ざ・ちぇんじ!
以下はWikipediaより引用
要約
『ざ・ちぇんじ!』は、氷室冴子の小説。1983年 - 1985年にかけて集英社のコバルト文庫より発行された、平安時代の宮廷貴族社会を舞台にした上下巻からなる少女小説。同作者の『なんて素敵にジャパネスク』はこの作品の習作のために書かれたとされる。
概要
副題に『新釈とりかえばや物語』とある通り、ストーリーは平安末期に書かれた『とりかへばや物語』を下敷きにしている。ただし、実際に男女の仲になるのが一組だけであり、「若君」(女性)の妊娠が勘違いであるなど、表現はソフト気味になっており、少女小説に相応しい改変が加えられている。
登場人物
主人公
綺羅君(♀)(綺羅中将)
権大納言藤原顕通卿の姫。初登場時14歳。幼少時より活発で男児の装束をまとい、女子の行う琴や貝合わせには見向きもせず、蹴鞠・小弓・笛・漢学など、男子のたしなみに興味をしめし、都の若者ではピカ一とまで言われていた。長じて男姿で元服。官職を得て宮廷に出仕するまでに至る。
美貌と親しみやすい性格で、一躍宮廷の花形公達に。元服前に訪れた北嵯峨で、女として主上と運命的な出会いをしているが、自分が女である事実を隠すため、弟の綺羅姫だったことにした。しかし、本当は主上に心底惚れており、名乗れない悔しさを感じることも。
頭の回転が早く、非常に物知りだが、男女における基本的知識が欠如しており、16歳まで子供というのは神仏が授けてくれると思いこんでいた。弟により教えられ、カルチャーショックを受けながらも納得するが、表現がやや遠回しだったため、後に接吻だけで子供が出来たと思いこむ。それが原因で失踪。周囲は儚くなったのではと心配していたが、当の本人は子供が生まれたら、母子で雄々しく生きるつもりだった。
その後、しばらくの間、魚採り女として生活していたが、姉を探しに来た弟と再会。弟と入れ替わることで、女君に戻り、尚侍として後宮へ上がり、「もう少し髪が伸びるまでは」(主上のはからいで)と「かもじ」を着けて入内を待つこととなった。
綺羅姫(♂)(綺羅尚侍)
権大納言藤原顕通卿の嫡男。綺羅君の異母弟。同い年で、誕生日は一日違い。姉弟揃って、美人で有名だった父方の曾祖母に似ているため、姉と瓜二つの容姿を持つ。難産で生まれ、発育が危ぶまれたが、生母の「姫として育てれば成人する」との主張により女児として養育され、都でも評判の美姫に育つ。
好んで男子の格好をしていた姉とは違い、母の意向で女の格好をしているに過ぎず、当人は自身の性別を知ってから、男に戻りたがっている。が、ほんのちょっとしたことで失神してしまうほど弱々しく、母や女房らの気迫に勝てず、姉の元服にあわせて、女として裳着をするに至る。
しばらくの間は、父の屋敷で静かに過ごしていたが、綺羅君と三の姫のことを嫉妬した主上によって、尚侍として後宮に上がるはめになる。出仕当初は他の女御やその女房たちに警戒されていたが、大人しい生活態度と、忍び込んできた主上を見た瞬間、後宮中に響き渡るほどの悲鳴を上げて、失神するという内気さから、「なんぼ美しゅうてもあれでは、ライバルになりようがありまへん」と歓迎された。
女東宮の世話係に就き、最初の内はわがままぶりに嘆いていたが、一緒に過ごす内、女東宮に淡い思いを抱くようになる。後に女東宮に男であることを告白。両思いとなる。
物語後半、自らの女御入内話が現実化してきたため、男に戻り、姉を捜索。気晴らしに散策をしていた最中、偶然にも再会を果たした。その後は、女東宮所有の宇治の別荘にて、姉の命により男としての暮らしを勉強中。
主人公の恋のお相手
主上
当代の天皇(今上天皇)。女御を3人持つが、女児はいるものの、男児が生まれておらず、男兄弟がいないため、仕方なく妹が東宮についている。大きな権力争いもなく、平穏な都の今上帝であるが故に、男皇子に恵まれないこと、妹宮が全く東宮の器でないこと、女御たちの仲の悪さに閉口していることなどが、人々の話題になりがちで気苦労が絶えない。
北嵯峨で出会った乙女を綺羅姫と誤解し、瓜二つと評判の兄綺羅君(実は本人)の元服を促す。綺羅君の出任せから北嵯峨の乙女の入内は容易ではないと落胆したものの、綺羅君が傍にいるだけで幸せを感じるようになる。が、そのせいで綺羅君と三の姫の結婚に猛烈に嫉妬。更には、綺羅君が誰よりも大切にし、決して男を近づけないようにしている妹姫(実際には弟だとばれないように必死になっている)を、尚侍として出仕させ、綺羅君を宮廷に釘付けにしようとまでする。
綺羅君が失踪した原因を、宰相中将が三の姫を寝取ったことだと思い込み(実際には宰相中将に接吻されたことで妊娠したと勘違いしたため)、勢い余って除籍。しかし、宰相中将の潔い態度と、除籍したところで綺羅君が戻ってくるわけではないと冷静になり、三の姫が出産したのを機会に、除籍を解いた。
その後、綺羅君がいないことの寂しさから、綺羅姫の入内を独断で決定。後々になって、強引過ぎたと少々後悔していたものの、弟と入れ替わって後宮へやってきた尚侍(綺羅君)の素顔を見て、北嵯峨の乙女への情熱を再燃させ、毎日通うようになる。
思い込みが激しく我儘な一面もあるが、内心では北嵯峨の乙女=綺羅君のことを一途に想い続けてきた。小百合曰く「殿方にしてはロマンチスト」であり、綺羅姉弟の入れ替わりに全く気づかず、出会ってからの綺羅君の口から出任せを全部素直に信じている。
宰相中将
式部卿家の一人息子で、主上の従弟。綺羅君の2つ年上。一人息子であり、両親に甘やかされて育った。自他共に認める、名うてのプレイボーイ。綺羅君と出会う前、互いに噂しか知らなかった頃には、何かと張り合っていた。
綺羅姫目当てで綺羅君と親しくする内、綺羅君の方に惹かれる。思いを遂げようと綺羅宅(右大臣邸)に忍んで行くが、何の因果か三の姫と契り、挙句三の姫を孕ませてしまう。更に、綺羅君を(女であると知らないままに)押し倒して強引に接吻を交わし、子供の作り方を知らない綺羅君に妊娠させられたと誤解される。
後に、三の姫とのことが世間に発覚し、主上の怒りを買って、除籍。しかし、一言も弁解せず、潔い態度だったことで、最終的には還殿上を許される。
三の姫
女東宮(皇妹久宮)
帝の妹宮。帝に男子がいない事から、不本意ながら東宮の位に就く。綺羅姫いわく「ワガママ娘」で「じゃじゃ馬」。世間からも女の東宮はふさわしくないと思われており、また祖母である女院からも東宮の器ではないと言われている。
当初は尚侍として出仕してきた綺羅姫に小豆を投げつけるなどしていたが、本当は自分のことを分かってくれる人がいない環境に苛立っていただけであり、少しずつ心を開いていく。
後に、綺羅姫と2人きりだった際に「私が男だったらどうするか」という質問に対し「北の方になってもいい」と答えたことから、「実は男君である」ことを打ち明けられる。直後は混乱したものの、すぐに受け入れ、北の方になることを約束する。両思いになった後は、主上にすら嫉妬するなど、兄同様の独占欲を発揮し、綺羅姫からは「将来、尻にしかれる」と思われている。
物語後半、綺羅姫の姉捜索に際し、持ち家である宇治の別荘を捜索拠点に提供。また宮中の情報を伝える役目も果たす。綺羅君が弟と入れ替わり、女として宮中に戻る際には、嘘泣きをしてまで協力した。
主人公姉弟の両親たち
権大納言(後、左大臣)
政子
その他(従者・女房・宮廷の人たち)
小百合
梅壷女御
麗景殿女御
弘徽殿女御
右大臣
綺羅姉弟の父・左大臣(前大納言)の弟で、綺羅たちの父方の叔父。長女を弘徽殿女御として、入内させている。
姪と甥である綺羅姉弟の秘密を全く知らず、姉の綺羅君を男と思いこみ、元服では烏帽子親を務め、その頃から綺羅君を三の姫の婿がねに狙っていた。兄からは頑なに断られ続けていたが、娘婿・権中将と共謀し、綺羅君と三の姫の婚儀を触れ回り、断れない状況に持ち込み、まんまと結婚させた。
三の姫の懐妊が、不倫の末の事だと知り激怒。綺羅君の失踪時と重なったため、「とても綺羅さんに、顔向けできません!」と捜索を緩めてしまい、三の姫を勘当。三の姫出産後は、孫姫可愛さに勘当を解き、その後は宰相中将を婿として遇していると思われる。
権中将
前関白左大臣
近江
北嵯峨の女院
宇治の僧
兵部卿宮
美濃
讃岐
書誌情報
小説
- ざ・ちぇんじ! ―新釈とりかえばや物語〈前後編〉 () (集英社文庫―コバルトシリーズ) イラスト峯村良子
- 1983年1月10日、ISBN 4-08-610538-1
- 1983年2月10日、ISBN 4-08-610544-6
- ざ・ちぇんじ!〈前後編〉 (Saeko’s early collection) *作者が加筆修正した愛蔵版。イラストはない。
- 1996年3月22日、ISBN 4-08-609037-6
- 1996年3月22日、ISBN 4-08-609038-4
- 月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ! (コバルト文庫) *底本は上記愛蔵版。表紙イラストはあるが本文イラストはない。
- 2012年8月31日、ISBN 978-4-08-601668-1
- 2012年8月31日、ISBN 978-4-08-601668-1
漫画版
山内直実作画
- ざ・ちぇんじ! 全4巻(花とゆめCOMICS)
- ざ・ちぇんじ! 全2巻(白泉社文庫)