かね (小説)
以下はWikipediaより引用
要約
かねは里見弴による中編小説。内容は谷口他吉が父の遺言を受けて金の持ち逃げを繰り返す一代記である。
解説
「かね」は四稿にわたり改稿されている。 初出とされている「金(かね)」(雑誌『改造』版、一九三七年〔昭和一二年〕一月)から始まり、『アマカラ世界 金(かね)』(中央公論社、一九三七年〔昭和一二年〕六月)、『かね』(丹頂書房、一九四八年〔昭和二三年〕二月)、『里見弴全集 第七巻』(筑摩書房、一九七八年〔昭和五三年〕六月三〇日)と改稿されてきた。 初出と第二稿では、章初めに「金(かね) 志賀直哉兄に贈る」と志賀直哉に対する献辞が付け加えられていたが、単行本『かね』に収録される際に正式にタイトルが『かね』に変更され、献辞も外された。作中では何度かMやTといった地名が登場しているが、二稿から三稿にかけてほぼ改稿が完了している。
一稿から二稿にかけては、 O市=大阪 S=下関 N=名古屋 T= 東京 N=新潟 M=三朝 Y=米子
とされ、二稿から三稿にかけてでは T=善通寺 F=釜山 K=京城 D=大連 H=星々浦 A=芦屋 M=南満州
とされている。また、改稿がなかった地名としては以下が挙げられる。 他吉の誕生地M(M銀行、M支店、M銀座)・F橋通り・Tの大福餅屋・G・A川・H駅・Y・K・S山・K県D郡R村・S展覧会場
計四度の改稿に伴い、地名が明かされていく。他吉は場所を転々とするにつれて自身の名前をも変えていく。これらのことから、仮想性が薄れていき、現実世界へと回復していくことで仮想性の脱却を果たしている。
あらすじ
奉公先を転々としていた他吉は大阪の下駄屋で届け物をなくしてしまうという失態を犯し、そこから届け物を盗んだという疑いまでかけられてしまい自殺未遂をしてしまう。その後、別の店へと奉公をしていると父が卒中で倒れたという知らせが届く。地元であるMに帰り、世話をしながら銀行の小間使いの仕事をして暮らすこととなる。彼は亡き父の「ひとが驚愕するような大仕事を仕出かしてみろ」という言葉に従い金を盗んでは別の場所に移り住むことを繰り返すようになる。
登場人物
モデル人物
・谷口他吉 『里見弴全集 第七巻』の「あとがき」において、「永年有島生馬家で、忠僕と噂されながら勤めてゐた爺やが、銀行へ預け入れの、さう大した額でもない金を持つて出たまゝ永遠に消息を絶つてしまつた。」とあり、作者自ら「空想」としながらも実在した爺やがモデルになっている。 また、他吉の出生地のMは松山だとされている。
・小西了貞 絵かきであり米子の日蓮宗の寺の僧である小西了貞のモデルは、米子市岩倉町凉善寺の僧であった遠藤了敬だと述べている。さらに植田のモデルはないとしている。