ダレン・シャン (小説)
以下はWikipediaより引用
要約
『ダレン・シャン』 (The Saga of Darren Shan) シリーズは、同名の作家ダレン・シャン著の児童向けのファンタジー小説。全12巻(外伝を含むと全13巻)。
あらすじ
ひょんなことから「奇怪なサーカス」シルク・ド・フリークのチケットを手に入れた、蜘蛛好きという他には平凡な少年ダレン・シャンは、深夜に家を抜け出し親友のスティーブと観に行ったサーカスで、毒グモマダム・オクタを操る正体不明のバンパイア・ラーテン・クレプスリーと出会う。自分のせいでマダム・オクタに噛まれたスティーブの命を助ける為、ダレンはラーテン・クレプスリーと恐ろしい取引をすることになる。そして、ダレンの運命の歯車は大きく狂っていく。
3巻ごとにひと区切りの構成になっている。 1巻〜3巻がシルク・ド・フリーク三部作、4巻〜6巻がバンパイア・マウンテン三部作、7巻〜9巻がハンター三部作、10巻〜12巻がディスティニー三部作と呼ばれている。
登場人物
主要登場人物
ダレン・シャン(Darren Shan)
物語の主人公。本作は全て彼からの視点で描かれる。好奇心旺盛でクモとサッカーが好きな普通の少年であったが、友人であるスティーブ・レナードと連れ立って奇怪なサーカス、シルク・ド・フリークを観に行った際、団員のクレプスリーの操る毒蜘蛛マダム・オクタに魅了されて盗み出してしまった。しかしマダム・オクタにスティーブが噛まれて意識不明になるという事故が起こり、スティーブを救うためにクレプスリーと取引をし、半バンパイア(半分人間)となった。その後、純化作用により徐々に本物のバンパイアに近づいていく。
当初は人間である自分を捨てきれず、完全なバンパイアになることを拒み人の血を飲むことに激しく抵抗したが、衰弱死寸前に友人サム・グレストの血を飲み克服。その後は殺人鬼マーロックを倒したり、仲間のバンパイアの裏切りを暴き阻止する等目覚ましく成長し、遂にバンパイアの最高位であるバンパイア元帥にまで昇格する。就任当初はバンパニーズとの争い「傷あるものの戦」を話し合いで平和的に解決できるよう望んでいたが、抗争が長引くにつれて戦いも止む無しと徐々に好戦的な性格になっていった。
心優しく勇敢で頭も切れるが、バンパイア一族のためには時に非情な一面も垣間見せる。また、やや無鉄砲な所もある。蜘蛛や竜をテレパシーで操れる不思議な能力を持つ。だが、肉体の成長の遅さと人間社会から離れて生活している影響で大人になった同年代(デビ―達)と比べて精神的な発達が遅れている一面を持っている。
バンパイアとバンパニーズの戦争である「傷ある者の戦」に、大王ハンターとして参加する。元恋人デビー・ヘムロックと警察官のアリス・バージェス、フリークのメンバーを巻き込み、バンパニーズ大王や宿敵スティーブを倒すため戦いを続ける。クレスプリーの死後ハーキャットが自らの正体を探す旅に同行し、そこで未来の地球では人間は消え去り地獄のような状態になっていること、それは闇の帝王によって引き起こされること、更に闇の帝王は自分かスティーブのどちらかであることを知る。帰還後は純化作用に苦しめられ、さらに妹・アニーがわずか16歳でシングルマザーになったこと、アニーの子である甥・ダリウスの父親がスティーブであることも重ねて知り、ショックを受ける。
実はデズモンド・タイニーが、エバンナとミスター・トールの後に作った「2人の子供」の片割れ。前述の蜘蛛や竜を操る能力も引き継いだタイニーの力による。タイニーの企みの手駒として生み出されたことを知って憤るが、最後はタイニーの思惑に反してスティーブと相討ちに持ち込む。その後、エバンナによって精霊の湖から救われ、リトル・ピープルとして作り直されて「初めてシルク・ド・フリークを観に行った夜」に戻される。なお、日記を書いていた。自身の歴史を修正することに成功し、消滅した。
漫画版ではスティーブも救済することに成功している。
ラーテン・クレプスリー(Larten Crepsley)
バンパイア。シルク・ド・フリークにも所属。無垢な少年であったダレンを闇の世界に引き込んだ張本人。後述する工場の工場長により拷問の末に殺害された元友人の名前である、「バー・ホーストン」とも名乗っている。マダム・オクタに噛まれたスティーブを助けようとするダレンに、解毒剤が欲しければ自分の手下となるよう持ちかけ、ダレンに自分の血液を流し込み半バンパイアにした。
ダレンからは当初命を狙われるほどに嫌われていたが、クレプスリーが血を飲もうとしないダレンのことを真剣に心配し、救おうとする気持ちをダレンが汲み取り徐々に信頼関係が築かれ、やがて師匠・友人としてダレンになくてはならない存在となっていく。クレプスリーも初めはダレンのことを未熟者と見做していたが、最後には「ダレンこそ本物のバンパイア」と発言するほど信用するようになった。それ故、彼の死に際してダレンは絶望し戦の放棄まで考えた。
生真面目な性格でバンパイアとしての信頼は厚い。やや頑固で冗談の通じないところもありダレンや他のバンパイアにからかわれることもしばしばだが、逆にダレンをからかったりガブナーのトランクスを見て爆笑するなどひょうきんな一面もある。バンパイア元帥候補だったが突然辞退してしまったという過去を持つ。ガブナーはその理由を「戦いばかりの日々に嫌気が差したのでは」と推察しているが、真相は不明。
背が高く、髪はオレンジで一握りしかなく、(バンパイアになる前に働いていた工場長により行う仕事ごとに割り振られ、髪の色で識別する意味がある)頬に傷がある。この傷は、その昔酔っぱらった時に綺麗な女性に変身したエバンナにキスをしようとし引っかかれて付いたもの。当時の自分を恥じており、通常のバンパイアは自分の身体にある傷を誇りに思い自慢するが、クレプスリーは他者に聞かれたら言葉を濁している。堅苦しい口調で話す(師匠のシーバー・ナイル譲り)。自分のことを「我が輩」と呼ぶ(日本語版のみ。当然原作では一人称は‘I’しかない)。かつて「バー・ホーストン」と名乗り、人間と恋をしたこともあった。なお、エラ・セイルズと夫婦同然の暮らしをしていたこともあった。まだ子供だったダレンを半パンパイアとしたことには涙を流して後悔していた。
大王ハンターの一人としてダレン、バンチャと共にバンパニーズとの戦いに参加。報復の間でスティーブ、ガネン、バンパニーズ大王と戦い、見事大王と名乗る者を殺すが、直後にスティーブに燃えさかる炎に包まれた杭の並んだ穴に突き落とされ、身体を杭で串刺しにされた上に炎で焼かれ死亡すると言う壮絶な最期を遂げた。この時、スティーブを道連れにしようとするものの、ガネンに取引(スティーブを見逃し自分だけが死ねば、仲間に手を出さないというもの)を持ちかけられ断念した。しかし、クレプスリーが殺したのは、影武者のバンパニーズ大王であったため、結局彼の死は無駄死にという結末となった。
ハーキャット・マルズ(Harkat Mulds)
リトル・ピープルの一人。リトル・ピープルでは珍しく喋る事が出来る(彼が喋る前はリトル・ピープルは喋ることもできず知能もないと思われていた)。ダレンの力量の試練の最中に彼を助け、以降ダレンの親友となる。ダレンを深く信用しており、ダレンが危険な目に合う時は常に一緒にいさせてほしいと頼むほど。訓練によりゆったりとだがかなり流暢に話せるようになったが、ミスター・タイニーの前ではぎこちない話し方に戻ってしまう。左足を引きずっていたため、喋る前はダレンとエブラに「レフティ」と呼ばれていた。穏やかな性格だが戦闘では斧を使いこなしバンパニーズやバンペットを次々と倒していく。
クレプスリーの死後竜に襲われる謎の夢に苦しむようになり、ミスター・タイニーに言われダレンと共に異世界で自らの正体を探る旅に出る。そこで自分が生前一族を裏切ったバンパイア、カーダ・スモルトであったことを知った。
リトル・ピープルとなった後もバンパイアとバンパニーズの和解を望む気持ちは変わらず、傷あるものの戦のあとはバンパイアとバンパニーズの和解に尽力する。
ハーキャット・マルズという名前は、「Kurda Smahlt」のアナグラム。
スティーブ・レナード(Steve Leonard)
半バンパニーズで本作最大の敵。通称スティーブ・レパード(Steve Leopard。レパードはヒョウの意)。父親を知らず母親とも不仲。オカルトを好み、多少乱暴な部分はあるが、かつてはダレンの一番の親友だった。『週刊少年サンデー』版では、銀髪に翠眼で、長身痩躯な容姿をしている。闇で生きるバンパイアに憧れており、シルク・ド・フリークに行った際クレプスリーの正体を見破り、手下にしてもらうよう頼むが、「血が悪い」と激しく拒絶される。この時、クレプスリーに「悪魔」と罵られたことが、彼の心に大きな傷を残し、後の人生を狂わせることとなる。マダム・オクタに噛まれて生死の境をさまようが、ダレンがクレプスリーと取引したことで一命を取り留めた。しかし、ダレンが自分を騙してバンパイアの座を横取りしたと思い込み、ダレンとクレプスリーに激しい憎悪を抱くようになる。その復讐の誓いに、ダレンの目の前で左手のひらに小さな十字架を刻んだ。
ダレンの窮地を助ける形で再会し、バンパニーズハンターを騙り「傷ある者の戦」に参加するダレンに協力する振りをするが、戦いの最中にダレンとクレプスリーへの復讐のため半バンパニーズになったことを明かした。更に報復の間でクレプスリーを殺害した後、自身こそが真のバンパニーズ大王であるとダレンに明かした。
頭脳明晰かつ知略的であるが、性格は極悪非道かつ自己中心的で、少しでも彼の本性を知る者なら誰でも恐れ、また憎んでいる。また、ダレンに騙されたと思い込んでいる影響で極度の人間不信である。ダレンを苦しめるためなら人殺しも全く厭わず、クレプスリーや自分の旧友でもあるトミー・ジョーンズを殺害し、まだ8歳のシャンカスさえも殺害した。シャンカスを殺害したときなど、稀に動揺を見せることもあるが、自らの残虐行為は「全てダレンの裏切りが原因」とダレンに責任を負わせる形で自分勝手に正当化している。
散々ダレンを弄んだ末ダレンとの最後の決戦に臨むが、すぐに止めを刺さなかったことが仇になり敗北する。ダレンとの戦闘後のタイニーの話から、ダレン同様スティーブもタイニーに作られた子供であることが発覚する。タイニーに全ての真相を聞かされ、全てはタイニーの計略であったことを知り、ダレンを憎む理由を見失い自らの残虐行為を省みる。最期はダレンの挑発に乗って相討ちに持ち込み、ダレンと共に川に落ちてなおダレンを殺そうとするがまもなく力尽きた。その後は精霊の湖に、エバンナに見放される形で永遠に閉じ込められた。
漫画版では最終決戦時のダレンの挑発の意図に気付いていた他、ダレンの過去改変により少年時代のスティーブも救済されている。
アニーの息子ダリウスの実父であり、彼女を妊娠させたのも復讐のためではないかとダレンは推測している。
バンパイア
他のバンパイアから血を注ぎ込まれた人間はバンパイアになる。作中では、手の指先につけた小さな傷を押し付けて血を流し込む方法が用いられる。この傷は時間が経っても消えず、バンパイアの証の一つともなっている。
バンパイア元帥
パリス・スカイル(Paris Skyle)
アロー(Arrow)
バンチャ・マーチ(Vancha March)
バンパイア元帥の一人。ダレンがバンパイア・マウンテンに初めて来た頃にはまだ不在だった。手裏剣を使う野性味あふれる戦士で、戦闘の時は主に素手か手裏剣で戦う。大王ハンターの一人。
かつては半バンパニーズだったが、その生き方に耐えられなくなり、バンパニーズ一族とは以後一切関わらない事を条件に離脱。行く当てのなかった頃、パリスに出会い、血の交換をして半バンパイアになり、姓も変えた。自分のことを女性にモテると思っている。自分達バンパイアが太陽の光に弱いのはタイニーの仕業だと思っており、太陽を『タイニーの手下』と呼んで100年近く「戦い(上半身裸で太陽光を浴びる)」を挑んでいるが、成果は上がっていない。自然と共に生きることに強いこだわりを持ち、自分で倒した獣の皮で作った服しか着ず、火を通した肉は口にせず、飲み物は血と牛乳と水しか飲まない。
傷あるものの戦の後はハーキャットとともに和解に尽力する。
バンパイア将軍
ガブナー・パール(Gavner Purl)
カーダ・スモルト(Kurda Smahlt)
バンパイア将軍の一人。唯一バンパニーズと仲が良く、バンパニーズとの和解を目指している。争う事を嫌い、何事も話し合いで解決しようとする平和主義者で、頭もよく切れる。ダレンのことを気遣い、力量の試練の際もダレンへ惜しみなく協力した。そのことから、ダレンもカーダの事を兄のように想い慕っていた。頬にバンパニーズにつけられた細い3本の傷跡がある。バンパイア・マウンテン内部の地図を作っている。上記の通り、基本的に争い事を好まない性格ではあるが、娯楽の間でエラに勝負を持ちかけられた際に、勝利を収めたことがあるため、見かけによらず戦闘能力は高いと見受けられる。
史上最年少でのバンパイア元帥就任を間近に控えていたが、バンパニーズ大王の誕生を知ってバンパイア一族の存続を断念。起こり得る戦争で仲間が皆殺しにされる前にバンパイア一族をバンパニーズに吸収させようと考え、一族を裏切って非戦派のバンパニーズをバンパイア・マウンテンに入れた。また、力量の試練に失敗したダレンをバンパイア・マウンテンの外へ逃がそうとした。その際、バンパニーズの侵入を知ってしまったガブナーを口封じに殺害するも、叙任式典の最中にダレンに裏切りを暴かれ、仲間のバンパニーズも皆殺しにされた挙げ句、自身も裏切り者として処刑されるという最期を迎えた。尤もカーダの話によれば、計画が成功したとしてもバンパイア以上に裏切り者を蔑むバンパニーズの手で処刑されただろうとのこと。結果はどうあれ、一族を救うために自身の命も顧みず純粋に己の信念と正義を貫き通した姿は、ダレンに大きな影響を与えた。
死後、タイニーと取引をし、彼の亡骸はリトル・ピープルのハーキャット・マルズに作り変えられた。その後ダレンのもとに送り込まれ、死してなおダレンの窮地を救ってきた。
その他のバンパイア
バネズ・ブレーン(Vanez Blane)
シーバー・ナイル(Seba Nile)
バンパニーズ
ガネン・ハースト(Gannen Harst)
マーロック(Murlough)
第3巻でダレン達を襲ったバンパニーズ。必要以上に人間を殺害するなど気が狂っているが、バンパニーズの掟を頑なに守る一面もある。クレプスリーの故郷の町の地下水道に潜伏して殺戮を行っていたため彼に目を付けられ、対決することになる。自分を「頭が良い」と思っており、よく自慢する。独特の詩を詠むようなしゃべり方をする(後にR・Vも似たようなしゃべり方をするようになり、「まるでマーロックが蘇った様」とクレプスリーに評された)。エブラを拉致しダレンの彼女となったデビーを殺害しようとするが、策略に嵌りクレプスリーに致命傷を負わされ、最期はダレンに己の敗北を認め息絶えた。その後、亡骸は潜伏していた地下水道に葬られた。
レジー・ベジー(Reggie Veggie)
半バンパニーズで、通称R.V.。2巻で人間として初登場。当初は自然を愛する気さくな大男で、サーカス好きでありダレン達にも友好的だったがやや行き過ぎた動物愛護精神の持ち主だった。そのためシルク・ド・フリークによってウルフマンが檻に縛り付けられていることに怒り、ダレンが止めるのも聞かずに解き放ってしまうが、結果としてウルフマンに両腕を食いちぎられてしまった。このことを契機に狂ってしまい、(スティーブと同様勘違いであり完全な逆恨みだが)ダレンを憎むようになる。
ダレンの前から姿を消した後長らく行方不明となっていたが、ダレンとバンパイア一族に復讐するため半バンパニーズとなり8巻で再登場した。この時はかつての平和的な面はすっかり消え失せ、クレプスリーの故郷で大量殺人を犯していた。9巻ではダレンのガールフレンドのデビーを誘拐して拷問し、11巻ではスティーブの指示を受けモーガンと共にサッカー場に乱入、ダレンの旧友のトミー・ジョーンズを含め大勢の人間を殺傷した。ダレンへの復讐に執着し道を外れた点でスティーブと共通項があり、クレプスリーは今際の際に「スティーブやR・Vのように復讐に捉われて生きるな」とダレンに忠告した。
事件で両腕を失ったため、現在は両腕にスティーブに作ってもらったフックをつけているが、このフックを毟り取られると本当の手を失ったかのように絶叫する。半バンパニーズになって日が浅いころは少しでも本物のバンパニーズに近づこうと、赤いコンタクトレンズをはめ肌を紫色に塗っていた。「ベジー」というあだ名は彼がベジタリアンだったことに由来し、学生時代につけられたもので、彼の本名は不明。腕を失ってからは肉も食べるようになり、「V」の意味もバンパニーズのVだと名乗っていた。
前述のようにバンパニーズとなった後は平然と殺人を繰り返していたが、スティーブに子供であるシャンカスを殺すよう指示された時には殺すのを躊躇し(『週刊少年サンデー』版では、その際シャンカスに「見かけほど悪い人ではない」と言われて戸惑った表情を見せている)、シルク・ド・フリークとの戦いでは、コーマック・リムズと対峙した際に「戦いたくない」と吐露し、自身の運命と過去を嘆くなど悪に徹しきれていない一面が描かれている。物語終盤、スティーブの非道ぶりに嫌気が差し彼の殺害を図り、ガネンを気絶させた(『週刊少年サンデー』版では、ガネンの背中をフックで切り裂いた)ものの、スティーブに返り討ちにされて致命傷を負い、両腕を取り戻した幻想に笑みを浮かべながら死亡する。
モーガン・ジェームズ(Morgan James)
シルク・ド・フリーク
ハイバーニアス・トール(Hibernius Tall)
通称、ミスター・トール。その名のとおり、とても背の高いシルク・ド・フリークの団長。異常な見た目や性質のせいで他に行き場のないフリーク達のために居場所を提供しており、シルク・ド・フリークのメンバーから非常に尊敬されている。目は真っ黒で蛙のように嗄れた太い声。歯は真っ黒であちこち欠け、舌は黄色で汚らしく、息も臭い。多くのバンパイアと親交があり、特にクレプスリーとは旧知の仲で親友である。ぶっきらぼうにも見える性格だが心の中ではダレンのことを気遣っている。未来予知をはじめとした様々な能力を持つが、その能力ゆえ歴史を改竄しない為に傷あるものの戦ではバンパイア側に付かず、中立の立場を保った。
物語終盤、バンパニーズにシルク・ド・フリークを襲撃された際、メンバーであるエブラの息子が誘拐されたことを期に中立を放棄し戦いに参加する。モーガンの撃った銃弾からメンバーを庇い、ダレン達に看取られながら息を引き取った。今際の際に、エバンナの弟(=タイニーの息子)であることが明かされた。リトル・ピープルとして過去に戻ったダレンから、未来(バンパイアとしてのダレンの生前の経験)の日記を受け取り、歴史が変わった後の(バンパイアにならない)ダレンに託すことを約束する。
エブラ・フォン(Evra Von)
シルク・ド・フリークの一員。蛇少年。ダレンとほぼ同い年でありダレンが半バンパイアになって初めての友達。蛇のように鱗を持ち、脱皮もして舌も長い。緑、金、黄、青の鱗があり、手と足に妙な水かきを持つ。目を開けて寝る(爬虫類には瞼は無い)。両親は普通の人間で、エブラを見て腰を抜かし孤児院に捨ててしまった。かつてはあくどいサーカスで見世物にされていたが、ミスター・トールがそのオーナーを殺す形で助け出され、フリークの一員となった。言語に強くトラスカの言葉もある程度わかる。劇中で成長してマーラと(本人曰く「大恋愛の末に」)結婚、3児の父になる。
ダレンの親友であるがそのことが仇となりマーロックに拉致され拷問されたり、大人になってからも息子を誘拐された上に殺害されるなど様々な悲劇に見舞われることとなる。しかし、それでもなおダレンを親友として信頼し続けた。最後の決戦ではスティーブを復讐の為殺そうとするが、バンパイアの勝利が失われることを考え寸前で思い止まった。
シャンカス・フォン(Shancus Von)
ウルフマン
トラスカ(Truska)
コーマック・リムズ
ラムス・ツーベリーズ
ブラッドリー・ストレッチ
タイニ一家
デズモント・タイニー(Desmond Tiny)
通称、ミスター・タイニー。本人は「デス・タイニー(destiny:運命)」と呼んで欲しいらしい。
本作における黒幕的存在で、物語の鍵を握る重要人物。バンパイア一族とバンパニーズ一族に関する様々な予言を行い、双方にバンパニーズ大王及び大王ハンターの出現とその後の傷あるものの戦の発生を伝えた。幼い子供の血は美味いと発言するなど、争いと暴力を好む残忍な性格であり、ダレンは彼のことを初対面で「悪意の塊」と感じた。時間を移動する能力や一瞬で人を殺す能力など様々な人間離れした能力を持ち、その能力を使い他人や世界を影で操り常に争いが起こるよう仕向け、それを見物することを楽しみとする。だが完全な神というわけではなく、更に古い掟(エバンナ曰くあえていうのなら「天」)に縛られている。
いつも心臓の形をした懐中時計を持ち歩いており、寿命はない。芸術品や歴史的価値のある物を集めているが、文学には全く興味がない。非常に残忍な人物ではあるが、まれに優しく微笑むなど人間的な表情を浮かべるときがある。また、息子のミスター・トールが死んだときは彼なりに悲しみを表していた。
20世紀後半頃から世界が平和に向かっていると感じ、それを阻止し世界を自分が望むままの暴力と残忍さで満たすため、自分の傀儡である「闇の帝王」の誕生を画策する。その候補となったのがダレンとスティーブであった。それぞれの母親に怪しまれないタイミングで彼らを身篭らせ、2人がバンパイアとバンパニーズそれぞれのリーダーになるように仕向けた。スティーブがダレンを逆恨みしたことも、クレプスリーがダレンを家族から引き離して手下にしたのも、すべてタイニーが仕組んだ通りの展開。ダレンとスティーブを戦わせ、勝ち残った方を「闇の帝王」として共に世界を操ろうと企むが、ダレンがスティーブと相討ちに持ち込んだため阻止される。ダレンとスティーブを精霊の湖に閉じ込めるが、エバンナの頼みでダレンを助けることを許可し、リトル・ピープルに作り変えて過去に送った。
レディー・エバンナ
未来予知をはじめとした色々な能力を持つ「魔女」。本人はその呼称を非常に嫌い、あくまでも「魔術使い」であるらしい。タイニーの娘でミスター・トールの姉。
普段は醜く(本人曰く、初めてなった人間の姿)、ぐるぐる巻きにしたロープを衣服として身につけているが、姿は好きに変えられる。バンパイア又はバンパニーズの子どもを産むことができ、その子供はエバンナの血を受け継いでいるため、様々な能力があるが、本人は産みたがらない。趣味で飼育する毒蛙にすみかを守らせている。
飄々とした性格で 、未来を変えぬようにするため傷あるものの戦ではバンパイア側にもバンパニーズ側にもつかないように努めていた(だが間接的にバンパイアとダレンを応援している節は見られる)。人の死も予知できるため親しい人物の死にも動揺することはない。だがダレンが勇気をもって運命に立ち向かったのを目の当たりにして考えを改め、自分も運命に立ち向かうことを決意。ダレンとスティーブの死後にタイニーと取引をして「エバンナが子供を産むかわりに、タイニーはダレンをリトル・ピープルとして蘇らせて過去に送る」こととした。子供の父親をバンパイアにするかバンパニーズにするかはエバンナに託されたため、子供はそれぞれの血を引く二卵性双生児になり、エバンナの子供を新たな旗頭として再び戦争を起こさせようとするタイニーの目論見は破られる。さらに、タイニーが文学に興味がないことを利用し、過去へ向かうダレンにダレンの日記を託す。
リトル・ピープル
デズモント・タイニーの部下。青いローブを着た、雑食の小人達。シルク・ド・フリークで働いていることもあり、たいてい4人から6人シルク・ド・フリークにいる。
継ぎの当たった顔で、緑色の瞳を持ち、耳は皮膚の下に埋まっており、多くの者は会話が不可能。鼻や味覚はないので、腐った肉や泥を食べようが関係ないらしい。彼らにとって空気(酸素)は毒であり、特殊な薬品を染み込ませたマスクがないと10時間程で死んでしまう。バンパイアほどではないが、身体能力は高い。
デズモンド曰くエルフやレプラコーンというのは、何も知らずにリトル・ピープルを目撃した人間が勝手に名前を付けたもの。元々は死んだ者の魂で、ミスター・タイニーとの取引によりリトル・ピープルとして生き返ったものである。
その他の人物
サム・グレスト(Sam Grest)
シルク・ド・フリークに憧れる少年。大好物はオニオンピクルスで、小さいプラスチックの瓶に詰めて持ち歩いている。人懐っこく博識で、小難しい言葉をよく使う。家では犬や猫などの動物を沢山飼っている。半バンパイアになった後のダレンの2番目の友人となるが、シルク・ド・フリークに付いていこうと隠れていたところをウルフマンに襲撃され、ほとんどの内臓を食い荒らされ死亡する。その際完全に死ぬ前にダレンが血を飲み干したため、魂の一部がダレンの中に残った。『週刊少年サンデー』版では原作と違い死の間際まで意識がはっきりしており、自らダレンに自身の血を飲み干すことを頼み、彼に感謝の言葉と「ダレンに会えてよかった」と言い遺して、静かに息を引き取った。
スタンリー・コリンズ
シャン家
ダーモット・シャン
アニー・シャン(Annie Shan)
ダリウス・シャン
バンピライツ
デビー・ヘムロック(Debbie Hemloc)
ダレンが恋心を抱く少女。3巻でクレプスリーの生まれ故郷にやってきたダレンと知り合い、親交を深めるがそれをマーロックに利用され命を狙われる。のちに成長し国語の教師となり、8巻でバンパニーズ側の策略で転入してきたダレンと再会する。彼女もダレンに好意を抱くようになるが、対外的には「教師と生徒」であることや、ダレン(の外見と精神)がまだ成長しきっていないことを理由に、恋仲になることは躊躇している。しかしまたしても2人の関係に目を付けたバンパニーズに拉致され痛めつけられ、ダレン達との取引に利用された。少々高飛車だが見た目とは裏腹に勇敢な性格であり、クレプスリーも感心するほどの精神力の持ち主。物語後半でアリスと共にバンピライツを結成し「闇のレディー」として傷ある者の戦に身を投じる。
アリス・バージェス(Alice Burgess)
ダレンの故郷
トミー・ジョーンズ
クレプスリーの故郷
マーラーズ校
リチャード・モントローズ
竜の世界(異世界、未来の世界)
スピッツ・エイブラムズ(Spits Abrams)
異世界で暮らしている元船乗り。1930年代に海賊をしていたが、船が難破しそこをミスター・タイニーに助けられ異世界で暮らすこととなる。タイニーに「その内やって来る2人に付いていけば夢が叶う」と言われ、数年後にやって来たダレンとハーキャットに同行し精霊の湖まで旅する。酒が大好きで特にウイスキーに目が無い。嘘をつくときにせわしなく目を左右に動かす癖がある。異世界ではジャガイモを栽培してポティーンというかなり強い酒を造っていた。ハーキャットの正体を探る旅で重要な役割を果たすが、粗暴な性格でハーキャットとは意見が合わないことが多かった。
海賊時代にはコックをしており人間の肉を調理していたが、仲間に見咎められ海賊から厄介者扱いされるようになる(『週刊少年サンデー』版では人肉嗜食という設定に問題があったためか、自身の快楽のために人を殺害していたに変更されている)。夢というのも元の時代に戻ることなどではなく精霊の湖から精霊を引き上げてその肉を食べることであり、それを阻止しようとするダレンやハーキャットと戦うことになる。最終的に竜に焼かれてそのまま精霊の湖に飛び込み死亡した。
クラシュカ
グロテスク
クモ
マダム・オクタ(Madam octa)
バー・シャンの蜘蛛
世界観
作品世界においては、「特定人が産まれてこないように過去を変えても、他の人物が同じ役割を果たす」と言われている(ヒトラーが引き合いに出されている)。ミスター・タイニーを超える存在が居て、歴史(運命)を変えないようにしているからである。本作において主人公が作者と同じ姓名である理由も、これに関連したものである。
ダレンが過去に戻ったのは、「少年時代のダレンがバンパイアになることを防ぎ、ひいてはダレンとスティーブが傷ある者の戦において対立の旗頭にされることを防ぐ」ためであるが、これだけでは先述の通り、他の誰かが2人の“役割”を果たすために人生を狂わされてしまう。そこで(バンパイアにならず)作家となったダレンが、ミスター・トールを介して託された自身の日記をもとに物語を書くことで、文学嫌いのタイニーの盲点を突く形でその目論見を世間に公表し、戦いの当事者であるバンパイアやバンパニーズに注意を促そうとしたのである。
用語
バンパイア関連
バンパイア
半バンパイア
バンパイア将軍
バンパイア元帥
半バンパイア
バンパイア将軍
バンパイア元帥
純化作用
バンパイア・マウンテン
血の石
力量の試練
大王ハンター
バンピライツ
楽園
バンパニーズ関連
バンパニーズ
本来はバンパイアと同じように高潔な種族であり、血を飲む時人間を死なせはするがそれ以外に無益な殺生はしなかった。しかしスティーブが大王となり傷あるものの戦が始まってからは様相が変わり、バンパイア一族とその仲間に対して卑劣な謀略を巡らせるようになった。人間界にも積極的に接触し仲間を増やす一方で、血を取り入れる目的以外で大量の人間を殺害するようになった。かつてなら仲間に引き入れなかった狂人のR・Vや粗暴なバンペット達が先陣を切って戦うようになったが、これも時代の変化についていくために、という大王の指示である。
半バンパニーズ
バンパニーズ大王
炎の棺
バンペット
その他の用語
シルク・ド・フリーク
環境戦士
傷ある者の戦
竜の世界
精霊の湖
闇の帝王
刊行情報
- ダレン・シャンI -奇怪なサーカス- ISBN 4-09-290301-4
- ダレン・シャンII -若きバンパイア- ISBN 4-09-290302-2
- ダレン・シャンIII -バンパイア・クリスマス- ISBN 4-09-290303-0
- ダレン・シャンIV -バンパイア・マウンテン- ISBN 4-09-290304-9
- ダレン・シャンV -バンパイアの試練- ISBN 4-09-290305-7
- ダレン・シャンVI -バンパイアの運命- ISBN 4-09-290306-5
- ダレン・シャンVII -黄昏のハンター- ISBN 4-09-290307-3
- ダレン・シャンVIII -真夜中の同志- ISBN 4-09-290308-1
- ダレン・シャンIX -夜明けの覇者- ISBN 4-09-290309-X
- ダレン・シャンX -精霊の湖- ISBN 4-09-290310-3
- ダレン・シャンXI -闇の帝王- ISBN 4-09-290311-1
- ダレン・シャンXII -運命の息子- ISBN 4-09-290312-X
- ダレンシャン外伝 ISBN 4-09-290319-7
映画版
2000年にワーナー・ブラザースが映画化権を取得したが、2004年に放棄された。その後、2005年1月14日にユニバーサル・スタジオが映画化権を購入し、2008年2月より撮影を開始。2009年10月23日よりアメリカなど世界数カ国で公開された。日本での公開は2010年3月19日。
ストーリーは中盤まで第1巻に沿ったものだが、ダレンとスティーブの当初の年齢が16歳(1993年~2009年)、バンパニーズの皮膚が変色していない、原作にいないキャラクターが登場するなど、原作との相違点やオリジナル要素がかなり多い。
この映画は物語の第一章目だが、興行成績も全く奮わず、原作ファンの評判も悪いため、次回作の制作は白紙状態である。
日本語吹替版では、イメージソングとして倖田來未の「Can We Go Back」が使用されている。
スタッフ
- 脚本・製作総指揮:ブライアン・ヘルゲランド
- 製作:ローレン・シュラー=ドナー
- 監督:ポール・ワイツ
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
---|---|---|
ダレン・シャン | クリス・マッソグリア | 山本裕典 |
スティーブ・レナード | ジョシュ・ハッチャーソン | 浪川大輔 |
ラーテン・クレプスリー | ジョン・C・ライリー | 内田直哉 |
デスモンド・タイニー | マイケル・セルベリス | 銀河万丈 |
ミスター・トール | 渡辺謙 | |
トラスカ | サルマ・ハエック | LiLiCo |
エブラ・フォン | パトリック・フュジット | 高橋広樹 |
ウルフマン | トム・ウッドラフ・ジュニア | |
コーマック・リムズ | ジェーン・クラコフスキー | |
アレクサンダー・リブズ | オーランド・ジョーンズ | |
ラムス・ツーベリーズ | フランキー・フェイソン | |
ガーサ・ティース | クリステン・スカール | |
ガブナー・パール | ウィレム・デフォー | 山路和弘 |
マーロック | レイ・スティーヴンソン | 藤真秀 |
アニー・シャン | モーガン・セイラー | |
レベッカ | ジェシカ・カールソン | 新野美知 |
漫画版
新井隆広作画で、小学館『週刊少年サンデー』2006年36・37合併号から2009年10号まで連載された。単行本は全12巻。単行本の巻末には新井隆広による製作秘話が載せられている。なお、外伝のみコミカライズされていない。原作にある残酷な描写・過激なセリフなどは修正あるいは表現を和らげている。
2009年夏には英訳され、アメリカやイギリスなどでも発売されている。
単行本
- ダレン・シャン I-奇怪なサーカス-:ISBN 4-09-120536-4
- ダレン・シャン II-若きバンパイア-:ISBN 978-4-09-120537-7
- ダレン・シャン III-バンパイア・クリスマス-:ISBN 978-4-09-120538-4
- ダレン・シャン IV-バンパイア・マウンテン-:ISBN 978-4-09-120539-1
- ダレン・シャン V-バンパイアの試練-:ISBN 978-4-09-120540-7
- ダレン・シャン VI-バンパイアの運命-:ISBN 978-4-09-121228-3
- ダレン・シャン VII-黄昏のハンター-:ISBN 978-4-09-121256-6
- ダレン・シャン VIII-真夜中の同志-:ISBN 978-4-09-121257-3
- ダレン・シャン IX-夜明けの覇者-:ISBN 978-4-09-121258-0
- ダレン・シャン X-精霊の湖-:ISBN 978-4-09-121259-7
- ダレン・シャン XI-闇の帝王-:ISBN 978-4-09-121260-3
- ダレン・シャン XII-運命の息子-:ISBN 978-4-09-121329-7
原作との相違点
- 一巻でチラシを受けとった人
- デビーがバンパニーズ側の策略で転入してきたダレンと再会した時の反応。
- クレプスリーの髪型。
- スピッツが人の肉を切り刻んで調理していたという部分が、自身の快楽のために人を殺していたに変更されている。
- エバンナがスティーブを蘇生させなかった理由。
- ダレンが自身の歴史を修正した後の行動。
- ハーキャットがたまに目を細める(原作ではまぶたがない)
- ダレンとスティーブがフリットを習得している。
- スティーブも純化作用を起こしている。
- 9巻でクレプスリーが怪我をした理由