パスポート・ブルー
以下はWikipediaより引用
要約
『パスポート・ブルー』は、石渡治による日本の漫画。
概要
週刊少年漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)に、1999年24号から2001年38号まで連載された。単行本は小学館:少年サンデーコミックスより全12巻。
主人公真上直進がH-IIロケットの打ち上げを見たのを契機に宇宙飛行士を目指す物語。連載時から見れば近未来にあたり、例えば作中に登場するNASDAは2003年にJAXAに改組されたり、実際にはプランだけで開発凍結となった日本版スペースシャトルHOPE-Xが実用段階に向け開発されている等、現実との相違点も生じている。
執筆時点で開発中・構想中だった現実の延長線上にある宇宙開発の他、少年犯罪や家庭・教育問題なども描き出している。
あらすじ
主人公の"まっすぐ"こと真上直進(まがみ まっすぐ)は、小学生のときに町工場を営む父親の関わるH-IIロケットの打ち上げを見たのを契機に、親友の青山空知(あおやま そらち)と共に宇宙飛行士を志す。
東京都中森区では従来からある町工場を主とする"がらくた町"とバブル景気で新興した"あぶく町"にわかれ、大人も子供も対立していたが、まっすぐが中心となってペットボトルロケットの製作を通し、子供たちは和解。設立された「中森小科学ロケットクラブ」が後のまっすぐの原点となる。
まっすぐと空知は進学校である私立の銘成学園中に進学するも、まっすぐは勉強について行けず退学も考え、地元の公立中を見学するが公立中はゆとり教育の弊害で緩みきった状況に愕然とする。そんな中でも図書館でひとり勉強する観月さやかと出会い親しくなるが、さやかは性犯罪の被害に遭ってしまう。首謀者の小坂を追いつめたが、逆に襲撃を受けまっすぐは肩に銃創を負ってしまう。事件の収束後は責任を問われ、まっすぐは銘成学園中を退学。公立中に編入し「図書館の仙人」と呼ばれる程の猛勉強で、宇宙やロボットに関する知識を深める。
2007年、自由選択制度を利用し東北トップレベルの県立仙台青葉高校に進学。宇宙ロボット研究の権威・東北大学の内村教授の研究所に出入りするようになる。また、同じ高校の"真一"(まいち)こと一文字乙姫(いちもんじ おとひめ)と出会ったことで、小坂との因縁やさやかの死によるトラウマを乗り越える。中国の通信衛星が制御不能となり、あわや国際宇宙ステーションに衝突の危機を回避するのに貢献。そのまま東北大学に進学するものと思われていたが、まっすぐは遥か世界を見据えアメリカ留学を希望していた。一方の空知は母がアルコール中毒に陥り、家庭の事情からも防衛大学校を志望する。
2013年、まっすぐはアリゾナ州立大学"5"年生になり、パタゴニアで調査活動を行っていた。空知は自衛官、風子は世界的な女優と仲間たちもそれぞれの道を歩む。そんな折、大規模な宇宙嵐が生じ試験飛行中の民間宇宙飛行機・スターチャイルドがパタゴニアの山岳地帯に墜落。まっすぐは単独でパイロットの救出に成功し、宇宙開発関係者からの信頼を得る。一方この嵐の混乱に乗じ、インターネット上の金をかすめ取った犯人が小坂ではないかとの疑いが強まる。
2015年、いよいよNASDAが宇宙飛行士を募集した。まだ大学院生のまっすぐは実務3年間と言う規定を満たしておらず、あわや応募できない所だったがスペースカーゴ社でのアルバイトでのロボット開発を(雇い主であるオーナー2人が)強引に実務と見なし応募。論争を招くも書類審査を突破する。翌2016年夏、試験が始まるがそこには空知に反目する自衛官・冠茂(かんむり しげる)の姿も在った。結局、まっすぐも空知も選ばれず、スペースカーゴ社で民間宇宙飛行士となるべく、また風子も一般搭乗飛行士に選ばれ、幼なじみ3人が揃って訓練を積む。
2020年、まずパイロットとして空知が真っ先に宇宙への夢を叶える。次に風子が宇宙ステーションに滞在し、観光客"コァン・マオ"を出迎える。宇宙ステーションと同調した、3機の通信衛星が不穏な様子を見せる中、"コァン・マオ"を犯人とした乗っ取り事件が発生する。計画的かつ大規模な犯行でステーション墜落までに飛び立てるのは、無人試験飛行の準備が整っていた日本のHOPE-Xのみ。真一やハルの捜査により事件の黒幕が小坂であることが発覚する。かくして、日本初の有人飛行と小坂との最後の対決が始まる。
登場人物
原則として登場時系列順に紹介する。「○○編」とはすべて便宜上つけたもので、作品中に登場するものではない。
主要人物
真上直進(まがみ まっすぐ)
青山空知(あおやま そらち)
緑川風子(みどりかわ ふうこ)
主要人物の家族
真上家
祖父
父
青山家
小学校編
天野サトシ(あまの さとし)
飯田みちる(いいだ みちる)
コズミックカレッジ編
清水大河(しみず たいが)
吉本栄一郎(よしもと えいいちろう)
睦合 中(むつあい あたる)
銘成学園編
ユリ
観月さやか(みづき さやか)
小坂直也(こさか なおや)
まっすぐの一つ年上。
中学生の時点で、父の家庭内暴力により家庭が崩壊している。本編の黒幕的存在。本物の拳銃を所持するなど、中学生とは思えないような悪魔のような男。
のちに失踪した。蛇頭と手を結び、自分と思想を共にする仲間を集め、サイバーテロ組織「TITAN(タイタン)」を結成し、悪事を働く。また、悪事を働いている自覚はなく、ゲームと称し他のネット犯罪者を煽って活動させて挙句、その稼ぎを掠め取ったりもしている。失踪後は空知と同じ顔に整形している。
空知と同じ顔に整形したのは、自身が今まで見た人間の中で一番他人に好かれていた人間だからとのこと。普段は柔和な笑顔を浮かべているが、逆上した時など、本性を表す際にはその顔は醜悪なまでに歪む。また空知やまっすぐたちの過去や経歴を徹底的なまでに調べ上げ、空知に成りすましていた(物語序盤で、宇宙にいるまっすぐと過去の回想をしている空知は小坂である)。
しかし、まっすぐたちには見抜かれており、他者を蔑むことしかしない自分は「人として既に負けている」と宣告される。最後にはあまりにもやりすぎたため仲間は全員チャイニーズマフィアによって粛清、自身は過去に「エロブタ、オタクデブ」と罵っていた菊池によって顔面を撃ち抜かれ射殺された。
菊池ヒロシ(きくいけ ヒロシ)
まっすぐの一つ年上。
デブなオタク少年。半ば小坂に利用されるようにして事件を起こす。銘成学園退学後は改心し、まっすぐとの誓い通りサッカーを続けているうちに筋肉質な体型となり、コンピュータに関しても一流のスキルは維持している。さやかに加害したことを悔やみ続け、波留いわく「筋金入りの“正義の味方”」となってインターネット監視防衛組織を設立。過去のある自分の名は表に出さず組織成立後は手を引いているが、独自にネット内の動きを監視することは続けている。自身と因縁を持つ小坂を追い続けており、宇宙人となったさやかの「許し」には感激の涙を流して戦う意思を示した。
終盤において死闘の末に、小坂を射殺しようとしたハルを止め、彼の代わりに小坂を射殺・長年の引導を渡した。拳銃不法所持と殺人の現行犯として、その場で逮捕された。最終回で5年あまりの刑期を終え出所する。服役中は模範囚だったようで、最終話のイベントに合わせて出所日を前倒しされる。真一からは「世界一まじめで優しい正義の味方」と子供たちに紹介された。
仙台青葉高校編
一文字乙姫(いちもんじ おとひめ)
若宮光一(わかみや こういち)
アメリカ編
冠 茂(かんむり しげる)
エリート意識の固まりで大学校時代から首席を取った空知を異常な程ライバル視している。自分に負けた相手に悪態を吐くだけではなく自分を負かした相手がそうしないことが信じられないという下種な性格で、ただ空知に張り合うためにNASDAの選抜試験を受け、不合格になる。その後も空知を敵視し続け、小坂の誘いに乗って空自を除隊して消息不明となり、中国人の大富豪"観昌(コァン・マオ)"(冠茂の中国語読みと同じ発音)を名乗り、ロシアから国際宇宙ステーションに上がってステーション乗っ取りの実行犯となるが、乗っ取りを果たして空知に土下座をさせた際の喜びようも常軌を逸していた。ステーションを落下軌道に乗せたあと、1人ソユーズで脱出した際に地上から受ける制御なしで大気圏に突入、突破に失敗して死亡。最期の瞬間に小坂に利用されていたことを知る。
名前の由来は担当編集の冠茂から。サンデーの他作品でもこの名前の登場人物が存在する。
教授
ラドラム会長、バージン会長
宇宙飛行士編
登場する組織・企業など
スペース・カーゴ社
その他
- 宇宙飛行士や宇宙研究機関など多くの関係者にインタビューをして作成されている。例えば、仙台青葉高校は宮城県仙台第二高等学校をモデルにしている。
- 作中の世界的サイバーテロ組織TITAN(タイタン)のメッセージ画面には、同時期にサンデーで連載されていた久米田康治作「かってに改蔵」の坪内地丹(つぼうち ちたん)が登場している。(謝辞にも記載されている)
- 本作のキャラクターは作者の別作品『II -ツヴァイ-』にて、設定を変更しつつ採用されている。