もののけPRESENT
題材:妖狐,
以下はWikipediaより引用
要約
もののけPRESENT(もののけプレゼント)は、みやさかたかしによる漫画作品。1992年2-8月・1994年7月-1995年7月にかけ、『サイバーコミックス』『バトルエンジェルス』『コミックWill』に不定期連載された。
概要
「もののけ」と呼ばれる存在である狐娘・涼子(すずね)と、その周りで起こる事件を描くファンタジー物で、みやさかの代表作として現在「ななみまっしぐら」とともに双璧を成す作品である。
当初バンダイ出版課の『サイバーコミックス』に不定期連載されたが、4回で同誌が休刊。のちラポートのアンソロジーコミック『バトルエンジェルス』で1回、『コミックWill』で3回連載されたが、いずれも休刊となり連載が中絶した。現在も未完であり、単行本も2巻まで出たまま途絶した状態となっている。
話数は雑誌掲載された数としては6話であるが、単行本収録の際の描き直しと話の調整により2話付け加えられ8話となっている。以下の節では全て単行本の話数によって述べる。
あらすじ
古から伝えられて来たさまざまな信仰が、人々の間で失われようとしている現代。人と長く共存していた「もののけ」は、そのために出来てしまった人との埋めがたい溝に苦しみ、破滅的な行動に出る者も少なくなかった。そんな中、狐娘・涼子は「みんな忘れているだけ、きっと思い出せる」と人間を信じ、さまざまな悲しい事件や切ない結末に巻き込まれながらも、それをなすことの出来る者を探し続けている……。
1巻と2巻の差異
本作は単行本1巻所収の第1-4話と、2巻所収の5-8話で涼子の置かれている状況が異なる。
1巻では涼子は放浪を続けており、その土地その土地で仮の生活を営んでいる。その際に事件に出会って狐であることが露見すると、そこを去っていくことになる。
これに対し、2巻での涼子は大きな公園の中にある「那須」というお好み焼き屋に店員として住み込んでいる。その生活の中で出会う事件が描かれており、1巻と雰囲気を異にする。
本作の「もののけ」観
本作における「もののけ」は、古から人間の持っていた「万物に神宿る」と考えるアニミズムによる想像や思念が累積して多くの「精霊(かみ)」となり、いつか一つの自立的な存在として結実したものとされる。このため「もののけ」の外見はあくまでその状況下で安定して取れている姿であって、本質的には固定されていない。
このように人間の意識との紐帯が非常に太いため、人心の変動に弱い。特に現代にあって人心が荒れがちになっている状況は致命的で、濁った感情や負の感情の流入により体調を崩したり、力を発揮出来なくなったり、性格が変わってしまったり、ひどい場合暴走してむくつけき姿となり暴れ回ることもある。また影響を嫌って自分から姿を消す者もいるなど、破滅的な状況に陥る者が少なくない。本作ではそのような「もののけ」たちの悲しい姿も描かれる。
登場人物
レギュラーキャラ
比緒涼子(このお・すずね)
本作のもののけ側の主人公。白狐の狐娘。年齢は不明であるが、相当な長寿と思われる。妖力によって人間の姿を保っているため外見年齢は可変で、高校生から大学生くらいの大きな姿と小学生くらいの小さな姿の双方を持つ。普段は前者の大きな姿で暮らしているが不安定で、妖力を著しく使いすぎると後者の小さな姿に縮んでしまう。これはしばらく休養すれば元に戻る。まぶしく見上げるような眼が特徴。子供の頃は訛っていたが、現在は標準語を使う。
化けるのが昔から下手なため耳や尻尾は隠せずむき出しであるが、耳はたすきで、尻尾は長いスカートで隠している。このたすきは昔、松崎冬也の先祖にあたる侍に「耳をふさいでしまえば人間の勝手な声も聞こえない、叫びも聞こえない」「小さな神が、涼子が涼子でいられるように」との言葉と共に贈られたもので、その想いから涼子の力を封じ、さらに悪しき想いから守る役割をも持っている。
長いこと小さな山の守り神として暮らしていたが、保護者である龍神が我が身の破滅を嫌って姿を消したことをきっかけに故地を離れて旅に出た。正体が露見するとその地を去る、という決まりをけじめとして自分に課しており、そのために各地を転々としていたが、現在はお好み焼き屋「那須」に店員として定住している。
人を信じ、どんな時代にもどんな場所にも自分たち「もののけ」を創り上げた素朴な想いを持ち続けている人がいるとの信念を持っている。そのため純朴で優しく友好的であるばかりでなく、一本筋の通った性格をしている。戦いの時には、自分の言うことを分かってもらいたいと激情をぶつける場面も見られる。
「もののけ」という立場上、どうしても人間では解決出来ない人間と「もののけ」の紛争に割って入らざるを得なくなることが多く、龍神の形見である龍の珠を使って雷を落とすなどして戦う。その結果ももの悲しいものとなることが少なくなく、彼女を悲しませたこともある。
松崎冬也に対しては、かつて自分をかわいがってくれた侍の子孫であることと、自分の理想とする人間に近い人物であることからか、淡い恋心を持っている模様。
ゲストキャラ
汐路(しおじ)
エピソード
- 元は『サイバーコミックス』用の作品ではなく、全く別の会社への持ち込み用の原稿であった。しかし予定先の会社が倒産したために、5年間もお蔵入りになった。これが同誌に掲載されることになったのは、ある時酒宴で仕事の状況についてぼやきを漏らしていたのが先方の編集部に伝わったためという。お蔵入り前は妖怪退治物を予定していたという。
- わずか4回の連載で『サイバーコミックス』が休刊となったため、当初作者は単行本になるとは全く思っておらず、郷里の神奈川県横須賀市に帰ろうかと思っていたほどであった。これがラポートに会社を変え単行本として梓に上ったのは、たまたま別の仕事の最中に同社編集部長の小牧から「単行本を出したいが余っている原稿はないか」と持ちかけられたのに乗ったためである。この縁により本作はラポートのアンソロジーで掲載が続き、2巻目も出ることになった。
- 涼子の出身地は明らかにされていないが、単行本1巻のキャラクター紹介で作者が後半、「川中島は自分の田舎の近く」と述べている。前文とのつながりが明確でないが、キャラの紹介文でわざわざ具体的地名を出していることから、文脈上出身地として信濃国更級郡川中島(現在の長野県長野市川中島地区)周辺を意識していることが示唆される。
- 涼子の髪型は1巻と2巻で前髪を中心に変更が加えられており、現在同人活動で描かれる際の髪型は2巻のものである。なお完全ストレートにするという構想も練られたが、あまりにイメージが違いすぎるため断念したという。
- 涼子は上述の通り「大きい姿と小さい姿がある」「妖力を使いすぎると縮む」という設定があるが、小さな姿で登場するのは子供の頃の回想内であることがほとんどで、実際に小さな姿で登場したり縮んだりしたのは第4話「立風」と第7話「潮風」のみである。第2話でも途中で小さな姿に切り替えているが、これは詩乃の心中世界でのことであり、現実で小さくなったわけではない。
- 単行本化に際し、かなり修正が入っている。作者自身も「話によっては元の掲載版がどこまで残っているやら」と語っている。
- 本作は作者が最も思い入れのある作品であり、続きについては「許されるなら書き下ろしも辞さない、駄目なら同人でも何とかしたい」とまで熱意を見せている。ただし現実問題としては難しいようでいまだに実現していない。
- 涼子は「ななみまっしぐら」に時折スター・システム形式で登場したことがある。多く背景や話にほとんどからまない無名キャラとしての登場であるが、単行本5巻末尾の話では「すずね」という名前で登場、役どころもななみ店長一行を化かす狐娘役であったりと積極的に話にからんでいる。
注釈
書誌情報他
各話題名と掲載年月
- 第1話「南風」
『サイバーコミックス』No.39(1992年2月)
- 第2話「古風」
『サイバーコミックス』No.41,43,45(1992年4月,6月,8月)
- 第3話「涼風」
単行本書き下ろし
- 第4話「立風」
単行本書き下ろし
- 第5話「雪風」
『コミックWill』Vol.1(1994年12月)
- 第6話「春風」
『コミックWill』Vol.2(1995年3月)
- 第7話「潮風」
『コミックWill』Vol.3(1995年7月)
- 第8話「古里の頃」
『バトルエンジェルス』(1994年7月)
単行本
2巻。ラポートより「ラポートコミックス」として出版されていたが、長く在庫切れとなり、さらに同社が2003年に倒産したために両方とも絶版となっている。