らーめん再遊記
以下はWikipediaより引用
要約
『らーめん再遊記』(らーめんさいゆうき)は、原作:久部緑郎、作画:河合単による日本の漫画作品。『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて連載中だった『銀平飯科帳』を突然休載して、2020年5号(2020年2月14日)から『らーめん才遊記』の続編として連載を開始した。
現代のラーメン業界とフードビジネスの事情を描く。話数表記は「第〇杯」。
あらすじ
ニューウェイブ系ラーメン界のカリスマ芹沢達也は、ラーメンに対する情熱を失いつつあった。
「らあめん清流房」各店やコンサルティング業務の「清流企画」の売り上げは好調で、特に汐見ゆとりが店長を務める「麺屋なでしこ」は年間売り上げが前年度比96%増。しかし、グループ旗艦店である「麺屋せりざわ」は黒字は出しているものの、看板メニューの月替わりラーメンの不調により売り上げの減少が続いていた。
そんな中、芹沢と汐見は、ラーメン評論家から大学教授に転身した有栖涼の『ラーメン論4.0』の出版記念パーティーに招かれたが、世界的グルメガイド「ムシュロン」で二つ星を獲得したラーメン店「東京ガストロノメン」店主・米倉龍大が芹沢を批判し、これに怒ったゆとりの思いつきで芹沢と米倉による新旧天才ラーメン職人対決が企画された。
対決のお題となったラーメンは、他の料理では味の決め手に使われたりするがラーメンでは一向にメインとして使われてこなかった「お酒を使ったラーメン」。対決が正式に決まったあとも芹沢はラーメンに対する情熱を取り戻せないでいたが、「らーめん厨房どきゅん」店主・武田剛三の言葉で、自分が「好きなラーメンを好きに作りたいだけのイカれたラーメン馬鹿」であることを再認識し、情熱が再燃。
米倉が純米酒の旨味を中心としてダシやタレを補助とした塩ラーメンを出したのに対し、芹沢が出したのはスタウト、インディア・ペールエール、ランビックの三種のビールを用いた、苦味を全面に押し出したラーメン。苦味というこれまでのラーメンには無い要素を取り入れた芹沢が対決を制する。米倉がラーメンの道へ飛び込んだ切っ掛けが芹沢であったことが発覚し、米倉とも和解する。
その夜、清流企画で祝勝会が開かれるが、ゆとりは米倉の日本酒ラーメンも芹沢のビールラーメンも凡庸な着想でそこそこと言い放つ。傲岸不遜な態度に怒った芹沢の社長命令でゆとりが製作したのは、「酒は酔うためのもの」という持論を元にオレンジワインを使ったアルコールを飛ばしていないラーメンだった。
ゆとりのラーメンに白旗を上げた芹沢は、ゆとりへの社長交代を告げるのであった。(以上、1巻)
登場人物
芹沢達也
スキンヘッドのラーメン職人。シリーズ3作目の本作において、初めて正式に主人公となる。前作、前々作では個人情報はほとんど明かされてはいなかったが、80年代から90年代のプロレス、格闘技好きであることが明かされ、動画を見ているシーンもある。90年代の洋楽に対しても造詣が深く、若い頃はスラッシュメタルに傾倒していた。社長引退後は「万人の形式の探求」をテーマに掲げつつ昼からサウナや飲酒を楽しんだり、アルバイトや大学の客員講師をやる、ビジネスホテルへ長期宿泊や電動アシスト付き自転車を乗り回すなど余暇を満喫している。また本作ではチェーン店「中華屋ほりでぃ」のタンメンを凡庸な味と評しつつも好物にしていたり幼少期よりインスタントラーメンは明星チャルメラ派といったジャンクフードとしてのラーメンへの愛着も描かれる。前々作、前作でも主張していたが、一部の味覚が鋭い者以外のラーメンマニアを心底軽蔑しており、人間扱いしていない。
有栖涼
ラーメン店関係者
米倉龍大
「中華のイサカ」店主
富川剛
千葉周児
武田剛三
板倉竜司
背脂チャッチャ系ラーメン店「大江戸せあぶら軒」店主で和文の父。90年代の背脂系ブーム時には関東一円に店舗数約20に成長したが数年で全て潰れ、残る本店も現在は再開発で周辺に飲食店が増え存続の危機にある。
昇り調子の頃に同じく台頭していた芹沢を敵視し、テレビ討論会の場で司会者を篭絡し中華そば原理主義の店主たちも引き込んで彼と清流房のラーメンを面罵したが、3年後に芹沢の報復でラーメンフェスタに出店させられ零落した現状を見せつけられた末屈辱を味わわされており、犬猿の仲。武田にも敵視(見下されて)されており、店に大人げない嫌がらせをされた。
元々は中華料理人でラーメン屋及び背脂系は独立する際に売れる形態として選んだだけでさして思い入れはなく、一人息子の和文経由での芹沢の再建案を他所に店を畳むことを考えていたが、チャーハンが絶品であることに着目した芹沢の発案で背脂トッピングのニンニク醤油チャーハンが中心の「背脂チャッチャ☆チャーハン亭」に転換し繁盛するようになった。
ベジシャキ豚麺堂関係者
ラーメンに野菜炒めを乗せる「ベジシャキ豚麺」が主力商品の中規模ラーメンチェーン店。郊外を中心に着実な成長をしている。野菜炒めは8種類から選択が可能。
加納
鹿内義博
「(株)豚麺堂」の社員でベジシャキ豚麺堂・国道店の現店長。加納とは同期で、加納が店長時代にも国道店で働いていた。加納が異動になったのが、鹿内の朝田社長への密告が原因であると勘違いされ、後述の南をはじめ、加納店長時代から働いていたスタッフとの仲が険悪だが、他のアルバイトとの仲は悪くはない。
口が悪く一言多い性格だがその事を自覚しており、芹沢に対して勤務中に暴言を吐いた事などは勤務時間後に謝罪している。
加納と違って独創的なメニュー作りの才能はなくメニューコンテストでは一度も入賞した事がないが、新人社員研修時代に発案したオイスターソース野菜炒めが当時の店長たちの味付けによって完成し8番目のレギュラーメニューになったことがある。
芹沢に指摘されるまで自覚は無かったが既存のものを改善する能力に長けており、国道店の売上を加納が店長だった時代よりも伸ばしている。芹沢によってその長所をプロデュースされ、直接対決を経て加納と和解した。
宇崎彰正とその関係者
宇崎彰正
ニューウェイブ系ラーメン店「創麺 宇崎」および創作麺料理専門店「創麺庵 宇崎」元店主。
約20年前にニューウェイブ系の旗手として台頭し、弟子の平田を通じて知り合った芹沢にとってもよき先達にして同志であったが、芹沢の伸長への焦りもあり「創作麵料理としてのラーメンの確立」を目指して東京から東北地方Q県森陵地域の山間部に移転するも悪立地と3,500から5,000円という値段、ラーメン以外の低品質が原因で失敗、現実を受け入れられぬまま失火で店を全焼させてしまう。その後現場作業員など職を転々とし現在はホームセンター「マルハセ」勤務。
カンナに影響されて再起を決意し「ラーメン職人としての終活」として自販機ラーメンの手伝いをしていた折に芹沢と再会する。カンナの発案で「自販機ラーメン対決」を行い僅差で敗れるもラーメンへの情熱を取り戻し、かつての自店舗の跡地に「豚汁ラーメン食堂 宇崎」を開業した。
芹沢に勝るとも劣らない昭和時代のプロレス好きな一面もあり、度々芹沢と昭和プロレス談義に熱が入ることがあるが、何も知らないカンナに一喝されている。
平田
大橋カンナ
塩匠堂関係者
昭和時代より続く創業35年の老舗で、食材や調理法にこだわり繊細かつ香味油や全粒粉麺など先進的な取り組みをした塩ラーメン店。ニューウェイブ系にも大きな影響を与え作中での創作ラーメンの源流とされる。だが店主の永友が改良を止めてしまいラーメンそのものは20年ほど全く変化がなく特に澄んだスープへの拘泥からダシが弱いが、名店というブランドや情報、名人然とした永友のカリスマ性によって嵩上げされているのが現状(ただし後に「味覚や嗜好は人それぞれであり味自体を好む客もいる」と断りが入る)。その幻想が通用しない弟子の暖簾分け店はいずれも1年から2年で潰れているが、それが「永友の域に達していない」という誤謬を自他ともに抱かせてしまっている。
永友和平
「塩匠堂」店主。和食出身で当時はジャンクフードの色が強かったラーメン界で一世を風靡した人物で芹沢や有栖も頭が上がらない。しかしその実は自身のラーメンが時代遅れとなっていることに気づかず、スタッフや常連客に信奉者を固めた宗教や信者ビジネスに近い状態になり果てており、それを知っている業界人も波風たてず表向きは持ち上げているにすぎない。さらに米倉の発案したネット番組にてニューウェイブ系や新世代系は彼の精神や魂を受け継いだとする「永友和平リスペクト系」の「教祖」「偶像」として祀り上げられてしまう。
芹沢にとっては開業直後に淡口らあめんを絶賛・激励され、濃口らあめんでの成功後にも問題点を指摘したうえで研鑽を促された恩人でもあり、米倉の企みに表向き乗る形で番組内で赤田のラーメン(スープの原料自体は同一)を食べさせて再起のきっかけにしようとしたが結局は演出の意図を汲んだ人情劇と精神論に終始し、失望する結果に終わった。
その他の人々
小林昌之
山下
坪内昭三
小宮山浩司
外食コンサルタント。「飲食店再生師」と称される実績の持ち主だが内心では顧客に対して嘆息や冷笑の感情を抱いている。元は情報誌のグルメ担当編集者だったが、準備や能力に欠ける店が多い外食産業の実態に落胆していたことと、元来重度のラーメンフリークであり折しもニューウェイブ系退潮の時期だったことが重なりラーメン店開業を決意、コンソメ風牛スープを用いた「牛清湯らーめん」を供する「牛清湯小宮山」を阿佐ヶ谷に開業したが半年で潰してしまった過去を持つ。経営コンサルティングに転身したものの10年たってもその傷心からラーメン店の依頼は受け付けず、また開業直後にラーメンに苦言を呈された芹沢には遺恨を抱えている。芹沢との再会と石井の依頼を契機に和文やまどかと「牛清湯らーめん」の欠点がとろみ不足で一体感に乏しいということを発見し芹沢にその改良版勝負を挑むも、自身が範疇外としていた「あんかけ」を有効活用してきた芹沢側に格の違いと認識の差を見せつけられたが蟠りは解け、また外食コンサルタントがいつの間にか自分の天職になっていたと気付いてラーメン職人への未練も払拭した。
書誌情報
- 久部緑郎(原作)、石神秀幸(原作協力)、河合単(作画) 『らーめん再遊記』 小学館〈ビッグコミックス〉、既刊9巻(2023年12月27日現在)
- 2020年6月8日発売、ISBN 978-4-09-860630-6
- 2020年12月25日発売、ISBN 978-4-09-860793-8
- 2021年6月30日発売、ISBN 978-4-09-861068-6
- 2021年12月28日発売、ISBN 978-4-09-861211-6
- 2022年6月30日発売、ISBN 978-4-09-861321-2
- 2022年12月28日発売、ISBN 978-4-09-861489-9
- 2023年4月28日発売、ISBN 978-4-09-861694-7
- 2023年7月28日発売、ISBN 978-4-09-862488-1
- 2023年12月27日発売、ISBN 978-4-09-862624-3