クトゥルー・オペラ
以下はWikipediaより引用
要約
『クトゥルー・オペラ』は、風見潤による日本のライトノベル。H・P・ラヴクラフトのクトゥルフ神話大系を元にしたジュブナイル小説で、ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)より1980年7月から1982年4月まで刊行された。2015年3月にはクトゥルー・ミュトス・ファイルズ(創土社)から合本版が刊行されている。
あらすじ
1997年、ホリスター会長は超能力を持つ7組の双子を全世界から探す。そのころ、ポナペの島の住人が半魚人になり海に消え、クトゥルーの邪神像が見つかり、インドではツァールとロイガーを崇める教団が現れる。北海道の村で古代文字の解析が行われ、続いてダゴンとの戦闘が勃発。その場にいた深松兄弟がホリスターにスカウトされる。アテネでダゴンとハイドラを撃破するが、炎の生物によりカイロが壊滅してしまう。集結した双子たちは、超能力訓練の途中で遭遇したルリイエでクトゥルーを撃破する。双子の弟妹たちが地球に残り、兄姉たちは宇宙船アイリス号で旅立つ。
フォーマルハウトからクトゥグァが地球へ飛来するも、ノルウェーで迎撃に成功する。一方で、邪神と戦う少年少女たちの手助けをするべく、カダスの地に閉じ込められた地球本来の神々は現世へと赴く。エベレストの地中でシュブ=ニグラトを撃破し、かつてムー大陸であったとされる太平洋上の島でガタノトゥアを討伐するが、トールが右手を欠損する。
アイリス号はヒアデス星団へと向かい、ハストゥールを中性子星の重力に落として倒す。しかし、アルクトゥールスへ向かうべく、四次元空間に突入したアイリス号は、ヨグ=ソトートに遭遇し20億年前の過去の宇宙に飛ばされる。アイリス号は現代に戻るため再び四次元空間を通過するが、ヨグ=ソトートとの戦いでイシマントとターラーが行方不明になる。
ウボ=サトゥラ、アブホート、ツァトゥグァの三神が、地震を起こして地上を攻撃し、双子たちは移動する3つの地震源への対応に苦慮する。アブホートは北海道から横浜へと移動し、横浜は鏡の世界に引きずりこまれるが、最終的にアブホートを倒す。続いてハイパーボリアの地下にて、ツァトゥグァ、イタカ、ウボ=サトゥラとの戦いとなる。そこで三神を撃破するが、ハールーンが死亡する。
ヨグ=ソトートはオスロ市を数千年前の過去へと消し飛ばし、トールもそれに巻き込まれて行方不明となる。帰還した宇宙組と地球組は合流を果たしてヨグ=ソトートを撃破するも、テリイが四次元の彼方に消える。地球では、ロイガーとツァールが地磁気を狂わせることで地球の大気バリヤーを破り、別働のシャンタク鳥が太陽に突入することで異常太陽風を起こし地球に浴びせようとする。北極でツァールを、南極でロイガーを撃破した後、ウムル・アト=タウィル(炎霧)を南極カダス付近で撃破、カダスでナイアルラトホテップを撃破する。
ベテルギウスの惑星に到着し、四次元の20億年前に流されたターラーとイシマントが善神となり、邪神を封印して、20億年後の現代の地球人に力を与えたという真相が明らかとなる。巨大ブラックホールから、邪神の王アザトートが出現する。主人公達とアザトートは巨大ブラックホールに呑まれてホワイトホールからタイムスリップし、小さかったころのブラックホールにアザトートを落として完全撃破する。
9人の少年少女たちは、古代の地球に宇宙船で降り立つ。時の円環は閉じ、少年少女の活躍は、地球各地の神話に名残を留めることとなった。
登場人物
双子の少年少女
1982年7月7日に生まれた、超能力を持った少年少女たち。作中の舞台となる1997年当時は15歳。名前のほとんどが世界の神話に由来する(一部は未定、一部は架空の文献の神とされる)。物語としては、はぐれた者たちがベテルギウスの善神(旧神)となり、さらに終章まで生き残った彼ら彼女らが古代の地球に降り立ち人類の神話になるという、円環構造をとる。
ペリイ・フォンタナ、テリイ・フォンタナ
深松 良(ふかまつ りょう)、深松 健(ふかまつ けん)
潘 月華(ファン イエファ)、潘 星華(ファン シンファ)
ターラー・ラグビールシング、ドゥルガー・ラグビールシング
チュール・スヴェインソン、トール・スヴェインソン
イシマント・ホルス・アズラク・エルハイカム、ハールーン・ホルス・アズラク・エルハイカム
双子たちの協力者
地球本来の神々
ナイアルラトホテップによってカダスの地に幽閉された神々。双子たちの戦いを支援する。出番は邪神よりもずっと少ない。
大鹿の女神イホウンデー、ムナール大陸サルナスの三神ロボン、タマーシュ、ゾ=カラール、砂の国の神ナル=ホルトハース、眠りの神ヒュプノス、火の神ヴォルバドス、夢の国の神コス、ムー大陸で崇拝されていた「輝ける狩人」イオドが登場する。
邪神
外見や能力はオリジナルである。アブホートとウボ=サトゥラが神々を産み、外宇宙からはクトゥルー、ツァトゥグア、ヨグ=ソトートがやって来た。本作では四大霊の設定が採用されている。
アブホート
ウボ=サトゥラ
アザトート
ガタノトゥア
クトゥグア
ハストゥール
シュブ=ニグラト
ナイアルラトホテップ
イタカ
ツァールとロイガー
ヨグ=ソトート
ツァトゥグア
クトゥルー
ダゴンとハイドラ
炎の生物
シャンタク鳥
ウムル・アト=タウィル
深きもの
バイアグーナ、ニョグタ
作風・制作背景
シリーズタイトルとなる「クトゥルー・オペラ」とは「クトゥルー神話大系にもとづいたスペースオペラ」の意である。
一般的なクトゥルフ神話大系作品と異なり、主人公たちが科学力と超能力で邪神を倒していく。本作においてクトゥルーを含む「神々」は、「超常の能力を持っている異星生命体」であり、適切な手段を用いれば対抗や撃退が可能なものと設定されている。風見は既存の神話作品のパターンが「怪物が登場して恐怖で終わり、となるばかり」で不満があったと述べており、反発を受けることを承知しつつクトゥルフ神話を活劇として描いた。本来の構想としては、おどろおどろしいホラーを描写した後に邪神たちを人類の科学力で倒していくという展開を考えていたが、おどろおどろしさは割愛され、また超能力の要素が加わることとなったという。
主人公の少年少女が全て双子である理由は、多数の敵邪神を倒すために地球と宇宙を駆け回ることになるが、複雑になることが予見されたために、同じ能力を持つ人物を2人ずつ作ることにした。
評価
本シリーズスタートの翌年1981年11月より刊行の始まったクトゥルフ神話大系を元にした長編シリーズ『魔界水滸伝』を執筆した栗本薫は、『魔界水滸伝』執筆にあたって本作の影響があったこと、クトゥルフ神話大系物でここまで自由にやって良い(上述のように「神々」を主人公たちが倒して行く点)と目から鱗状態であったことをあとがきやインタビューで述べている。
日本のクトゥルフ神話は、短編小説として『銀の弾丸』(1977年、山田正紀)や『邪教の神』(1956年、高木彬光)が挙げられるが、長編としては本作が最初期の1つ。菊地秀行は「ひょっとしたら、日本のクトゥルー神話長編シリーズ第一号のみならず、SFとホラーを合体させた最初の長編シリーズとの名誉も冠せられるかもしれない」と述べている。
既刊一覧
- 風見潤(著) / 中村銀子(イラスト) 『クトゥルー・オペラ』 朝日ソノラマ〈ソノラマ文庫〉、全4巻
- 「邪神惑星一九九七年」1980年7月発行、ISBN 4-257-76160-1
- 「地底の黒い神」1980年12月発行、ISBN 4-257-76170-9
- 「双子神の逆襲」1981年9月発行、ISBN 4-257-76184-9
- 「暗黒球の魔神」1982年4月発行、ISBN 4-257-76205-5
- 風見潤(著) / 中村銀子(イラスト) 『クトゥルー・オペラ 邪神降臨 新装版』 創土社〈クトゥルー・ミュトス・ファイルズ〉、2015年3月1日第1刷発行、ISBN 978-4-7988-3024-7
- ソノラマ文庫版表紙画はモノクロ挿絵として収録。ソノラマ文庫版の各巻著者あとがきも再録されている。
- ソノラマ文庫版表紙画はモノクロ挿絵として収録。ソノラマ文庫版の各巻著者あとがきも再録されている。