イーグル (漫画)
以下はWikipediaより引用
要約
『イーグル』は、かわぐちかいじの政治漫画。1998年から2001年まで『ビッグコミック』(小学館)で連載された。単行本は小学館(ビッグコミックス)から全11巻が刊行された。
概要
アメリカ大統領選挙での初の日系人大統領候補と彼を取材に来た日本の新聞記者との出会いや選挙活動のリアリティー、そして記者の出生の秘密などを描く。作中では、アメリカ合衆国が抱えている様々な問題を提示し、それに対する政策が模索されている。
単行本はアメリカ合衆国でも出版されている。
あらすじ
沖縄出身の新聞記者・城鷹志は、女で一つで育ててくれた母を事故で亡くし、天涯孤独で悲しみにくれながらもワシントンD.C.への異動を命じられる。そこで、アメリカ大統領選挙における候補者の1人、日系アメリカ人ケネス・ヤマオカ民主党上院議員の取材に当たることになる。
だが、ケネスから「城の父親が彼自身であること」が伝えられ、鷹志は大きな衝撃を受ける。尊敬に値する人間性と経歴を兼ね揃えたケネスであったが、長年にわたって母と自分を捨てた実父に嫌悪感を隠せない鷹志は、選挙戦を通じてケネスの全てを逃さず記事にしようとする。
ケネスは様々な政策を掲げたり、あらゆる手段を用いることでアメリカ中の注目を集め、アメリカ合衆国副大統領・アルバート・ノアを予備選挙で下し、大統領選挙を勝ち進んでいく。一方、鷹志はケネスの養女 レイチェル・ヤマオカに互いに惹かれるようになり、恋愛関係となる。
しかし、その裏側で、「鷹志の母の事故にケネスが関係しているのではないか?」という疑惑が浮かびあがり、その疑惑は色濃さを増していく。やがて母の殺害したのは、ケネスの妻・パトリシアかとも思われた……。だが、彼女の父であり、ケネスの義父であるウィリアム・ハンプトンこそが主犯であることが判明した直後に、ウィリアムは自ら操縦桿を握った飛行機で事故死してしまう。
その後、ケネスによって過去が語られる。高校卒業後に海兵隊に入ったケネスは、沖縄の地で富子と出会い、惹かれあった二人は身体を重ねる。その後、ベトナム戦争を体験して生き残ったケネスは、「戦争という愚行をこの世から消し去らなければならない。そのために、私はアメリカ大統領になる」と、富子に別れの手紙を出していたのだ。
大統領選に勝利したケネスに、鷹志は「大統領として、世界に対する責任をどう果たしていくのか見つめ続け、4年後にもう1冊を出版する」と宣言し、理念に反する場合には4年後の大統領再選を阻止すると告げる。その後、鷹志はレイチェルに愛を告げて「4年後に迎えに来る」と約束したところで、物語は終わりを告げる。
登場人物
メインキャラクター
城鷹志(じょう たかし)
ケネス・ヤマオカ
本編の主人公。アメリカの次期大統領候補者で日系三世の民主党上院議員(ニューヨーク州選出)。ワシントン州シアトル出身。
ベトナム戦争で戦死した兄・ジョセフのために自らも海兵隊に志願入隊してベトナム戦争に従軍した。ベトナムへの移動中途の1972年3月に本土復帰を控えた沖縄で城富子と出会い、恋に落ちたことがあった。ベトナム戦争では重傷を負うも、生還を果たして帰還。その後はイェール大学を首席で卒業。卒業直後のヨーロッパ旅行では、帰国後のFBIの徹底監視というリスクを覚悟しながらも、共産圏の人々が何を考えるのか知りたいために、プラハの春がつぶされたチェコスロバキアなどにも入国した。大富豪ハンプトン家の令嬢のパトリシアと結婚。妻パトリシアと共にニューヨークに法律事務所を構え、全米で屈指の実力派弁護士として名声を上げ、それを背景に1990年に政界進出を果たす。
大統領選挙で銃規制や人種差別撤廃及び本土防衛以外の交戦禁止とそれによる全ての海外駐留米軍の撤退及び国連軍の増強などを主張。日本から取材にやって来た鷹志にお前の父親だと名乗る。
ケネス陣営
アーサー・マッコイ
ケネスの大統領選挙対策本部長。ニューヨーク州ニューヨーク出身で黒人。
ベトナム戦争の頃はアメリカ陸軍の衛生兵として、ヘリコプターを用いての負傷兵の治療・後送(通称ダスト・オフ)に当たっていたところを、瀕死の重傷を負ったケネスと出会う。そしてケネスからヘリの騒音でハッキリとは聞こえなかったものの、富子への伝言らしきものを耳にした。終戦後はベトナム帰還兵におちぶれ、職を転々としながらヤケ酒を煽った挙句、妻子に逃げられる始末だったが、弁護士として活躍していたケネスと再会し、政界入りするケネスの夢に付き合うようになる。ケネスの上院議員選挙の初めての立候補でニューヨーク市長への挨拶回りしている頃からケネスの側近となり、ケネスの右腕として活躍する。
ジョージ・タクト
全米一の選挙コンサルタント。
選挙においてケネスの有力な人物となる。元々は共和党専門の選挙コンサルタントだったが、ケネスとノアの教育政策をめぐる討論を見て、ケネスの当選を確信して陣営に入る。ケネスの大統領選のキャッチコピー「21世紀への移民」や対立候補のネガティブキャンペーンを考案した。政権内部の演説原稿を発表前に一言一句まで入手するほどの情報ルートを持つ。政治家の政策や信念に興味を持たない純粋な選挙コンサルタントだが、ケネスの政策や手腕を目の当たりにして、「ケネスの底力はすごい」「奴が俺の商売敵でなくてよかった」とアーサー達とは違った方向から賞賛した。
彼自身は政治家ではないものの、アメリカの政策やアメリカが抱える人種差別問題といった数々の問題点には詳しい。
ジョン
サラ
ケネスの家族
パトリシア・ハンプトン・ヤマオカ
大富豪・ハンプトン家の長女でケネスの妻。マサチューセッツ州ボストン出身。
弁護士であり夫ケネスと共にニューヨークに法律事務所を構えている。ホリヨーク大学法学部在籍時に兄の紹介でケネスを知り、ケネスと交際するにつれてケネスの視線の先に自分の目指すものがあると感じてプロポーズをしてケネスと結婚。ケネスとの間に息子のアレックスを儲け、レイチェルを養女として育てている。
大統領選挙では次期ファーストレディになるための女性層を中心に活動をしている。
鷹志がケネスの隠し子であることを知っており、亡き富子に激しく嫉妬する。当初はケネスがアレックスを差し置いて鷹志を後継者にするのではと感じていたが、鷹志とレイチェルの恋、アレックスとの友情を目撃して以降、次第に鷹志が何らかの思惑で近づいて来たと思うようになった。
レイチェル・ヤマオカ
ケネスとパトリシアの養女。大統領選挙で養父・ケネスの選挙プレスを担当。ジョージタウン大学に在学中。
キューバからの難民であるマリアの実子でありヒスパニック。生誕2ヶ月後にケネスの養子となる。
ワシントン支局への異動で渡米してきた鷹志と出会い、義兄であることは知らず、恋に落ちる。キューバ系の血を引く自分の境遇をケネスとパトリシアから教えられて育ったためか、精神的に力強い反面、メキシコなどから来るヒスパニック層の現状に対して複雑な思いを抱いている。
職場ではケネスとは父娘ではなく、上司と部下として接するようしており、この時は彼の事を「ボス」と呼んでいる。そのため鷹志は出会った当初、彼女とケネスの関係に気付かなかった。
アレックス・ヤマオカ
ケネスとパトリシアの息子。
ハーバード大学に在学中。大統領選挙でケネスにスタッフとして参加している。
政治的野心を持つ父・ケネスにコンプレックスを抱き、巨大すぎる父の幻影に押しつぶされそうになっている。一方でケネスに自らを認めさせようと、かつてマスコミを騒がせた現職副大統領ノアに対する献金疑惑の調査しているが、選挙戦序盤では不利な現状から「ノアにミサイルを撃っても、Uターンして返ってくる」と反対され、マスコミにノアを叩く武器として公表するには至らなかった。鷹志とは異母兄弟であるが、アレックスはそのことを知らないものの、民主党大統領予備選候補者たちの公開討論会を目前にしたバーでの一件から鷹志と友情を結び、鷹志本人の意向により呼び方を「Mr.ジョウ」から「タカシ」へ改めた。
ジョセフ・ヤマオカ
ケネスの兄。
秀才で花形フットボール選手であったため、ケネスに尊敬される程人望が厚かった。ケネスと同じイェール大学を卒業の際に大学院に進学すれば徴兵されずにすんだが、国民の義務を果たすとしてアメリカ陸軍からベトナム戦争に徴兵されて、ベトナムで戦死。壮行会では高校時代の友人達や地元シアトル日系人社会からも多くの人々が集まったが、アメリカに大義がないと言われていたベトナム戦争への出征に悩んでいた本心をケネスに打ち明けていた。
死後に雨の降る中で、ケネス達家族が見守る中陸軍式の葬儀が行われ、埋葬された。その後はシアトルのヤマオカ家の中に、陸軍の制服に身を包んだジョセフの遺影が飾られている。
最終階級は陸軍少尉だが、ジョセフ本人は士官学校に入っていないので、戦死による2階級特進で得た階級の模様。
エリザベス・マクラウド
チャールズ・ハンプトン
ウィリアム・ハンプトン
ウィリアム・ハンプトン一世
ジョージ・ヤマオカ
キャサリン・ヤマオカ
ノア陣営
アルバート・ノア
アンドリュー・ウォルシュ
政治家関連
リチャード・グラント
ビル・クライトン
エラリー・クライトン
ビル・ゴールドブラム
ウーズマン
ギルバート・ブラックバーン
ビリー・グラハム
その他
ドン・テイラー
テキサス・フーズ・カンパニー会長。テキサス州の大牧場の経営者。
穀物生産者組合の実力者であり、テキサス州をはじめとする南部を中心に強い影響力を持つ。ケネスと同い年、テキサス大学時代はフットボールのクォーターバックというポジションなど、幾つかの共通点を持つ。「テキサスの男はいつも夢に挑戦しなければならない」をモットーに夢を実現するために大統領候補擁立を目指している。この点について息子のマークから「何で父さんは大統領にならないの?」と質問された際には「大統領は8年しか務められないが、俺の夢は大きすぎて8年じゃ叶えられないから、自分の大統領を作ることにした」と語っている。
ケネスがベトナムにて瀕死の重傷を負ったのと同じく、少年時代に本人曰く「死に損なった」ことがあると語る。大牧場の御曹司として育てられた境遇への反発から、学校の授業で出たテキサスの南にあるメキシコとの国境線に興味を持ち、生まれて初めての本格的な家出を実行。メキシコ国境に向けてひたすら歩き続けるが水も食料も底を突いて朦朧とする意識の中、テイラーは心躍るメキシコへの旅の果てに不思議といい気分であった。結局は父親の手配した捜索隊に救助されるが、遭難地点は、未だ父親の広大な牧場の敷地内であった。
サム
マイケル・コズリョフ
ワシントン州シアトルに工場がある航空産業ユーイング社労働組合委員長。ポーランド系移民2世で、ポーランド名はミハイル・ミハイロビッチ・コズリョフ。
父親が目に障害を持っているため、少年時代から下級労働者として労働に従事。労組職員となり労組の枠を超えて組合員のために地道に自分の名前を広めながら労組幹部にのし上がってきた。ユーイング労組を背景にアメリカ労働総同盟代表になることを夢見ている。精力的に組合員のために活動しているため組合員からの信頼は厚く、労組委員長として一日100件以上の組合員の陳情を自分で捌くと言われるカリスマ性がある人物。共和党支持者として、ユーイング労組のまとめ役となっているが、裏では副委員長のザマルと熾烈な主導権争いを繰り広げている。過去の出自から富裕層の家系に生まれたケネスのことを嫌っていた。
アフメド・ザマル
マリア・ステファーノ
ウォルター・クロンダイク
ゲイリー・ケリガン
クルーニー
サイモン・ジョーンズ
その他(日本)
城富子(じょう とみこ)
鷹志の母。
3歳の頃に、当時の沖縄では儲かる裏仕事であった、米軍基地の演習場から不発弾を掘り出してクズ鉄屋に売る危険な仕事に手を出した両親を、不発弾の爆発で亡くしたが、沖縄で小料理屋を一人で切り盛りしながら息子の鷹志を女手一つで育て上げた。しかし、鷹志の渡米直前にガス漏れによる一酸化炭素中毒で他界する。かつて、飲み屋で働いていた本土復帰直前の頃に一人のアメリカ海兵隊員と恋に落ちて彼の子(鷹志)を孕む。また鷹志に父親のことについては余り語ろうとはせず、最後に直接語らった際に鷹志が問い詰めても返ってきた返事は「お前が結婚したら、教えるつもり」だった。
葬儀の後、彼女の遺骨は生前に鷹志に語っていた希望通りに「鷹志の父親(すなわちケネス)のいるアメリカと繋がっている海」へと散骨され、遺骨の一片は鷹志が大切に肌身離さず器に入れられた状態で身に着けている。
自宅の茶箪笥の上にアメリカ海兵隊員と写した写真を飾っていたが、事件後姿を消してしまう。この写真が、鷹志に富子の死に対する疑惑を抱くきっかけになる。
具志川(ぐしかわ)
その他
- 本作の連載が終了した2001年から7年後の2008年のアメリカ大統領選挙で黒人のバラク・オバマが当選し、2009年にアメリカ政治史初の有色人種の大統領が誕生した。
- 2010年から2011年にかけて放映されたKBSのテレビドラマ『プレジデント』は本作を原案とし、舞台その他を韓国に移して製作された作品である。