ドリトライ
漫画
作者:雲母坂盾,
出版社:集英社,
掲載誌:週刊少年ジャンプ,
レーベル:ジャンプ コミックス,
発表期間:2023年5月8日 - 2023年9月19日,
巻数:全2巻,
話数:全19話,
以下はWikipediaより引用
要約
『ドリトライ』は、雲母坂盾による日本の漫画作品。『週刊少年ジャンプ』にて2023年23号から同年42号まで連載された。監修は歴史学者の成田龍一が担当し、昭和時代の戦後の日本を舞台とした作品となっている。
沿革
2023年4月10日発売の『週刊少年ジャンプ』19号より開始された新連載4本の1作として告知され、その時点では本作は「戦後×ボクシング!!」と発表されていた。同年5月8日発売の23号より連載を開始。連載開始を記念して、本作のPVが公開されている。前述の新連載4本のうち、後半2作品のボイスコミックがYouTubeジャンプチャンネルにて発表され、本作は同年7月11日より公開。
あらすじ
昭和21年(1946年)4月。戦争によって身寄りを失い、戦災孤児となった少年・大神青空は、瓦礫と化した戦後の東京で食料すら満足に手に入らない中でも、妹・星と共に励まし合って生きていた。
しかしある時、星が結核を発症。妹の治療費を稼ぐため、青空は裏社会が開催する拳闘(ボクシング)大会に参加し様々な拳闘家たちと鎬を削っていく。
登場人物
声の項はボイスコミック版での声優。
大神 青空(おおかみ あおぞら)
声 - 三瓶由布子
本作の主人公で、1930年8月8日生まれ。現在の東京都新宿区の出身。作中では初登場時は14歳(終戦後は15歳)。天鳴尋常小学校卒。第二次世界大戦がはじまると軍需工場に動員され、戦闘機の部品の製作に従事した。
父・夕日は出征後に消息不明となり、母・朝美(ともみ)も東京大空襲で亡くなり、家も戦火で焼失したことで青空は戦災孤児となる。終戦後の焼け野原の中で、青空は妹の星と共に拳闘家だった父の「どんな時でも心を強く持て」という教えを胸にたくましく生き延びるが、栄養失調のため衰弱していた星が結核を発症。青空は星の治療費を稼ぐためヤクザ組織・虎威組(とらいぐみ)所属の拳闘家となり、GHQや日本の富裕層が運営する秘匿の拳闘大会「炎涛拳技會(えんとうけんぎかい)」に身を投じる。
その後、虎威組組長・優華が組を解散させてジムを開くと青空は所属ボクサーとなり世界王者を目指すも、3ノックダウン制に慣れなかった上にシライという強豪に阻まれるなどして、王者になる夢は果たせなかったが引退後は福井県の武生に居を移し、工場などを興して家族を支えた。2023年、心臓病のため永眠し葬儀では孫の大河らに見送られた。
必殺技は、父の残した本から習得したカウンター技「瀑受転巌(ばくじゅてんがん)」とその発展形である「真 瀑受転巌」。
好きな食べ物はたくあん、しょうが。
大神 星(おおかみ あかり)
声 - 結川あさき
青空の2歳年下の妹。女性ながら父・夕日ゆずりの腕っぷしの持ち主で身体も気性も兄より強かったが、終戦後は結核に倒れる。一時は余命数週と言われるまで病態が悪化したが、父との再会が叶ったことなどから心を励まされてわずかに持ち直し翌年、アメリカで臨床効果が実証された特効薬・ストレプトマイシンによって回復した。2023年時点でも大河の祖母として存命している。
優華(ゆうか) / 大神 夕華(おおかみ ゆうか)
声 - 佐藤榛夏
右目に眼帯をした和服姿のミステリアスな女性。虎威組の組長だが、薬物や女衒などの稼業には手を出さず拳闘を主なシノギにしている。青空を拳闘家としてスカウトし、盃を交わす。正体は青空の父・大神夕日の義理の妹。
黒岩 啓示(くろいわ けいじ)
声 - 日野聡
1921年生まれ。虎威組所属の拳闘家で、組の稼ぎ頭。炎涛拳技會で懸賞金100万を超える5人の強豪選手「五光」の一人。組に入る以前はテキヤをしており、戦時中は一時海軍にいたこともある。
必殺技は空手の正拳突きを応用した強力なパンチ「松刺爆撃(しょうしばくげき)」。
好きな食べ物はだんご、うめぼし。
和泉 生野(いずみ いくの)(右手粗粗男)
1930年7月12日生まれ。売春宿「夢洗(バブル)」の用心棒兼拳闘家。東京大空襲の際、妹・凛と共に防空壕に閉じ込められ、左腕を負傷していた生野は右腕のみで七日間、土を必死に掻き出して脱出したが、気づいたときには右腕が異様な太さになっていた。炎涛拳技會の拳闘家としてはまだルーキーだがデビュー以来、その太い右腕を活かした右ストレートのみで5戦5勝5KOという驚異的な戦績を叩き出し、「ウォーハンマー」とあだ名された。青空のデビュー戦の相手として対戦するも、青空に敗北し初黒星を喫した。その後は優華の計らいで妹と共に虎威組に引き取られる。
必殺技は異名にもなっている右ストレート「ウォーハンマー」と、一時的に右腕の関節を外してリーチを伸ばす「伸びるストレイト」。
好きな食べ物は豚肉。
虹村 凶作(にじむら きょうさく)
29歳。炎涛拳技會の拳闘家で戦績は30戦30KO、懸賞金は8万円。実験と称してあらゆる方法で相手を殴り弄ぶことから「狂実験の虹村」と呼ばれている。
油屋の長男として生まれる。本来であれば商人として家督を継ぐはずだったが、戦争が始まると兵として召集され終戦後に帰郷した際にはすべてを失っており、身を立てるために拳闘家となった。戦時中は青空の父・夕日と同じ分隊に所属しており、拳闘の技術を教わったことから「(夕日から)技術を全て受け継いだ正統後継者」と自称し、青空の前に立ちふさがる。
戦時中、夕日が分隊の仲間たちを拳で皆殺しにしたところを目撃してしまった虹村は、以来その恐怖から逃れるためにヒロポン中毒になっている。
青空との試合中、追い詰められた虹村は「ヒロポンを打つ」「制止しようとした審判に暴行を加える」「対戦相手に対する噛みつき、ひっかき攻撃」「椅子での凶器攻撃」など反則行為を繰り返したため、試合後、青空に「(負けたのは)心が弱いからだ」と批判された上で炎涛拳技會の運営に射殺された。
必殺技は青空と同じく「瀑受転巌」。
大神 夕日(おおかみ ゆうひ)
声 - 野澤英義
青空、星の父。元全日本ミドル級王者の拳闘家で戦時中、満洲に出征し陸軍の分隊長となる。その強さと人格から分隊内でも慕われていたがあるとき、敵軍の奇襲を受けて退却中、疲弊・負傷し動けなくなる部下たちに対し夕日は心の強さで前に進むよう励ますも、その言葉が肉体的・精神的に限界だった彼らの不満を爆発させ、一人が錯乱して軍刀を振り回したことをきっかけに、全員がパニックに陥って殺し合いを始めてしまう。夕日自身もまた冷静さを失い、その場にいた部下たちを素手でことごとく撲殺してしまった。夕日は自身が「心の強さがあれば必ず乗り越えられる」という美辞のもと、希望が見えないにもかかわらず、耐えることが美しいとして不満を封じ込め、周囲に忍耐を強要し続けたことがこのような事態を引き起こしたのだと後悔し、戦後は人との関わりを避け、下関の森の奥深くに籠っていた。
再会した青空との試合を通じて心の強さを取り戻した夕日は、星の回復を見届けると自分の罪を償うための旅に出た。
作中で名称が明言された技はないが、青空との試合では「拳圧で海を割る」「リングを一撃で破壊する」「地面を殴ることで巨大な衝撃波を発生させ、大地をえぐりながら群衆を吹き飛ばす」「殴った相手に心象風景を幻視させる」など、人間離れした力を見せつけた。ただし、青空は回想の中で「(拳闘家時代の父は)決して最強の選手ではなく、たくさん倒されもした」と評している。
備考
- タイトルのドリトライとは、「ド級のリトライ」の意味。
- 作者の雲母坂も、本作の連載以前には同じくボクシング漫画『心が強ぇんだ』を読み切りとして執筆し、『少年ジャンプ+』で公開している。同作の主人公の名前も本編と同じく大神青空であるが、青空と夕日は青年になっており兄弟という関係になっている。
書誌情報
- 雲母坂盾『ドリトライ』集英社〈ジャンプ・コミックス〉、全2巻
- 2023年9月4日発売、ISBN 978-4-08-883709-3
- 2023年12月4日発売、ISBN 978-4-08-883836-6