ドリトル先生の郵便局
以下はWikipediaより引用
要約
『ドリトル先生の郵便局』(ドリトルせんせいのゆうびんきょく、Doctor Dolittle's Post Office)は、ヒュー・ロフティングにより1923年に発表されたイギリス(最初の刊行はアメリカ合衆国)の児童文学作品。
概要
ドリトル先生シリーズの第3作。出版順は3番目であるが、作品内の時系列順では前作『航海記』よりも遡って全12作のうち第1作『アフリカゆき』から続いているように取れる描写が多い。そのため、前作『航海記』の語り手となっているトミー・スタビンズは本作には登場せず、第1作『アフリカゆき』と同様に三人称文体が使われている。
『航海記』では先生がスタビンズ家でフルートを演奏した年が1839年と明示されているが、本作で「先生が航海に出る少し前の年」の出来事として述べられている世界最初の切手「ペニー・ブラック」がローランド・ヒルの考案で発行されたのは史実では1840年である。この点を史実との矛盾と見るか、或いは一種のアナクロニズムと解釈して作中では史実よりも何年か早い時期に切手が発明されたと見るべきかは不明である。この点は第1部に登場する戦艦・バイオレットの「H」が「His」でなく「Her」の略であると文中で明言されていることから、英国王・ウィリアム4世の崩御に伴うヴィクトリア女王の即位(1837年6月20日)以後の出来事と見るべきか否かについても同様である。なお、第2部3章には「次の水曜日、7月18日」との記述が有るが、1830年代で7月18日が水曜日だったのは1832年と1838年である。
あらすじ
アフリカの猿に流行した伝染病を終息させたお礼として先生に贈られた2つの頭を持つ有蹄類・オシツオサレツは日増しにアフリカが恋しくなり、またイギリスの冬が体に合わなかったことから先生一行は避寒の為に西アフリカへ航海に出る。大きなトラブルも無く休暇を満喫した一行であったが、イギリスへの帰り道に海上で夫を奴隷商人“ジミー”ジェームス・ボーンズに売り渡されてしまった女性ズザナに出会う。勅命でボーンズを追っていたイギリス海軍の戦艦・バイオレットの協力を得て商人船は拿捕され、ズザナの夫も無事に保護されるが、そもそもズザナの夫がボーンズに売り渡されてしまった理由は夫を捕虜にしたファンティポ王国の郵便制度がコレクターを相手に自国の切手を売り付けて収入を得ることが優先でまともに機能しておらず、ズザナが親戚宛てに出した「夫の身柄と引き換える為の家畜を用意して欲しい」と言う手紙が届いていないことが原因であった。
そこで先生はファンティポ王国の国王・ココに謁見して同国の郵便制度の問題点を説明するが、ほどなくして先生はココ王から郵政大臣に任命され、ファンティポ郵便局の再建作業を引き受けることになってしまう。数日後、先生はファンティポ近海の竜が住むと噂され地元の住民が誰も近寄らない島に興味を持ち、犬のジップと共に上陸する。その島には、大昔に絶滅したと思われていた恐竜を始めとする草食動物の楽園とも言える自然環境が手つかずのまま残されていた。先生は島の動物達の様々な相談に乗っている内に、動物間で意思疎通に使われる様々なサインを基にした文字を考案すると共に世界中の様々な鳥のネットワークを使って世界最速の国際郵便を実現するアイデアを思い立ち、ファンティポ港の沖合に停泊した船上に国際郵便局を開設する。やがて、ツバメ達の協力で形成されたファンティポの国際郵便ネットワークは人間・動物を問わず評判となり、先生はさらに国際郵便のネットワークを利用して世界中の動物達を相手に通信教育や娯楽を提供するアイデアを次々と実行して行く。
内国郵便部を仕切っているロンドンスズメのチープサイドは相変わらず喧嘩好きで、王のペットのクジャクに喧嘩を売ったりしたため、先生は月に一度の割りでチープサイドを懲戒免職にし、また厳重説諭の上で復職させている。これはチープサイドが職を追われると内国郵便を担う町スズメ達も抗議のストライキを打ち、集配が麻痺状態になるため。
北極マンスリー
1年を通じて娯楽の少ないホッキョクグマやオットセイなど極北の地に棲む動物に娯楽を提供する為、先生の発案で創刊された月刊誌。国際郵便のノヴァヤゼムリャ支局を通じて北極圏の動物達に配達される。掲載記事としてかつてパドルビーで冬を過ごした時のように先生と動物達が順番に昔話を披露し、読者にどのお話が面白かったか投票してもらうことになり、それぞれ以下のような話を披露する。
ドリトル先生のお話
ガブガブのお話
ダブダブのお話
白ネズミのお話
ジップのお話
トートーのお話
オシツオサレツのお話
作品の舞台
本作とシリーズ第10作『秘密の湖』の主要な舞台は西アフリカであるが、登場する地名や国家には架空のものと実在のものが入り混じっている。ロフティングは作家として活動を開始する以前にイギリスの保護領であったナイジェリアで鉄道建設に携わっており、その際の体験がファンティポの市街や周辺地域の描写に反映されたと見られる。
ファンティポ王国
ファンティポ王国(Kingdom of Fantippo)は、西アフリカに在る王政国家。現在はココ王が統治しており、周辺地域で捕縛した奴隷を西洋の列強諸国と売買して利益を上げている。スコットランド人からゴルフを教わるなど新し物好きのココ王は、イギリスで発案されヨーロッパ各国や北アメリカに広まっていた郵便制度にいち早く興味を抱いて王立郵便局を開設する。しかし、郵便局の事業はココ王の肖像入り切手を外国人のコレクターへ売ることに偏重し肝心の集配機能が杜撰を極めていた為、先生が郵政大臣に任命されて郵便局の再建に当たることになった。
スピーディ・ザ・スキマーを始めとするツバメは街の通りなど細かい地域を回る仕事には不適であることから、ロンドンよりスズメのチープサイドが呼び寄せられてスズメなどの小鳥が国内郵便を担うことになり、郵便受けやドアノッカーなど民家の扉に小鳥が郵便物を配達しやすいよう様々な工夫が採り入れられた。また、チープサイドの強い希望で非キリスト教国ながらクリスマスを祝う風習が始められる。
無人島(No-Man's-Land)
船上郵便局(The houseboat post office)
鳥のネットワークを使った国際郵便はファンティポの船上郵便局を本局としてホーン岬、グリーンランド、クリスマス島、タヒチ、カシミール、チベット、そしてイギリスのパドルビーに支局が開設され、雑誌『北極マンスリー』創刊までにはノヴァヤゼムリャにも支局が置かれた。
ファンティポ周辺
スティヴン岬の灯台(Cape Stephen Light)
ハーマッタン岩礁(Harmattan Rocks)
ジュンガニーカ湖(Lake Junganyika)
日本語版
1952年に岩波少年文庫の1冊として刊行されて以降、岩波書店版が唯一の全文日本語訳であったが2011年に角川つばさ文庫より新訳本が刊行された。
- ヒュー・ロフティング、訳:井伏鱒二『ドリトル先生の郵便局』 岩波書店
- 岩波少年文庫 1952年6月15日初版、1978年・2000年改版 ISBN 978-4-001-14023-1
- 愛蔵版〈ドリトル先生物語全集〉第3巻 1962年1月13日初版 ISBN 978-4-001-15003-2
- 『新訳 ドリトル先生の郵便局』(角川つばさ文庫 編集・発行:アスキー・メディアワークス)
- 岩波少年文庫 1952年6月15日初版、1978年・2000年改版 ISBN 978-4-001-14023-1
- 愛蔵版〈ドリトル先生物語全集〉第3巻 1962年1月13日初版 ISBN 978-4-001-15003-2
訳:河合祥一郎 画:patty 2011年10月15日初版 ISBN 978-4-04-631189-4