漫画 アニメ 小説

ビブリア古書堂の事件手帖


小説

著者:三上延,

出版社:アスキー・メディアワークス,KADOKAWA,

レーベル:メディアワークス文庫,

巻数:既刊10巻,

漫画

原作・原案など:三上延,越島はぐ,

作画:交田稜,

出版社:講談社,

掲載誌:good!アフタヌーン,

レーベル:アフタヌーンKC,

発表期間:2012年7月6日 - 2013年9月6日,

巻数:全3巻,

ドラマ

原作:三上延,

演出:宮木正悟,

制作:フジテレビドラマ製作センター,

放送局:フジテレビ,

話数:11話,



以下はWikipediaより引用

要約

『ビブリア古書堂の事件手帖』(ビブリアこしょどうのじけんてちょう)は、三上延による日本のライトミステリ小説。イラストは越島はぐが担当している。メディアワークス文庫(アスキー・メディアワークス→KADOKAWA)より2011年3月から刊行されている。

概要

古書に関して並外れた知識を持つが、極度の人見知りである美貌の古本屋店主・栞子(しおりこ)が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていく日常の謎系のビブリオミステリ。作中で扱われる古書は実在するもので、それら書籍の売上が伸びたり絶版本が復刊されるなどの影響を与えた。

メディアワークス文庫で初のミリオンセラー作品であり、2020年6月時点でシリーズ累計発行部数は700万部を突破している。2012年には、本屋大賞にノミネートされた。2016年には、小中学生向けに漢字にルビが振られた角川つばさ文庫版が刊行された。

メディアミックスとして2種類の漫画化作品と、テレビドラマが制作されている。2017年2月には、実写およびアニメでの映画化が発表された。

物語の舞台

物語開始時は2010年8月。神奈川県鎌倉市北鎌倉を舞台としている。地名は実在のものを用いているが、ビブリア古書堂の店舗や登場人物はフィクションである(作者後書きより)。

4巻は2011年4月を描いており、現実と同じく東日本大震災が起きたことになっている。

ビブリア古書堂
北鎌倉駅のホーム隣の路地の向かいで営業している古本屋。古い木造の建屋で、何十年も前から営業している老舗。人文科学系の専門書を主に扱うが、マンガや文庫本の棚もある。ネット上にある古本の検索サイトに参加しており、売り上げの多くはネット通販でまかなわれているらしい。店のカウンターの奥は店主が住んでいる母屋へ通じている。栞子の祖父、聖司が敬虔なクリスチャンで、このため、ラテン語で聖書を意味する『ビブリア』を店の屋号にしたという。

あらすじ

1巻から3巻までは、時系列順の一話完結の連作短編のかたちをとっている。4巻は3巻までを受けた長篇である。

1巻

プロローグ
高校時代、北鎌倉の駅近くの坂道にある古書店。白髪まじりの中年男が一人で経営しているはずの古書店で、小さなワゴンを引っ張り出している女性を見て気を引かれる。立看板には「ビブリア古書堂」とあった。声をかけようと思ったが自分の体質を思いやめてしまった。
第一話 夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
五浦大輔は幼い頃、本好きの祖母の本棚をいじりひどく叱られてから、本を長時間読むことが出来ない体質になっていた。大学を卒業するが、就職を決めた会社は卒業直前に倒産してしまい、無職の状態が続いていた。その年の盛夏の8月のこと、大輔の母・恵理が1年前に他界した祖母の遺品『漱石全集』の1冊に、夏目漱石のサインがあるのを見つける。母に頼まれた大輔は、サインが本物であるかどうかを調べるため本の値札に記されていたビブリア古書堂を訪れると、店主は入院しており、店番からは病院へ行くよう言われる。病院にて大輔が女店主篠川栞子に会うと、高校時代にビブリア古書店で見かけ、気にかかっていた女性だった。漱石のサインは偽物であったが、篠川栞子は田中嘉雄宛の献呈署名の体裁になっていることを訝しみ、田中嘉雄からのプレゼントだったものを大輔の祖母が書いた落書きと偽装するためにやったのだろうと推理する。帰宅後署名は偽物だったと報告すると、大輔は母に、迷惑をかけたお詫びに菓子折を持って行けと言われる。翌日菓子折を求めた先で伯母に会った五浦は、祖母と祖父に関する昔話を聞くうちに昨日聞いたサインの話の中に自分にも関わる重大な秘密に気付く。栞子を見舞い、そのことを話した大輔は、栞子からビブリア古書堂で働かないかと持ちかけられて快諾するのだった。
第二話 小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
常連の志田、小菅奈緒、笠井菊哉登場の挿話。
大輔がビブリア古書堂で働き出してから3日が経った。今までは栞子の妹の篠川文香が店番をしていたが、今朝は母屋から出てこない。店番となった大輔は、常連と自称する男に万引きを取り押さえてもらう。せどり屋の志田と名乗ったその男は、盗まれた本を探してもらいたくて来たという。志田はせどり屋仲間と商品を交換するために待ち合わせをし、トイレに立った時に女子高校生に自転車を倒され文庫本『落穂拾ひ』を盗まれたようなので、もしその本を売りに来たら黙って買い取り、自分に買い戻させてほしいということだった。入院中の栞子にそのことを話すと、犯人とすれ違った志田の待ち合わせ相手に詳しく話を聞いて見る必要があると言い出したため、大輔はその相手・笠井菊哉に会って話を聞き、さらに事件に関わると思われる男子生徒に出くわして、渦中の少女の身元が判明することとなった。大輔が掴んだ情報を栞子に電話で伝え、犯人の少女・小菅を病院へ呼び出し栞子がその推理を話すと見事に当たっていた。後日、小菅が志田のもとに謝りに行くと、彼女の行動の裏に男子生徒への想いと失恋があったことを知った志田はかえって同情し、小菅と『落穂拾ひ』について語り合い、打ち解けたのだった。
第三話 ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
常連の坂口昌司・しのぶ夫妻登場の挿話。
ビブリア古書堂に古びた文庫本を持ち込み、買い取ってもらいたいという初老の男・坂口昌司が現れる。明日の正午には査定を終えておいて欲しいと言い置いて彼は出て行く。それからしばらくして坂口の妻を名乗る女から電話がかかってきてその文庫本を売るのを止めてもらえないかという。病院でそのことを栞子に話しその本をチェックすると、坂口には前科があったことがわかる。そこへ坂口の妻・しのぶがやって来てその本を返して欲しいという。栞子が本人以外には返せないというとそこに坂口本人があらわれる。坂口は前科のことを妻には話していなかった。栞子は坂口にはそれ以外にも秘密があることを見抜く。しかし、全ての事情を坂口に告白されても、しのぶの夫への愛は揺らぐことがなく、坂口は夫婦の思い出にかかわるその本『論理学入門』の売却を中止する。
第四話 太宰治『晩年』(砂子屋書房)
大輔は栞子が入院するに至った秘密を打ち明けられる。栞子が所持する太宰治の『晩年』は、祖父・父と受け継いできた初版本、しかも署名入りのアンカット本で極めて貴重なものだという。文学館の展示に貸し出したことから所持していることが知られ、大庭葉蔵と名乗る男からその本を譲るようしつこく迫られ、ついにある日、夕立の中で石段から突き落とされたという。栞子は大輔にレプリカを使って犯人をおびき出そうと言い出す。『晩年』が病院にあることに気付いた大庭だが、栞子は大庭と対峙し『晩年』を燃やし捨てる。錯乱する大庭を大輔が取り押さえ、大庭は逮捕された。栞子のあまりの手際に、自分が信頼されていないことを悟った大輔は、ビブリア古書堂を辞めるといって店の鍵を返し病院を辞す。
エピローグ
再び無職に戻った大輔は、就職面接の帰りに歩道のベンチにいる栞子に呼び止められる。栞子は今日退院したという。そして自分が一番大事にしている古書を渡して預かってくれと差し出す。本を読めない自分がもっていても仕方がないから預かれないと返す大輔に栞子は落胆するが、大輔は続けて『晩年』の事件が解決したら、その内容を話すという約束を果たして欲しいとせがみ、栞子はうれしそうに話し出すのであった。

2巻

プロローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)I
栞子が退院しビブリア古書堂へ戻ってきた。大輔は栞子から彼女の私物である5冊の坂口三千代『クラクラ日記』を店の均一台に出すよう言われる。なぜ5冊も持っているのか大輔は不思議に思う。
第一話 アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)
大輔がひとりで店番をしているときに、桃源社刊 国枝史郎『完本・蔦葛木曽桟』を探しているとFAXが届く。直後に電話が掛かってきたが、大輔のつたない対応に「ほんまに素人やね、あんたは」と言って電話を切られてしまい、在庫があったのに自分のせいで客を逃した大輔は落ち込む。
小菅奈緒が店を訪れ、奈緒の自慢の妹である小菅結衣が書いた読書感想文のせいで家庭内に波風が立って悩んでいると大輔にぼやく。それは『時計じかけのオレンジ』の感想文で、内容について学校で注意されたことから、親が買った本のチェックを強要してくるようになり、止めさせたいので相談しに来たということだった。大輔は栞子に相談するからといって感想文を預かる。栞子は感想文を読んで、筆者は本当の意味で『時計じかけのオレンジ』を読んでいないと指摘する。栞子は結衣を店に呼び出し、結衣が『時計じかけのオレンジ』を未読であることが分かった根拠を説明する。
第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
大輔は高校時代に交際していた晶穂と再会する。晶穂の父が亡くなり、晶穂と父とは疎遠になっていたが蔵書をビブリア古書堂に売ることになっていたと言われ、五浦にとって初めての宅買いとなった。晶穂の実家に宅買いへ向かった大輔と栞子は、晶穂の異母姉の光代から「何十万円もの売り値がつく本が1冊ある」と教えられるが、査定ではそこまでの本は見付からなかった。ビブリア古書堂では買い取り価格を付けられない本を、晶穂は新古書店に売ろうと車に積んで先に出発するが、あることに気付いた栞子は、あわてて晶穂を追いかけ、『完本・蔦葛木曽桟』を大輔に問い合わせてきた人は晶穂の父であり、そこからビブリア古書堂か関わることになった理由を推理し、晶穂に亡父が本に託して遺したかったであろう想いを伝えるのだった。
宅買いから車で戻る途中、大輔は栞子の体調が悪いことに気付き、急いでビブリア古書堂まで戻った。帰りしな、大輔は廊下の壁際の本の山から売ったはずの『クラクラ日記』と女性の絵画を見つける。栞子をモデルに描かれていたように思えたが、日付は30年前であるため、栞子を描いた絵ではなかった。
晶穂が「大輔」と呼んでいたことを切っ掛けに、この話の終わりから、2人のお互いの呼び方が「五浦さん」「篠川さん」から「大輔さん」「栞子さん」に変わる。
第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦」(鶴書房)
文香によると、大輔が廊下で見つけた絵画の女性は、栞子と文香の母親篠川智恵子だという。智恵子は結婚する前はビブリア古書堂の店員であったこと、10年前に失踪したこと、また悲しむので栞子には智恵子の話は絶対にしないことを、大輔は文香から頼まれる。
ビブリア古書堂に、ダンボール箱を抱えた男性がやってくる。男は栞子に足塚不二雄の『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房版の初版)は幾らになるか尋ね、栞子の回答に男は満足そうにダンボール箱の中身の査定を依頼する。男は買い取り票に住所を途中まで書くと理由をつけて店から出て行き、ダンボール箱を置いたまま戻って来なかった。足塚不二雄は藤子不二雄のペンネームで最初の単行本。男が『最後の世界大戦』を所持していると考えた栞子は大輔を伴い、須崎と書き残した男の家を突き止める。須崎は2人迎え入れると、彼の亡父が藤子不二雄のコレクターであり、『最後の世界大戦』をビブリア古書堂から買ったこと、智恵子が栞子と同様に家を突き止めたことがあり、その方法が知りたかったこと、父がコレクションの一部を智恵子に譲ったことを明かし、『最後の世界大戦』を父に安価で売ってくれた智恵子に感謝していることを伝える。栞子により智恵子が家を突き止めた方法が明かされたため、『最後の世界大戦』以外の藤子不二雄の残りのコレクションを改めて買取らせてもらうこととなった。
帰り道、栞子は智恵子と須崎の父の間に行われたであろうやり取りを推理し、母・智恵子は須崎の思っているようなよい人物ではないこと、10年前に栞子へ『クラクラ日記』を残し失踪したことを大輔に明かす。また須崎から古書を買い取るために真実を打ち明けずにいたことは、母のやってきた不誠実な行為と変わらないと栞子は自己嫌悪し、自分は結婚するつもりはないと打ち明ける。
エピローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文芸春秋社)II
2週間後、大輔は栞子の私物の本を均一台に出すよう言われた中には3冊の『クラクラ日記』があった。大輔が栞子に尋ねると、新たに購入した理由は秘密と言われるが、大輔はその秘密を当ててみせた。

3巻

プロローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)I
プロローグとエピローグは文香の筆記の体裁で記されている。
文香は口が軽いことを自覚しており、それが原因で店に放火が起きたと思っている。ストレスがたまらないよう、夜中にパソコンに向かって近況を記していた。周りの人達はたちは誰も知らない。自分の行いを、家の中で見つけた『王さまのみみはロバのみみ』の物語に重ねる。
第一話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)
絶版文庫を買うため、大輔と栞子は古本業者による市場である古本交換会へ出向く。市場には、篠川智恵子と確執があったため栞子を毛嫌いしている「ヒトリ書房」の井上太一郎、栞子が子供の頃から付き合いのある「滝野ブックス」の滝野蓮杖も参加していた。大輔たちは滝野が出品していた絶版文庫に入札するが、僅差で井上に落札されてしまった。翌日、ビブリア古書堂へ滝野から、井上が落札した絶版文庫からロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』が盗まれていたと電話がかかってくる。そこに井上がやってきて、タイミング悪くカウンターに置かれた『たんぽぽ娘』を栞子が盗んだ自分のものだと決めつけてきた。大輔の弁明により井上は栞子を疑う考えを改めるが、栞子たちが真犯人を探し出すまでは証拠として預かると『たんぽぽ娘』を持ち去ってしまう。その晩2人で居酒屋に行き、栞子は大輔に短編でもあるので『たんぽぽ娘』を読むことを奨める。亡くなった父親も母親からもらった『たんぽぽ娘』を時々出しては見ていたと語る。翌日、滝野もやってきていた。栞子が手はずを整えていたため犯人は店を訪れてることになっていた。栞子は犯人を特定するに至った推理を明かし、事件は解決した。
次の日の夕方、大輔は井上が預かっていた『たんぽぽ娘』を受け取るため「ヒトリ書房」を訪れ、井上からクリスマスカードを見せられる。それは失踪している智恵子が井上へ宛てたカードであった。大輔は井上から智恵子と栞子には気をつけろと忠告を受ける。
第二話 『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』
坂口しのぶと正月4日の横須賀線で出会った大輔は、しのぶが子供の頃読んだ本を探して欲しいと頼まれる。ところが、本の題名も著者も出版社もわからないという。辛うじて聞き出せたのは「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなので、たぶん西洋が舞台で」と本の内容もうろ覚えである。しのぶの実家を探すこと奨める大輔に、しのぶは五浦たちの同行を望む。翌日に栞子に相談しても分からずに頭を悩ませていると、夫の坂口昌司がビブリアを訪ねてきて、しのぶの目的は本を探すことではなく両親に会いに行くことであり、しのぶと両親の関係がうまくいっていないことと、自分がしのぶの実家に出入りを禁じられていることを話す。大輔たちがしのぶの実家の川端家に行くと、古いが手入れされている様子がうかがえる「なかよしの家」と書かれた犬小屋が残っていた。昔、小屋で飼っていた犬はトービクという名前で、それは本に出てくる犬の名前だった。家に入ると、しのぶの部屋は使っていた頃のままになっていたものの目指す本はなかった。しのぶはこの家になくても、まだ探す時間があるからと話す。しのぶの母親の川端ミズエは二言目には娘をこきおろし、本を探しに来たことまでくだらないことだと言い募り、それに対し栞子は腹を立てて反論する。さらに気付いたことを指摘しながら質問するが、揃って川端家から出されてしまう。
結局、文香と奈緒のおかげで「タヌキみたいな動物」の名前が判明したことから本が特定され、児童書専門の古本屋から取り寄せることができた。しのぶに本を渡す日、しのぶの父親も同席していた。本を通じて、しのぶがどんな気持ちで少女時代を過ごしていたのか、そして両親はどんな気持ちでいたのかを語り合う。そしてしのぶがこの時に本を求めた理由も、最近のしのぶの変化から栞子は分かっていたのだった。
第三話 宮澤賢治『春と修羅』(關根書店)
栞子は、母の智恵子と同級生だった玉岡聡子という女性から連絡を受ける。栞子と大輔は聡子の家を訪ね、盗まれた本宮沢賢治『春と修羅』を取り返してほしいと頼まれる。聡子の亡くなった父親は『春と修羅』の初版本を2冊持っており、後に買い求めた状態の悪い方の本が盗まれたと言う。なぜ既に所持している上に状態の悪い本を買ったのかという疑問に対して、件の本はかつてビブリア古書堂から購入した本であり、聡子の父が働き始めた智恵子を応援するつもりで買ったのだろうと語る。最近になって遺言どおりに大部分の蔵書を父親の母校に寄贈しようとする聡子に対して、兄と兄嫁は売却して金を分けることを要求してきたために口論となり、2人が去った後に書斎を見てみると本が無くなっていたという話だった。栞子と大輔は、聡子の兄夫婦とその息子の昴に会って話し、栞子は犯人を特定する。犯人から盗んでしまった理由を聞き、穏便に本を取り戻すことに成功する。玉岡聡子へ返すにあたっては、状態の悪い方が大事だという本当の理由や、聡子が隠していたこと、思い至ることができなかった『春と修羅』に関する亡父の真意を突きつけ、聡子の父が望んでいたとおりにするように奨めるのだった。
話の終わりに聡子から、栞子の父は栞子が『クラクラ日記』を処分しようとしていることに気付いていたことを聞かされる。ビブリア古書堂に戻り、父の遺品を探す栞子。しかし『クラクラ日記』を見つけることは出来なかった。
エピローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)II
文香は父の部屋で探しものをしていた2人を見て、秘密がバレるかもしれないと思った。栞子にバレたら、この『王さまのみみはロバのみみ』のような行為を止めなることになると考えた文香は、今まで書いてきた日記ではなく手紙の体裁の文面を書き、メールアドレスを確認してから送信した。

4巻

この巻は長篇である。章題として取り上げられている作品はすべて江戸川乱歩の作品・著書である。なお、小説中で江戸川乱歩『二銭銅貨』のトリック、『人間椅子』『大金塊』の趣向を明かしている。

プロローグ
東日本大震災の余震がまだ続くある日、篠川姉妹は従姉妹の結婚式に行き、大輔はひとりで店番をしていた。余震があったあと一本の電話があった。栞子によく似た声は、篠川姉妹の失踪した母親・智恵子からだった。店を見下ろせる北鎌倉駅のホームから掛けてきたのだ。「また来るわね。娘たちによろしく」ということばを残して智恵子は姿を消した。
第一章 江戸川乱歩『孤島の鬼』
智恵子から電話のあった翌日、篠川智恵子に用事がある、いないんだったら古書に詳しい人を呼んで欲しいという客が来た。やってきたのは代理人で、江戸川乱歩の古書に関することだという。栞子は智恵子が何かをしようとしているのなら放っておけないと、大輔と雪ノ下の依頼主の来城慶子のもとへ赴く。昨日の代理人は田辺邦代といい慶子の妹だった。案内された書斎にあった蔵書は、江戸川乱歩の生前に出版した一般向けの著書が、雑誌のバックナンバーも含めて全て揃っている大変な価値あるコレクションだった。慶子は喉頭癌で声帯を取ってしまった上に震災で怪我をして車椅子で生活していた。邦代は宮城県に住んでいたが、震災のこともあり、姉の面倒をみるために鎌倉に滞在しているという事情があった。声帯以外からの発声を練習中だという慶子の会話がわかるのは、妹の邦代と甥のカズヒロだけで、邦代の通訳や事前の打ち合わせからの説明によると慶子は、名士で資産家の鹿山明の世話になっていたが、明が死んだために彼の蔵書と雪ノ下の家を相続していた。姉妹は一冊のフェルトのカバーがかかった江戸川乱歩の著書の初版本を示し、本に触れずに書名を回答することを求められる。これは依頼にあたってのテストであり栞子は『孤島の鬼』と正解する。クローゼットにある特殊な金庫を見せられ、金庫の中には明が慶子に遺した江戸川乱歩に関する何らかの珍品が入っており、開けるためには鍵の他に暗証番号が必要で、鍵は鹿山家から届けてもらう手はずだが、暗証番号が不明なので調べて欲しいという依頼内容だった。成功すれば蔵書を全てビブリア古書堂に売るという。慶子からこれ以上の情報を得ることは身体的な障害のためか捗々しく行かなかったので、さらに詳細な鹿山明の情報は、書いて纏めてたものを届けてもらうことになった。邦代は、慶子のいないところで、実は鹿山家から鍵は見つからないと言ってきたので、鍵の捜索もやって欲しいと頼んできた。
第二章 江戸川乱歩『少年探偵団』
その日の夕方、来城慶子からの資料が届いたというので改めてビブリア古書堂を訪れると、文香と志田がいた。大輔の本を読めない体質のことは栞子から文香、文香から志田に伝えられていたことを大輔は知らされる。志田はヒトリ書房の井上と何かあったかと聞いてきた。文香はヒトリ書房を知らなかった。
雪ノ下を去ってから2時間も経たないうちに届いた資料は、何枚ものレポート用紙に系図やら鹿山明の父・鹿山総吉の略歴などが、確りとまとめられていた。明は総合専門学校の経営者として成功し、今は明の息子・義彦が学長を務めている。邦代は手回し良く、鹿山義彦に明日の夕方の会見の約束まで取り付けていた。
翌日、栞子と大輔が鹿山邸を訪ねて会った義彦に言うには、鹿山家の家族たちは明のことは厳格で生真面目な教育者だと思っていて、来城慶子はおろか、鎌倉の家の存在すら遺言状で初めて知ったということだった。鹿山家では教育方針も厳しく読書やテレビ鑑賞も制限されていたが、乱歩の少年探偵団のシリーズだけは父親が買ってくれたという。そして探偵小説に出てくる大邸宅のような鹿山邸で、子供のころは妹と幼馴染と3人で少年探偵団ごっこをして遊んでいたと懐かしげに語るのだった。
栞子は義彦に、『少年探偵 江戸川乱歩全集』と明氏の書斎を見せて欲しいと頼む。義彦の本はポプラ社版であり、明の書斎の抽斗からは、光文社版の江戸川乱歩全集の読者への特典プレゼントであるBDバッジが出てきた。バッジは各冊に1枚ついている引換券3枚で1つもらえたものなので、光文社版が3冊以上はあるはずだったが見当たらなかった。義彦の妹の直美にも話を聞きたいと申し出ると、同居はしているがヒトリ書房で働いており、今日は残業で遅くなると知らされる。ヒトリ書房に行くと閉店後だったが、主人の井上は留守で直美に話を聞くことができた。そして、栞子と直美はシリーズの中の『魔法人形』を語り合い盛り上がる。だが直美は、子供には厳しく冷たく接していたにもかかわらず、愛人を囲っていた父の明を嫌っており、父の本のことは知らないと突っぱねられてしまう。その翌日、ビブリアに井上が話があるとやって来たため、居合わせていた志田に店番を頼み、母屋で話を聞くことになった。井上にとって鹿山明は子供の頃の知り合いであり、古本屋を始めたときに陥った経営危機を助けてくれた恩人だという。実は幼馴染であった直美が婚家を家出したときも直美をアルバイトに雇ったが、直美には明のコレクションや取引のことは秘密にしていた。ところが篠川智恵子が、明や直美の私的な秘密の事情を嗅ぎつけてたことを仄めかして、鹿山明に紹介するように脅してきたことがあり、それが井上が智恵子を忌避し嫌悪する理由だったが、話を聞いていた栞子の様子をみて智恵子のような悪辣さを持っていないことを知り、栞子に対する態度が少し和らぐのだった。井上は鍵を探すついででいいから、明が自分に無関心だったという直美の誤解を解いて欲しいと言い、鹿山家の再調査の許可が出るように義彦を説得してくれた。
栞子たちが鹿山邸を再訪すると、井上の協力によって直美が知らずに案内してくれた書斎の秘密隠し場所には、あるはずだが見当たらなかった出版社版の乱歩の少年向けシリーズなどが収められていた。井上もその場に現れ、呆然とする直美に栞子は、明が直美のことを親として、また同好の志として見守り気遣っていたことを示す品も共に収められていたことを教えて手渡す。戦前版の『大金塊』を含めた4冊が欠けていたが、井上と直美が去った後、さらに探すと残りの4冊と共に鍵が見つかった。鍵が見つかったので慶子の家に急行すると来客中であり、その来客とは篠川智恵子であった。
第三章 江戸川乱歩『押絵と旅する男』
急いで帰ろうとする栞子と大輔だったが、智恵子は北鎌倉の家に帰るのならば乗せて欲しいと車に乗り込んできた。仕方なく同乗を許してビブリア古書堂に到着すると、母屋の玄関先には文香が智恵子を待っていた。文香は自分に何も残していかなったことを訴えると、智恵子が残していたと答え、実は幼い文香は母親がいなくなったことに対して癇癪を起こして投げ捨てた本を、栞子が保管していたという。その本は安野光雅『旅の絵本』(福音館書店)だった。文香は、母恋しい思いはあるが、篠川家と店は姉妹で維持できているので母が必要な状態には既に無く、今までのような連絡もせず会いに訪れない状況を続けるようなら、帰ってきた時に家に入れない可能性もあり得ることを智恵子に言い渡す。
去り際、智恵子は大輔と栞子に、あの金庫には「『押絵と旅する男』の第一稿」が入っているという自分の推理を語る。乱歩自身の手で大須のホテルで便所に破り捨てたとされており、横溝正史も同泊していたため随筆の中で証言しているが、捨てた場面に立ち会ったわけではないので、当時大須のホテルで働いていたはずの鹿山総吉が捨てた原稿を回収した可能性が高いと予測していた。
智恵子は明日の午後には暗証番号を探し出して見せるので、蔵書の買い取りは折半にすることを申し出る。栞子が断るとヒントをいくつか残して智恵子はあっさりと去って行ったが、その様子を訝しんだ栞子は大輔に急いで車を鹿山邸に出すように頼むと、案の定、智恵子は栞子と自分の声が似ていることを電話で利用し、代理人として先回りしていた。しかし、ふたりは何とか暗号解読に必要なトリックが仕込まれたガジェットを手に入れることに成功する。大輔の助け舟もあって栞子は遂に解読し、翌日に金庫は開けられたのだった。
金庫が開けられた直後に、中にあった鹿山明の形見の品物を持って旅に出た慶子を見送った栞子と大輔。そこに現れた智恵子は金庫の中身について慶子がふたりを誑かした可能性を告げ、それを確かめるために共に追いかけ、さらに智恵子の蓄えた本の世界を共有し合おうと栞子を誘うが、栞子は大輔とデートの約束を優先して断ったため、智恵子はひとりで慶子のあとを追っていった。
この事件が解決した次の定休日に大輔は栞子とデートをし、彼女への想いを告白する。
エピローグ
デートの数日後、栞子の留守を見計らって大輔は志田を呼び出し問い詰め、智恵子と志田に縁があったことと、智恵子が篠川家から離れた理由がとてつもなく入手困難な古書を探すためであったことを知るのだった。

5巻

プロローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮 文庫)
大輔の告白から約2ケ月後の5月31日が、栞子から返事をもらう期限日である。2人きりの店内で大輔がその件について訊ねると、栞子は「お待たせしてごめんなさい」と謝り、「わたし、あなたと…」と話し出す。
第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)
滝野蓮杖は、話題提供として、雑誌『彷書月刊』をまとめて古書店に売り、1-2週間後にすべて買い取るという行為を繰り返している女性がいることを話す。宮内多実子と名乗る女性が来店し、『彷書月刊』の買取を求める。本には書き込みが多く、書き込み箇所には「新田」と記されており、背表紙の角には小さな黒い丸が書きこまれている。
常連客の志田が老人と二人で来店し、老人は『彷書月刊』の前で立ち止まる。次の来店時に志田は老人からの依頼だとして、背表紙に黒丸が打たれている本を売り、代わりに『彷書月刊』のセットを買う。宮内が再訪し、『彷書月刊』が買われことを知り、購入者を教えてくれと哀願する。栞子が、宮内が売買を繰り返していた理由を解き明かし、自分がその人に会って確認すると告げると、宮内は「よかったら電話して」と伝言を依頼する。栞子は、橋の下で暮らす志田を訪ね、宮内多実子の名前を口にする。
第二話 手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)
栞子は、蓮杖の妹リュウから後輩の真壁菜名子の父親が大事にしている『ブラック・ジャック』のうち3冊かがなくなったので相談に乗って欲しいと依頼される。菜名子から蔵書の話を聞き、栞子はなくなったのは第4巻ではと指摘する。栞子は、『ブラック・ジャック』の単行本は種類により内容が微妙に違っていること、作者の手塚自身が単行本に収録しないと決めていた作品も2点あること、そのうち『植物人間』は初期の単行本の4巻に収録されており、高値で取引されていることを指摘する。
栞子は、25巻を除く新書版の蔵書が重複していることを確認してから、弟の慎也に、ここにある『ブラック・ジャック』の半分は母親のものであること、第4巻は『植物人間』の収録の関係で二人とも2冊持っていたことを指摘する。慎也は第4巻の5冊目は、母親が危篤状態の日に父親が古書店にわざわざ立ち寄って買ったものだと反論する。栞子は3冊を回収し、ぼろぼろになった5冊目の来歴を説明し、二人にとっては中学生時代の思い出の品であると指摘し、慎也に母親のことや自分のことを父親とちゃんと話すよう勧める。
第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)
篠川智恵子は自分に会いたがっている栞子に課題を出す。課題の依頼主は門野澄夫である。智恵子と門野家の3兄弟は幼馴染であり、澄夫は長兄・勝己の蔵書や盗んだ本をビブリアに持ち込み、出入り禁止となっている。澄夫は、勝己が亡くなる前に電話で寺山修司の『われに五月を』の初版本を譲りたいと言っていたという。故人の妻の久枝は、特に大切にしていた本を澄夫に譲るというのはと口ごもる。兄弟の父母はホテル火災で亡くなっており、親代わりの勝己は、澄夫に厳しく、不仲となっている。
故人の書庫にある寺山修司の初版本はほとんど智恵子が探してきてくれたものだという。問題の『われに五月を』には寺山修司の署名があり、折りたたまれた紙と写真が入っている。写真は5-6歳の頃の絵を描いている澄夫であり、足にギブスが巻かれている。紙には絵が描かれ、消されているが寺山直筆の文字がかすかに見える。この頃から勝己は澄夫に厳しく当たるようになったという。久枝は、そのとき澄夫を書庫に一人きりにしたこと、写真は勝己の希望でプリントし忘れたネガから亡くなる直前にプリントして見せたと話す。
栞子は門野家を再訪し、故人が『われに五月を』を澄夫に譲ると言った理由を説明する。澄夫は久枝を非難することもなく、この本は大事に読んでくれる人に売るつもりだと言い残す。モノレールの駅に智恵子が佇んでおり、栞子は遅くならないうちに帰ると一緒に車両に乗り込む。大船駅で大輔は、沖縄に移住するための大きな荷物を持った澄夫と出会う。澄夫は待ち合わせた友人の女子大学院生に紙袋を手渡す。彼女がそんな大事なものを1000円でよかったんですかと口にし、大輔は絶句する。
エピローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
モノレールの中で栞子は、父親と結婚することになったいきさつを訊ねる。智恵子は、ある日、姿を消す予感があるので、それでも良ければ結婚しましょうと答えたという。栞子は、大切な人を傷つけないよう努力する人になりたいと答える。栞子は店に戻り、大輔に「お付き合いしてください、私も大輔くんが大好きです」と口にする。栞子は、母のようにあなたを置いていってしまうのではと考えているうちに時間がかかってしまったと続ける。大輔は、「俺も一緒に行けばいいじゃないですか」とあっさり答える。そのとき、表のガラスに何かがぶつけられ、外の均一台の上に「『晩年』をすり替えたお前の臭い芝居を知っている」とプリントされた紙が置かれている。

6巻

プロローグ
大船の総合病院に大輔は入院している。骨折した鎖骨と肋骨の手術が終わったばかりでまだ麻酔から覚め切っていないとき、「大輔くん」と呼ぶ栞子の声が聞こえる。次に目が覚めたとき、「起きたの」という声がする。いつの間にか智恵子に入れ替わっている。
第一章『走れメロス』
ビブリア古書堂に投げ込まれた「手紙」の差出人は、裁判終結まで保釈されている田中敏雄となっている。大輔は、墓地で田中と会い、その日には留置所にいたことを確認する。田中は、古書マニアが集まるSNSで情報を受け取ったとして、祖父・田中嘉雄の蔵書であった『晩年』の初版を捜してくれと依頼する。その本は、太宰の署名はないが、直筆の書き込みがあり、一部はアンカットではなくなっている貴重なものだという。
栞子は、虚貝堂の二代目杉尾から話を聞く。杉尾の父親と田中嘉雄は大学の文学研究会の先輩・後輩の関係がある。杉尾は、1964年に撮られた一枚の写真を取り出し、自分の父親、田中嘉雄、小谷の3人の名前を挙げ、中年の和服男性とセーラー服の少女は分からないと説明する。杉尾は、父親が『ロマネスクの会』という文学の研究サークルを作っていたが、ある時からばったり親交が途絶えたこと、虚貝堂で売られた珍本のうわさは耳にしていたこと、栞子の祖父や母親が本捜しの相談や依頼を受けていたことを話す。
小谷次郎は、大輔の祖母が切り盛りしていた「ごうら食堂」の常連であり、田中嘉雄もよく来ていたと話す。小谷は、和服の方は大学教授で長年太宰の研究をしている富沢さん、隣は娘さんであり、田中嘉雄は『晩年』の珍本を手に入れ、富沢教授に見てもらったはずだと彼の電話番号を教える。小谷は、『ロマネスク』のメンバーは教授宅の蔵書閲覧を許されていたこと、教授が最も大切にしていた稀覯本が盗まれたため出入りを禁じられたことを話す。事件後、田中は一切連絡に応じなかったことから、彼が稀覯本を盗んだ可能性が高く、その本は栞子の祖父の篠川聖司が捜し出し、持ち主に返したという。
第二章『駆込み訴え』
富沢家を訪問すると、娘の紀子が出迎え、父親の博は話をする気はないという。紀子は、47年前の事件を調べて欲しい、それが分かれば父も『晩年』について話してくれるかもしれないと依頼する。盗まれたのは太宰本人から贈られた月曜荘版『駆込み訴え』の限定版で薄い和本だという。紀子の母は稀覯本の盗難を危惧し、メンバーが一人で書庫に入るときは扉を閉め、出るときは何も持ち出していないことを確認していたという。紀子が当時出入りしていた友人と一緒の写真を見せると、栞子は鶴代おばさまとつぶやく。
鶴代は篠川聖司が働いていた久我山書房の久我山尚大の娘で、離婚後は母親の真理と娘の寛子と3人で暮らしている。篠川家とは現在でも付き合いがある。栞子は、鶴代から事件の前に田中嘉雄が書いたメモと使用していたクリップボードを見せてもらう。富沢家を再訪し、栞子は、田中嘉雄が本を盗み出し、久我山書房に渡し、篠川聖司がそれを取り戻したという仮説を説明する。しかし、田中嘉雄がなぜ盗みを働いたかについては言い淀む。大輔は、栞子の表情からその答えを見つけ、田中嘉雄は祖母・絹子と不倫関係にあり、それが弱みとなっていたと説明する。小谷は、大輔を見ながらそのころ彼女は妊娠していたなあと話す。
隣室で栞子の説明を聞いていた富沢博が入って来て小谷とあいさつを交わす。富沢は久我山尚大についてほとんど読書はせず、本当に貴重な古書には異様なほどの執着をもっていたと語る。尚大が一番欲しがっていたのは田中嘉雄の持っていた『晩年』であり、その本には太宰の変わった書き込みがあり、『上越線水上駅』のスタンプが押され、見返しには太宰の直筆で『自殺用』と書いてあったと話す。
第三章『晩年』
富沢の話では、久我山尚大は田中嘉雄の持ち込んだ『晩年』を本物だと断定した。久我山は神保町の古書店で働いたことがあり、本の特徴を同業者から聞いたという。その後、田中の『晩年』は、久我山に安く買い取られたという。富沢が報酬のことを口にすると栞子は辞退し、蔵書をお売りになるときは是非当店をご用命くださいと頭を下げる。富沢は47年前の篠川聖司にも同じことを言われたよと笑い、その場でもっとも状態の良い『晩年』のアンカットを聖司に売ったと話す。栞子が47年前の事件と田中嘉雄の『晩年』のその後について話すと、鶴代は父親の暗部を否定せず、よそに女がおり子供までいると話す。
自宅に戻った大輔は、隠れていた田中敏雄にスタンガンで襲われ、縛り上げられる。田中は大輔のバッグから『晩年』を取り出し、祖父の『晩年』の持ち主から交換を持ちかけられているという。大輔は何十年かかってもお前から『晩年』と取り戻す、俺達には従妹同士という繋がりがあるんだと口にする。
田中敏雄は久我山家に続く急な石段の上で待つ。交換相手の女が現れ、お互いの『晩年』を確認しているとき、女が黒い棒を田中の腿に押し当て、田中が跪く。隠れていた大輔がスタンガンをもぎとる。やっぱり、あなただったんですね、久我山寛子さんと言いながら栞子も出てくる。寛子は、栞子に対する嫉妬心と古書に対する歪んだが思い込みを語り、尚大の古書が残されていることも明らかになる。寛子は隠し持っていたスタンガンを大輔に押し付け、もみ合いとなり、大輔は寛子を胸に抱えながら石段を転げ落ちる。
大けがを負った大輔と栞子は久我山家を訪れ、真理から鍵を受け取り、戸棚を開けると何冊かの本が積まれている。『晩年』は一番上にあり、見返しには「自●用」の文字が見え、最初の何ページかはアンカットでなくなっている。戸棚を閉めてから栞子は、「わたしの『晩年』を奪おうとしたのはおばあさんですね」と口にする。
エピローグ
『晩年』をめぐる大輔の話を聞いた篠川智恵子は、鶴代から尚大の蔵書の処分の相談を受けていると話し、大輔の質問に深沢には母が住んでいると答えて病室を出る。大輔は、智恵子が久我山家の『晩年』がアンカットでなくなっていることを知っていたことに気が付く。尚大は自分の後継者以外には誰にも見せないと決めていたはずなのに。

7巻

プロローグ
大きな座卓の上に大判の革張りの本が三冊並べられている。三冊とも同じ大きさ、装丁であるが革の色だけが赤、青、白となっている。大柄が老人の前には若い娘が正座している。老人は、これは試験であり、本を開けずに価値のある一冊を選び出せば、わしの後継者としてその本とわしの店といつか見せた他の蔵書も一緒に譲ると話す。娘は見分けることはできますが、わたしは他人の用意した試験で人生を決めるのは嫌ですと言い席を立つ。
第一章「歓び以外の思いは」
事件のあと、久我山家の戸棚は空になっていた。かって久我山書房で番頭をしていたという舞砂道具店の吉原喜市が来店し、尚大の『晩年』を800万円で譲るともちかける。吉原は田中敏雄の名前を出し、この『晩年』を買い取る最後の機会だと脅す。栞子は買取に同意し、明日、半額を支払うと答える。吉原はお礼として『人肉質入裁判』を差し出し、さらに篠川智恵子が尚大の娘であり、尚大が後継者にすることに失敗したことを話す。栞子はわたしのうちって、面倒じゃないですかと口にし、大輔は、母親や祖父のことは栞子さんには関係が無いと答える。栞子は吉原が『人肉質入裁判』を出した理由、智恵子の出生を明かした理由に思いを巡らす。
水城禄郎と息子の隆司が来店する。水城は、家内の英子はあなたのお祖母さんですと切り出す。禄郎は、30年ほど前に英子と結婚したこと、英子が智恵子と親子の縁を切っていたこと話してから、英子がずっと大事にしていた本を買い戻したいと依頼する。吉原という骨董屋が借用書をもって現れ、久我山から借りた形になっている洋書の返還を申し入れ、英子はその場で本を渡したという。
水城英子はしょっちゅうビブリアに立ち寄る常連であった。栞子は1923年の表記からシェイクスピアのファースト・フォリオ(戯曲を集め作品集)ではと指摘する。その本は世界中の古書コレクターの垂涎の的となっており、数年前のサザビーズでは約6億円で落札された。英子はファクシミリ(複製本)であり市場価値はないと説明する。栞子は地下駐車場で隆司に書斎にあった写真を見せ、吉原が英子を脅して本を持ち去った経緯を説明し、英子がその本を大事にしていたのは娘が修復したためであり、諦めたのは隆司を守るためだと指摘する。帰る途中、滝野蓮杖から英子のものらしい複製本が明日の市場に出品されるという電話がある。
第二章「わたしはわたしではない」
湘南支部の古書会館における古書交換会で置き入札が行われ、栞子は入札に参加する。栞子は複製本の内容を確かめる。滝野は、智恵子がこの本を修復しているとき、これが特別なファクシミリで赤、青、白の色違いが三冊あると言っていたと話す。栞子は吉原の止め札の裏をかき、ヒトリ書房の井上に落札してもらう。吉原は栞子を褒めるとともに、尚大のことを他人から本も金も搾り取るひどい人だったと語る。栞子は、吉原の本当の目的は篠川智恵子に連絡させるためではと指摘する。吉原は文香の学費のことを持ち出し、『晩年』の残り400万円は智恵子が連絡してきたら帳消しにするという念書を書き、「残りはすべて私が持っている」と伝えて欲しいと言う。
黒革のファクシミリを調べた栞子は、ノートン・ファクシミリから複製したものではなく、現存が確認されていないフォリオから複製された可能性があり、尚大はそのようなフォリオを持っていたのではと指摘する。鶴代は、35年前に尚大が高額な稀覯本を海外から買ったとことを耳にしており、その少し後に4冊の色違いの大判の本が運び込まれたのを見ている。しかし、尚大が亡くなる直前に赤と青と白の3冊は売ってしまい、鶴代が発送の手続きをしている。鶴代は10年ほど前にそのことを智恵子に話し、数日後に智恵子は失踪した。
第三章「覚悟がすべて」
吉原が篠川家を再訪し、智恵子と連絡がついたお礼として400万円の帳消しを伝える。吉原は、座卓の上に赤、青、白の革表紙を並べる。ファースト・フォリオを入手した尚大は、3冊のファクシミリを特注で作った。後継者の智恵子が試験を拒否したため、尚大は海外の古道具屋にただ同然に売り払い、智恵子が本物を求めて世界中を走り回るように仕向けるため黒革のファクシミリを英子に預けた。しかし、智恵子が家を出たため、尚大の復讐は25年もかかってしまった。栞子が本を開こうとすると開かない。大輔が青い表紙を開くと、接着されたものを無理やりはがしたページが現れる。吉原はどの本のどのページも接着剤で貼り合わされており、表紙と裏表紙にはX線を通さない素材が使用されていると説明し、古書会館での次の振り市にこの3冊を出品するつもりだと話し、栞子にも参加を勧める。
大輔が帰宅すると智恵子が食堂におり、栞子の才能を開花させるため入札に参加して欲しいと話す。さらに、自分と栞子のどちらも本物のファースト・フォリオを落札できなかった場合、栞子が今回支払うべき代金は自分が負担することを吉原に伝えてあると続け、あなたはこういう時なんの役にも立たないわねと口にする。
行方不明であった志田が見間違えるような服装で来店する。大輔の表情が曇っているのを見て話を聞くぜと迫る。大輔は入札の件と智恵子に言われた内容を話す。志田は、「栞子が選んでいるのはお前なのだからそれで十分だろう、お前の覚悟がすべてなんだよ」と励ます。店に戻って来た栞子は大輔に抱きつき、「母に言われたことは忘れてください、あなたが好きなわたしがわたしという人間」と震える声でささやく。栞子は振り市に参加する覚悟を決め、大輔には自分が間違えそうになったら止めて欲しいと依頼する。
入札のため栞子は、ビブリア古書堂の土地、蔵書を担保に4500万円を準備する。栞子は出品された三冊の革装本を調べる。青い本は扉ページの紙質からファクシミリと判断できる。赤い本は一番状態が良く、白い本は水に濡れたようで状態は悪い。大輔が本を持った時の感触の違いを口にしたので、栞子は両手で本を持ち、さらに背表紙をゆっくり叩き、そういうことでしたかとつぶやく。入札が始まり、青い本は10万円で吉原が自己落札する。白い本は、吉原が100万円と声を出し、それ以後は智恵子と栞子の競り合いになり、大輔が智恵子の意図に気が付いたとき、栞子は500万円と発声し、それが落札金額となる。
栞子は激しく動揺する。大輔は、路駐が駐車違反になりそうですと叫び、10分間の休憩時間を稼ぐ。大輔は、智恵子さんも資金で苦しんでいると説明し、覚悟がすべてですと励ます。赤い本は、栞子と智恵子の競り合いとなり、1000万円、2000万円と上がっていく。智恵子は一気に3000万円まで上げ、その後は小幅の競り合いになり、智恵子がついに4100万円と発声する。栞子が諦めかけると大輔が4200万円と声を出し、1050万円の小切手を渡す。大輔は最終的に5050万円で赤い本を落札する。
智恵子がおめでとうと声をかける。吉原は、なにがなんでも5550万円を払っていただきますと宣言する。吉原は、3冊の本の紙の一部を切り取り、専門家に分析を依頼していたところ、さきほメールが届き、どれも20世紀の紙だと分かりましたと勝ち誇ったように叫ぶ。吉原は篠川親子から大金を搾り取り、同業者の前で辱めようとしたのだ。栞子は吉原を誘い、会議室に入る。栞子の指示で大輔がカッターで赤い本の天地をゆっくり切り開く。本を開くと、中から一回り小さな赤い表紙が現れる。智恵子が手に取り、扉のページを開く。本物のファースト・フォリオは糊付けされていなかった。吉原は怒り狂い、智恵子は即金の1億5000万円で売ってくれないかと口にする。
エピローグ
大輔は自分なりの正装で篠川家を訪問する。会議室で智恵子がささやいた話の後、大輔が「篠川栞子さん、俺と結婚してください」と言うと、一瞬のためらいもなく栞子は「はい」と答え、「末永くよろしくお願いします」と頭を下げる。栞子は、ファースト・フォリオを母に売ることを決めたと話し、銀行の貸金庫にあるはずの本を取り出し、大輔に本の説明を始める。

登場人物

五浦大輔(ごうら だいすけ)

主人公で、語り手。23歳の男性。
小学生の頃の些細な悪戯が原因で活字を見ると体調が悪くなる「活字恐怖症」であり、読書とは縁遠い人生を送ってきたが、本当は本に対して憧れに近い感情を抱いている。本はほとんど読めないが、漫画ならば多少は長い時間読むことができ、小説でも短編ならば体調が悪くなる前に完読できることもある。
内定していた会社が倒産し、大学卒業後無職の状態が続いていたために、母親につけられたあだなは「ぷー輔」。祖母が遺した『漱石全集』を査定してもらうために「ビブリア古書堂」を訪れ、そこで栞子に祖母の秘密を解いてもらった縁で、アルバイトとして就職する。
学生時代に柔道で鍛えたため、大柄な逞しい体格をしていて市販のスタンガン程度では気絶せず、階段から落ちても立ち上がることができるほど丈夫。だが勝負事はあまり好きではなく朴訥で心優しく、正義感が強い。
篠川栞子(しのかわ しおりこ)

もう1人の主人公で、探偵役。北鎌倉の古本屋「ビブリア古書堂」の女店主。25歳。物語開始(第1巻第1話)の前年に前店主の父親を亡くし、店を継いだ。
黒髪の長髪に透き通るような肌をした美人で母親似。近眼で、普段は眼鏡を着用している。小柄で身体は細いが、巨乳。
本の話以外では他人と目を合わせることもできない、内向的な性格。古書の知識は並大抵のものではない。普段はたどたどしいしゃべり方をするが、本が絡む話になるといわゆる「スイッチが入った」状態になり、別人のようにキビキビとしたしゃべり方にかわり、相手に構わずその知識を語り続ける。
登場時に腰椎、脊椎などに重篤な怪我を負って入院しており、退院してからも杖をついている。
希少な本を入手するためなら手段を選ばない性格だった母親を嫌っているが、自分も母親と似た部分があることを自覚しており、そのことを恐れている節がある。
篠川文香(しのかわ あやか)

栞子の妹。大輔の母校に通う高校生。
古書についての知識はほとんどない。明るく無邪気で誰とでも打ち解けられるが、口が軽い。篠川家の家事をほぼ取り仕切っており、料理が得意。
篠川智恵子(しのかわ ちえこ)

栞子・文香の母。10年前に失踪し、行方不明になっている。自分の持っていた本の知識は栞子に受け継がれているが、推理力や知識の豊富さは長女以上である。洞察力は人間関係にも及び、押しが強く、自分の望みを叶えるためや損得勘定から不道徳や不誠実なことも辞さない。
大学院を家の事情で退学したのち、客として出入りしていたビブリア古書堂の店員となり、前店主と結婚した。店では主に通販を担当し、独自に動いて「儲かっていた」と言われるほどの利益をあげていた。失踪はしているが離婚の手続きはしていない(4巻)。
栞子と瓜二つである。
志田(しだ)

ビブリア古書堂の買い取り常連の男で、せどり屋。ホームレスで、鵠沼の橋の下に住んでいる。
『落穂拾い』にまつわる事件で小菅と親しくなる。その後本に対する感想を言い合う関係となって、彼女から「先生」と慕われるようになった。金属製の爪切りと耳掻きを贈られた。
「志田」は偽名。本名は不明であったが、5巻で判明する。
篠原智恵子は恩人。
笠井菊哉(かさい きくや)/田中敏雄

志田の知り合いで、同じくせどり屋。長身でノーブルな雰囲気の青年。インターネットで廃盤CDやゲームを取り扱う「笠井堂」の店主。志田からは「男爵」と呼ばれる。
1巻で大庭要三と名乗り、栞子の「晩年」を狙って栞子を階段から突き落とした。笠井菊也は「せどり男爵物語」からとられた偽名であり、本名は田中敏雄で、作中で大輔の祖母と不倫関係にあったとされている田中嘉雄の孫である。
1巻の事件で被告として裁判を待つ身であるが、保釈中の6巻で再登場し、主人公のふたりに、栞子の持つ「晩年」とは別の祖父が手放した「晩年」の捜索の依頼をする。大輔に対して既知感を持っており、6巻で大輔が祖父にまつわる縁を明かした際には、大輔に対して血縁者としての情を表している。
小菅奈緒(こすが なお)

文香の同級生で、女子高生。ショートカットで長身の活発な性格。ボーイッシュで男口調で話す。学校では人気がある。
『落穂拾い』にまつわる事件をきっかけに、ビブリア古書堂の常連客となったが、事件に関して自分が取った行動や気持ちを全て言い当てられたことから、栞子に対しては苦手意識があり、主に大輔や文香と交流している。
また、志田のことを先生と呼び、慕っている。
坂口昌志(さかぐち まさし)、坂口しのぶ

逗子に住む夫婦。『論理学入門』をめぐる一件を機に、ビブリア古書堂の常連客となった。
作者は自分と同じ生年月日のキャラクターを登場させる癖があり、本作では坂口しのぶが当たるという。
滝野蓮杖(たきの れんじょう)

港南台にある「滝野ブックス」の息子。古書市場では経営員。
短い髪をきっちりと分け、メタルフレームの眼鏡を着用し、顎に薄く髭を生やしている。栞子とは顔見知りであり、幼い頃からお互いの家を行き来していた間柄。
井上太一郎(いのうえ たいちろう)

辻堂にある古本屋「ヒトリ書房」の店主。主にミステリーを取り扱っており、品揃えが充実している。
真っ白な白髪と針金のように痩せた体躯。かつて智恵子には私生活を種に顧客の紹介を強要されたことがあり、栞子に対しても冷淡な態度を見せる。

制作背景

著者の三上は実際に古書店で3年間にわたるアルバイトの経験があった。ファンタジーやホラーで小説家としての実績を重ねたあと、書き下ろしの依頼を受けていつか書きたいと思っていた古書店を舞台とした小説を別の企画と共に提案したところ、この企画の方が採用され、執筆に至った。この企画は20代男性を対象としたものであったが、2013年現在、読者層は女性が8割を占めている。

三上は4巻発売時点で物語はそろそろ後半に入るという構想を語っており、長さとしては「あと2〜3巻か、もう少し伸びるかも」と語っている。あまり長い作品にはできないという展望であるが、その一因は「古書のネタ探しが大変」なためだという。

社会的評価

2012年1月、発行部数がシリーズ累計103万部となり、メディアワークス文庫で初のミリオンセラー作品となった。

2012年の文庫部門総合ベストセラー第1位(トーハン調べ)。シリーズ累計発行部数は2012年4月時点で200万部を、第3巻が発売された同年6月時点で300万部を、2014年12月時点で600万部を、2020年6月時点で700万部を突破している。

受賞や書評雑誌によるランキングとしては、第65回日本推理作家協会賞(2012年)短編部門に「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」(第2巻収録)がノミネート、2011年度本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位に選ばれた。

2012年には本屋大賞にノミネートされた。文庫本のノミネートは初。また、同じく書籍関係者である図書館員が「来館者に手に取ってもらいたい本」を選ぶ「TRCスタッフが選んだ本2012」(図書館流通センターによる企画)では、第1巻が文庫部門の1位となった。

登場書籍への影響

テレビドラマ化以降、作中に登場する夏目漱石の『それから』、宮沢賢治の『春と修羅』などのモチーフとなった書籍も売上を伸ばし、放送直後にネット書店などで売り切れ状態になるという現象も起きている。作品にはマニアックなものも多く、異例な反応として注目を集めた。『ダ・ヴィンチ電子ナビ』編集部は、小山清『落穂拾ひ』などは絶版となっていたが、2013年の3月にちくま文庫から復刊されることが決まったことを、本作で取り上げられたことによる影響とみている。ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』が河出書房新社から復刊される際にも、本作の登場書籍であることにふれられている。

既刊一覧

『ビブリア古書堂の事件手帖7 〜栞子さんと果てない舞台〜』までが第1シリーズ、『ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜』以降が第2シリーズとなっている。2021年7月30日からドワンゴの『ListenGo by dwango.jp (リスンゴ)』で、坂井恭子による朗読のオーディオブックが順次データ配信されている。

角川つばさ文庫版は、小学生高学年向けに振り仮名と挿絵を追加した新装版となる。

# タイトル 初版発行日(発売日) ISBN 出版
1 ビブリア古書堂の事件手帖 〜栞子さんと奇妙な客人たち〜 2011年3月25日(同日 978-4-04-870469-4 メディアワークス文庫
2016年8月15日(同日 978-4-04-631636-3 角川つばさ文庫
2 ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜 2011年10月25日(同日 978-4-04-870824-1 メディアワークス文庫
2017年5月15日(同日 978-4-04-631698-1 角川つばさ文庫
3 ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜 2012年6月23日(同日 978-4-04-886658-3 メディアワークス文庫
2018年2月15日(同日 978-4-04-631769-8 角川つばさ文庫
4 ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜 2013年2月22日(同日 978-4-04-891427-7 メディアワークス文庫
5 ビブリア古書堂の事件手帖5 〜栞子さんと繋がりの時〜 2014年1月24日(同日 978-4-04-866226-0 メディアワークス文庫
6 ビブリア古書堂の事件手帖6 〜栞子さんと巡るさだめ〜 2014年12月25日(同日 978-4-04-869189-5 メディアワークス文庫
7 ビブリア古書堂の事件手帖7 〜栞子さんと果てない舞台〜 2017年2月25日(同日 978-4-04-892640-9 メディアワークス文庫
8 ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜 2018年9月22日(同日 978-4-04-912044-8 メディアワークス文庫
9 ビブリア古書堂の事件手帖II 〜扉子と空白の時〜 2020年7月22日(7月18日 978-4-04-913083-6 メディアワークス文庫
10 ビブリア古書堂の事件手帖III 〜扉子と虚ろな夢〜 2022年3月25日(同日 978-4-04-913952-5 メディアワークス文庫

オフィシャルブック

タイトル 初版発行日(発売日) ISBN 出版
栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック 2013年5月25日(同日 978-4-04-100827-0 角川文庫
ビブリア古書堂セレクトブック ブラック・ジャック編 2017年2月25日(同日 978-4-04-104900-6 角川文庫
栞子さんの本棚2 ビブリア古書堂セレクトブック (2018年10月24日 978-4-04-107531-9 角川文庫

単行本未収録

タイトル 初版発行日 初出 出版
太宰治『待つ』 2017年2月 ビブリア古書堂の事件手帖 7巻発売記念スペシャル書き下ろし掌編 フリーペーパー メディアワークス文庫
中川李枝子 山脇百合子『ぐりとぐら』 (福音館書店) 2018年8月 映画『ビブリア古書堂の事件手帖』ムビチケ特典冊子『ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜 特別版』 メディアワークス文庫

スピンオフ作品

漫画版

2012年から2つの漫画版が連載を開始している。

アルティマエース・ASUKA版(ナカノ作画)

角川書店の隔月刊雑誌漫画雑誌『アルティマエース』Vol.3号(2012年2月18日発売)より連載開始。アルティマエースがVol.7号で休刊となったため、角川書店の月刊少女漫画雑誌『月刊Asuka』の2013年2月号(2012年12月24日発売)より連載を再開し、2014年9月号(2014年7月24日発売)まで連載された。原作の第1巻から忠実にコミック化しており、原作第1巻のコミカライズは第1巻から4巻に渡るなどゆったりとした丁寧なペースでコミカライズしていたが、原作第2巻を最後まで描いたコミックス第6巻にて完結した。作画はナカノ、単行本のレーベルは角川コミックス・エース。

2012年8月現在、第1巻だけで発行部数が10万部を突破している。

# 初版発行日(発売日) ISBN
1 2012年6月26日(6月21日 978-4-04-120371-2
2 2013年1月10日(1月8日 978-4-04-120581-5
3 2013年7月26日(7月23日 978-4-04-120780-2
4 2014年1月25日(同日 978-4-04-120943-1
5 2014年3月24日(3月26日 978-4-04-121053-6
6 2014年9月26日(同日 978-4-04-102113-2

good!アフタヌーン版(交田稜作画)

講談社の漫画雑誌『good!アフタヌーン』2012年23号(2012年7月7日発売)から連載開始。作画は交田稜。

# 初版発行日(発売日) ISBN
1 2012年12月21日(同日 978-4-06-387866-0
2 2013年6月7日(同日 978-4-06-387901-8
3 2014年1月23日(同日 978-4-06-387943-8

テレビドラマ

2013年1月14日から3月25日まで、フジテレビ系列の月9枠にて連続テレビドラマ化された。栞子を演じた主演女優は剛力彩芽で、当時の彼女のボーイッシュなイメージとは不一致なキャスティングは、インターネット上などで賛否両論を生んだ。ドラマの時系列は原作と違いエピソードの順番がシャッフルされたり、栞子の怪我の事情が変わった部分がある。また、オリジナル要素としてメインキャラクターたち行きつけの甘味処とその店員たちが登場した。

映画

2017年2月、実写及びアニメ映画化されることが発表された。

実写映画

黒木華と野村周平のダブル主演で2018年に公開された。

企画は2014年の秋ごろからされており、撮影は2017年10月初旬から11月上旬にかけて行われた。

キャスト(実写映画)
  • 篠川栞子 - 黒木華
  • 五浦大輔 - 野村周平
  • 稲垣 - 成田凌
  • 五浦絹子 - 夏帆
  • 田中嘉雄 - 東出昌大
スタッフ(実写映画)
  • 原作 - 三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」(メディアワークス文庫 / KADOKAWA刊)
  • 監督 - 三島有紀子
  • 脚本 - 渡部亮平、松井香奈
  • 音楽 - 安川午朗
  • 主題歌 - サザンオールスターズ「北鎌倉の思い出」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
  • 企画プロデュース - 小川真司
  • プロデューサー - 服部美穂、千綿英久
  • 撮影 - 阿部一孝
  • 照明 - 木村匡博
  • 録音 - 浦田和治
  • 美術 - 黒瀧きみえ
  • 装飾 - 石渡由美
  • 衣装 - 宮本まさ江
  • ヘアメイクデザイン - 倉田明美
  • 編集 - 加藤ひとみ
  • スクリプター - 吉田久美子
  • 助監督 - 佐伯竜一
  • 制作担当 - 小野山哲史
  • 配給 - 20世紀フォックス映画、KADOKAWA
  • 制作プロダクション - 角川大映スタジオ
  • 制作協力 - カズモ
  • 製作 - 「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会
スピンオフ作品

峰守ひろかずの著、おかだアンミツのイラストにてKADOKAWAの電撃文庫からスピンオフ作品が刊行された。葵季むつみの作画で同社の漫画雑誌『月刊コミックアライブ』にてコミカライズもされた。

小説(スピンオフ作品)

# タイトル 初版発行日(発売日) ISBN
1 ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 2017年3月10日(同日 978-4-04-892755-0
2 ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 2 2018年10月10日(同日 978-4-04-912018-9

漫画(スピンオフ作品)

# タイトル 初版発行日(発売日) ISBN
1 ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 1 2018年10月22日(同日 978-4-04-065177-4
2 ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 2 2019年6月22日(同日 978-4-04-065410-2