬼」と交戦し、六番隊は壊滅状態となる。瀕死の涼重に「あとを頼む。」と小刀を託すと、禁じられていた昔の鬼導師の術を自身の命を賭して使用し、相打ちの形で死亡。顔の無い鬼と共に消滅したかのように遺体は残っておらず、棺桶の中は空のまま葬儀が行われ、骨壷には数珠玉のみが納められている。
涼重(すずしげ)
二年前に明が殉職した事件の六番隊唯一の生存者。事件を起こした「顔の無い鬼」のことを柊により口止めされている。事件について未だ心の整理がついておらず、どうしても気になる不審な点があったがそれを突き止めた結果明の死が無駄であったかもと考えると怖くなり、明と同じ目にだけは遭わせたくないとの思いから妹である咲にも明が殉職した鬼退治に関することを秘密にしていた。
戌実(いぬさね)
甘いものが苦手。納豆が好物。隊長になって二年と日が浅く、前五番隊隊長が亡くなり急遽隊長に就任して以降、北地区を守護している。会議の後はだいたい機嫌が悪い。というかいつも不機嫌。良くも悪くも言葉を飾らず、柊に対しても丸ごと気に食わない等と指摘している。六番隊の面子と会うだけで顔を顰めるが、最近頑張ってると評判の言葉と共に朝餉に納豆の小鉢を貰った際にはツンギレしつつ嬉々として受け取り機嫌が良くなるなど単純な側面も。尚、柊は体良く苦手な納豆を押し付けただけである。
邪魔者に対しては目の前に現れ次第くびり殺すと怒りを顕にし、おまけ漫画では会議後に咲にやつあたりをするなど狭量な面が目立つが、その実かなりの努力家で仲間思い。修行生の頃より一度も勝つことが出来なかった明のことをライバル視していた。涼重の失うものは少ない方がいいという言葉に対し「そんなもん恐れて鬼導隊が務まるか!」と厳しい考えを表明していたが、その言葉とは裏腹に鬼導隊隊員が亡くなった際には頭を下げ、紫隠の犠牲は当然という考えに対し激昂、面会謝絶の友人の見舞いに行った際には激しく扉を叩き胸の内を吐露するなど、明の死を引きずり犠牲者を増やすことに対して忌避感を抱いている描写がある。また本編とは関係ないが、咲の作った具なしの巨大おにぎりを文句だらだら言いつつ完食するなど、何事にも真面目な性格。
紫隠のことを威圧的で体格のいい「男性」だと一人信じて疑わず、後述の色ボケコンビからはため息をつかれるなど勘は鈍い。
左腕の篭手に巻かれた鎖から繋がった刃の付いた円形の枷のような術具を用いて鬼の肉体を切断する術を使う。
咲の謹慎期間を短くできないかと涼重が直談判した時は強く否定的な態度だったが、謹慎を言い渡した当日の夜から見回りは見習いの修行に含まれると建前を述べ、条件付きで鬼退治に参加させるなど大分ゆるい対応に切り替えた。チョロい。
戌実「これでいいか、涼重!」
涼重「処罰をなくせとは言っていない。」
結果としてこの判断が後の五、六番隊全体の生存率を大きく左右することとなる。
ククルとナサキ
2人の名前であるククルとナサキとは、沖縄語で「心」と「思いやり/情」を示す。
竹彦(たけひこ)
【南地区鬼導寮】
巌鉄(がんてつ)
見習いの頃はイワシの様にひょろかったことから柊からはイワシと呼ばれており、柊のことは「葉っぱ」と呼んでいる。どっちもどっち。
19歳の時に鬼導隊へ入隊し、同期の柊とはケンカ友達。素質の高さはもちろん、柊は体力、巌鉄は知力に長けており、お互いの才能にライバル意識を持っていた。別々の師匠につき顔を合わさなくなるも柊と互いの意識は続き、24歳の時正式な隊士となり同時期に同じ隊に配属された柊と再開。以降、隊長になるまで名(迷)コンビとして活躍する。腰に着けた瓢箪に鬼導術に使う墨が入っており、筆で直接鬼の体に呪文を書き滅する鬼導術を使う。
愛ちゃん(あいちゃん)
各キャラの呼び方は以下の通り
咲……咲ちゃん、柊……柊ん(ひいらぎん)
明……あっきー、巌鉄……巌ちゃん
涼重……涼っち、戌実……忠犬ちゃん
【東地区鬼導寮】
桐依(きりえ)
「陰気を退ける声」を生まれながらに宿しており、これを使い溜まった陰気を一箇所に追い立て、望む位置に鬼門を出現させることが可能。第六感のようなもので、一度存在を確認した鬼門の状況を感じとることもできる。変声期により力を失うまでの期間のみ、鬼導隊の隊長を務めている。目の前で部下である隊員が食い殺されても物怖じせず、子供扱いをされると怒る無邪気な少年。よく東雲に肩車をせがんでいる。歌うことが大好き。
東雲(しののめ)
明るく黒のメッシュが三本入った長い頭髪を後ろで束ねている恰幅の良い男性。天真爛漫な桐依に振り回され度々檄を飛ばしており、鬼退治に関しては桐依のことを隊長として認めていた。
戌実とは修行生時代に同じ師匠から術を教わっていた仲。5巻裏表紙「東の人々」にて、会議後によく清蓮が戌実の話をするので(まッ…まさか、清蓮殿戌実の事を…!?!)と勘違いをした挙句、戌実を飲みに誘い、隊長になったからといって調子にのるなと絡み酒をするシーンがある。清蓮が戌実の話をするのは後述が理由。
清蓮(せいれん)
【西地区鬼導寮】
狛虎(こまとら)
「その娘ら俺らが襖開ける前から、頭覆ってなかった?」
晴龍(はるたつ)
ーーー
2人とも元僧侶の出だが、戒律を微塵も守らなかった為寺を追い出された。西地区の鬼門はほぼ遊郭付近で出るからと勤務中も遊郭に入り浸る色ボケコンビ。紫隠の性別にも確信を持って気づいており、戌実の鈍さにため息をついている。寺育ちのなごりで雑巾がけがこなれている。
【中央地区】
白陽(はくよう)
紫隠(しおん)
佐吉(さきち)
鬼神族
柁无多 (だむだ)
ユキ(ゆき)
都の人々
桃
桜と雅
朝霧太夫
用語
綺糸屋事件(あやしやじけん)
顔の無い鬼(かおのないおに)
鬼導隊(きどうたい)
鬼導術(きどうじゅつ)
鬼導術で滅した鬼の骸は朽ちることなく永久的に残る為、封呪布という術具にくるみ陰気の漏れを防いでから鬼塚まで運ばれる。
昔は術式や術具が確立されてなく、当時の鬼導師は文字通り血肉を削り術の力としていた。術具を隔てない分発揮される力は強力だが、現在その方法は使用禁止となっている。
鬼導隊の面
各隊長の面に書かれた「畏・忍・悌・孝・忠・信・智・礼・義・愛」の漢字のモチーフは作者である坂ノ睦先生曰く「南総里見八犬伝」の八犬士の文字から「仁」を「愛」に変え、もう2文字増やしその文字のイメージからキャラクターを作ったとのこと。一般隊士の面の文字は「人」。
悪鬼(あっき)
邪魔者(じゃまもの)
朱天童子(しゅてんどうじ)
鬼神族(きしんぞく)
夜行祭(やこうさい)
柊鰯二人組(やっかがしこんび)
色ボケコンビ(いろぼけこんび)
卯月堂(うげつどう)
従業員は皆揃いのうさぎの耳を模した頭飾りを付けており、限定商品を考案し売るなど商魂逞しい様子が見受けられる。
柊の付き添いで訪れた咲に従業員がここでバイトをしないかと誘ったが「ムリっす」と簡潔に断られた。3巻第15話「前略、卯月堂の前より」の扉絵では、花と咲が共に従業員の服装をしている。
陽ノ元遊郭(ひのもとゆうかく)
奈落(ならく)
余談
本来ならば全九巻で完結するはずであり、八巻にも次巻最終巻と大きく広告を打たれていたが、編集担当者が十巻まで描く道を開き、読者の応援も含めて延長され「ただの九巻」となった。
書誌情報
- 坂ノ睦『あやしや』 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉 全10巻
- 2012年8月15日発行(2012年8月10日発売)、ISBN 978-4-09-123755-2
- 2013年2月17日発行(2013年2月12日発売)、ISBN 978-4-09-124118-4
- 2013年8月17日発行(2013年8月12日発売)、ISBN 978-4-09-124395-9
- 2014年2月17日発行(2014年2月12日発売)、ISBN 978-4-09-124591-5
- 2014年8月17日発行(2014年8月12日発売)、ISBN 978-4-09-125197-8
- 2015年4月15日発行(2015年4月10日発売)、ISBN 978-4-09-126029-1
- 2015年10月14日発行(2015年10月9日発売)、ISBN 978-4-09-126335-3
- 2016年5月17日発行(2016年5月12日発売)、ISBN 978-4-09-127248-5
- 2016年11月16日発行(2016年11月11日発売)、ISBN 978-4-09-127452-6
- 2017年7月17日発行(2017年7月12日発売)、ISBN 978-4-09-127648-3