ゴジラvsビオランテ
以下はWikipediaより引用
要約
『ゴジラvsビオランテ』(ごじら たい びおらんて)は1989年(平成元年)12月16日に公開された日本映画で、「ゴジラシリーズ」の第17作である。カラー、ビスタビジョン、ドルビーステレオ。観客動員数は200万人。略称は『ビオランテ』『VSビオランテ』『vsB』。
キャッチコピーは「超ゴジラ それはゴジラ細胞から生まれた!」「'90年正月映画日本代表」「勝った方が人類最大の敵になる」など。
入場者プレゼントはゴジラスタンプ(全4種)。
概要
平成ゴジラシリーズの原点となる前作『ゴジラ』(1984年)の直接の続編。平成ゴジラシリーズ(VSシリーズ)の第1弾でもある。
本作品では原案が一般公募されたほか、特技監督には前作まで担当していた中野昭慶に代わって川北紘一、脚本と監督には『ヒポクラテスたち』などの大森一樹、音楽に「ドラゴンクエストシリーズ」などのすぎやまこういちを起用するという、それまでの怪獣映画にない新たな息吹を取り入れようとした意欲作でもある。
ゴジラやビオランテに襲撃される主な舞台として前述の芦ノ湖のほか、伊豆大島、大阪市、若狭湾が登場する。大阪市にゴジラが出現するのは、『ゴジラの逆襲』以来34年ぶりであった。
本作品は、以降のVSシリーズでメインキャラクターとなる超能力者・三枝未希の初登場作品でもある。また、本作品はミニチュアセットですべての市街地を再現した最後のシリーズ作品でもあり、次作『ゴジラvsキングギドラ』以降はCGによる描画が増えていくこととなる。
物語の展開はいわゆる昭和の児童向け怪獣映画とは一線を画しており、ゴジラとビオランテの対決よりも「ゴジラ対自衛隊」のそれに主軸を置いている。ゴジラ(略して「G」と呼称)は「特殊災害」と規定され、4段階の警戒態勢が設けられている。放射熱線を反射して対抗できる「スーパーX2」や、ゴジラのエネルギー源である核物質を食べるバクテリアから作られた「抗核エネルギーバクテリア」 (ANEB) など、先端技術を投入して開発された対G用の超兵器に加え、未希の超能力も自衛隊の戦力として運用されている。
1994年公開の『ゴジラvsスペースゴジラ』は、敵怪獣・スペースゴジラの誕生の理由にビオランテが可能性の1つとして挙げられるうえ、権藤一佐の妹や親友が登場するなど、本作品との関連が高い。また、ゴジラの細胞またはそれの持つ性質から新怪獣が誕生するという要素は『vsスペースゴジラ』だけで終わらず、後年の『ゴジラ2000 ミレニアム』や『シン・ゴジラ』などの作品にも、細かな設定の違いを見せながら継承される形となっている。
ストーリー
1984年、ゴジラ襲撃から一夜明けた新宿では、自衛隊が廃墟内の残留放射能検査やスーパーXの回収を進める一方、ゴジラの体組織であるG細胞の破片を回収する作業が行なわれていた。その最中、アメリカ合衆国のバイオメジャーもG細胞の採取に成功したところを自衛隊に発見され、銃撃戦となる。バイオメジャーは辛くも逃げ切るが、サラジア共和国のサラジア・シークレット・サービス工作員のSSS9によって全員とも射殺され、G細胞を奪取される。サラジアへ運ばれたG細胞は、白神源壱郎博士の研究室で小麦などの作物と融合させ、砂漠でも育つ植物を生む実験に使用されていた。しかし、G細胞の争奪戦に敗れたバイオメジャーの策略で研究室は爆破され、源壱郎はG細胞と共に最愛の娘・英理加を失う。
それから5年後の1989年、三原山内において再び活動を開始したゴジラに備え、国土庁はG細胞に含まれる核物質を食べる遺伝子を利用した抗核エネルギーバクテリア (ANEB) の必要性を強く認識するが、科学者の桐島一人はそれが核兵器を無力化する兵器として世界の軍事バランスを崩すのでは、と危惧していた。しかし、日に日に活動を活発化させるゴジラに対抗し得るものとして、自衛隊の黒木翔特佐はその開発のために源壱郎の協力を仰ぐ。源壱郎は一度は断るが、G細胞を1週間借り受けることを条件にANEB開発への協力を承諾する。
数日後、芦ノ湖に巨大なバラのような姿の怪獣が現れる。それは、源壱郎が英理加の遺伝子を融合させたバラを救うために組み込んだG細胞の影響により、急激な異常進化を遂げた怪獣ビオランテであった。同じころ、ANEBの引き渡しを求めるバイオメジャーからの脅迫文が首相官邸に届く。応じない場合は三原山を爆破してゴジラを復活させるというその内容に、桐島と自衛官の権藤吾郎一佐が引き渡しに応じた結果、ANEBはSSS9に奪われたうえ、爆破された三原山からはゴジラが復活する。
ゴジラは浦賀水道にて護衛艦やスーパーX2を撃退して小田原へ上陸し、芦ノ湖にてビオランテと対決する。ビオランテのさまざまな攻撃に苦められながらもゴジラは放射熱線でビオランテを倒し、駿河湾へ消える。
対G作戦の指揮を任された黒木は、その後のゴジラがエネルギー補給のために若狭湾の原発群へ向かうと予想し、最短経路の名古屋を通ると踏んで伊勢湾に戦力を集結させるが、ゴジラは紀伊水道から大阪に向かっていた。裏をかかれた黒木はスーパーX2のみを大阪に、残りの戦力を若狭湾へそれぞれ向かわせる。一方、桐島と権藤はサラジアのアジトが大阪にあることを知り、ANEBの奪回に向かう。刻一刻とゴジラの上陸が迫る中、奪回に成功した権藤はそのままANEBをゴジラに撃ち込む準備に入り、ゴジラはついに大阪市へ上陸する。
スーパーX2と権藤という大きな代償を払いながらもANEBの撃ち込みは成功するが、14時間近くを経過してもその効果は現れず、ゴジラは若狭湾を目指す。桐島の「ゴジラの体温が低いためにANEBの活性化が抑えられているのではないか」という仮説を受け、黒木は若狭にサンダーコントロールシステムを設置し、人為的な落雷によってゴジラの体温を上げる作戦に出る。その結果、ようやくANEBは効力を発揮し始めるが、ゴジラの進行は止まらない。高浜原発に緊急態勢が発令されて緊張が高まる中、ゴジラの前に成長してさらなる進化を遂げたビオランテが出現する。ビオランテを退けたゴジラであったが、ANEBの効果が現れ海中に沈み、光となったビオランテは宇宙へと舞い上がっていく。戦いの終わりに人々が安堵する中、SSS9により白神が射殺される。桐島によって追い詰められたSSS9は、黒木が作動させたサンダーコントロールシステムで消滅する。
登場怪獣
ゴジラ
ビオランテ
登場人物
桐島 一人()
筑波生命工学研究所の若きエースである研究員。35歳。
抗核エネルギーバクテリアの開発や大河内誠剛が進めようとしている世界中のVIPや有名人の細胞を冷凍保存するバイオバンクのプロジェクトを危惧している。マサチューセッツ工科大学からの招聘を受けており、受け入れようとしていたが、結局断る。慎重な性格だが、奪われた抗核エネルギーバクテリアを取り戻すために権藤と奔走したり、白神を射殺したSSS9を追って格闘戦を繰り広げるなど、行動的な部分も持つ。
ノベライズ版では英理加に好意を抱いていたが、英理加を誘うたびに英理加が明日香を連れてやって来て、いつしか明日香の方と仲良くなってしまったという設定。
演じた三田村邦彦は、脚本では役の立ち位置がわかりづらく、最終的には監督の大森一樹の演出を信じて演じたと述べている。
バーのシーンでは、スタッフの遊び心により三田村が当時CMを担当していたビールを飲んでいる。
大河内 明日香()
黒木 翔()
防衛庁特殊戦略作戦室室長。三等特佐。26歳。
防衛大学を首席で卒業し、スーパーX2の運用ならびに陸・海・空・全自衛隊を指揮する。若さゆえの粗もあるが、上官に対しても物怖じしない胆力や、三枝未希の超能力をも作戦に活用するなど柔軟な頭脳を持ち、手段を選ばない大胆な戦術・戦略でゴジラを追い詰める。終盤ではSSS9をTCシステムで蒸発させるなどの機転も見せる。
『ゴジラvsデストロイア』では、スーパーXIIIの機長として再登場する。
ノベライズ版でも工作員が乗ったスパイ機をサンダービームで撃墜する。坂井孝行によるコミカライズ版では続く『ゴジラvsキングギドラ』から『ゴジラvsデストロイア』までの全ての作品に登場している。
脚本第3稿では、三佐と設定されていた。
脚本を担当した大森一樹は、執筆段階では配役に古尾谷雅人をイメージしていた。
三枝 未希()
大河内明日香の勤める精神科学開発センターに所属する少女。17歳。
三原山上空からゴジラの活動を感知したり、大阪湾でゴジラの動きを一時的に足止めするなど、センターで最も強い超能力を持つ。しかし、関西国際空港・建設基地でゴジラを精神感応で一時足止めする際にかなりのエネルギーを使い果たして失神してしまう。終盤ではビオランテの出現を予測しそのことを桐島たちに伝えた。
本作品の後も続く『ゴジラvsキングギドラ』から『ゴジラvsデストロイア』までのVSシリーズのほか、『怪獣プラネットゴジラ』にも登場している。
漫画版『ゴジラ1990』では、84年のゴジラ襲撃時に両親を失っていることが描かれている。
原作者の小林晋一郎は、本作品が植物を中心とした物語であることから登場人物の名前もそれにちなんだものとし、さらに毛利元就の三本の矢の逸話もヒントにして、「知恵と勇気と愛の3本の枝が集まれば希望が生まれる」という意味を込めて命名した。当初、小林は名前を「希()」としていたが、脚本の時点で大森の娘の名前と同じ読みの「未希」に改められた。
小林による原案では、不知火研究所のアルバイトという設定で、エリカのものと思われる女性のすすり泣きを耳にするという展開であった。
演じる小高恵美は、監督の大森から参考資料として映画『キャリー』を観るよう指示されたという。演技にあたっては、生活感を出さず神秘的に見えるよう心がけたと述べている。しかし、後年の作品ではそこから成長した未希と自身の成長過程とが重ならず難しかったと述べている。
大森によれば、本作品の後に企画されていた『モスラVSバガン』にゴジラシリーズとの接点として未希の登場が予定されており、企画は没になったがその名残として以降のVSシリーズに未希が登場することになったという。
SSS9()
大和田 圭子()
山地()
ジョン・リー
アメリカ・バイオメジャーの白人系工作員。コードNo.46762。英語はもちろんのこと、日本語もかなり流暢に話す。
ローと共に白神新植物研究所を監視していた。その後夜間に研究所に侵入し、SSS9やビオランテの触手に襲われ、ローを失いながらも抗核エネルギーバクテリアに関する資料を盗み出すことに成功する。その後「エイリアン」と名乗り三原山を爆破してゴジラを復活させると日本政府を脅迫し、抗核エネルギーバクテリアの受け渡しを要求する。結果、日本政府が要求を受け入れたことで、桐島・権藤との抗核エネルギーバクテリア受け渡し現場に三原山の爆破スイッチを搭載したトラックに乗って現れるが、SSS9の妨害に遭い、最終的に射殺される。
その際にトラックが横転したため爆破スイッチは制御不能となり、結果としてゴジラ復活に繋がってしまった。
マイケル・ロー
アブドール・ザルマン
白神 英理加()
権藤 吾郎()
陸上自衛隊一佐。40歳。
自衛隊陸幕調査部から国土庁特殊災害研究会議に出向しているが、本人は「体のいい左遷」と語っており、鬱屈した日々を過ごしている。愛用の腕時計はセイコー ファイブスポーツ(seiko 5126-8090)。事態を他人事のようにとらえた不謹慎かつ呑気な発言が目立つが、冷静な判断力と高い行動力を持つベテラン自衛官。大阪でゴジラにANEB弾を3発(うち1発は口内へ)命中させるが、その直後ツイン21の倒壊に巻き込まれ死亡する。
『ゴジラvsスペースゴジラ』には妹の千夏や親友の結城晃が登場している。
脚本を担当した大森は、執筆段階では配役に原田芳雄をイメージしていた。
権藤がツイン21の崩落によって死亡するシーンは、演じる峰岸徹がスタントなしで演じたが、スタッフのミスによってカメラが回っていなかったため、崩落場面を撮り直している。
大河内 誠剛()
登場兵器
架空
スーパーX2
92式メーサー戦車
24連装ロケット砲車
83式600mm地対地ミサイル車
92式ペトリオット<改>対Gシステム特車
抗核エネルギーバクテリア()
G細胞に含まれる、核を食べて放射能を無害化する遺伝子から作り出された核物質をエネルギー源にするバクテリア。作中ではこれをゴジラの体内に撃ち込んで核反応を抑え込み、エネルギーを奪うことを目的として大河内財団の協力の下で白神源壱郎博士らが開発し、自衛隊が大阪に上陸したゴジラに対し使用した。その効果はバクテリア弾1発で原発1基分の核反応を抑制できるほどのものだが、当初はゴジラの低い体温のために活性化せず、すぐには作用しなかった。そこでゴジラの体温を上昇させるために「サンダービーム作戦」が実施される。この結果、その後のビオランテとの交戦中にいったんゴジラを昏倒させる。しかし昏倒したゴジラがたまたま海に倒れ込んだことにより体温が下がり効果が一時的に低下。その間に消滅し宇宙へ飛んでいったビオランテを後に、回復したゴジラは海へ帰る。
開発した白神博士が同作内にて殺害されたため本作品以降のシリーズには登場しない。
マイクロウェーブ6000サンダーコントロールシステム
実験エリア上空にヨウ化銀を散布して人工的に雷雲を発生させ、稲妻によって発生する高周波により対象物の分子を振動させて加熱する実験システムで、一定の空間を使った超巨大電子レンジと言われる。TCシステムは、ソニックビーム車と呼ばれる磁場を発生させる巨大なアンテナ車輌と、避雷針のような突起のついた地雷型の電位差発生装置で構成され、ソニックビーム車8輌と電位差発生装置140基で実験フィールドを1つ形成する。電位差発生装置に負の電荷をかけると、上空で帯電しているに対して稲妻が放電され、発生した高周波により対象物が加熱される。その熱エネルギーは、電位差発生装置1基で戦車一台を容易に溶かすほどであり、あくまで科学実験設備でありながら対地兵器と表現する資料もある。このTCシステムの運用には大電力を必要とするため、原子力発電所による電力供給が可能な若狭湾付近に実験場が設けられていた。
劇中では、ゴジラの体内に撃ち込んだ抗核エネルギーバクテリアを活性化させるべく、予想以上に低温だったゴジラの体温を上昇させるサンダービーム作戦に使用された。TCシステム自体には武装がないため、作戦エリアまではメーサー戦車による攻撃でゴジラを誘引し、その後もメーサー戦車や戦車・ミサイルなどの攻撃によりゴジラを作戦エリア内に封じ込めた。抗核エネルギーバクテリアの効果が現れるまで時間がかかったため、ゴジラの反撃や、突如として出現したビオランテとの戦闘に巻き込まれて大きな被害を出しながらも、最終的には作戦は成功している。また、白神博士を射殺したエージェントのSSS9に対しても黒木が電位差発生装置を作動させており、人工雷が発生した瞬間にSSS9は消滅した。
その他、『月刊コロコロコミック』に掲載されたコミカライズ作品では、『ゴジラvsモスラ』でモスラ幼虫を焼き払うために黒木が使おうとしたり、『ゴジラvsデストロイア』でゴジラを冷却するために、このシステムを応用したPE(ペルチェエフェクト)6000サンダーコントロールシステムが登場している。
撮影用のプロップは、実験エリアの遠近感を強調するためにソニックビーム車・電位差発生装置の両方とも大中小3サイズが作られており、前者のアンテナ部電極板はプリズムテープで表現された。また、電位差発生装置は、本編撮影用の実物大大道具が先行して製作されたため、特撮用ミニチュアモデルが後から合わせて作られた。
ソニックビーム車
装軌式の台車の上に巨大な電位相増幅装置を搭載したソニックビーム車(雷電位相増幅機=M6000-TCS)と91式特殊牽引索敵レーダー車で構成され、これに電位差発生装置(通称「地雷」)で一つのシステムを構成している。形式記号はPDSS91。所属は陸上自衛隊。
全高:30メートル
ミニチュアは3種類のサイズが用意され、最大のものは1/25スケールであった。
スーパーサーチライト車(TSL-91)
若狭湾近辺で行われたサンダービーム作戦の支援車両として展開した移動照明車。
ミニチュアは『モスラ』で使用されたはしご消防車を改造し、はしごのターレットにサーチライト1基を載せたもの。その後、ミニチュアは2009年の時点で東宝の倉庫に保管されているのが確認されている。
実在
自衛隊
バイオメジャー
サラジア・シークレット・サービス
設定
G細胞
筑波生命工学研究所
白神新植物研究所
ここで誕生したビオランテと、抗核バクテリアの資料を狙って侵入したSSS9、リーとローの乱闘によって、所内は荒らされてしまい、最終的に白神の死に伴って閉鎖される。
精神科学開発センター
『ゴジラvsメカゴジラ』にも登場する。
大河内総研
東京都内にある本社屋では、地下室に新宿で採取されたG細胞を保管している。
国土庁特殊災害研究会議Gルーム
室長を務める権藤の殉職により解体される。
特殊戦略作戦室
次回作『ゴジラvsキングギドラ』に登場する内閣安全保障室Gルームの司令室要員たちもこの部署のシンボルマークを付けている。
三友重工
サラジア共和国
大阪市街のビルにはサラジア・オイル・コーポレーション、サラジア航空、サラジア航空貨物、といった本国の関連会社の日本支社を持ち、神戸港から週1回日本とサラジアを往復する貨物船を出している。
サラジア生物工学研究所
バイオメジャー
キャスト
- 桐島一人:三田村邦彦
- 大河内明日香:田中好子
- 黒木翔:髙嶋政伸
- 三枝未希:小高恵美
- SSS9:マンジョット・ベディ
- 山地統幕議長:上田耕一
- スーパーX2オペレーター:豊原功補、鈴木京香
- ジョン・リー:ハント敬士
- マイケル・ロー:デリック・ホームズ
- 自衛隊隊員(陸上自衛隊員):松原一馬、井上浩、吉満涼太、山田義晴、河合哲、弓家保則
- 秋山陸自巨大植物監視部長:辰馬伸
- 作戦室員:皆川衆、坂田祥一、松岡一間
- サーハン(サラジア・オイル・コーポレーション日本支社長):メヒディザデ・ソレイマン
- 研究員:アブドゥーラ・ヘラール
- コマンド(バイオメジャーのコマンド):カーティス・クレイマー、ブライアン・ウール、ロバート・コーナー
- 看護婦:黒岩磨聖
- スーザン・ハーン(CCNキャスター):ベス・ブラット
- 白神英理加:沢口靖子(特別出演)
- 山本技術部長:永島敏行(友情出演)
- 大和田官房長官:久我美子(友情出演)
- 小山防衛庁長官:中田博久
- 竹田科学技術研究部長:佐々木勝彦
- 陸上幕僚長:荻原賢三
- 海上幕僚長:仙波和之
- 航空幕僚長:山中康司
- アブドール・ザルマン(サラジア生物工学研究所所長):アイデン・ヤマンラール
- ゴジラ:薩摩剣八郎
- ビオランテ(第1形態):竹神昌央
- ビオランテ(第2形態):柴崎滋、木村義隆
- テレビレポーター(TNNテレビレポーター、ニュースキャスター):相楽晴子
- ニュースキャスター(アナウンサー):松川裕美
- スーパーX2整備長(スーパーX2整備主任):武野功雄
- デーモン小暮:デーモン小暮
- 権藤吾郎:峰岸徹
- 大河内誠剛:金田龍之介
- 白神源壱郎:高橋幸治
ノンクレジット
- 避難を呼びかける歌手(斉藤由貴) - 斉藤由貴
- ニュースキャスター - 坂信一郎
- 千里中央病院内の医師 - 大森一樹
スタッフ
- 製作:田中友幸
- 脚本・監督:大森一樹
- 特技監督:川北紘一
- ゴジラストーリー応募作品「ゴジラ対ビオランテ」小林晋一郎・作より
- プロデューサー:富山省吾
- 音楽:すぎやまこういち
- 編曲:デビッド・ハウエル
- サントラ盤:東芝EMI
- ゴジラテーマ曲:伊福部昭
- 撮影:加藤雄大
- 美術:育野重一
- 録音:宮内一男
- 照明:粟木原毅
- 編集:池田美千子
- 助監督:井上英之
- 製作担当者:森知貴秀
- 特殊機械:宮川光男、鹿山和男
- 装置:鈴木栄二
- 組付:笠原良樹
- 装飾:田代昭男
- 電飾:稲畑秀男
- 記録:江口由紀子
- 音響効果:伊藤進一、中村佳央(東洋音響カモメ)
- スチール:石月美徳
- 製作係:福塚孝哉
- 擬斗:宇仁貫三
- カースタント:スーパー・ドライバーズ
- 特殊技術
- 撮影:江口憲一
- 美術:大澤哲三、長沼孝
- 照明:斉藤薫
- 繰演:松本光司
- 造型:安丸信行、品田冬樹
- 特殊効果:渡辺忠昭、久米攻
- 助監督:松本清孝
- 装置:野村安雄
- スチール:中尾孝
- デザイン:西川伸司
- 特殊視覚効果
- オプチカルエフェクト:岸本義幸、北条則明
- モーションコントロール:木下良仁、阿部健一
- ビデオエフェクト:萩原賢治
- タイミング:岩田夫
- エフェクトアニメーション:橋本満明、松本肇、斉藤雅和
- アニメーション:毛利和昭、山懸亜紀、赤堀隆一
- コンピュータグラフィックス:大屋哲男、亀谷久、水端聡
- マットペインティング:山本二三、三瓶一信
- マットペインター:石井義雄
- コーディネート:小川利弘、三沢勝治
- プロデュース:山辺崇、馬野光晴
- 協力:防衛庁
- 資料協力:教育社、組織培養記念研究所、日本テレビ放送網
- プロダクション協力:東宝映像美術、東宝スタジオ、東宝録音センター、東宝音楽出版、京都衣裳、東京現像所
- 東宝映画作品
- 配給:東宝株式会社
- 編曲:デビッド・ハウエル
- サントラ盤:東芝EMI
- 撮影:江口憲一
- 美術:大澤哲三、長沼孝
- 照明:斉藤薫
- 繰演:松本光司
- 造型:安丸信行、品田冬樹
- 特殊効果:渡辺忠昭、久米攻
- 助監督:松本清孝
- 装置:野村安雄
- スチール:中尾孝
- デザイン:西川伸司
- オプチカルエフェクト:岸本義幸、北条則明
- モーションコントロール:木下良仁、阿部健一
- ビデオエフェクト:萩原賢治
- タイミング:岩田夫
- エフェクトアニメーション:橋本満明、松本肇、斉藤雅和
- アニメーション:毛利和昭、山懸亜紀、赤堀隆一
- コンピュータグラフィックス:大屋哲男、亀谷久、水端聡
- マットペインティング:山本二三、三瓶一信
- マットペインター:石井義雄
- コーディネート:小川利弘、三沢勝治
- プロデュース:山辺崇、馬野光晴
制作
企画経緯
当初の仮題は『ゴジラ2』(『G-2』)。
前作『ゴジラ (1984年の映画)』(1984年)は、配給収入17億円のヒットとなり、1985年3月には続編制作へ向けてゴジラ委員会が発足された。しかし、東宝が当初目標としていた20億円には届かなかったことや、中高生の動員が伸び悩んだこと、ゴジラ復活の後押しとなったファン層からの評価が芳しくなかったことなど反省点も多く、それらを踏まえた上でシリーズ化し正月映画として定着させるために検討事項も多かった。
製作の田中友幸は、観客の反応を特に重視していたとされ、エンターテイメント性を持たせつつ、前作の「ゴジラ復活」と同等のイベント性を保つため、ストーリーの一般公募を実施した。前作公開直後に原案を一般公募した結果、応募総数5,025本から、特撮テレビドラマ『帰ってきたウルトラマン』の第34話「許されざるいのち」の原案(原案時点でのタイトルは「狂った生命」)を手掛けた歯科医・小林晋一郎の作品が採用された。「許されざるいのち」と本作品には、バイオテクノロジーをテーマにしている点に加え、「許されざるいのち」で植物と動物の合性怪獣・レオゴンが芦ノ湖に出現するのと同様、植物と動物の融合怪獣・ビオランテがやはり芦ノ湖に出現するなど、共通する要素も多い。なお、入選した候補のもう1つは、ゴジラが巨大コンピュータと戦い、それが戦車もどきのメカになるという案であり、本作品の制作が決定した後もその続編として検討されていたが、1989年公開の特撮ロボット映画『ガンヘッド』が興行的に不振だったことが影響し、却下されている。このほか、佳作・準佳作には、後に江戸川乱歩賞を受賞する坂本光一やサイエンスライターとして活動していた飛鳥昭雄らの作品もあった。授賞式は1985年11月9日に行われた。小林を交えたシノプシス制作は、授賞式直後から翌1986年1月にかけて行われた。この段階では、1986年12月公開(1987年正月興行)が予定されていた。
監督・脚本の大森一樹は、ゴジラシリーズ初の東宝外部監督である。田中は、シナリオコンクールで城戸賞を受賞した大森の脚本を高く評価していたことから直接面会して脚本を依頼し、それに納得したことで監督も依頼したという。脚本は、小林によるシノプシスを初稿として扱っており、大森による脚本は第2稿から始められた。脚本作りが難航したため、プロデューサーの富山省吾はその間に『恋する女たち』『トットチャンネル』などの監督に大森を起用している。
企画自体は前作の直後より動き出していたが、脚本やビオランテのデザインなどが難航し、準備期間は長期に渡った。富山は、シリーズの方向性を模索していたことと、制作費のかかる作品であるため東宝上層部が慎重であったことなどを理由に挙げている。また、小林は「花がゴジラと戦う」というイメージが多くの理解を得るのに時間がかかったと証言している。正式にゴーサインが出たのは1989年5月に入ってからである。前年に制作されていた企画書では、夏興行と想定していたが、ここへは『ガンヘッド』が当てられた。しかしこの時点でもビオランテのデザインは保留となっており、決定に至ったのは特撮班クランクイン後の同年8月下旬であった(ビオランテ#デザイン参照)。
大森は、幼少期に鑑賞した『モスラ対ゴジラ』に感銘を受け、本作品も女性的なイメージの怪獣、戦闘シーンの多さなどに影響を受けているといい、三枝未希も小美人に通ずるキャラクターであるとしている。また、リアリティのバランスや自衛隊の動かし方などは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』を参考にしている。
外部スタッフが多くなったため、富山や製作担当の森知貴秀らの意向により、本作品以降エンドクレジットに可能な限り多くのスタッフを掲載している。
田中によれば、TWIN21を破壊することには反対意見も多かったが、運営に関わる松下電器は喜んで許可したと証言している。
配役
当初、大森のイメージキャストでは、権藤役に原田芳雄、黒木役に古尾谷雅人、白神博士役に仲代達矢と想定していた。最終的にはスケジュール優先での決定となったが、イメージと同様の本格的なキャスティングを目指し、高橋幸治や金田龍之介ら東宝特撮色の薄い豪華キャストとなった。
1989年に『黒い雨』で各賞を総ナメした田中好子の出演交渉の際、大森は「(ゴジラ映画も『黒い雨』も)どちらも原爆に関することですから」と語ったという。
三枝未希役の小高恵美は、前作の沢口靖子に続き東宝シンデレラから起用された。沢口も別役で続投している。沢口が演じる英理加が冒頭に死亡して小高の場面に移るという展開は、第1回から第2回への女優のバトンタッチを意識した演出となっている。
黒木役の高嶋政伸は、プロデューサーの富山からの推薦により起用された。
山地統幕議長役の上田耕一は、本作品以降『ゴジラ FINAL WARS』までの平成・ミレニアムゴジラシリーズ全作品に出演することになる。
大和田圭子官房長官役の久我美子は、劇場公開当時の現実世界における官房長官が初の女性である森山眞弓だったことや、久我の夫・平田昭彦(1984年死去)の実母から受けた「息子が好きな映画だったので、あなたも出演しておきなさい」という助言に従い出演した。
マンジョット・ベディは、バイオメジャー役を担当した外国人俳優の通訳として収録現場に来ていたところを工作員役として採用された。採用した大森は、オーディオコメンタリーで「外国人キャストはもう少しキチンとキャスティングすればよかった」と語っている。
無名時代の鈴木京香が出演したことでも知られる。鈴木は当時大学生で、プロデューサーの富山省吾が鈴木の所属事務所と繋がりがあったことからの出演であった。当時、撮影現場では鈴木の美貌がスタッフの間で噂になっていたといい、主演の三田村邦彦やスタッフとして参加していた白石雅彦らは鈴木は当時からオーラを放っていたと証言している。
大阪のシーンでは、大森が主演映画を監督していたつながりから斉藤由貴が声のみカメオ出演している。ゴジラが大阪湾に出現した際には大阪城ホールにおける斉藤の「夢の中へ」のイントロが流され、それに続く大阪の人々が避難するシーンで権藤が「夢の中へ」の歌い出しを口ずさんでいる。
超能力開発センターの子供の1人や芦ノ湖のエキストラとして、原作者の小林晋一郎の実子も出演している。
防衛庁の協力
防衛庁が全面協力しており、東宝特撮史上最大規模の協力体制が敷かれた。劇中に登場する自衛官は役者(エキストラ)だが、登場する自衛隊車両(ジープ・73式大型トラック・自走砲・戦車など)はすべて現役の自衛官が操縦していた。浦賀水道の戦闘シーンでは、海上自衛隊のPR映画『海、翼、そして明日』から映像を流用している。
黒木をはじめとする「特殊戦略作戦室」と階級の「特佐」は現実の自衛隊には存在しないものであり、自衛隊の広報より「特殊戦略作戦室なんて組織はありません。特佐なんて階級もありません」と言われ、これを大森が「映画ですから」となだめ、自衛隊側は「今回だけですよ。次回からは自衛隊にある組織と階級で作ってください」と言われたという。ただし、これは結果的に成功した設定でもあり、作中で佐官の黒木が中心となってゴジラ攻撃の指揮を執ったり、自衛官の最上位である統幕議長の決定を独断で無視したりするシーンを「実際の自衛隊では絶対にありえないが、東宝の方で架空の設定を作って頂いて幸いだった」と防衛庁(当時)の広報官が語っている。
撮影・演出
クランクインについては、脚本の完成が遅れていたことから1989年9月までずれ込み、タイトなスケジュールでの撮影となった。
冒頭で、前作の物語直後の様子が描かれるのは、映画『キングコング2』(1986年)を踏襲している。
首相官邸や国土庁の外観は、正式な許可を得ず、正面に停めた車両から隠し撮りしたものである。
権藤の部屋に飾られているオキシジェン・デストロイヤーのレプリカは、第1作『ゴジラ』で用いられたプロップを使用している。
未希がゴジラの絵を描くシーンでは、ソニーの「My First Sony グラフィックコンピューター」を用いている。これは、企画会社勤務の鈴木律子が新商品宣伝のため持ち込んだもので、撮影現場にアポイントなしで乗り込んできた鈴木にスタッフらは戸惑ったが、富山はその熱意に押されタイアップを受け入れた。その後、鈴木は正式に東宝での宣伝業務に携わるようになり、ゴジラシリーズでのタイアップ展開の拡大に貢献し、映画『ヤマトタケル』(1994年)からはアソシエイトプロデューサーに就任した。
特撮
特技監督の川北紘一を筆頭に、特撮スタッフの多くは同年公開の『ガンヘッド』から引き継いでいる。操演の松本光司や特殊効果の渡辺忠昭ら円谷英二時代からのベテランのスタッフも参加しているが、美術の大澤哲三、撮影の江口憲一、照明の斉藤薫などゴジラシリーズ初参加となるメインスタッフも多く、特撮スタッフの世代交代が図られた。世代交代は田中が意図したものでもあるが、経験のある美術や操演のスタッフが同時期に制作していたスペースワールドのイベント映像へ流れていたという都合もあった。一時期、鳴海聡が操演チーフを務めていたが、映画『ZIPANG』(1990年)参加のため途中降板している。スケジュールが短かったことから、撮影途中からチーフ助監督の松本清孝を中心としたB班が組まれ、スーパーX2の発進シーンなどを担当した。
川北は、本作品での演出的な挑戦として怪獣の主観映像や実景との合成などを取り入れている。また、ゴジラが戦う場面で風や雨などを演出したのは、黒澤映画の模倣であると述べている。一方で、操演のワイヤーが見えにくくなることから、戦闘シーンは夜が多くなり、デイシーンでも暗めに映している。
合成作業には複数企業が参加し、日本エフェクトセンターは光線作画、マリンポストはモニター画面など、各社の得意分野で分担する体制となった。川北から合成の相談を受けた東京現像所の小川利弘は、合成量が増加し、作業も複雑化していたことから1社ではまかなえないと判断し、各社に依頼し小川が管理を行った。
CGも導入されているが、当時はCGのデータをフィルムに起こすことができるソフトがなかったため、プロッターを用いて紙に印刷したCGを撮影してオプチカル合成で着色する方法など、合成自体はアナログ作業で行われた。芦ノ湖のシーンでは、合成に70mmフィルムが用いられた。モニター画面も、ビデオテープに収録したものを再生している。
川北は、観客を飽きさせないため2、30分に1回ヤマ場が来るよう設定し、また観客が見入ることから10分置きごとに怪獣が咆哮する場面も入れている。また、芦ノ湖は「霧」、大阪は「炎」、若狭は「雨」と、異なるシチュエーションとしている。
特撮班は1989年8月10日にクランクイン。同日から12日まで御殿場の陸上自衛隊東富士演習場にて、ゴジラが三原山から出現するシーンの撮影が行われた。前作でも同地で撮影が行われたが、前作は富士裾野側、本作品では富士山側にカメラが向けられている。火口部分は、ブルドーザーで盛った土で作られた。
8月15日から30日には、東宝スタジオ大プールにてゴジラと自衛隊の戦闘シーンが撮影された。同プールは、本来ホリゾント側が順光になるよう設計されていたが、川北は逆光による演出を狙いホリゾント上にレフ板を並べ水面をきらめかせて撮影を行ったTemplate:R平成大全111。実験的にラジコンヘリも用いている。撮影にはクレーンやいかだを用いられたが、いかだが転覆してカメラが使用不能となる事故が起きている。9月7日に行われたゴジラが熱線を吐くシーンの撮影では、爆破のショックによりプールのヒビが広がり、水が流出する事故もあった。
8月31日から9月12日には、東宝第8ステージにて芦ノ湖セットの撮影が行われた。従来は第9ステージで特撮の撮影が行われていたが、当時はスペースワールドのイベント映像撮影が行われていたため、第8ステージが使用された。ホリゾントの低さをカバーするためにセット自体が小さく作られ、アオリ気味の演出で巨大感を表現しつつ、スモークで機材が水面に映り込むことを防いでいる。また、セットとカメラの間に木のミニチュアを置くことで奥行きを出しており、この手法は以後の作品でも用いられた。
9月17日から10月6には、東宝第2ステージにて大阪ビジネスパークのセット撮影が行われた。美術の大澤哲三は大阪出身であることから、セット制作にはその土地勘が反映されている。舞台が狭いエリア内であることや高層ビルをフレーム内に収められないこと、ゴジラのみで対戦怪獣が登場しないことなどから、芦ノ湖と同様コンパクトなセットとしつつ、俯瞰撮影を前提としたものとして作られた。河幅は実物よりも広く作られており、ビルの照明を水面に反射させて照明効果を高めている。アオリのシーンは、手前側のミニチュアのみを用いたオープンセットで撮影された。川北は、前作では高層ビルの中でゴジラが貧弱に見えてしまったことから、本作品ではあえてアオることでゴジラの巨大感を強調し、ビルの威圧感を薄めたと述べている。
10月12日から18日は、東宝第8ステージでサンダービーム作戦の撮影が行われた。セットは奥行きを持たせるため、バースのついた設計となっている。雨の描写は、消火栓の放水管を潰して水を細かくしており、メーサータンクのアップでは霧吹きを用いている。
クライマックスのゴジラとビオランテの対決シーンも第8ステージで撮影された。ビオランテは当初動く予定ではなく、川北の発案によって行われた。
若狭の戦闘時間の方が芦ノ湖での戦闘シーンより短く東宝から疑問の声が出た。これは川北が芦ノ湖側の撮影に時間を使い、若狭側の撮影予定を消化しきれずに時間切れとなったためである。
大阪のシーンでは、川北が特撮を手掛けたテレビドラマ『東京大地震マグニチュード8.1』のビル破壊シーンを流用している。廃墟となった新宿のシーンでは、前作で使用したミニチュアを流用している。
F-15が硝酸銀を撒くシーンのためミニチュアが用意されていたが、未使用となった。また、映画『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』(1988年)で用いられたなだしお型潜水艦のミニチュアも流用予定であったが、こちらも使用されなかった。
未使用シーン
- 芦ノ湖でのビオランテ戦は、コマ撮りによる未使用カットも存在する。全高1メートルのミニチュアで撮影された映像そのものの出来は良かったが、実写とコマ撮りのカットのバランスが悪く、結果的に不採用となった。同様に、若狭湾での戦いで倒れたゴジラを飲み込もうとするビオランテの描写も、大胆にもセルアニメによる処理を行ったカットがラッシュに持ち込まれたが、これも不採用となった。監督の大森は「一応は聞いていた」と語っているが、ラッシュを観て大森を含む関係者は唖然とさせられたという。特技監督の川北曰く「柔らかさを表現したかった」という狙いだったらしい。川北本人は会心の出来だったようで、スタッフの反応には非常に落胆していたという。
- この他、芦ノ湖での戦いの後、山にバラが咲き乱れるシーンもあったが、バラのスケールが合わないため未使用となった。これらの未使用シーンは、DVDに映像特典として収録されている。
音楽
音楽は、伊福部昭ではない新しいゴジラ音楽を求めて、当時大ヒットしていたドラゴンクエストシリーズの音楽を手掛けるすぎやまこういちが起用された。また、劇中で伊福部昭の楽曲が『メカゴジラの逆襲』以来15年ぶりに使用されている(アルバム『OSTINATO』より「ゴジラ・タイトル」、「ゴジラ対特車隊」、「怪獣大戦争マーチ」の3曲を流用)。
映画音楽は、映像がある程度仕上がってから制作されるのが一般的であるが、本作品ではクランクアップ前に脚本などのイメージに基づいた作曲・録音が行われた。楽曲は、ゴジラ、ビオランテ、スーパーXIIの各テーマが中心となっており、エンディング曲にはスーパーXIIのテーマが充てられた。
すぎやまの楽曲について、映画音楽評論家の小林淳は「軽快で口当たりの良い音楽」「ゴジラ映画のエンターテイメント性を引き出してきた」、東宝レコードの岩瀬政雄は「流麗なハリウッド風のオーケストレーション」と評している。しかし、小林はすぎやまの音楽と伊福部の音楽は水と油であった、岩瀬は結果として伊福部の楽曲の方が印象に残ってしまったとも述べており、次作では伊福部本人が復帰することとなった。
宣伝
1990年の正月興行として、『ゴーストバスターズ2』『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』『バットマン』が競合していたため、前作の「3G決戦」に引き続き「2G2B決戦」と打ち出された。
制作当時は児童向けにディフォルメキャラクターが好まれており、本作品でもポスターなどにディフォルメされたゴジラのイラストが用いられた。このことは、前作から観客層を拡大する狙いがあったとされ、以降の作品でも踏襲している。
『デーモン小暮のオールナイトニッポン』にてスペシャル番組が組まれた。当初は小暮独自にやっていた一コーナーであったが、東宝が最終的にタイアップをアピールして来たため、以前自分のMVにゴジラの出演のオファーを断られたデーモンは「今度は(ゴジラを)貸してくれるよな」とコメント。リスナーの投稿も「ゴジラ対ジラース、同時上映キンゴジ対モスゴジ」といったマニアックな投稿と、そのネタが解らないのに爆笑する小高恵美などの場面もあった。
舞台が大阪ということもあり、劇場公開の前後には読売テレビが『CINEMAだいすき!』の放送スタイルに近い形の「ゴジラ特集」を組み、公開までの数か月間、毎土曜深夜に過去のゴジラ作品ほぼすべてが放送された。番組内では、映画放送後に監督や脚本家へのインタビューのほか、スーツアクターへのインタビューなども放送された。
日本テレビの情報番組『ズームイン!!朝』にアポイントなしでゴジラが出演した。次作以降は番組の許可を得ての出演となった。
評価
作品内容については完成度の高さが評価されたが、興行収入は前作を下回り、目標の15億円にも到達しなかった。興行成績自体は1990年度の邦画第8位であり、制作費は十分に回収できたことからシリーズは続行することとなったが、この結果を受けて次作以降は新怪獣ではなく人気怪獣を再登場させ、内容もエンターテイメント性を重視したファミリー向け娯楽路線に方針変更されることとなった。
2014年7月19日に日本映画専門チャンネルで放映された「ゴジラ総選挙」では、本作品が「ゴジラ映画No.1」に選出された。
小説版
原案小説
出版芸術社から刊行されている『怪獣大戦争(怪獣小説全集 2)』に原案者である小林晋一郎の「ゴジラ対ビオランテ」が収録されている。
ビオランテやそれを生み出してしまう博士のストーリーが異なる他、スーパーX2、三枝未希、抗核バクテリアなどの映画中で重要な要素は登場しない。
また、ビオランテの他に「デューテリオス」という怪獣が登場する。ビオランテを作成する過程で生み出された実験動物で、作中では出来損ないと言われている。魚と獣の合成生物であり、水陸両生、魚の体にネズミのような四肢と尻尾を持つ。研究所から逃げ出したのちに巨大化し、付近の海で船舶を襲っていた。自衛隊との交戦中にゴジラが出現し逃走するが、追撃してきたゴジラとともに横浜港に上陸する。水陸両生だが長い間陸上にはいられず、次第に弱っていき最後にはゴジラに捕食される。
デューテリオスという名称は、「重ねる」という意味で重水素(デューテリウム)から取られている。映画には未登場だが小林自身によるラフスケッチも存在し、魚類と爬虫類の中間生命としてデザインされている。
「ゴジラ対ビオランテ」の佳作選出が決まった後、プロデューサーの田中友幸は、小林に応募作をもとにした長めのプロットの執筆を依頼した。第2稿ではデューテリオスの登場がなくなり、替わりにアメリカと中東の産油国の間で繰り広げられるゴジラ細胞の争奪戦、ゴジラ細胞によるビオランテ誕生の経緯とその声を聞く女性、ゴジラの熱線を反射する自衛隊の新兵器「ZEUS (Zooming Electron Universal Shooter)」といった完成作に近い要素が盛り込まれている。
ノベライズ版
角川文庫から刊行されている有馬治郎の小説版は映画に沿った展開になっているものの、オリジナル要素を多く含むストーリーである。スーパーX2は「アングラー」のコードネームで呼ばれており、ファイヤーミラーの代わりに大広角レーザー砲を装備する、権藤や白神は劇中で落命せず、ビオランテも四肢があり熱線を吐くなどの差異がある。
コミカライズ
小林たつよし版(タイトルは映画版と同じ、ISBN 4091415814)がてんとう虫コミックス(小学館、初出『別冊コロコロコミックスペシャル』12月号)から、平野俊弘版(タイトルは『ゴジラ1990』、ISBN 4048522434)がニュータイプ100%コミックス(角川書店)から刊行されている。平野版はビオランテとの第2戦の舞台が大阪であるなどストーリーが一部変更されており、スーパーX2のデザインもかなり異なる。
その他
- ゴジラが大阪の市街地を破壊するシーンの一部には、前作『ゴジラ』の映像が流用されている。
- 劇中で前作のゴジラの東京襲撃は1985年、本作品の時代はそこから5年後とされており、ゴジラ痕跡記念物のプレートや手紙の消印など小道具にも1990年と記されている。しかし、作中の時代が1992年の夏とされている次作『ゴジラvsキングギドラ』では、ゴジラがビオランテと戦った後に日本海へ消えて1,000日超の時間が経過しているとの表現があるうえ、1996年とされている『ゴジラvsデストロイア』でも三枝未希がゴジラと関わり初めて7年であることを明かすなど、本作品の時代は1989年とされている。
- 前作が『Godzilla 1985』の名で公開されたアメリカでは、1990年にミラマックスが東宝と交渉を行ったが決裂。東宝はミラマックスが50万ドルを支払うと口頭で約束したとして1990年8月29日に連邦裁判所に訴訟を起こした。最終的には和解が成立し、ミラマックスは東宝から権利を購入したが、劇場公開はされず、1992年10月9日にHBOホームビデオからVHSがリリースされた。英語の吹き替えは東宝から依頼を受けた香港のオムニ・プロダクションが担当。登場人物が英語で話すシーンも含めて、セリフは吹きかえられている。本作品以降、アメリカではVSシリーズは劇場公開されずビデオリリースとなった。
- 1991年12月4日には、『ゴジラvsキングギドラ』の公開に合わせて『水曜ロードショー』でテレビ初放送された。一部シーンがカットされたほか、キングギドラの静止画と「協力 防衛庁」のテロップがエンドロールの代わりに表示され、終了後に告知が行われた。
映像ソフト
- VHS 品番 TG4100、TG4389
- LD 品番 TLL2174
- DVDは2002年5月21日発売。オーディオコメンタリーは監督の大森一樹と特技監督の川北紘一。
- 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」に収録されている。
- 2008年4月25日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションIV」に収録されており、単品版も同時発売。
- 2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
- 2016年6月15日、東宝DVD名作セレクション版発売。
- Blu-rayディスクは2009年9月18日に発売。東宝特撮Blu-rayセレクションのラインナップ第一弾として、『ゴジラ』『ゴジラ FINAL WARS』および、『空の大怪獣 ラドン』『モスラ』(1961年版)と同時リリース。
- 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」に収録されている。
- 2008年4月25日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションIV」に収録されており、単品版も同時発売。
- 2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
- 2016年6月15日、東宝DVD名作セレクション版発売。
参考文献
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- 講談社 編『キャラクター大全 ゴジラ 東宝特撮映画全史』講談社、2014年7月15日。ISBN 978-4-06-219004-6。
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- 大森一樹、川北紘一(出演)、倉敷保雄(聞き手)『ゴジラVSビオランテ(オーディオコメンタリー)』(DVD)東宝、2002年5月21日。