くまの子ウーフ
主人公の属性:クマ,
以下はWikipediaより引用
要約
『くまの子ウーフ』(くまのこウーフ)は、神沢利子・作、井上洋介・絵による児童文学作品。1969年(昭和44年)にポプラ社より刊行。全9編の短編から成り、『続くまの子ウーフ』(1984年、ポプラ社、2001年に『こんにちはウーフ』と改題)、『ウーフとツネタとミミちゃんと』(2001年、ポプラ社)と合わせ、『くまの子ウーフの童話集』となっている。第1作『くまの子ウーフ』の日本国内での累計発行部数は2010年10月現在で97万部。日本語以外にも6つの言語に翻訳されている。『くまの子ウーフの童話集』は小学校の国語の教科書にも教材として掲載された。また、絵本やアニメーション作品ともなっている。数々の児童文学作品を創作してきた神沢利子の代表作の一つである。
擬人化された動物たちが登場する作品で、主人公である子熊のウーフが日々を過ごすうちにわきあがる疑問に自分なりの答えを見つけていく物語。ウーフは自由奔放で実に「子供らしい」キャラクターであるが、その問いは自分は何者か、何から出来ているのか、いのちの価値など哲学的なテーマとなっている。
あらすじ
『くまの子ウーフの童話集』1作目、『くまの子ウーフ』より。
さかなには なぜしたがない
ウーフは おしっこでできてるか??
いざというときって どんなとき?
きつつきのみつけた たから
ちょうちょだけに なぜなくの
たからがふえると いそがしい
おっことさないもの なんだ?
? ? ?
くま一ぴきぶんは ねずみ百ぴきぶんか
作品解説
作者の神沢利子は執筆当時、ファンタジー児童文学(英語版)作品において知られていた。『くまの子ウーフ』とほぼ同時期には長編ファンタジー『銀のほのおの国』を執筆している。本作品はこれまで創作してきた作品とは異なり、ストーリーによらずもっと詩的な形で物事の本質に迫りたいと試みた作品である。ウーフが吹くハーモニカの「りら るら すいー」やキツツキが木をつつく「こんこん ころろろーん ころろろーん」といった作中に多く存在する擬音的表現にも詩的な部分を見て取れる。主人公のウーフをはじめとして登場キャラクターたちは擬人化というよりも、人間の子供を「擬獣化」したキャラクターとなっており、ウーフが持つ疑問は、大人を時折はっとさせる幼児の質問を髣髴とさせ、子供たちの思考や認識をありのままの形で描いた作品として評価されている。子供たちが自身のアイデンティティー、実存を問う作品として、それまで児童文学のスタンダードであった浜田広介の「ひろすけ童話」を打ち破るものと評価され、いぬいとみこの『ながいながいペンギンの話』や中川李枝子の『いやいやえん』、松谷みよ子の『ちいさいモモちゃん』などと並び、児童文学の新たな時代を切り開いた作品として評されている。また、楽しく素晴らしい作品ではあるものの、心温まる、癒される童話では決してなく、読後に心が揺れるようなすっきりしない感覚が得られる、考えさせられる作品という評価もある。
累計発行部数は90万部を超え、日本語以外にも韓国語、中国語(台湾)、オランダ語、フランス語、ポルトガル語(ブラジル)、ドイツ語に翻訳されている。また、1979年から1984年にかけて『くまの子ウーフの絵本』全10巻が刊行されている。映像作品としては1983年に、今日では日本を代表する人形アニメーターとして知られる真賀里文子によって自主制作アニメが作られている。2000年にはNHKのあつまれ!わんパークでもアニメ化されている。
作者の神沢は樺太で育ち、直接出会うようなことまでは無かったが、クマというものが身近な存在であった。ウーフは誰かがモデルにいるわけではなく、神沢自身の中にいる子供を描いているという。そのため可愛らしい子供を描いていても、決して甘ったるくならず適度な距離感があると評するものもいる。挿絵を担当した井上洋介は文章を読み終えずに描き始めたため、当初ウーフは裸であった。制作途中に「かにをポケットにいれて」という描写を見て、あわてて吊りズボンを描き足したという。
教材としての採用
『くまの子ウーフの童話集』は長きに渡って教材として小学校の国語の教科書に掲載されてきた。光村図書では昭和52年度版の小学2年生の教科書に『ウーフは おしっこでできてるか??』を採用し(題名は『くまの子ウーフ』)、その後掲載タイトルを『おかあさん おめでとう』に変えながら昭和64年度版(平成元年度版)まで掲載、平成12年度版で再度掲載している。日本書籍では昭和52年度版から『くま一ぴきぶんは ねずみ百ぴきぶんか』を昭和58年度版まで小学3年生の教科書に掲載。昭和61年度版からは小学2年生の教科書に『ウーフは おしっこでできてるか??』を掲載、平成12年度版まで教材として掲載している。大阪書籍では小学1年生の教材として『ぴかぴかのウーフ』を平成元年度版から平成17年度版まで掲載している。学校図書は平成8年度版から平成17年度版まで『くま一ぴき分はねずみ百ぴき分か』を小学2年生の教科書に掲載している。教育出版では平成14年度版に『ちょうちょだけに、なぜなくの』が採用されている。
複数の教科書で長い間、教材として利用されてきた理由として、読むことと心情理解を重視する日本の国語教育に合致していたという分析がある。『ウーフは おしっこでできてるか??』はタイトルが興味を惹きつけるものとなっており、児童が読まされるのではなく自ら進んで読むことにつながり、その内容の楽しさが読むことへの積極性を高める。また、ウーフの考えを推し量るに当たって、自由な発想を許す内容であることも、子供の想像力を高める点で教科書に採用されてきた理由の一つとする分析がある。しかし、『くまの子ウーフ』の巻頭を飾る『さかなには なぜしたがない』は一度も教科書に採用されておらず、これは自分に自信を持てず、他人をうらやみ、楽することばかり考える「子供らしい」ウーフが、大人の求める純真無垢な「子供らしさ」に合わないからだとの考察がある。また、限られた時間の授業現場では子供たちが理解し、共感しやすい作品が求められ、『くまの子ウーフの童話集』の中でも道徳的で分かりやすい作品が教材として採用されているという意見もある。
教科書に掲載された『くまの子ウーフの童話集』一覧
昭和52年度 | 昭和55年度 | 昭和58年度 | 昭和61年度 | 昭和64年度 (平成元年度) |
平成4年度 | 平成8年度 | 平成12年度 | 平成14年度 | 平成17年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
光村図書 | ☆ | ☆ | ☆ | △ | △ | ☆ | ||||
日本書籍 | ○ | ○ | ○ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | — | |
大阪書籍 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ | ||||
学校図書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
教育出版 | ◎ |
- ☆ - ウーフは おしっこでできてるか??(『くまの子ウーフ』)
- △ - おかあさん おめでとう(『こんにちはウーフ』)
- ○ - くま一ぴきぶんは ねずみ百ぴきぶんか(『くまの子ウーフ』)
- ☐ - ぴかぴかのウーフ(『こんにちはウーフ』)
- ◎ - ちょうちょだけに、なぜなくの(『くまの子ウーフ』)
テレビアニメ
2000年4月9日から7月16日までNHK教育テレビのあつまれ!わんパーク内にて放送。
製作に『ThunderCats』など海外作品を手掛けてきたパシフィック・アニメーション・コーポレーションが関わっており、本作は数少ない国内作品での製作案件となっている。
キャスト
- ウーフ(声 - 加藤築)
- おとうさん(声 - 堀内賢雄)
- おかあさん(声 - 小林優子)
- ツネタ(声 - 西村朋紘)
- ミミ(声 - 手島侑巳)
- ピッピ(声 - 真田アサミ)
主題歌
オープニング「くまの子ウーフ」
エンディング「大好きのうた」(映像ソフトのみ収録)
スタッフ
- 原作 - 神沢利子、井上洋介
- 企画 - 飯塚正樹
- プロデューサー - 前山賢邦、宮下勇治
- 脚本 - やすみ哲夫
- キャラクターデザイン - 野中和実
- 音楽 - 加羽沢美濃
- アニメーション制作 - ノーサイド
- 製作 - パシフィックアニメーション、日本コロムビア、ノーサイド
放映リスト
本放送時は一部話数を入れ替えた上で放送が行われた。
# | サブタイトル | 放送日 |
---|---|---|
第1話 | おひさまはだかんぼ | 2000年 4月16日 |
第2話 | ウーフはおしっこでできてるか? | 4月9日 |
第3話 | おかあさんおめでとう | 4月23日 |
第4話 | まいごのまいごのフーとクー | 4月30日 |
第5話 | きつつきのみつけたたから | 5月7日 |
第6話 | たからがふえるといそがしい | 5月21日 |
第7話 | ミミちゃんのみみ | 5月14日 |
第8話 | ウーフのおつかいかぞえうた | 5月28日 |
第9話 | 何にもなれないか? | 6月4日 |
第10話 | ぶつぶついうのはだぁれ | 6月11日 |
第11話 | ぴかぴかのウーフ | 6月18日 |
第12話 | ゆでたまごまーだ | 6月25日 |
第13話 | くまいっぴきぶんはねずみ百ぴきぶんか | 7月2日 |
第14話 | きょうはいい日 | 7月9日 |
第15話 | くまの子ウーフの海すいよく | 7月16日 |
参考文献
- 赤座憲久 (1984-03). “幼児の発想と童話の論理(その一)”. 大垣女子短期大学研究紀要 (大垣女子短期大学) 19: 100-112. NAID 110000223247.
- 川北典子 (2014-06). “児童文学作家における幼年文学への挑戦 —いぬいとみこの場合—”. 平安女学院大学研究年報 (平安女学院大学) (14): 10-18. NAID 110009889007.
- 酒井晶代 著「くまの子ウーフ」、佐藤宗子、藤田のぼる 編著 編『少年少女の名作案内 日本の文学 ファンタジー編』自由国民社〈知の系譜 明快案内シリーズ〉、2010年、106-109頁。ISBN 978-4-426-10834-2。
- 佐藤宗子 (1987-02). “幼年童話における「成長」と「遍歴」 —松谷みよ子「モモちゃん」シリーズを中心に—”. 千葉大学教育学部研究紀要. 第1部 (千葉大学) 35: 255-264. NAID 110004714956.
- 杉原美香 (1988-03). “神沢利子における<子ども>”. 国語科教育 (全国大学国語教育学会) 35: 68-75. NAID 110006667048.
- 高橋久子 (1999-01). “ウーフの読まれ方 —大人の読みと子どもの読み—”. 日本文学研究 (梅光学院大学) 34: 125-133. NAID 110001019803.
- 二宮由紀子「『くまの子ウーフ』再考」『國文學』第53巻第13号、學燈社、2008年9月、55-63頁、ISSN 0452-3016。
- 宮川江里 (1997-11). “教材としての児童文学の研究 〜神沢利子の作品を中心に〜”. 信大国語教育 (信州大学国語教育学会) 7: 65-71. NAID 120003851137.
- 「特集 神沢利子の世界」『飛ぶ教室』 第3号(秋号)、光村図書出版、2005年10月、61-137頁。ISBN 4-89528-381-X。
- 二宮由紀子「『くまの子ウーフ』はなつかしいかわいい童話か?」『特集 神沢利子の世界』、77-80頁。
- 南谷佳世「風の生まれるところ」『特集 神沢利子の世界』、108-109頁。
- 羽生真知子「物語りの向こうには」『特集 神沢利子の世界』、114-115頁。
- 二宮由紀子「『くまの子ウーフ』はなつかしいかわいい童話か?」『特集 神沢利子の世界』、77-80頁。
- 南谷佳世「風の生まれるところ」『特集 神沢利子の世界』、108-109頁。
- 羽生真知子「物語りの向こうには」『特集 神沢利子の世界』、114-115頁。