小説

ペテロの葬列


題材:バス,



以下はWikipediaより引用

要約

『ペテロの葬列』(ぺてろのそうれつ)は、宮部みゆきの長編推理小説。杉村三郎シリーズ第3作。

概要

時系列は前作『名もなき毒』から約2年経過している。『千葉日報』など22紙で2010年9月12日から2013年10月3日まで順次掲載され、2013年12月20日に集英社から単行本が発売された。2016年4月8日に文藝春秋から上下巻に分冊した文春文庫版が発売され、解説を杉江松恋が務めた。

主人公は自身が巻き込まれたバスジャック事件に伴う複数の謎を調べていくうちに、昭和に起きたある有名な大事件にたどり着く。日本という国、人間の本質に潜む闇と向き合うことになった主人公は本作で人生の転機が訪れる。過去に罪を犯したが後に悔い改めた者の象徴として聖ペテロがフィーチャーされ、1660年にレンブラントによって描かれた絵画「聖ペテロの否認」が作中の要素として登場する。また2000年から2002年の映画作品『ロード・オブ・ザ・リング』(原作『指輪物語』)がストーリーの要素として用いられている。

TBS系列にて2014年7月から放送の杉村三郎シリーズ第2弾、『ペテロの葬列』として映像化された。

あらすじ

今多コンツェルン会長室・直属グループ広報室に勤める杉村三郎は、編集長の園田瑛子と広報誌の取材で房総の町を訪れた帰り道、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇する。運転手を含め、乗客は男女合わせて7人。老人は「警察を呼んでください」と意外な指示を出した上で、人質全員に「後で慰謝料をお支払いします」と謎の提案をする。そして老人は自らが「悪人」と称する3人の人物達を連れてくるように要求するが、事件は3時間というあっけなく短い時間で解決することとなる。

バスジャック事件後、三郎の周囲では、今多コンツェルン本社から異動してきた井手正夫によるセクハラ問題、そしてかつて広報室での以前のトラブルがきっかけで知り合った私立探偵・北見一郎のかつての依頼人・足立則生が容疑者となった殺人事件が発生する。さらにバスジャック事件の人質たちの元に、犯人の老人が言っていた通りに「慰謝料」が届けられてくる。

「慰謝料」を受け取るべきか、それとも警察に届けるべきか。扱い方に決着を付けるべく三郎は乗客たちの協力を得ながら、「慰謝料」の送り主や、犯人の老人の真意を探っていくが、やがて思いがけない事件が待ち受けていた。そして、人間の本質に潜む闇の正体に触れてきた三郎自身にも、人生の転機が訪れる。

登場人物

杉村三郎

今多コンツェルングループ広報室副編集長兼記者。
今多嘉親

今多コンツェルン会長。三郎の義父。
杉村菜穂子

三郎の妻。嘉親の娘。
園田瑛子

グループ広報室室長兼編集長。
北見一郎()

故人。私立探偵。元警察官。2年前の連続無差別毒殺事件に関わった際に三郎を自らの遺志を継いでくれる人物と見込み、遺言を託した。
北見夫人

夫の一郎が警察官を辞め私立探偵を開業するという"暴挙"に出た際に息子を連れて夫のもとを去っていたが、死の床にある夫のもとに戻り最期を看取った。その後、夫が住んでいた都営住宅に息子とともに入居した。
司()

北見氏の息子。かつては家庭を捨てた父親に対して怒りがあったが、父親が私立探偵として立派に仕事を果たし多くの人を助けたことを知り、その怒りも溶解した。
秋山省吾()

若手ジャーナリスト。2年前の連続無差別毒殺事件に関わった際に三郎と知り合い、従妹の五味淵まゆみを広報室で雇わせたことがあった。

バスジャック事件の関係者

佐藤一郎

バスジャック事件の実行犯である老人。「佐藤一郎」は事件の最中に自らが名乗った偽名。痩せて小柄な体躯ながらも拳銃という抑止力と巧みな話術からくる人心掌握術で人質達を支配下に治めていった。その隙のない制圧の仕方から園田には正体について何かしらの心当たりを抱かれており、やがては怖れられる。事件後は「暮木一光(くれき かずみつ)」というアパート暮らしの老人で、顔見知りの民生委員からも生活保護が必要だと感じさせるほど貧乏だったことが明らかとなる。
坂本啓()

バスジャック事件の人質の一人である青年。大学に通っていたが、将来の展望も無いまま大学に通わず中退した。バスには介護施設「クラステ海風」に清掃員のバイト面接の帰りに乗車していた。事件後は前野と交際するようになり、清掃会社に勤務するが、後に辞職する。
前野()メイ

バスジャック事件の人質の一人である若い女性。将来の夢はパティシエで、夢に向けての学費を工面するため「クラステ海風」で調理補助のアルバイトをしている。人懐っこく泣き虫な性格で、乗客の中では慌てん坊でそそっかしい面が目立つ。そこから小学1年の頃に名前の「イ」を「リ」と書いてしまったことから転じて「前のめり」と呼ばれることがあった。
田中雄一郎()

バスジャック事件の人質の一人で、金属加工業を営む中小企業「田中金属加工」社長の中年男性。負けん気が強く、現実主義かつ利己的な性格。佐藤に食ってかかるものの、しばしやり込められる。椎間板ヘルニアを患っている。佐藤の「慰謝料」の話には半信半疑ながらも会社に必要と一番積極的に聞き入っている。
迫田とよ子()

バスジャック事件の人質の一人である薄紫の白髪染めの老婦人。関節炎により足が悪い。「クラステ海風」に入所している母を訪ねた帰りに、いつも乗車するバスがトラックの横転事故で通行止めになったため、三郎達の乗るバスに乗車した。事件の際には危機的状況下という認識がずれた発言を繰り出し、最後は柴野と共にバスから降ろされた。
柴野和子()

バスジャック事件に遭った路線バス「しおかぜライン」の女性運転手。非常に責任感の強い女性で、バスジャック事件の最中に自分だけ乗客を残してバスから降りることを良しとしない頑なな意思を持つ。シングルマザーで、佳美という娘がいる。
山藤()警部

千葉県警特務課所属。バスジャック事件の現場では交渉人を担当し、解決後も相方の今内警部補と共に三郎達に事情聴取を行う。
迫田美和子()

迫田の娘。

今多コンツェルン関係者

遠山()

会長第一秘書。異名「氷の女王」。
橋本真佐彦()

今多コンツェルン本部広報課外報係会長秘書室付担当次長。広報課の精鋭。バスジャック事件に巻き込まれた杉村の身を案じた妻の菜穂子を事件現場近くの県警に連れてくる。
森信弘()

元今多コンツェルン取締役。三郎と園田は広報誌「あおぞら」の取材のため、彼にインタビューを求めていた。大手の都銀から引き抜かれ財務畑で歩んでいたが、認知症を患った妻のため昨年春に引退してから房総半島の海辺の別荘地〈シースター房総〉に移り住んだ。聡明でフランクな人柄で周りにも慕われ、若い頃はモテていた偉丈夫。妻のボランティア活動の縁で菜穂子とも親しく、三郎を気に掛ける。
井手正夫()

今多コンツェルングループ広報室社員。広報室の歴史の中で初の今多コンツェルン本社から異動してきた。
間野京子()

今多コンツェルングループ広報室準社員。既婚で子持ちであるが夫は海外に単身赴任中である。以前は嘉親が買収した高級エステサロン勤務のエステティシャンだったが、家庭の事情を理由に顧客の都合で不規則な時間帯勤務になる仕事を続けられず、彼女の明るさと腕を慕っていた常連の菜穂子が嘉親に頼み込んで広報室に務めることとなった(これはコンツェルンに対する実権を持たない菜穂子が人事に働きかけた例外中の例外となった)。文章作りの巧さから広報室の即戦力となったが、一方で井手からのセクハラに悩まされてしまう。
野本()

今多コンツェルングループ広報室アルバイト。国際経済学を専攻する20歳の学生で、お洒落で周りに気の利く人当たりの良さから「ホスト君」と渾名されており、本人もホストの面接を受けて落ちたことがあるとのこと。広報室の中では歳が近い間野と仲が良く、井手のセクハラから間野を助けたりしており、井手に良い感情を抱いていない。
水田大造()

社屋内の喫茶「睡蓮」のマスター。

書誌情報
  • 単行本 : 2013年12月、集英社、ISBN 978-4-0877-1532-3
  • 文庫本 : 2016年4月、文春文庫、ISBN 978-4-1679-0584-2(上)、ISBN 978-4-1679-0585-9(下)
オーディオブック

前編が2023年8月18日、後編が同年9月29日よりAudibleで配信された。ナレーターは井上悟。

脚注・出典