きっといつかは幸福寺
以下はWikipediaより引用
要約
『きっといつかは幸福寺』(きっといつかはこうふくじ)は、ありま猛による日本の漫画作品。『チャンピオンジャック』(秋田書店)にて連載された。単行本は全2巻。現在は絶版となっているため新刊での購入はできないが、Amazon Kindle等の電子書籍として販売されている。
概要
コミック第1巻の作者コメントによると、作者であるありまは少年期に親元を離れて鹿児島県の養護施設で育ったという。その経緯から、作者は家族の絆というものを知らず、「こういう温かい家族があったらいいなぁ」という思いから当作を作ったという。そのため、困っている人を助ける話が多い。
物語は英道の弟で春野家の次男である俊平の視点で描かれている。
本作は、「必ずしも出来た坊主ではなく、あくまで普通の人間である。故に、普通の人の立場に立って物事を考えることが出来る人たち」というスタイルで、人間ドラマを忠実に描こうとしている。
主な登場人物
春野英道
春野家の長男で、本作の主人公。28歳。仏教の大学を出たが、父親である俊学が酒飲みで女好きだったため、そんな坊主になりたくないと思い、後継ぎを拒否。祖母に勘当され、6年間にわたって音信不通だった。その間、会社勤めをしたが自分の肌に合わず退職し、それから色々な仕事に就くが、いずれも長続きしなかった。家族との再会直前は工事現場の住み込みをしていたが、不況で仕事にあぶれて2週間、その苛立ちから飲み歩いて酒に酔い、とある店の看板を破壊し、器物破損罪で警視庁鷺の宮警察署の警察官に逮捕される。たまたま英道を逮捕した刑事が俊学の旧友であったため、本人も反省していることから釈放される。居酒屋「大将」で飲みながら6年間の出来事を話す。俊学と俊平から話を聴き、祖父が4年前に亡くなった旨を知る。俊平に家に戻ってくるように勧められた際には、祖母を怖れて躊躇するが、俊学の協力によって家に戻ることができ、寺の後継ぎになる。坊主であるが、剃髪せず、髪を伸ばして、縛っている。お布施で競馬やパチンコをやるなど、いわゆる「生臭坊主」であるが、一方でお布施を受け取らずに気持ちだけ受け取ることも多く、檀家や他の寺の坊主らからの評価は高い。長栄寺の娘である由美とは幼馴染であるが、由美の方が5歳年上である。由美相手に結婚を意識したこともあるが、5歳年上ということなどから、躊躇心もあった。自ら告白しようと思ったこともあるが、由美が以前にお見合いした相手と飲み屋で再会し、その相手と結婚することになったため、失恋という形となる。
春野俊学
春野家の家長で幸福寺の当代住職。女癖が悪く、それが長男である英道の後継ぎ拒否・勘当されて家を出るという要因となった。英道が家を出た後も相変わらず女好きであり、不倫もよくするが、困っている人のために住職として尽くす心は本物で、英道と同じく檀家や他の寺の住職からの評価は良い。実質的に興福寺を切り盛りしている実母だけには頭が上がらないが、英道の復縁の際には初めて歯向かい、父親・住職としての威厳を見せつけた。英道とは違い、競馬などのギャンブルは一切しない。また、小心者の気があり、坊主としての服装などにこだわるところがある。成金寺の住職である光玉とは兄弟弟子の関係であり、光玉は兄弟子に当たる。かつては特に可愛がってもらっていたが、アンパンの一件で袂を分かち、現在まで犬猿の仲である。鷺の宮警察署に荒木という幼馴染の刑事が居り、そのおかげで英道を釈放させることができた。年齢は不詳だが、荒木が現役の警察官であることから、同い年であるとすれば60歳前だと思われる。
春野俊平
春野家の次男で、本作のナレーション役。上述のように、主人公は兄の英道であるが、物語は全て俊平の視点で展開されている。17歳の誕生日に得度することになっていたが、本人は寺を継ぐ気がないので髪を剃られたくない一心で逃げ回っていた。小さい頃から近隣に住む北村フサに妹の美紀ともども可愛がってもらっていて、自身も慕っていたが、フサが急性心不全と思われる病気で倒れる。死ぬ間際、フサが俊平に経を挙げてもらいたかった旨を吐露し、間もなく死去。フサの気持ちを酌み、得度を決意して髪を剃る。立派に経を挙げてフサを旅立たせるが、本人には相変わらず寺を継ぐ気がない。鷺の宮警察署からの連絡を受け、父の俊学と共に英道の身元引受人として英道と再会。英道の6年間の生活を聴き、家に戻るように勧める。兄の英道とは年が離れているが、父親である俊学が女癖が悪いなど、だらしない面があるため、年が離れている分だけ英道を父親のように慕っている。
春野美紀
春野牧子
春野(母)
春野(先代住職)
その他の登場人物
池田
吉野
北村フサ
田原明美
田原
坂田
和子
正男
良美の実母
宮地明夫
第7話『お布施』に登場。英道の中学1年の時の担任で、国語教師。英道が所属していた野球部の顧問でもあった。遺影写真と英道の回想にのみ登場。授業中に早弁していた英道を物差しで叩くなど、厳しい面もあったが、英道は大変慕っていたようである。5年前にイジメ問題で責任を取って退職。その1年後に胃を患い、以来4年間にわたって闘病していた。ある日、英道がお布施を競馬につぎ込んでパアにしてしまう。その責任として急遽、依頼の入った宮地家の通夜・葬儀を任される。宮地と聴き、まさかとは思いながらも自身の担任であるとは気付かず、普段通りに経を唱えていたが、フルネームの箇所を読んだことで、遺影写真と共にかつての担任だったことを知る。驚いた英道は、つい口ごもってしまい、まともに経を唱えられず、通夜に参加していた親族の不興を買ってしまう。しかし、恩師のために最後まで尽くしたいと思った英道は家に帰った後に、かつて野球部の部員だった同級生らに連絡を入れ、翌日の葬儀に来させる。葬儀屋の花田になぜまた来たのかと苦言を呈されるが、経緯を説明し、わかってもらう。その後、前日の失礼を詫びた上で旅立たせる。英道はこの時、明夫のことを回想し、涙を流しながら経を唱える。葬儀が終わり、夫人と話をし、渡されたお布施を気持ちだけ受け取り、返す。
宮地(妻)
花田
なみ子
なみ子の夫
前川俊男
吉田京子
第10話『結婚式』に登場。英道の高校時代の同級生で、俊男と結婚することを望んでいる。2人は高校時代から交際していた。長い交際期間を経て、ついに俊男との結婚を決め、英道と喫茶店『珈琲 ルル(『COFFEE ルル』『コーヒー ルル』とも表記されている)』で会い、幸福寺で仏前結婚式を挙げる旨を告げる。英道は当初、京子が仏前結婚式という形で式を挙げようとしていることに驚くが、それは京子の家庭は地元の名士であり、世間体を気にした母親が俊男との結婚に反対しており、結婚式場や教会で式を挙げるとバレる可能性が高いからである。仏前結婚式当日の朝、メモを確認してゴミ箱に捨て、結婚式に向かうが、娘がいないことに気付いた母親がゴミ箱に捨てたメモを発見してしまう。結婚式の最中に乱入した両親に、家に連れ戻されてしまい、家で泣いている所に俊男を引き連れて英道が現れる。議論と口論を重ねるが、俊男がついに勇気を出して自分の主張を述べ、感心した京子の父親が2人の結婚を認め、英道と共に4人で幸福寺に戻る。最後には京子の母親も折れて結婚式に参列し、2人は無事に結婚する。
吉田(父)
吉田(母)
留子
井上(妻)
第11話『お盆』に登場。3人の息子を持つ、主人を数年前に失った老未亡人。毎年毎年、お盆の時期に息子たちの帰省を待っているものの、それぞれの事情で帰ってこられず、寂しいお盆を過ごしていた。今年は長男の哲太と次男の博志が帰ってくる予定で、料理も作って待っていたが、子供(本人から見て孫)が急に熱を出してしまったため、帰れなくなる。三男の正夫は10年間も音信不通のため、はじめから帰ってこないものと諦めており、次男の博志に期待していた。彼女は幸福寺の檀家の1人であるため、英道が棚経で回るが、英道が鞄を井上家に忘れたため、取りに来る。英道が鞄を取りに来てすぐに博志から電話が入る。駅に着いたのだと期待を膨らませるも、仕事が片付かないため、帰れなくなった旨の連絡だった。落胆して座り込んでしまい、気持ちを察した英道が料理を食べて「うまい!!」と褒めるも、白けてしまう。そこに、英道の帰りが遅いということで、俊学が俊平を迎えによこす。「俊平 いい所に来た!」と中に通し、彼女を少しでも元気づけるために終平に食事や演芸の披露を強要させるも白けたまま。そんなところに、帰ってくるとは思ってもいなかった正夫が帰ってくる。正夫は地方回りの人形劇団に入っていた。劇団の仲間も呼び、大人数に囲まれて楽しいお盆を過ごすことができた。英道は正夫が10年間にわたって音信不通だったことにかつての自分を重ね、家族の絆の深さを今一度考えさせられる。下の名前は不詳。
井上哲太
井上正夫
高橋由美
第12話『お見合い』に登場。長栄寺の長女で、英道の幼馴染。33歳。普段はOLをしている。これまでに度々お見合いをしているが、本人は親を納得させるためにしているだけであり、結婚する気はない。というのは、長栄寺に男子の後継ぎがいないため、婿養子に入って寺を継いでくれる者でなければならないという思いからであった。幸福寺に復縁してしばらく経った英道とお見合いする。英道とのお見合いも、親を納得させるさせるためのものであったが、「結婚する気もないのにお見合いしちゃ相手に失礼だよ」と英道に咎められる。美人なので、かつては交際した者や結婚を考えた者もいたが、上述の理由から結婚に至らなかった。英道とお見合いをした翌日、早速英道を誘って遊びに出掛ける。帰りに『居酒屋 花房』にて英道と飲んでいるところに、3ヶ月前にお見合いをしたという伊藤正明が現れる。結婚する気がなかった彼女は正明の顔を覚えていなかったが、英道に「3ヶ月前お見合いした相手なのに顔も覚えてないなんて失礼だよ」と咎められて落ち込むが、翌日に英道に電話して気を取り直す。それから数日後のある時、彼女と会う約束をした英道は珍しくスーツを着る。数日間の間に彼女との結婚もまんざら悪くないと思い直していて、彼女にプロポーズをするためであった。再び『居酒屋 花房』にて会い、プロポーズしようとするも、彼女は正明と結婚することになり、英道にその報告をする。これにより、英道は失恋という形となる。
真美
伊藤正明
山田健太
資産家の子供で、コロという子犬の飼い主。秋月公園でコロと遊んでいるところに友達が来て遊びに誘われたため、コロを木に縛り付けて逃げないようにしていたが、紐が解けてどこかに行ってしまう。彼は友達との遊びに夢中でコロがどこかに行ったことにしばらく気が付かなかった。一方、スクーターで移動中だった英道が2丁目で、ある子犬を轢く。子犬は死ななかったものの、足を引きずってどこかに行ってしまう。友達と遊び終わった彼はコロがいないこと気に気付いて探し回るが見つからず、家に帰っているかもしれないと思って一旦家に帰るも、コロは帰ってきていない。心配になった父親がコロを探しに行くが、コロは国道沿いで死んでいた。翌日、幸福寺にペット葬の依頼が入る。ペット葬をやるくらいの家だからお布施をたんまりもらえるだろうと思っていた英道はお布施を期待してペット葬を挙げに行くが、対象のペットは昨日、英道がスクーターで轢いた子犬だった。期待通りに多額のお布施をもらったものの、自分が轢いてしまったという自責の念から、英道は思い悩む。その後、英道は俊学と婆さんに轢いたのは自分だと打ち明ける。謝罪してお布施を返して来いと俊学に一喝され、山田家に出向いた英道に、健太の父親がコロを引き逃げしたのはトラックだったと告げる。自分はスクーターだったので轢いたのが自分ではないと判明した英道は肩の荷が降りるが、自分が轢いた子犬がどうなったのかが気懸かりだった。英道が初七日の法事で再び山田家を訪れると、彼はコロとそっくりの子犬と遊んでいた。聞くと、コロとは双子で、兄夫婦(どちらの兄かは不明)に頼んでもらい受けてきたという。その子犬は、普段は客人に対して吠えないようだが、英道に対して異様に吠えたてる。彼の母に聞くと、この子犬はロンという名前だが、ロンもコロと同日にバイクに轢かれたという。英道はこの時、自分が轢いたのがこのロンだったと気付き、絶句する。なお、左手で野球のボールを投げ、左足で作家ボールを蹴る描写があることから、左利きであると推測される。
書籍概要
秋田書店〈CHAMPION Jack COMICS〉
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