スパイダーマン (池上遼一の漫画)
以下はWikipediaより引用
要約
『スパイダーマン』は、池上遼一による日本の漫画。マーベル・コミックの『スパイダーマン』の翻案漫画としてスタートし、『月刊別冊少年マガジン』(講談社)に1970年1月号から1971年9月号まで連載された。
初期は小野耕世が参加している(ノンクレジット)。第7話(1970年9月号)からは、平井和正が原作としてクレジットされている。
概要
当初のストーリーは原作を翻案したものであり、ピーター・パーカーを小森ユウに、ニューヨークを東京に置き換えていた。
しかし、徐々に作風が変化し、独自色が強い作品になっていった。スパイダーマンが活躍しない回やほとんど登場しない回もある。初期にはエレクトロ、リザード、ミステリオといったマーベルのスーパーヴィランの翻案キャラクターも登場したが、悲劇的な出自の人物として描き、登場回で死亡するなど、オリジナルとは異なる展開を見せている。
マーベルのマルチバース(多元宇宙)では本作の舞台は「アース-70019」となっている。
『Spider-Man:The Manga』のタイトルで英語翻訳もされ、マーベル・コミックスから出版された。
企画の経緯(スパイダーマン作戦)
1969年、『週刊少年マガジン』の編集長である内田勝が『月刊別冊少年マガジン』の編集長を兼ねる事になった。『月刊別冊少年マガジン』の独自性を出すため、アメリカン・コミックスに目をつけた内田は、小野耕世に相談。小野がスパイダーマンを推薦し、「単なる翻訳ではなく、舞台や人物を日本に移す」という基本路線が提案された。
その後、内田が池上遼一を小野に引き合わせた。小野はオリジナル版を翻訳する一方、自分の解釈を文章としてまとめた。また、小野はスタン・リーに手紙を書き、資料を求めた。しかし、作品の方向性は池上と編集部に任せていた。
後にスタン・リーは「このマンガは、我々のスパイダーマンとは違う。どう評価していいかわからない」と感想を述べている。
誕生編(1970年1月号)はカラーで13ページ。2月号より、100ページでの連載となった。ただし、2回目以降の連載は、通常の無着色ページが多い。
- 本節は、サンワイドコミックス(朝日ソノラマ)第4巻、第5巻に掲載された小野耕世の文章(「スパイダーマン」随想(1)、(2))に依った。
主要登場人物
小森ユウ / スパイダーマン
主人公。ピーター・パーカーに相当する。音羽高校に通っている。
内気なタイプで、「勉強の虫」、「本の虫」と揶揄されている。運動神経は鈍い。後の言葉でいうと「科学オタク」に近い。
幼い頃、両親と別れ、養護施設に入れられる。その後、おばさんがユウを引き取った。
第2話では、荒木と共にレンタルバイクを走らせているが、免許の有無は不明(第10話では免許を有している模様)。
内向的な性格ゆえ当初は荒木以外に友人と呼べる存在が少なく、第5話における婦女暴行疑惑で更に孤立していくが、平井編以降は親しい仲間も増え良好な関係を築いていた模様。それゆえに、彼らが狂気へと駆り立てられる第11話では深い苦悩の表情を見せる事となる。
2014年にマーベルコミックスで展開した様々な異次元のスパイダーマンがクロスオーバーする『スパイダーバース』では池上版スパイダーマン自身は登場しないが、スパイダーマン同士の会話のやりとりの中で「小森という日本のスパイダーマンに会った」という台詞がある。
荒木
エピソード
第1話「スパイダーマンの誕生」(1970年1月号 - 2月号)
時を同じくし、電気人間エレクトロが出現。銀行強盗を繰り返す。科学者から、エレクトロはサイボーグと断定される。
情報新聞社は、エレクトロ退治に1000万円の賞金をかける。ユウは賞金目当てでスパイダーマンとなってエレクトロに挑むが、初戦は敗退。リターンマッチでエレクトロに挑む。
エレクトロは自らを改造した博士を誤殺。「元の身体に戻れない」と自暴自棄になり、スパイダーマンの一撃で致命傷を負う。そのマスクの下から出てきたのは、ルミの兄だった。ルミの兄は、交通事故で子供を障害者にしてしまい、500万円の賠償をする状況に陥っていた。返済に困った兄は、一攫千金を夢見て職を変えていき、ついには被害者の父によって実験台となって電気人間に改造されていたのだった。
兄の正体と死を知ったルミは、ユウの都合した入院費を手に、北海道へ帰る。
第2話「犬丸博士の変身」(1970年3月号)
犬丸博士はユウの尊敬する人物だったが、大トカゲの跋扈する孤島に置き去りにされた事により、トカゲ男に変身する能力を身に着けていた。自分を置き去りにし、新薬のデータを独り占めにした荒木博士を怨み、復讐をしていたのである。
心までトカゲに変化した犬丸博士は妻を殺害し、今また荒木を殺そうとした。動物園でのスパイダーマンとの戦闘中、ワニの巣に落ちた犬丸博士は変身が解け、ワニの餌食となった。ユウは「次に同じような怪物に現れたら、その味方をするかもしれない」と危惧する。
劇中ではリザードの名称は登場しない。
第3話「強すぎた英雄(ヒーロー)」(1970年4月号)
その場に居合わせた情報新聞社の編集長(社長)は、スパイダーマンに「エレクトロ退治の賞金」を持っていかれた事を逆恨みし、ネガティブ・キャンペーンを計画する。情報新聞の記事がきっかけとなり、日本中にスパイダーマン・バッシングが広まった。
真実を明らかにするため、ユウはカンガルー男の捕獲を決意。情報新聞社の社長に掛け合い、「スパイダーマンの写真を撮る」仕事を請け負い、取材費を前借り。バイクを入手する。
ゲリラ的に金品の強奪を繰り返すカンガルー男は、間違って実験用バクテリアの入ったカプセルを盗む。バクテリアが開放されると、東京中の人間に被害が及ぶ懸念があった。パニックに陥った人々は、我先にと東京から逃げ出していく。
スパイダーマンはカンガルー男を追い詰め、カプセルを回収する。「生まれ持っている能力を使って、どこが悪い?」と主張するカンガルー男に心動かされたユウは、「カンガルー男と同じ事をしてしまう」と自らを恐れ、コスチュームを川へ捨てる。
カンガルー男はオーストラリアの原野で生まれ、カンガルーと共に育った。
第4話「にせスパイダーマン」(1970年5月号 - 6月号)
その頃、ルミがまた上京してきた。母親が死亡したのだ。しばし東京見物をする2人だったが、デモ隊に遭い、離れ離れとなる。一足先に帰宅したユウは、ラジオから聞こえてくる、偽者の通り魔的犯行に自らの行動を重ね、自己嫌悪に陥った。ルミと再会するも、偽者にルミのハンドバッグが奪われる。「大事な母と兄の写真」を奪われたルミは、悲嘆に暮れる。
ユウは再びスパイダーマンとなり、偽者を退治することを決意。しかし偽者は姿を消し、怪人ミステリオがマスコミを通じてスパイダーマン退治に名乗りを上げた。ユウはミステリオと偽者の関係を疑い、清洲橋での決闘に応じるが、人工霧と超音波でスパイダー感覚を翻弄され、敗北する。
敗走の際、幼い子供が巻き添えとなって負傷、スパイダーマンは病院に担ぎ込むが、手術代50万円を請求される。情報新聞社に前借りを断られたユウは、東栄映画撮影所でスタントマンのアルバイトを行う。毎日、傷だらけで帰ってくるユウを気遣うおばさんとルミだったが、ユウは頑なに秘密を守る。
手術費を手に病院を訪れたスパイダーマンだったが、ミステリオに待ち伏せされる。しかも、偽者が直前に銀行強盗をしており、その罪を医師から突きつけられる。ミステリオの霧を防ぐため、スパイダーマンは走る電車の上で戦う。ミステリオの下からはにせスパイダーマンのマスクが、そしてその下からは、スタントマンの先輩であり、心優しい人物のはずの北川の顔が現れた。
ミステリオはウェブシューターを使用し、スパイダー感覚のことまで知っているが、その理由は明かされない。
第5話「疑惑の中のユウ」(1970年7月号)
4人組の一人は、剣道部のキャプテンである美川だった。ユウは美川を誘き出すため、あえて誤解を解かずに暴漢の汚名を被る。
偶然、ゴーゴー喫茶に入ったユウは、そこで働くルミと再会する。ルミはユウのことを想い身を引くが、ユウは再度の訪問を約束する。
スパイダーマンのコスチュームを着ているシーンは、自宅で苦悩しているシーンのみ。
第6話「狂気の夏」(1970年8月号)
渋滞を抜けた頃、外国人男性のバイク(ハーレー)がユウたちの車を抜いた。抜き返す荒木だったが抜き返され、拳銃を放たれてしまう。
気分を変え、海に到達したユウたちだったが、その時は土砂降りになっていた。女性2人をナンパし、レストランに入ったユウたちは、ハーレーの外国人と再会する。外国人は詰め寄った警官にも発砲、ユウたちを人質にして逃亡を続け、旅客機に乗り込む。機内でも無差別に発砲し、乗客を負傷させ、着陸装置まで破壊する。自暴自棄になったかのような外国人だったが、詰め寄ったユウが弾丸を跳ね返し、詰問するのを見て恐怖に襲われる。
ユウはスパイダーマンとなり、機外からフラップを操作。機は無事に着陸した。
外国人男性は、アメリカ軍のジョージ・ミードロ一等兵。ベトナム戦争の前線に戻ることを嫌い、追い詰められ犯行に至ったのだった。
平井和正参加後
第7話「おれの行く先はどこだ!?」(1970年9月号 - 10月号)
第8話「冬の女」(1970年11月号)
第9話「ストレンジャーズ」(1970年12月号)
第10話「狂魔(くるま)」(1971年1月号)
犯行は通り魔(狂魔)の仕業だった。ハイウェイの殺人者として、次々に犯行を重ねる狂魔。ユウは「狂魔パトロール」に志願、トップ・レーサーの滝正吾にバイクの特訓を受ける。
荒木は通学電車の中で狂魔への憧れを口にしたが、ユウは復讐を誓う。スパイダーマンは狂魔を追い詰めたが、運転席にいたのは滝正吾だった。
第11話「金色の目の魔女」(1971年2月号 - 4月号)
第12話「スパイダーマンの影」(1971年5月号 - 7月号)
第13話「虎を飼う女」(1971年8月号 - 9月号)
単行本によっては、第11話と第12話が逆に収録されているが、ここでは連載順(時系列順)に記載した。
- サンワイドコミックス(朝日ソノラマ)、および後年に同書を再編集した同社の単行本が、上記の状態となっている。
オリジナルとの相違点
大きな相違点は、「舞台を日本に移し、主人公を日本人にしたこと」の他に、ベン・パーカーの不在、他のヒーローの不在、ワイズクラック(軽口)を使わない、という点がある。
ベン・パーカーの不在
他のヒーローの不在
ピーターもマーベル・ユニバースの住人であり、当然、他のスーパーヒーローが存在している。
スパイダーマンは、給料目当てでアヴェンジャーズのメンバーになろうとしたことがある。その後、予備メンバーとなった時期もあった。
小森ユウの世界にはスーパーヒーローは不在であり、彼は孤立している。
これらの要因により、ユウの苦悩と孤独感は、ピーターのそれよりも深いものになっている(自らの暴走を強く恐れている)。
単行本
サンコミックス(朝日ソノラマ)
サンワイドコミックス(朝日ソノラマ)
平井和正編から収録しているため、第1巻は第7話から順に収録されている(最終回は第3巻に収録)。第4巻、第5巻には、第1話から第6話までを収録。
第11話と第12話は連載順(時系列順)とは逆に収録されている。
第4話「にせスパイダーマン」が前後編表記となり、第4巻と第5巻を跨いで収録されている。
第1巻
第4巻
第5巻
第1巻
第4巻
第5巻
平成版(朝日ソノラマ)
上記サンワイド版を、第1話から順に編集しなおしている。
サンワイド版と同じく、第11話と第12話は連載順(時系列順)とは逆に収録されている。
同じく、第4話「にせスパイダーマン」が前後編表記となり、第1巻と第2巻を跨いで収録されている。
第1巻、第2巻には、小野耕世の「スパイダーマン」随想(1)、(2)」が再録されている。
帯には「1996年にテレビアニメがスタート」、「ジェームズ・キャメロン監督により映画化決定」という内容が記されている。
MF文庫(メディアファクトリー)
MFコミックス(メディアファクトリー)
参考文献
- Stein, Daniel (2013-03-28). “Of Transcreations and Transpacific Adaptations: Investigating Manga Versions of Spider-Man”. In Daniel Stein; Shane Denson; Christina Meyer (英語). Transnational Perspectives on Graphic Narratives: Comics at the Crossroads. A & C Black(英語版). ISBN 9781441185235. https://www.uni-siegen.de/phil/anglistik/mitarbeiter/stein_daniel/files/stein_transpacific_spider-man.pdf
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