チ。-地球の運動について-
漫画
作者:魚豊,
出版社:小学館,
掲載誌:ビッグコミックスピリッツ,
レーベル:ビッグコミックス,
発表期間:2020年9月14日 - 2022年4月18日,
巻数:全8巻,
話数:全62話,
以下はWikipediaより引用
要約
『チ。-地球の運動について-』(チ ちきゅうのうんどうについて)は、魚豊による日本の青年漫画。『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2020年42・43合併号から2022年20号まで連載された。
「15世紀のヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描いた」フィクション作品。
2022年6月時点で、単行本の累計発行部数は250万部を突破している。
制作背景
著者の魚豊は前作『ひゃくえむ。』で青春のクラブ活動を描いたため、次は人が死亡するようなサスペンス劇に挑戦したくなったという。魚豊は次のように語っている。
中世のヨーロッパって、自然科学の知性と、暴力的なフィジカルが渾然一体と結びついています。そのアンバランスさが、現代から見たら面白く映るのではと。
天動説から地動説へ移行する、知の感覚が大きく変わる瞬間がいいんですよね。哲学と結びついて、「コペルニクス的転回」や「パラダイムシフト」って言葉が生まれるくらいの衝撃を与えました。その瞬間が面白くて、漫画にしようと決意しました。
フィクション性
現代の日本では、ガリレオ裁判などの印象が強いためか、「中世ヨーロッパでは地動説を唱える者へのキリスト教による激しい迫害・弾圧があった」と信じられていることが多いが、実際の歴史において地動説が強烈な迫害を受けたという記録は残されていない。迫害とは逆に、地動説を唱えたコペルニクスは領主司祭を務めるなど教会と密着していた。 そのため本作品は地動説が迫害される世界を描いたフィクション作品であり、登場する国名も「P王国」などとなっている。 魚豊は「この勘違いも面白く感じて、テーマにしたい! と思った」と語っており、本作で描かれる「地動説へのキリスト教による苛烈な迫害」はあくまで虚構のものとして描かれていると考えられていた。
しかし、終盤において地動説は異端だと必ずしも解釈されるものではなく、一律・一般的な迫害は存在しないと明言された上で、作品描写のような限定された場所での時の権力者の独断による異端判断など(他にガリレオを連想する計算上の仮説としてではなく唯一の真理と強硬な人間に対してもと例示)歴史となる記録には残らない形で揉み消しつつ迫害された人間が存在したことが、民衆には上述の勘違いを引き起こすに至ったという史実性と整合し得る解釈が提示された。ただし、それも3章までこの解釈に基づく作中世界もあくまでフィクションであり、匿名表記を外した一切の迫害描写がない現実世界を思わせる最終章は繋がらないパラレルワールドとの解釈も可能な作りにはなっている。
いずれにせよ、近代化によって宗教の絶対性が揺らいでいったことは事実であった。そういった時代の変わり目に、人々の価値観が変わっていく様子が描かれている。
題名
『チ。』という題名の意味は、大地(だいち)のチ、血(ち)のチ、知識(ちしき)のチの3つからなる。
また『。』(句点)をつけた意図は、魚豊の好みでもあるが(前作『ひゃくえむ。』でもつけた)、主眼は「句点は文章の終わり、停止を意味する」ことにある。魚豊は次のように述べている。
大地が停止している状態を「。」で示していて、そこに地動の線(チ)がヒュッと入ることで、止まっていたものが動く状態になる。「地球は動くのか、動かないのか」を「。」で表現しています。
さらに、『チ。』という一文字と句点のみの題名にすることで、インターネットで検索をしづらくする狙いもある。魚豊がインターネットで作品名を検索(エゴサーチ)して他者の意見から影響されることを防ぎ、さらには読者が他者による感想に触れずに自分だけの意見を持つことを志向した。
あらすじ
15世紀前半のヨーロッパの「P王国」では、「C教」という宗教が中心となっていた。地動説は、その教義に反く考え方であり、研究するだけでも拷問を受けたり、火あぶりに処せられたりしていた。その時代を生きる主人公・ラファウは、12歳で大学に入学し、神学を専攻する予定の神童であった。しかし、ある日、地動説を研究していたフベルトに出会ったことで地動説の美しさに魅入られ、命を賭けた地動説の研究が始まる。
キャッチコピーは 「命を捨てても曲げられない信念があるか?世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか?」
登場人物
第1章
ラファウ
フベルト
ポトツキ
第2章
異端者
輸送中にグラスを説得し、共に脱走。フベルトの首飾りと研究資料をオクジーに託す。
ノヴァク
元傭兵の異端審問官。家族に自分の仕事の詳細は伝えていない。
アントニ
司教の息子。教会の今後を考え、ノヴァクを敵視している。
第3章
最終章
これまでのP国やC教などイニシャル表記ではなく、ポーランド王国と明言される。作品の舞台が「地動説が迫害される世界を描いたフィクション作品」から「現実世界のポーランド」を描くものへと移行したのか、3章までの世界と最終章の世界は、地動説への迫害の有無が異なるパラレルワールドとして取り扱われているのか(前者との連続性を認めると地動説への迫害もC教すなわちキリスト教の一部の者が、ポーランド王国で過去に行ったとフィクション性が引き継がれるが、パラレルワールドならば遮断される)は濁されている。
アルベルト・ブルゼフスキ
ラファウ
評価
2021年、「マンガ大賞」第14回(2021年)にて第2位。「次にくるマンガ大賞2021」にてコミックス部門第10位。『このマンガがすごい!2022』オトコ編にて第2位。第1回『このマンガがすごい! 芸人楽屋編』にて第6位。『THE BEST MANGA 2022 このマンガを読め!』にて第6位にランクイン。
2022年、「漫道コバヤシ漫画大賞2021」ではグランプリを獲得。「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」にて第5位。「マンガ大賞」第15回(2022年)にて第5位。同年4月には第46回「講談社漫画賞」総合部門の最終候補に選出。同月には第26回手塚治虫文化賞のマンガ大賞に選ばれている。
2021年9月に単行本第5巻の発売をもって、シリーズ累計部数が100万部を突破した際は、3種類のPVが公開された。
2022年11月に理化学研究所と編集工学研究所の共同プロジェクト「科学道100冊」に選出されている。
2023年8月、第54回「星雲賞」コミック部門を受賞。
書誌情報
- 魚豊 『チ。-地球の運動について-』 小学館 〈ビッグコミックス〉、全8巻
- 2020年12月11日発売、ISBN 978-4-09-860778-5
- 2021年1月12日発売、ISBN 978-4-09-860801-0
- 2021年3月30日発売、ISBN 978-4-09-860878-2
- 2021年6月30日発売、ISBN 978-4-09-861071-6
- 2021年9月30日発売、ISBN 978-4-09-861146-1
- 2021年12月28日発売、ISBN 978-4-09-861206-2
- 2022年3月30日発売、ISBN 978-4-09-861260-4
- 2022年6月30日発売、ISBN 978-4-09-861317-5
アニメ
2022年6月にマッドハウス制作によるアニメ化が発表された。2024年放送予定。
amazarashi との往復書簡プロジェクト「共通言語」
互いに相手のために制作した新たな作品を発表し、作品を通じて会話を交わすという新しい試みとして2022年3月より往復書簡プロジェクト「共通言語」がスタート。amazarashiの楽曲「1.0」をテーマにした魚豊描き下ろしイラストとMVが製作され、同年6月には漫画「チ。」をテーマにしたamazarashi 書き下ろし楽曲として「カシオピア係留所」がリリースされた。