ベルモンド Le VisiteuR
漫画
作者:石岡ショウエイ,
出版社:集英社,
掲載誌:週刊少年ジャンプ,
レーベル:ジャンプ・コミックス,
発表期間:2007年,
巻数:全3巻,
話数:全19話+読切,
以下はWikipediaより引用
要約
『ベルモンド Le VisiteuR』(ベルモンド ル・ヴィジトゥール)は、石岡ショウエイによる日本のファンタジー漫画作品。『週刊少年ジャンプ』(集英社)2007年32号から51号まで連載された。
連載開始以前に、『赤マルジャンプ』2006年SUMMER号にて「ベルモンドの拷問百景 - Belmonde le visiteur -」のタイトルでプロトタイプの読切作品が発表されている。
概要
少年漫画としては珍しく、前近代のフランスが舞台の、拷問をテーマとしたサイコホラー漫画作品。連載話数の単位は「第〜幕」と表記される。
作中前半で行われていた拷問は肉体的なものではなく、主人公の拷問吏・ベルモンドの持つ特殊能力を用いた精神的なものである。そのため、流血や痛みを感じる様子などの直接的な残虐表現が描かれることは少ない。
反面、主人公・ベルモンドが外の世界に出てからの後半部分では拷問描写はほとんどなく、登場人物をほぼ一新し、魔法を用いたファンタジーバトル作品となっている。
内容の異色さからあまり人気は得られず、ストーリーに収拾がつかぬまま19回で終了となった。作者の石岡自身、単行本で本作が連載には向いていないとの意見があったことを仄めかしている。
2011年2月1日より無料の漫画配信サイトJコミでの配信が開始された。これに伴い、単行本は絶版となっている。
あらすじ
17世紀前半のフランス・パリ近郊。修道院「リヴィエール・サン・ミシェル」の地下室に棲む男シィエン・ベルモンドは、重罪人から真実を吐かせる"真実を観る者"(ヴィジトゥール)の異名を持つ拷問を生業としていた。不可思議な能力を持つ彼の前に、罪人はなす術無く真実を晒してしまう。
そんな彼の許に、仮面(ルマスク)という謎の男から差し向けられた五人衆「ティフォ」が刺客として送られてくる。ティフォを倒し、真実を観たベルモンドだったが、仮面の正体はベルモンドの幼なじみで、パリの一貴族・ダルダニアンから差し向けられた修道士のジョルジュだった。離叛したジョルジュに左目を奪われ、瀕死の重傷を受けたまま逃げられてしまうベルモンド。
時同じくして、ダルタニアンの不穏な動きに気付いた宰相リシュリウは、ベルモンドに修道院の外へ出るよう命じ、ベルモンドはランディ党の魔女・ミディとスワールとともに、彼の目を使って「魔女の力」を得ようとするダルタニアン率いる一派・黄土に捧ぐ十字架の討伐に向かう。
登場人物
主要人物
シィエン・ベルモンド・ドゥ・ランディ
本作の主人公。修道院『リヴィエール・サン・ミシェル』の地下室に棲む。「地下に潜む者らしからぬ気高い男」と評されているが、性格は掴みどころがない。普段は手にキセルを持っている。
「剣で思いのままに物を斬る」特殊技術と「意志が弱った人間の目から真実を観る」特殊能力を持ち、"真実を観る者"(ヴィジトゥール)の異名を持つ。それらを使って重罪人から真実を吐かせる拷問を行っている。
ベルモンドが持つ剣は「ランディ」という名で、「七曜剣」と呼ばれる7つの剣の1つである。
能力を使用する際に眼の色が変わるため、その瞬間のみ近づかなければ術が効かないという弱点がある。また、魔力にも限界があり、短時間で使い続けるのは難しい。
出生に秘密があり、それ故生まれてから一度も地下室の外に出たことがなかった(詳細は後述)。
幼い頃実の祖父から凄惨な拷問を受け、その無数の傷痕は今でも身体中に残っている。またその拷問の際、1人目の拷問吏・ロケを噛み殺し、血の感触を知った経緯がある。
趣味は、凶悪犯罪に使われた凶器の収集。拷問の報酬もその凶器で取引される。
ニンジンが嫌いで、残す度に副修道院長のアンドレに説教されている。また多少の悪口には動じないが、「流し目」をバカにされると怒る。
絵画の腕前はなかなかのものであるが、女性画に関しては「ヌードしか描かない」らしい。
ジョルジュに左眼を抉られるなどされた上、ムスクトンに左足を銃で撃たれるなど重傷を負う。しかし、他の親衛隊によって一命を取り留める。
実は「貫きの眼」と呼ばれるひとつの魔女居住区(詳細は後述)にひとりしか生まれない党首の素質を持っていて、一連のジョルジュの謀叛の後、魔女・ミディとスワールによってランディ党の党首に任命される。そして彼等と共に、ダルタニアンの動向を知る三銃士・アトスの元へ向かうためパリへと出発する。
ミディ
スワール
ロラン
セリーヌ
クロエ
アルマン・ジャン・デュ・プレシ・リシュリウ
修道士
アンドレ
五人衆ティフォ
ゴシィスマ
プッチ
ドドルワ
ゴゴーシュ
黄土に捧ぐ十字架
シャルル・ダルタニアン(現在)
黄土に捧ぐ十字架の長的存在。行動派だが病気がちで余命いくばくもない。とぼけた性格で、ジャンヌやポルトスによく世話を焼かせる。かつてはルイ13世に仕え、フランス一の英雄と呼ばれていたが、魔女の血と眼を手に入れ、ルイ13世を暗殺しようと企んでいる。その真の目的は、魔女の力に溺れ生きる屍となりかけていたルイ13世を、その苦しみから救うために「人」であるうちに彼の命を絶つためだった。
ベルモンドから抜き取った「貫きの眼」は左掌に転移している。創世の七曜剣の一つ「サムディ」を手に入れ、死人を操ってベルモンドたちを襲う。残る5つの七曜剣の力で国王を救うためにベルモンドに同行するようであるが、本編はどちらがリーダーとなるか決着を決める場面で終わっている。
ジョルジュ(現在)
三銃士
アラミス
アトス
三銃士の一人。黒髪の長髪で目の下に大きなクマがあり、黒いシルクハットをかぶっている。ダルタニアンの動向を知っている唯一の人物。銃士隊の頃に妻のミレディ・アンヌ・クラリックを魔女狩りによる拷問の末に処刑され、ショックで酒に溺れてアルコール依存症に陥り、戦いの際に怪我を負った上に銃が撃てず、ダルタニアンにも致命傷を負わせてしまう。そのことを憂い自殺を試みるが、ミディに助けられる。現在はグリモーが傍について世話をしている。
ダルタニアンにはずっと疎まれていたと思っていたが、ダルタニアンがアトスをベルモンドとの戦いから遠ざけるためにパシフロールを派遣したことを知る。
元銃士隊の3人、特にダルタニアンには深い悔恨の念を抱いており、彼が魔女の力を手に入れることを全力で止めると誓う。その真の目的は、妻を亡くしたアトスに魔女を憎むことで生きるようにかつて説いていたダルタニアンの、その現在の真意を確認するためである。
サムディ党
ベルモンドの秘密
出生
ベルモンドの父親は、とある有名貴族の青年だとされている。彼は当時はまだ禁忌であった奴隷の女性との恋に落ちたため、一族の謀略によって女性は魔女の疑いをかけられ火刑となる。しかし女性は既に身籠っており、処刑前夜に生まれた子供をある修道士が地下室に匿ったのがベルモンドである。
後日、この事実は青年の一族に知られることとなるが、「生涯地下室から外へ出さない」ことを条件に不問となった。この条件が破られた場合、院内の修道士全員が火刑に処されることになっている。なお、彼の存在と拷問吏については、国家級の最高機密である。また、ベルモンドのことを外部に知られた場合は、証拠隠滅のため彼を殺害することになっていた。
また、この地下室は元々は、ベルモンドが実の祖父であるレフォル侯爵によって拷問されるべき部屋であった。
特殊能力
創世の七曜剣 第一の剣「ランディ」
解錠(ウヴリール)
以上の能力を持つに至った理由として、作中前半ではあくまでも「記録文書上の仮説」として描かれているが、「魔女の疑いをかけられた彼の母親が、実は本当に魔女の血筋であったのではないか」としている。
さらに物語後半でベルモンドが、「貫きの眼」を持つ第一・ランディ党の党首であることが明かされた。
七人の魔女と魔女術
魔女の一族の先祖といわれる者たち。元は聖書においてアダムとイヴをそそのかした蛇にまで遡ると言われる。彼らは魔女の中でも特に強い力を持つものとして地上に君臨したが、その力を利用し、自分たちをさげすむ人間たちと距離を置き、各々人里はなれた場所に居住地(ブール)を築いた。なお、ここでいう魔女に男女の区別はない。七人の魔女は以下のとおりである。
- 第一の魔女 ランディ
- 第二の魔女 マルディ
- 第三の魔女 メルクルディ
- 第四の魔女 ジュディ
- 第五の魔女 ヴァンドゥルディ
- 第六の魔女 サムディ
- 第七の魔女 ディマンシュ
創世の七曜剣
創世の七曜剣とは七人の魔女が死の間際にその力を集約することによって作られた剣である。
第一の剣「ランディ」
第六の剣「サムディ」
魔女の道具
貫きの眼
ベルモンドの左眼はジョルジュに抉り取られ、オーブルによってダルダニアンの体内に取り込まれた。この眼を持つ者が創世の七曜剣を使える者の条件である。
静寂の青炎
目獲りの爪
緑眼の種子
道理の柩
木星記
回帰の箒星
居住地
シジェム・セルバ
舞台設定
- 物語前半の舞台である「リヴィエール・サン・ミシェル」は架空の修道院であるが、ルイ13世統治下で宰相だったリシュリウ枢機卿は実在の人物で、ブルボン王朝繁栄の立役者でもある。
- 作中の宰相リシュリウは、表向きは拷問を野蛮なものとして禁止しているが、地下室のみで生きかつ特殊能力を持つベルモンドにのみ「囚人に対するいかなる行為も許される」という許可を出し、親衛隊の手に負えない重罪人を秘密裏に修道院の地下へ送る人物として描かれている。
- リシュリウ枢機卿が禁止したのは一般犯罪に対する拷問のみであり、史実で合法的な拷問が禁止されたのは1788年で、この当時はまだ法定拷問が存在しており、公務員としての拷問官が存在していた。
- ダルタニアンはデュマの小説『三銃士』の主人公であり、実在の人物でもある。史実のダルタニアンはリシュリウの後を継ぎ宰相となったマザランに仕え、銃士隊の隊長を務めた。
- ポルトス、アトス、アラミスはそれぞれ三銃士の一人。ムクストン、グリモーは、プランシェ、バザンと並ぶダルタニアンと三銃士の従者の一人。作中でアトスの元妻として描かれているミレディ・クラリックは、『三銃士』ではリシュリウの腹心である謎の悪女として描かれ、後にダルタニアンと対決することになる。
- またジョルジュも実在の人物で、フランスで教育を受けたイギリスの名門貴族バッキンガム公である。『三銃士』ではフランス王妃アンヌに恋したため、フランスに戦争を仕掛けようとする役回りである。
- リシュリウ枢機卿が禁止したのは一般犯罪に対する拷問のみであり、史実で合法的な拷問が禁止されたのは1788年で、この当時はまだ法定拷問が存在しており、公務員としての拷問官が存在していた。
読切「ベルモンドの拷問百景 - Belmonde le visiteur -」
本作品のプロトタイプとなる読切作品。『赤マルジャンプ』2006年SUMMER号に掲載された。物語の内容は、連載版の1・2話とほぼ同じ展開である。単行本第2巻に収録。
あらすじ
枢機卿親衛隊の青年・ロランは、拘束した盗賊からアジトを訊き出すために、修道院「リヴィエール・サン・ミシェル」の地下室を訪れ、"真実を観る者"ベルモンドと出会う。
連載版との差異
- 連載版ではダルタニアンの従者であるジャンヌが、ベルモンドの世話係として登場していた。これは、第1話のロランとセリーヌの「説明役」としての役柄を逆転させた役割を作中で担っている。
- 斬られた身体が傷みを感じるなど、連載版よりも拷問描写にリアルさを持たせている(本誌連載が決まった際、それでは少年誌的にまずいということでソフトな描写に変更したと、単行本で明かしている)。
- ロランの役職名が違う(読切では「第三班輸送係」)。
- 飼い猫が白猫と黒猫の2匹いた。
- 罪人に問いかける際の決め台詞が異なる。
トラ!! the goal-d Gravi-ruler
『ベルモンド Le VisiteuR』単行本第3巻に収録されている短編。『赤マルジャンプ』(集英社)2005年SUMMER号に掲載された、45頁の読切。スポーツ物で、高校サッカーをテーマにしている。
あらすじ
日ノ本トラは「サッカーで日本一になる」ことを夢みて、強豪校・虎ノ衛(このえ)高校サッカー部へ入部を希望する。彼が金髪のアフロヘアであることや、サッカー歴がないことを理由に、部長の宇多方やエースの浅野は全く相手にしない。しかし、器用にバックスピンを操る姿に、2人はトラの存在を気にしていくようになる。
そんな折、宇多方は偶然トラと姉のリョウが働くキャバレー「ジャンクスタ」へ辿りつき、トラの真意を知ることになる。そして、浅野を抜いてゴールを決めれば入部を認めるという条件を突き出す。
登場人物
日ノ本 トラ(ひのもと トラ)
サッカー競技に関してはほぼド素人であるが、両親が亡く幼い頃から「ジャンクスタ」でボール使いの芸を披露していた上、リョウ仕込みのバックスピンは宇多方や浅野を驚愕させる。
宇多方 夢二(うたかた ゆめじ)
浅野 修(あさの しゅう)
日ノ本 リョウ(ひのもと リョウ)
書誌情報
読み切り作品やオマケ漫画、キャラクターの誕生日や身長といった設定が記載されている。
アンソロジー
- 東日本大震災チャリティー漫画本 PARTY! SORA(2011年8月5日発売、メディアパル、ISBN 978-4-89610-202-4)
- ベルモンド Le VisiteuR Part1:Heaven Part2:ノベライズ!
- ベルモンド Le VisiteuR Part1:Heaven Part2:ノベライズ!
編集者
- 吉田幸司:第1話(2007年7月) - 最終話(2007年11月)