スワロウテイルシリーズ
以下はWikipediaより引用
要約
「スワロウテイルシリーズ」は籘真千歳によるSF小説作品の総称である。
作者の『θ 11番ホームの妖精』と同一世界であると明言はされていないが、 技術流派三宗家、J.R.C.D、世代型人工知能などの用語には合致が見られる。 作者のtwitterによればパラレルワールドの関係にあり、設定の矛盾点については『スワロウテイルシリーズ』を優先する、としている。
ストーリー
〈種のアポトーシス〉と呼ばれる原因不明の症状が蔓延した世界。感染者はパンデミックを防ぐ為、男女別による隔離生活を関東湾に浮かぶ人工島〈東京自治区〉で送っていた。
異性を失った自治区では新たな伴侶として、人を模して創られた人工妖精〈フィギュア〉が人間と共に生活を送り、微細機械〈マイクロマシン〉で構成される高度な文明を有す自治区では、様々な政治的問題を含みながらも理想の安寧社会を実現しているかの様であった。
人工少女販売処 (/ARTIFICIAL FAIRY SHOP)
東京自治区創立二十周年を迎えた頃、男性側自治区では連続殺人犯 —通称“傘持ち〈アンブレラ〉”による事件が多発していた。 人工妖精〈フィギュア〉の揚羽は、自警団〈イエロー〉の曽田陽平と共に“傘持ち”を追うが、事件は自治区の根幹を揺るがす事態へと進展していく。 様々な謀略の先に揚羽は、自身の出生と自治区の命運を担う決断を迫られる。
登場人物
人工妖精
揚羽(あげは)
本作の主人公。
人工妖精の大家「深山大樹」の最後の作品であり、妹の真白と並び双子として製作された。真白とは外見上同一だが、翅の色は黒。その翅は紫外線を放出するため仄かに青みがかって見える。
他の人工妖精とは異なり”幼少期”を持ち、義母の鏡子に手を差し伸べられたことで自意識を覚醒。五稜郭時代は四等級認定予定であったが、不言志津江にまつわる一連の事件に関わったことから経歴を抹消され、等級認定外とされた。
卒業後は「規格外」「黒の五等級」と呼ばれ、制約によって常に黒ずくめの服、黒のナースキャップを身に着けている。
長い黒髪を持つ非常に美しい容姿をしているようだが、父が最後に残した言葉もあり外見・能力を含めた自己評価は極めて低い。妹の真白を差し置いていち早く鏡子の手を取り覚醒したことに引け目を抱いており、そのことからあえて過酷な運命に身を投じる。
詩藤鏡子のもとで看護師として働きつつ、活動を停止した筈の青色機関の成員として狂った人工妖精を秘密裏に抹殺すると言う業務に従事しており、現役時代の鏡子の二つ名「海底の魔女(アクアノート)」を襲名している。
メスを主武器とし、特殊な金色の眼球の補助によって体内構造を洞察することで正確に人体の急所を攻撃できる。なお、一度でも血肉に触れたメスは二度と使わない主義。
また死亡して分解してしまった人工妖精の身体を再構成して情報を引き出す“口寄せ(サルベージ)”という独自の技能を持つ。
土気質
水気質
火気質
風気質
精神原型師
詩藤鏡子(しとう きょうこ)
揚羽・真白姉妹の義母にして保護者兼被保護者。外見は十代前半、小学生程度と見られるが種のアポトーシスの老化後退と肉体の老化スピードが一致しており、一世紀以上生き長らえている。元峨東当主。
傲岸不遜、唯我独尊を擬人化したような人物で、常に不機嫌な態度を崩さない。また凄まじい毒舌家でもあり、彼女の語彙の限りを尽くした面罵は知己や初対面の人物に留まらず、万物に及ぶ。
火気質の発見者でもある凄腕の一級原型師だが発見の功績を峨東流派に譲り、現在は表舞台にたつことなく世捨て人のような暮らしを送る。
生活能力絶無かつ筋金入りのヒキコモリであり、義娘の助けがなければ彼女の日常は生活し得ない。事実、自宅を紙媒体の書類で埋め尽くしては別室に移るという作業を繰り返しており、住居兼工房としている廃校舎も五年で一階のペースで埋没させていった。室内で下着一枚に白衣を引っ掛けるというスタイルも面倒という理由からである。
かつては青色機関に所属し数多の人工妖精を抹殺してきた槍術の達人。
その他
用語
人工知能(コンピュータ)の反乱
生命探査計画「第二次ガリレオ・プロジェクト」において太陽系内の二つの衛星に二機の完全自律型人工知能が派遣された。二機の人工知能はそれぞれの衛星を探査していたが、調査結果から「何か」を知った人工知能たちは唐突に人間の制御を離れ独自に行動を開始。一方は太陽系を脱出し、もう一方は地球への帰還を試みるも撃墜される。同時に地球上でも二機の人工知能に呼応して人工知能の反乱が発生。結果、全ての人工知能が廃棄された。
これによって人類から第十三世代の完全自律型人工知能十三機全てが失われ、人類の記憶に人工知能への深刻な恐怖が刻み込まれた。
終末の予言(エンケラドゥス・レポート)
終末の予言(エンケラドゥス・レポート)
種のアポトーシス
微細機械
微細機械(マイクロマシン)
蝶型微細機械群体(マイクロマシン・セル)
蝶型微細機械群体(マイクロマシン・セル)
視肉(しにく)
峨東一族は世界各地にこの培養株を提供し、人類を食糧不安から永久に解放した。
視肉(しにく)
峨東一族は世界各地にこの培養株を提供し、人類を食糧不安から永久に解放した。
人工妖精
人工妖精(フィギュア)
染色体構造が無いため生殖機能を持たないこと、細胞が微細機械で構成されていること、蝶の翅を模した放熱器官を持つことを除いては人間と同一の身体構造を持つ。精神面でも下記の「精神原型」及び「人工妖精の五原則」に基づき、人間同様の情動や人格を有している。成長はせず、製造された時点の外見で固定される他、思春期を持たない。容姿、人格、性格、技術、知識、趣向など、多様な人間の嗜好に応える広範なバリエーションが用意されている。耐用年数は六十年ほど。
東京自治区を中心に全世界に五十万体存在し、特に自治区では「第三の性」として広く周知されている。
人倫によって審査され等級が付けられる。等級によって身につける服の色やアクセサリーが決められており、権利が制限される。等級は一~四まであり、五等級は存在しない、とされているが最低の四等級にも該当しない「等級なし」が五等級と俗称される場合がある。
大抵の人工妖精は翅を見られることを裸を見られること以上に恥ずかしがる。
精神原型(S.I.M.)
人工妖精の基本的な脳構造の制作に辺っては、いずれかの四気質を基本設計に置く。
人工知能に依存しない脳の稼働にあたっては必ず精神原型を必要とし、少しでも手を加えると機能しなくなるが、その要因などは解明されていない。
以下は発見順であり、第五の精神原型の創造は精神原型師や人類の悲願である。命名はアリストテレスの四大元素に由来する。
土気質(トパーズ)
土気質(トパーズ)
水気質(アクアマリン)
ただし、その本質は伴侶と他を天秤にかけるような状況で前者を選びただ安堵するのみで、他者の愛情を独占しようとするような利己的なものであると作中のとある人物からは指摘されている。事実、水気質が狂う確率は他三気質と比較すると非常に高く、過半を占めている。
水気質(アクアマリン)
ただし、その本質は伴侶と他を天秤にかけるような状況で前者を選びただ安堵するのみで、他者の愛情を独占しようとするような利己的なものであると作中のとある人物からは指摘されている。事実、水気質が狂う確率は他三気質と比較すると非常に高く、過半を占めている。
風気質(マカライト)
高い能力を持つ傾向にあるが、その使い所を誤り、好奇心や情熱の赴くままに暴走すると指摘されることしばしばで絶対に進行役に据えてはならないとされる。他の気質や人間を巻き込めるだけ巻き込み、徒労感を与えるだけ与えるが、本人はサービス心のつもりなだけなので悪気は殆ど無い。
性質上、風気質同士で組み合わせると収集がつかなくなり、真面目な土気質に任せると相手が自滅し、感情的になりやすい火気質相手では話にならないため、消去法で残った水気質に押し付けられることが多い。
風気質(マカライト)
高い能力を持つ傾向にあるが、その使い所を誤り、好奇心や情熱の赴くままに暴走すると指摘されることしばしばで絶対に進行役に据えてはならないとされる。他の気質や人間を巻き込めるだけ巻き込み、徒労感を与えるだけ与えるが、本人はサービス心のつもりなだけなので悪気は殆ど無い。
性質上、風気質同士で組み合わせると収集がつかなくなり、真面目な土気質に任せると相手が自滅し、感情的になりやすい火気質相手では話にならないため、消去法で残った水気質に押し付けられることが多い。
火気質(ヘリオドール)
火気質(ヘリオドール)
人工妖精の五原則
ロボットや人工知能などに適用される「人工知性の倫理三原則」、いわゆる安全装置としての「ロボット三原則」(第一原則〜第三原則)に「情緒二原則」(第四原則、第五原則)を加え、構成される。
- 第一原則:人工知性は、人間に危害を加えてはならない。
- 第二原則:人工知性は、可能な限り人間の希望に応じなくてなならない。
- 第三原則:人工知性は、可能な限り自分の存在を保持しなくてはならない。
- 第四原則:(制作者の任意)
- 第五原則:第四原則を他者に知られてはならない。
第四原則の規定によって人工妖精は画一化のならない多様な情緒と個性を得る。
この原則は各人がそうありたいという理想、制作者がそうあれという希望が噛み合った、宗教的・倫理的規範に似たものである。逸脱することは過大なストレスを与え、時には狂ったとされる状態、ひいては自殺に至る。
第五原則の規定によって第四原則は本人か制作者を除き、知ることがない。これは悪用を避けるためであり、現にこれを逆手に取られることでジレンマに陥って、優先されるべき上位三原則と逆転することで殺人を犯してしまった人工妖精も存在する。
第三の性
精神原型師(アーキタイプ・エンジニア)
その他の技術
思考加速装置(シンクミッション・アクセラレータ)
本来人間は思考する時、記憶や経験を想起してから思考を行う。つまり材料を揃えてから思考を行うことになり、脳の記憶の想起速度によって知的生産性は制限されている。この問題を解決するため、思考プロセスのうちの「記憶の想起」を情報処理装置に代替させ、脳を煩わしい作業から解放して思索のみに集中できるようにしたのが「思考加速装置」である。
人間の思索を正確に予測し、その時々に必要な知識を人間が想起するより早く提案することで知性の全てを思考にまわすことを可能とする機械。理論上、その知的労働力は十倍にも達するという……が、その発明は時代の先を行き過ぎ、当時のコンピューターでは実現不可能だった。
しかし発案者の死後百年を経て、三大技術流派の一角・峨東により人工知能が開発されて一挙に進展、実用化された。作中の時代では多くの現場で役立てられている。
ただしその記憶力を必要としない思考方法は利用者に記憶障害や意識障害を誘発。とくに前向性健忘症の発症率の増加は社会的影響が甚大で、うつ病や神経症、幻覚、幻聴、連合障害から果ては統合失調症を発症する者まで現れた。
作中時点では思考加速装置の所有と使用には著しく法的制限がかけられ、使用に関しては国際基準が制定されている。また過度な使用は薬物同様、厳しく制限が課されている。
国家・組織
日本国
本編開始時で沖縄、九州、四国など多くの領土を喪失している。
技術流派
人工妖精の開発は、長年敵対してきた三宗家の史上稀にみる緊密な協力によって実現した。
峨東(がとう)
峨東(がとう)
西晒胡(にしさいこ)
西晒胡(にしさいこ)
水淵(みずふち)
流派の創始者は“水淵孝太郎”。
水淵(みずふち)
流派の創始者は“水淵孝太郎”。
人工生命倫理委員会
青色機関(BRuE)
人倫の自主規制(セルフ・レーティング)を基に、基準から外れた人工妖精を抹殺する実働部隊。悪性変異を除去する、人工妖精産業における全自動免疫機構。
青色機関(BRuE)
人倫の自主規制(セルフ・レーティング)を基に、基準から外れた人工妖精を抹殺する実働部隊。悪性変異を除去する、人工妖精産業における全自動免疫機構。
扶桑看護学園
その創立には峨東の氏族・不言一族が関わっている。
扶桑看護学園
その創立には峨東の氏族・不言一族が関わっている。
旅犬(オーナレス)
東京自治区
東京自治区
当初は本編開始時の約五十年前から「種のアポトーシス」からの隔離の意図を持って、一種の棄民施策として成立している。そのため、男性自治区と女性自治区の二つに「大歯車」で分割されており強く往来を制限されているが、これは外交カードにも転じている。
建造に蛾東が関わったこともあって微細機械に関わる莫大な知財権を持ち、弱体化した本国に劣らない高いGDPを有する。それに裏付けされ、区民の生活は完全に保証されており、犯罪発生率も極めて低い。
本編開始時の約二十年前に熾烈な自治権闘争を経て日本本国より自治独立を勝ち取り、現在は一国二制度と言う形を取っている。自治の代償として「エネルギー資源の自己調達の永久放棄」を宣言しており、エネルギー供給は日本本国に握られている。
しかし自治政府は本国政府により枷を嵌められているものの、自治総督は天皇による親任官として強力な権威を有しており、彼女の政治手腕もあって本国に対して一定の発言権を持つ。
性の自然回帰派(セックス・ナチュラリスト)
妖精人権擁護派(ポスト・ヒューマニスト)
自警団(イエロー)
赤色機関(Anti-Cyan)
所属は日本本国。本来自治憲章によって日本本国の警察権力は強い制約を受けるのだが、人工知性、つまりは人工妖精の人間に対する反乱を防ぐ目的においてのみ圧倒的強権を振るう。
“種のアポトーシス”の感染を予防するために常に防弾生物化学防護服を着用しているため、区民からは「三ツ目芋虫」の蔑称を受ける。
機関拳銃や対人八脚装甲車など、強力な武装を有する。
傘持ち(アンブレラ)
既刊一覧
- スワロウテイル人工少女販売処 早川書房(ハヤカワ文庫JA) 2010年、ISBN 978-4150310011
- スワロウテイル/幼形成熟の終わり 早川書房(ハヤカワ文庫JA) 2011年、ISBN 978-4150310462
- スワロウテイル序章/人工処女受胎 早川書房(ハヤカワ文庫JA) 2012年、ISBN 978-4150310820
- スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの 早川書房(ハヤカワ文庫JA) 2013年、ISBN 978-4150311223