ザ・ゴール2
以下はWikipediaより引用
要約
『ザ・ゴール2 - 思考プロセス』は、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットが著述し、1994年に出版されたビジネス小説。
前作では製造業向けに工場レベルでの「制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)」を読みやすい小説仕立てで説明していたが、本作では「機械製造業」「印刷業」「化粧品製造業」の3社に枠を広げて、企業レベルでの実践的なTOC理論を解説している。
さらに、「現状ツリー」「未来現実ツリー」などのTOC理論における思考プロセスを元にした問題解決の方法を、わかりやすく読者に説明している。この思考プロセスにおいては、『すべての問題点を挙げていき、相関関係をハッキリさせることで根本原因を見つけ、それを排除することに注力する』ことを推奨している。
あらすじ
プロローグ
しかし、これまで多角化を推進してきたユニコ社は、株価下落に伴い「コア・ビジネス集中」という経営方針の転換に迫られる。それにより、多角事業部で買収していた機器メーカーの「プレッシャースチーム」、化粧品会社の「アイ・コスメティックス」、印刷会社の「ダイナ印刷」の3社を売却する決議が、3人の社外取締役たちにより出されて可決されてしまう。
アレックスは自身が心血を注いでプロジェクトに携わり、買収時には大赤字であった3社をわずか1年で立て直し、今後も業績を上げていけると考えていた。そのため、決議では売却にただ一人反対したアレックスであったが、このままだと3社売却後には責任を取らされて、これまで築いてきた自身のキャリアが終わってしまう。アレックスはアシスタントのダンと共に、売却までの3ヶ月あまりの期間を使って、3社の更なる経営状況の改善をすることを迫られる。
思考プロセスによる問題解決
アレックスは、これまで「工場レベル」でしか活用してこなかったTOC理論を「企業レベル」に適用し、さらには問題解決のための思考プロセスを「取引会社の問題解決」にも活用することで圧倒的な利益倍増を実現して、この難問を乗り越えようとする。
ダイナ印刷の場合
アレックスは、頻繁に袋デザインを変更する菓子袋の特性に目を付け、「在庫の廃棄ロスによるキャッシュフローに苦しむクライアント」に対して、在庫が無駄になる可能性を踏まえて一度に発注する量を減らして注文すると単価が安くなる根拠を提示して営業をすれば、少量の菓子袋印刷にも勝機があることを見出す。
しかし、営業スタッフが解決策をうまく顧客に伝えられず、思わぬ苦戦をしてしまう。そこで、『移行ツリー』を顧客に見せながら「現状の問題の構造」を説明した上で、問題の解決策として「新しい取引条件」を示した。さらに、自社のネガティブ・ブランチを顧客に見せたことで、信頼感を高めて契約を取ることが出来るようになった。
アイ・コスメティックスの場合
そこで、「販売店への商品補充を1日単位で行う」ことで販売店の不満を解消しようとする。しかしその場合、いつでも商品補充できるために販売店は在庫量を減らしてしまうため、長期的には売上が30%上がるものの短期的に売上が落ちるデメリットがあった。
そこで純然たる委託販売にしつつ、「自社製品の陳列スペースの確保」を委託販売の条件にすることで解決する。それにより支払い待ちの売掛金が大幅に減少して、大量のキャッシュが浮かすことに成功するのだった。
プレッシャースチームの場合
設備・スペアパーツ・保守人員などを自社で丸抱えすることで、顧客のコストは半額以下となり、固定料金とエネルギー使用量に応じた金額を毎月支払うだけで良くなるのだ。他社に真似されないよう、トラブルに迅速に対応したり、蒸気に不具合があった際にはペナルティー料を支払うなどの対策も考えた。
エピローグ
その中で、プレッシャースチームのみが売却されずにユニコ社に残されることとなった。2社の売却益だけで格付け改善に充分だったこと、プレッシャースチームを買えるだけの競合他社が見つからないこと、ユニコ社グループ内に『手本となるモデル』を残す必要があることなどが理由だった。
ユニコ社の会長や社外取締役たちの前で、アレックスは未来のユニコ社について雄弁に語り、『お金を儲け続けて「株主」「従業員」「市場」のすべてを同時に満足させることこそ、企業にとってのゴールである』と断言する。それを聞いた会長は、アレックスに自身のCEO職を譲るのであった。
用語一覧
現象
UDE(好ましくない現象)
たくさんのUDEを個別に対処して消したとしても、また問題が再発したり、別のUDEが出現する可能性が高い。そのため、たくさんのUDEを一つずつ消そうとするよりも『コアとなる問題』に集中して取り組むほうが効果的であり、多くのUDEをまとめて解決するだけでなく問題の再発を防ぐことができるとされる。
DE(好ましい現象)
ツリー
現状ツリー
UDEの多くは「現象」に過ぎず、現状ツリーを正しく構築することができれば、全てのUDEの根本原因がわずか一つか二つの『コアとなる問題』にあることが明らかになる。
未来現実ツリー
現状ツリーを作る時に挙げたUDEを逆手にとって、DEを繋げてツリー状に図式化していき、明るい未来をどう創造するのか、『何に変えるか』を考えるために使うツールとされる。
移行ツリー
前提条件ツリー
まず、目標を達成しようとするとき、思いつくだけの『障害』を書き出す。次にその障害をかわせる中間目標をそれぞれ考える。現在から中間目標をたどり目標まで論理的につなげることで、障害をかわして中間目標を達成する手順を考えていく……というステップを踏んでいく。
登場人物
主要人物
ユニコ社の関連会社
日本語版
日本語版は三本木亮による翻訳で2002年にダイヤモンド社から出版された。
漫画
2014年に出版された前作に引き続き、2016年に監修:岸良裕司、脚色:青木健生、作画:蒼田山で、舞台設定を架空の日本企業に置き換えた「ザ・ゴール2 コミック版」が出版されている。