カレチ
舞台:高度経済成長期の日本,安定成長期の昭和時代,
以下はWikipediaより引用
要約
『カレチ』は、池田邦彦による日本の漫画作品。講談社の『モーニング』2009年14号から2013年31号にかけて不定期に連載されていた。なお、『モーニング』2011年1号より2013年6号までの期間は月に一度のペースでの連載となっていた。「最終章」5話分を除き、一話読み切り形式。
「カレチ」とは、長距離列車に乗務する客扱専務車掌。略称の詳細については車掌#電報略号に詳しい(鉄道業界用語参照)。
当初は昭和40年代後半を舞台に、乗客のために一生懸命になりすぎる国鉄の新米カレチ・荻野を主人公とした一話完結タイプの人情物だったが、話数を重ねるにしたがって年月が進行し、徐々に国鉄の斜陽化が描かれていくようになった。終盤では国鉄分割民営化問題に絡めてさまざまな立場で苦悩する国鉄職員の姿が描かれ、昭和62年(1987年)の国鉄の終焉とJRの発足をもって物語は完結した。
登場人物
いわゆるレギュラーは荻野、安斉、栗原、堀之内の4名。
国鉄職員
荻野たちが所属していた「日本国有鉄道」は民間企業ではなく公的機関(特殊法人)であったため、「社員」ではなく「職員」と呼ばれる。
車掌(主要人物)
国鉄に於いて、車掌の段階的役職が存在していて、「カレチ」はその一つである。
荻野憲二(おぎの けんじ)
第1話から登場。本作の主人公。国鉄大阪車掌区所属の新米カレチ(客扱専務車掌)。
仕事には一生懸命だが、乗客のことを第一に考えるあまり、時には懲罰覚悟で規則に反した行動に出たり上司と対立することもある。連載初期はお客のために規則を無視することもあったが、回を重ねるにつれて規則を遵守した上で接客をするようになり、初期のエピソードを振り返って「あの時の自分は間違っていた」と言及したこともある。
本人には自覚は無いが、車掌区内では優秀な職員として主に若手後輩に評判が良い模様。
「何かが身につくのは自分で到達できた時だけ、優秀な人にこそより伸びる機会を与えたい」と、後輩への指導はやや厳しくしている。
当初は独身の1人暮らしで、電話が引かれていないアパート「くろがね荘」に住んでいた。恋愛にはほとんど無縁で、小田志織に好意を寄せられ手作り弁当を渡された時も、女心に疎い荻野は弁当は受け取ったものの連絡先はおろか名前すら聞かなかったため、安斉に呆れられていた。その後、安斉の後押しもあって志織との交際が始まり、昭和50年代前半(第33話時点)に結婚した。
車掌見習いの頃、ワフ21147(第4話)が火災で焼失しかけた際に、小便で消火をしている。その後昭和40年頃に普通車掌として登用。この頃、乗客への親切心から閉扉を遅らせることが多々あり、「ミスター・マイペース」とあだ名されていた。
国鉄末期には助役補佐に昇進し、リストラ推進の最前線に立たされる。多くの者から恨みを買いつつもその職務を全うし、国鉄分割民営化直前に国鉄を去った。2012年(平成24年)時点でも存命。
安斉正之(あんざい まさゆき)
第2話から登場。眼鏡をかけた初老のチーフ(レチチ - 車掌長)。荻野の普通車掌時代からの師弟関係で、彼がカレチになってからは同じ列車に乗務することが多く、登場話数も多い。
悪質な不正乗車や規則に反した運賃徴収には厳しく、荻野が乗客の主張を信じすぎる点を注意することが時折ある。車掌弁はとにかく引くよう指導している。
世話焼きな性格で、荻野と志織の恋愛成就のため一肌脱いでいる。自称「恋のキューピッド」。
荻野たちの一番の相談相手であったが、国鉄分割民営化の影響で車掌の職を追われてしまう。その後精神を病み、死に場所を求め一昼夜彷徨った後、遮断機の下りた踏切に飛び込んだ子供を救助し、走行してきた国鉄EF65形電気機関車に轢かれて死亡した。享年53。
なお「グランドステーション〜上野駅鉄道公安室日常〜」の第2巻に、大阪車掌区のカレチとして登場している。
堀之内(ほりのうち)
第9話から登場。大阪車掌区の特発車掌で、普段は助役等の補佐をしている。新潟県出身で、国鉄入社は1954年(昭和29年)。
嫌味でお調子者な性格に見られることが多い。地獄耳の持ち主で根回しの達人。「つまりすなわち…」が口癖。
営業規則を完璧に熟知してはいるが、車掌として勤務した経験が浅いこともあり、規則一辺倒で臨機応変さを欠く旅客対応をすることも多い。
両親は幼い頃に病気で他界しており、親類の伯母に育てられた。その伯母の「人の役に立て」という言いつけから、寝台列車に旅客として乗っていた際に、難産の娘の元へ向かう老婆に自分の寝台を譲ったこともある。
西鹿児島駅行き列車に乗務した際に食事の支度を忘れ、営業している飲食店を探して鹿児島市内をさまよっていたところ、明かりのついていた家をたまたま見つけ、そこで世話になった女性に一目惚れした。後にこの女性と結婚し、国鉄を退職。その後は鹿児島市内で妻と喫茶店を営んでいる。
規則一辺倒だったことから、初期は乗客本位の荻野と衝突することも度々あった。しかし次第に彼のことを理解するようになり、自身から相談を持ちかけることもあった。
同僚の武勇伝が好きらしく、武藤が濡れ衣で記録断念したのを残念がったり、栗原の強盗犯逮捕を歓喜したりしていた。
第3巻番外編「荻野さん夢のハネムーン」では、荻野と志織が結婚間近なことを知り「宮崎にハネムーンに行くんじゃないの」と揶揄したために、荻野は「ハネムーン中に堀之内そっくりの人と何度も出会う」という悪夢にうなされた。
車掌(その他の人物)
新堂、赤石の役職であった「車掌補」は、かつて「列車ボーイ」と呼ばれていた。
田所(たどころ)
村上(むらかみ)
田村
新堂(しんどう)
芝崎(しばさき)
宮地崇(みやじ たかし)
各務(かがみ)
運転士・機関士
武藤(むとう)
中島達夫(なかじま たつお)
向田(むこうだ)
36話に登場。荻野が新潟県新発田市東公園に保存されているD51 512を見に来て出会った元機関士。国鉄入社当初、家族の口減らしだったきっかけと仕事の辛さで腐っていた。
だが、先輩機関士・佐野の「神業」を観てそれを学ぼうとするが、佐野は兵役が近いこともあり「教える時間がない」と断られた。代わりに佐野の同期・木下を焚きつけて「神業」を盗み取ることに成功した。
先輩機関士が続々徴兵されて行ったため18歳にして機関士を拝命。「神業」を実践しようとするが、戦時下で機関車もろくに整備されていなかったためボイラーが爆発、試みは失敗した。
その後従軍して復員するが、先輩機関士の帰還で国鉄に再就職出来ず、違う職業に就いた。しかしながら今でも鉄道に対する愛着は強い。
その他職員
林田(はやしだ)
東広島駅の連結手。クラシック音楽の鑑賞が趣味。連結手としての技術は優れているが「仕事は金のため」と割り切っており、東京でのクラシックコンサートに行きたいがために残業には非協力的で、その姿勢については上司から度々疑問視されていた。しかし、東京のコンサートへ向かうために乗車した列車に乗務していた荻野から瀬野八(瀬野駅 - 八本松駅の急勾配)の補助機関車の開放作業への協力を懇願されしぶしぶ承諾、作業終了後に瀬野駅の職員達から大いに感謝されたことで、初めて仕事の喜びを味わった。後日、荻野と再会した際にはカラヤン指揮のバッハのレコードをプレゼントしている。
その後、広域異動で東京の武蔵野操車場へ異動。コンピュータ制御で自動的に仕分けされる貨車の様子を制御盤越しに監視する仕事に就く。徹底的に合理化された作業、煩わしい人付き合いの無い職場、プライベートな時間を満喫できることに当初こそ喜んでいたが、徐々に違和感を抱き始め、国鉄を退職。トラック運転手に転職した。
加藤直吉(かとう なおきち)
中島達夫がまだ岡山機関区に赴任したばかりの新米の機関士だったころ、岡山運輸事務所で運転主任付運転監督をしていた人物。運転監督の仕事は機関士の運転を監督することだが、加藤は「サプライズテスト」と称して機関士のミスを誘うような罠を仕込んで添乗していた。そのため、大抵の機関士はこの罠にはまって機関助士に降格させられてしまい、ほとんどの者は処分に納得がいかず辞職していた。そして中島も後にその罠にはめられてしまい、恨みを抱いた彼に木の棒で叩きのめされた。中島をはじめ、多くの国鉄職員は彼を酷く憎んでいたが、彼は自分の仕事を自分の信じるがままにやっただけであった。後に胃ガンが原因で死去するが、中島は彼の死後、その本心を理解することになる。
益岡達朗(ますおか たつろう)
師岡(もろおか)
34話に登場。新潟電力区柏崎配電分区の電力工手。感電しにくいという理由から金属製ではなく、竹製のはしごを使用している。虫食いの検査にも抜かりない。
青海川駅近くの引留碍子の修理中、風にあおられて転落。接近してきた特急「北越」との接触は免れたが、腰の骨を折ってしまった。入院先の病院で息子から443系架線検測車の導入とそれに伴う電力工手の消滅を聞かされ激怒。3か月後、退院と同時に職場に復帰した。しかし架線の修理中にはしごが折れてしまい、架線にぶら下がった状態になる。どうしようもなくなった彼はまたも転落。今度は右足を折ってしまった。
2度目の退院後またもすぐに職場復帰し、非番であるにもかかわらず「仕事が無くなるのが名残惜しい」と言う理由で出勤したが、作業中に落雷に巻き込まれ殉職した。
師岡の息子
京極(きょうごく)
篠田(しのだ)
岩崎(いわさき)
その他
山本宣夫
龍谷幸恵
山岡武雄(やまおか たけお)
小田志織(おだ しおり)→荻野志織(おぎの しおり)
河野みどり(かわの みどり)
RAIL GIRL〜三河の花〜
愛知県東部のとある駅の管理を行う商店主の娘・河野みどりとその鉄道沿線にまつわる物語。単行本第1巻に特典として収録。
みどりの母親
渡辺 昌男(わたなべ まさお)
みどりの学校に転入してきた男子。鉄道好きで同級生・野口から(みどりが)委託駅の娘であることを知り、みどりの家へ遊びに来るようになった。
当初、みどりは彼に親しくしていたが、彼の興味はあくまでみどりの住む駅に向いており、加えて彼女の母と親しくなったことから、みどりは嫉妬から疎ましくなり避けるようになる。
線路上で土砂崩れが発生した現場を目にして、倒れそうになりながらもみどり母子のもとへ駆けつけた。みどりの母が彼を病院へ連れて行く代わりに、みどりが災害による事故防止のための停止合図をすることになった。
それ以降みどりの嫉妬感は消え去り、再びみどりの家(駅)へ遊びに行けるようになった。
みどりのクラスではモテる方である。
野口(のぐち)
書誌情報
- 池田邦彦 『カレチ』 講談社〈モーニングKC〉、全5巻
- 2009年12月22日発売 ISBN 978-4-06-372864-4
- 2011年3月23日発売 ISBN 978-4-06-372985-6
- 2012年2月23日発売 ISBN 978-4-06-387087-9
- 2012年11月22日発売 ISBN 978-4-06-387162-3
- 2013年8月23日発売 ISBN 978-4-06-387234-7
- 池田邦彦『カレチ 車掌純情物語』講談社<講談社文庫>、全3巻 - モーニングKC版を3巻に再編集した文庫版。
- 2014年9月12日発売 ISBN 978-4-06-277924-1
- 2014年9月12日発売 ISBN 978-4-06-277925-8
- 2014年10月15日発売 ISBN 978-4-06-277939-5