アンの幸福
ジャンル:書簡体,
以下はWikipediaより引用
要約
『アンの幸福(別題・アンの愛の手紙、風柳荘のアン)』(原題:Anne of Windy Willows、 Anne of Windy Poplars(米国)、柳風荘/風柳荘のアン)は、カナダの作家L・M・モンゴメリが1936年に発表した長編小説。
概要
時系列的には同シリーズの第4作目にあたるが、第5作目以降が先に発行されており、後から挿入された形になっている。したがって、今作品の登場人物が登場するのは、時系列的には第6作にあたる『炉辺荘のアン』にのみである。モンゴメリは当初、婚約時代を書くことは考えていなかったが、1921年刊行の第8作『アンの娘リラ』の出版以来、読者から長年大きな反響があったため、急遽本作を書くこととなった。大学を卒業し、サマーサイド高校校長となったアンと、医者を目指してレドモンドの医科で勉強中のギルバートの婚約時代を描く。
ウェブスターの名作『あしながおじさん』のような手紙文学の形をかなりの部分で使用しており、興味深い。ただし、長期シリーズにおける弊害の一つである、主人公が育ちきってしまっている点は顕在化されており、読者の興味は第1作のようにアン自身に対する個性へは注げなくなっている。前半はアンの奮闘を描いているが、中盤以降はアンがサマーサイドにおけるさまざまな家庭をある時は頼られ、ある時は用事で訪れ、そこで起こる様々な出来事を一章完結方式で描いており、アンの視点から様々なエピソードをユーモアを交えながら書いている。
ちなみに、原題にある「Willow」は柳という以外にも未亡人という意味があり(恋人を弔うの意味であるwear the willowという成句がある)、作中には多くの未亡人が登場する。
柳とポプラの違い
『アンの幸福』は Anne of Windy Willows を訳した物である。一方、Anne of Windy Poplars は、モンゴメリの原稿に対し米国の出版社が
- 類似した表題の童話がある
- 身の毛もよだつ内容がある
として、米国において出版に際し表題の変更および内容の一部削除を求め、モンゴメリが応じたものである。一方、英国、カナダ、オーストラリアでは削除されていない Anne of Windy Willows の方が出版された。 和訳においては、村岡花子訳では「柳風荘」となっている通り、エピソードの削除がなされていない Anne of Windy Willows の方を元にしている。
背景
出版社は読者に夢や希望を与えてたくさん売れるアンの続編を求める。しかし、実際のモンゴメリは夢や希望とは程遠い人生を送っていた。Anne of Windy Willows を執筆する前年の1934年5月からは1年間で葬儀が11件も相次ぎ、葬式を執り行わねばならなかった夫ユーアンは死の恐怖に怯え、うつ病がさらに悪化し休みがちになり牧師としての勤めが果たせず教区民からの信頼を失った。義理の娘も教区民のためには辞任した方が良いとの立場を取り悲しみは増し加わった。息子のチェスターは欠勤が多いとの理由で法律事務所を解雇された。ユーアンは「健康上の理由」として辞任に追い込まれ、牧師館は退去する事になり、慣れ親しんだ丘や木々や庭や愛らしい小道、愛して尽くしてきた美しい教会を後にして住む家を探さなければならなかった。
登場人物
柳風荘
アン・シャーリー
レベッカ・デュー
プリングル一族
サマーサイドを実質的に支配している名家。
常盤木荘(Ever Greens)
サマーサイド高校
キャサリン・ブルック
サマーサイドの住人
1年目
ギブソン夫人
2年目
3年目
アヴォンリー
あらすじ
前作にあたる『アンの愛情』の最後に、アンとギルバートは親友から恋人へと変わり、婚約するが、ギルバートは医者を目指すために、あと3年は大学にいなければならない。そのため、アンはサマーサイド高校の校長になり、ギルバートの卒業を待つことになった。アンは形としてはサマーサイドを支配するプリングル一族から校長の職を奪ったことになっており、一族の反感を買っていた。そのために下宿がなかなか決まらなかったが、同行していたリンドのおばさんの友人から柳風荘を紹介される。家主の老未亡人姉妹よりも、その面倒を見ているレベッカ・デューが家を支配していると忠告されるが、未亡人姉妹は実はレベッカの操縦法を心得ており、無事に下宿をすることができた。柳風荘はアンにとっては非常にお気に入りとなる場所であった。しかし一方で、学校では生徒のジェン・プリングルをはじめ、陰に日向にアンに嫌がらせが続くが、徐々にプリングル一族以外のサマーサイドの人々はアンを好きになっていくのであった。そんなある日、アンは訪れたある生徒の家で古い日記を貰い受ける。それは、プリングル一族を支配するミス・セイラの自慢の父であるエイブラハム船長と一緒に航海に出た船乗りの手記であった。その船乗りはエイブラハム船長を尊敬しており、そのためにアンは躊躇の後に結局はミス・セイラにその日記を送った。しかしそこには一族の鼻つまみ者である、同じく船乗りであったエイブラハム船長の弟が、ある時漂流して死んだ仲間を食べたという話をしていた、という内容があった。ミス・セイラはその話が外に漏れるのを恐れ、アンの意図せぬ脅迫に屈し、アンに和解を申し込む。その後は、かつてアンとは相性が悪かったアヴォンリーのパイ一族と名前を並べたのが嘘のように両者の関係は好転した。一方で、同じ教員で部下にあたるキャサリンは、アンが年下なのに上司になって気に食わない。しかし、アンは思い切ってアヴォンリーの休暇へキャサリンを連れて行き、そこでの暖かい生活に心を開き、いつしか良い関係となっていく。やがて彼女は教員を辞め、大学へ行って勉強し直す事になった。アンはそれに前後して、様々なサマーサイドの人たちから時には頼られ、時には偶然にも手助けすることになり、人々の縁を繋いでいく。やがて3年が過ぎ、柳風荘の人々や高校、サマーサイドの人々に惜しまれながら、アンはギルバートと結婚するために去っていく。
アン・シリーズ一覧
各タイトルは村岡花子訳に準拠する(『アンの想い出の日々』のみ、その孫である村岡美枝訳に準拠する)。通常、最初に上げられている9冊の本をアン・ブックスと呼ぶ。アン・ブックスをより狭い範囲に呼ぶ場合もあるが、9冊の本は、アンを主人公とするか準主人公とする「アンの物語」である。これに対し、追加の2冊は短編集で、「アンの物語」と同じ背景設定であるが、大部分の作品はアンとは直接に関係していない。アンが端役として登場したり、その名前が言及される短編もあるが、総じて、題名が示す通り、「アンの周囲の人々の物語」である。 なお、4冊目「アンの幸福」の原題はイギリス版とアメリカ版で異なり、イギリス版ではAnne of Windy Willows、アメリカ版ではAnne of Windy Poplarsで、内容も少し異なる。
書名 | 原題 | 出版年 | アンの年齢 | 物語の年代 |
---|---|---|---|---|
赤毛のアン | Anne of Green Gables | 1908 | 11〜16 | 1877〜1882 |
アンの青春 | Anne of Avonlea | 1909 | 16〜18 | 1882〜1884 |
アンの愛情 | Anne of the Island | 1915 | 18〜22 | 1884〜1888 |
アンの幸福 | Anne of Windy Willows | 1936 | 22〜25 | (1888〜1891) |
アンの夢の家 | Anne's House of Dreams | 1917 | 25〜27 | 1891〜1893 |
炉辺荘のアン | Anne of Ingleside | 1939 | 33〜39 | 1899〜1905 |
虹の谷のアン | Rainbow Valley | 1919 | 40〜41 | 1906〜1907 |
アンの娘リラ | Rilla of Ingleside | 1921 | 48〜53 | 1914〜1919 |
アンの想い出の日々 | The Blythes Are Quoted | 2009 | 40〜75 | 1906〜1941 |
以下はアンとの関連が薄い短編集 | ||||
アンの友達 | Chronicles of Avonlea | 1912 | ― | ― |
アンをめぐる人々 | Further Chronicles of Avonlea | 1920 | ― | ― |