さい果ての星の彼方に
以下はWikipediaより引用
要約
『さい果ての星の彼方に』(さいはてのほしのかなたに、英: Beyond the Farthest Star)は、エドガー・ライス・バローズによるアメリカのSF小説。全2部からなるが、未完。
概要
第1部「ポロダ星での冒険」(雑誌掲載は1942年)、第2部「タンゴール再登場」(バローズの死後発見された)からなるが、実際は未完。単行本収録は1964年(カナベラル社『金星の魔法使』に併録)。日本語版は、東京創元社の創元推理文庫SFからそのまま翻訳されており、リチャード・A・ルポフの「解説」も含めて収録されている。翻訳は厚木淳、挿絵、カバーイラスト、口絵は武部本一郎、1970年9月11日(ただし、カバーイラストと口絵は、表題作「金星の魔法使」)。
バローズの作品としては、最後期のものとなる。彼の作品として見た場合、本作の最大の特徴は他の恒星系を舞台にしている点で、なおかつ架空の天体であり、その意味では唯一無二の作品である。舞台となるポロダ星は、オモスという恒星の周囲を公転しており、オモス星系には全部で11の惑星があるのだが、全てが同一の公転軌道を描いているのが特徴となっている。初期の発想では、「公転軌道に大気圏がドーナツ状に展開し、全惑星で共有している」とされ、飛行機で惑星間を移動する、というアイディアもあったようだが、これは放棄された。オモス星系(球状星団NGC7006)や言語は詳細に設定されており、火星、金星のような長期シリーズ化を構想していたといわれる。
「死に瀕した軍人(元軍人)が、裸で他の惑星に現れる」、という点では処女作『火星のプリンセス』と同じだが、火星シリーズの主人公ジョン・カーターと異なり、本作の主人公タンゴールはバローズと面識はなく、情報は「タイプライターが自動筆記される」という、不気味な方法で伝達されている。
また、厭戦的な雰囲気の漂う作風は、火星シリーズの夢想的(牧歌的)な作風(戦争や決闘は名誉なこと)とは大幅に異なっている。本作では、100年も続く戦争が、かなり現実的に描写されている。例えば、プノス国は「執拗な爆撃で文明が崩壊し、人喰いをしなければ生きていけない」という悲惨な状況に陥っている。主人公の属するユニス国では、戦死者が月平均10万人であり、多い時は50万人に達する。個人に目を移すと、ハーカス・イェンの妻は14男6女を産んだが、13番目までの男児は戦死しており、十四男は軍務に服している。また、衣装は、全身タイツのような物が2着(国家元首クラスでも3着)しか、生涯に持てない。これは、金属に似たプラスティック製の物で壊れることがなく、持ち主が死亡すると売りに出される。これに顕著なように、娯楽には精力が割かれておらず、二言目には「戦争だから」、「戦争だもの」と、半ば諦めたような、思考停止状態の言葉を述べる。しかし、この戦争はユニスにとっては自衛のためであり、ユニス人の戦意は高い。
補足
H・H・ヘインズの作品番号では、「ポロダ星での冒険」は101であり、「タンゴール再登場」はリストにない。総作品数は109(ただし、ナンバーのない"You Lucky Girl!"もリストにある)までリストアップされているが、未掲載の作品が3作ある(「タンゴール再登場」、『カリグラ帝の野蛮人』、"Pirate Blood")。
本作以前で、異星を舞台にしたものは3つある(火星シリーズ、金星シリーズ、月シリーズ)。登場する星は5つで、内訳は、惑星3(火星、木星、金星)、衛星2(月、フォボス)である。しかし、金星(アムター)は分厚い雲に覆われ、滅多に直射日光の射さないという設定であり、地球人である主人公カースン・ネイピアは、装置類を使用せずに呼吸でき、気圧も地球と変わらないように見える。また、月シリーズの場合、全3部のうち登場するのは第1部のみで、しかも地球空洞説を応用した空洞世界になっている。フォボスに至っては、「接近すると大きさが縮む」という設定になっており、本作以外でも、オリジナル設定の目立つ星は登場している。
ストーリー
導入部として、ハワイに住む「わたし」の目の前で「タイプライターが自動筆記される」という場面が存在する(第1部、第2部とも)。
第1部
ユニスはカパラから侵略を受けており、その戦いは100年続いていた。生活の全ては戦争を基準にしており、ハーカス・イェンの妻は14男6女を産んだが、13人の男児は戦死していた。それでも「戦争だから」、「戦争だもの」と、ユニス人は耐え忍び、勝利を目指す。
タンゴールはパイロットとして活躍する中、何度か撃墜も体験するが、その度に生還した。何度目かの帰還中に、彼はハーカス・イェンの娘であるヤモダが、怪我をして倒れているのを発見する。飛行機で急いで病院に運び、手術を待つタンゴールの前に、ヤモダの母が現れる。今度ばかりは、彼女も飛行機に憤りを示した。戦争は、飛行機が悪化させたのだ。そして、今度は娘の命まで奪おうとしている。しかし、ヤモダは助かった。少なくとも、今回ばかりは飛行機が命を救ったのだ。その時、空襲警報が鳴った。
第2部
帰国後、彼はハーカス家から白い目を向けられるが、それは誤解から生じたものだった。誤解は解け、彼は隣の惑星へ探査に出る任務を受けた。
登場人物、用語
主要人物、用語
ポロダ
ユニス
民主国家であり、ポロダの国土(もしくは文明圏)の1/10に相当する面積を保有する。カパラの侵攻を受け、100年間、戦い続けている。
爆撃機が接近すると空襲警報が発令され、ビルなどの建物はスライドして地下に収容される。地下都市での長期間の生活を繰り返しているため、肌の色が極めて白くなっている。
ユニスの第一の目的は戦争に勝つことであり、他の全ては二の次とされる。女性はファッションやメイクに凝ることはなく、それらより戦争(あるいはそのための生産)が優先される。戦争に参加することは義務であり本能的なものとされ、タンゴールが「地球には『兵隊にするために坊やを育てたんじゃない』という歌がある」というと、「兵役忌避者にするために息子を育てたんじゃない」と返された。
ユニスのパイロットは勇敢であるが、それは普段生活している地下都市か、戦闘地域である高空に限られる。不時着した際は慣れないジャングルや平原で意気地がなくなり、前途を悲観した。タンゴールは「閉所恐怖症の反対の症状で、開放された場所では落ち着かず、不安になる」と判断している。
ユニスの言語は「日本語放送と交響曲の演奏会」を合わせたようなもの、と形容される。
カパラ