ひきこもり探偵シリーズ
以下はWikipediaより引用
要約
ひきこもり探偵シリーズ(ひきこもりたんていシリーズ)は、坂木司による推理小説のシリーズ。デビュー作『青空の卵』からの3部作を指す。いわゆる日常の謎を扱っている推理小説であるが、それと同時にその事件を通して描かれる人間ドラマにも重きを置いている。
概要
引きこもりから、 在宅の仕事をし、自宅より近所の食品店までの北限500メートル以内の圏内で生活をしている主人公鳥井真一、その友人、坂木司の周りで起こる出来事(「日常の謎」と呼ばれる、ふと気になること)を鳥井に尋ね、解決していく推理小説。物語は鳥井の友人、坂木の視点で語られる。鳥井が、その場で言い当てることもあれば、鳥井自身が坂木と現場へ同伴し、解決への糸口を見つけることもある。
2002年から2004年にかけて創元クライム・クラブ(東京創元社)より刊行された。2006年には文庫版が創元推理文庫(東京創元社)より刊行された。シリーズ累計は『切れない糸』創元推理文庫版時点で35万部、オーディオブック版『仔羊の巣』時点で40万部。
『青空の卵』『仔羊の巣』は短編連作作品、『動物園の鳥』は長編作品となっている。『青空の卵』単行本版は作中の登場人物と同姓同名の人物、寺田結美、松谷明子による作者坂木へのインタビューが収録された。『青空の卵』収録作品「秋の足音」は『きみが見つける物語』友情編に収録。タイトルにはそれぞれ別名があり、『青空の卵』は「春の子供」、『仔羊の巣』は「野生のチェシャ・キャット」に因む言語、『動物園の鳥』はフランス語のものとなっている。『動物園の鳥』巻末には「白い日」という後日談、これまで作中に登場した料理のレシピが2人分の量として掲載されている。レシピに掲載され「白い日」で披露されたパンプディング残りから作ったラスクのパンは、フランスパンと指定されている。
他の坂木作品への関連として、「ひきこもり探偵」に登場する人物と同一要素を備えた登場人物が他の坂木作品においても登場の他『切れない糸』『和菓子のアン』『ウィンター・ホリデー』では物語の舞台ともなった「商店街」が『仔羊の巣』収録作品「銀河鉄道を待ちながら」にも、鳥井、坂木が木村を尋ねるまでの風景として登場する。「商店街」で繋がる後の作品に「商店街」と同時に「ひきこもり探偵」独自の要素が同時に現れないため、同じ「商店街」であるかは不明。
あらすじ
平凡なサラリーマン・坂木司の親友・鳥井真一は家庭環境と学生時代のいじめにより人間不信に陥り、ひきこもりとなっている。そんな彼に少しでも立ち直ってもらうため、坂木は外で起こった日常の様々な出来事を話す。鳥井はその中に含まれた謎をあっさりと解いてみせる。2人はそれを通じて様々な人々と出会い、交流を深めていく。
登場人物
主要人物
鳥井 真一(とりい しんいち)
坂木 司(さかき つかさ)
このシリーズのもう一人の主人公で語り部。27歳。木村の自宅最寄り駅から電車で30分前後かかる駅周辺にある外資系保険会社に務める平凡なサラリーマン。子供の頃、美術品ではダリ、ピカソ、書籍では偉人伝、「御手洗潔」シリーズに親しむ。対人面においても非凡な人物に憧れを抱いており、鳥井の友達になったのもそのため。鳥井が唯一無二の信頼を寄せる人物である。棘のない温厚な性格。非常に涙もろい。事件解決に奔走する鳥井に寄り添う中で、本人はワトソン役を担いたいと願っている。鳥井不在の「野生のチェシャ・キャット」では、解決後に鳥井からフォローが入るものの、現場で鳥井の代理もつとめた。滝本の妹には劣る妹がいるが3作通じて未登場。
作者と同名である理由は、作者がペンネームを考えるときに彼の名前を流用したため。
青空の卵
塚田、中川丈太郎が『仔羊の巣』、佐藤マリオが『動物園の鳥』にも登場する。
安藤 純(あんどう じゅん)
中川 とし子(なかがわ としこ)
佐藤 マリオ(さとう マリオ)
佐藤 隆之(さとう たかゆき)
マリア・クレメンテ
仔羊の巣
吉成、佐久間、寺田、檜山が『動物園の鳥』にも登場する。
動物園の鳥
松谷 明子(まつたに あきこ)
書籍情報
巻数 | タイトル | 別名 | レーベル | 初版発行日 | ISBN | 収録話 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 青空の卵 | EL HUEVO EN CIELO | 創元クライム・クラブ | 2002年5月30日 | ISBN 4-488-01289-2 |
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創元推理文庫 | 2006年2月24日 | ISBN 4-488-45701-0 | ||||
2 | 仔羊の巣 | THE LAMB'S NEST | 創元クライム・クラブ | 2003年5月15日 | ISBN 4-488-01291-4 | |
創元推理文庫 | 2006年6月23日 | ISBN 4-488-45702-9 | ||||
3 | 動物園の鳥 | L'OISEAU DANS LE ZOO | 創元クライム・クラブ | 2004年3月25日 | ISBN 4-488-01296-5 |
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創元推理文庫 | 2006年10月13日 | ISBN 4-488-45703-7 |
メディアミックス
漫画
シリーズ第1作『青空の卵』の漫画版が『ウィングス』(新書館)にて「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」2話が2009年9月号から2010年10月号、「冬の贈りもの」「春の子供」2話が『ウィングス』2011年2月号から2013年4月号にかけて連載された。作画は藤たまき。連載時に掲載されなかった「初夏のひよこ」は、描き下ろしとしてコミックス2巻に収録された。漫画化は、当初は同タイトルで『仔羊の巣』『動物園の鳥』を含んだ「ひきこもり探偵シリーズ」としての予定だったが『仔羊の巣』『動物園の鳥』は漫画化されず『青空の卵』のみの漫画化となっている。
- 坂木司(原作)・藤たまき(作画) 『青空の卵』 新書館〈ウィングス・コミックス〉、全2巻
- 『青空の卵(1)』2011年1月10日第1刷発行(2010年12月24日発売)、ISBN 978-4-403-61989-2
- 収録話:「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」
- 『青空の卵(2)』2013年5月10日第1刷発行(2013年4月25日発売)、ISBN 978-4-403-62161-1
- 収録話:「冬の贈りもの」「春の子供」「初夏のひよこ」
収録話:「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」
収録話:「冬の贈りもの」「春の子供」「初夏のひよこ」
テレビドラマ
シリーズ第1作『青空の卵』(あおぞらのたまご)は、2012年7月28日から9月29日まで毎週土曜日25:30 - 26:00(JST)にBS朝日「ドラマインソムニア」枠でテレビドラマが放送された。主演は阿久津愼太郎と井上正大のW主演。
原作「冬の贈りもの」「初夏のひよこ」を除く「夏の終わりの三重奏」が「月夜の三重奏」、「秋の足音」が「人魚の足音」、「春の子供」が「羽をもつ子供」のサブタイトル名で原作1話を各3話ずつの構成で全9話にわたって放送。2012年11月9日、期間限定でドラマ内の食事を再現した「青卵カフェ」が東京ジョイポリスの一角で開催された。2012年12月4日、各巻に3話ずつまとめた全3巻のDVD版が制作協力のポニーキャニオンより発売。
鳥井登場シーンでは鳥井の叩くノートパソコンにソースコードが映る、原作で佐藤「マリオ」とカタカナ表記だったマリオの名前が、原作で出自を理解する前の坂木やマリオ自身の台詞としての表記だった佐藤「まりお」とひらがな表記、「月夜の三重奏」犯人に、原作にない「月夜の魔女」通称が追加されている等、原作の設定に一部ドラマ独自の追加や変更が行われている。イベントも開催された料理には全話にフードコーディネーターがつき、銘菓は実在する菓子屋から提供を受けている。「羽をもつ子供」には、佐藤まりおが話す言語に因む監修が参加した。
主題歌「glow」は既にkeeno単独の曲としてネットに投稿されていた曲でドラマプロデューサーは起用発表時、主題歌にピッタリだと答えた。
安藤役の志尊は、他の坂木作品のドラマ化作品『女子的生活』で、主人公小川みき役を担当。
キャスト
- 鳥井真一 - 阿久津愼太郎
- 坂木司 - 井上正大
- 滝本孝二 - 春川恭亮
- 小宮 - 鈴木勝吾
- 巣田香織 - 黒川芽以
- 塚田基 - 平野良
- 安藤純 - 志尊淳
- 佐藤隆之 - 佐々木喜英
- 佐藤まりお - 星野麻都
- 鳥井誠一 - 清水章吾
オーディオブック
オーディオブック版が「kikubon」より西山宏太朗朗読で「ひきこもり探偵」シリーズ全3作を配信。「FeBe」より寺島愛朗読で『青空の卵』『仔羊の巣』を配信。
ドラマCD
以下のキャスト他でドラマCD化がインターコミュニケーションズ制作、2010年12月25日発売予定、内容は『青空の卵』からの「夏の終わりの三重奏」、イラストは漫画版と同じ藤たまきとして告知。収録も開始されていたが、インターコミュニケーションズの倒産により立ち消えとなった。
- 鳥井真一 - 羽多野渉
- 坂木司 - 浪川大輔
- 巣田香織 - 遠藤綾
評価
「仔羊の巣」単行本版解説をつとめたはやみねかおるは、「仔羊の巣」単行本版帯にコメントを寄せるほど作品に一定の評価を示しつつ、自分は個人として主人公鳥井が好きになれない。そのような、向けられた対象を好きになれない人もいるのが「世界」である、と述べた上で、物語の世界が広がる中、世界が萎んでいくことのないように作者坂木に頼んでいる。物語は坂木が鳥井を突き放し、鳥井が自身の意思で坂木宅へ向かい、扉を叩いた時点で完結している。
「仔羊の巣」文庫版解説をつとめた有栖川有栖は、「仔羊の巣」単行本版解説はやみねの評価を継いで、天藤真作品等、過去の探偵の例を挙げて鳥井の気に入られなさを擁護しつつ、自分も鳥井を好きになれない、好きになれないところに「引きこもり」問題を伝える意図がある、と述べている。