ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!
以下はWikipediaより引用
要約
『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』(ルパンさんせい バイバイ・リバティー・ききいっぱつ!)は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』のテレビスペシャルシリーズ第1作。1989年4月1日に日本テレビ系の『土曜スーパースペシャル』にて放送された。視聴率は13.3%。
概要
1987年の『ルパン三世 風魔一族の陰謀』以来2年ぶりに製作された。テレビアニメ放送版での作品としては『ルパン三世 PARTIII』最終回以来3年半ぶりとなるが、本作中内で過去の3シリーズとの明確なつながりは描写されていない。監督は、『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』への参加経験を持つ出崎統。『風魔一族の陰謀』で一新されたキャストも本作で元に戻され、音楽担当も大野雄二が復帰しテレビアニメとしては『TV第2シリーズ』以来9年ぶりに「ルパン三世のテーマ」も使用された。
不定期ながら、現在も続くルパン三世テレビスペシャルシリーズの第1作であり、平成最初のルパン作品でもある。放送枠は、次作以降の『金曜ロードショー』ではなく『土曜スーパースペシャル』であった。放送時には、モンキー・パンチ書き下ろしイラストによる番組ポスターが製作された。
衣装は『TV第2シリーズ』に準じており(下記参照)、ルパンは再び赤色のジャケットを着用するが、ルパンのネクタイは黄色、五ェ門の白の着物・茶色の袴に変更された部分もあり、以降のスペシャルではほぼ全作で共通設定となった。キャラクターデザインは担当した古瀬登によると、初めて担当した仕事が『ルパン三世 ルパンVS複製人間』であったため、敬意を表して同作に似せたものにしたという。このデザインはTVスペシャル第4作『ルパン三世 ロシアより愛をこめて』まで続いた。
1995年3月に長年ルパン三世を演じてきた山田康雄が死去した際、同年3月31日の『金曜ロードショー』にて「山田康雄追悼企画」と題して再放送がなされた(視聴率17.0%)。
制作
本作は、プロデューサーの武井英彦によると、放送前年の秋から久々に行われた『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』の再放送が最高18%の高視聴率を記録するなど、反響が大きかったことを受け企画されたという。また、本放送終了から9年以上経ちファンの層も入れ変わっていることを意識し、新たに再放送でファンになった若い世代を主な対象にしている。
初めてのテレビスペシャルであるため、オリジナルプロットは原作者のモンキー・パンチに依頼。モンキーも丁度、当時最先端だったコンピュータウイルスに関するアイデアを持っていたため快諾、それを主題にしたプロットを基に柏原寛司が脚本を作成した。ゲストキャラクターのマイケルは、モンキーの「抜群に頭の切れる子供を出したい」という提案から誕生している。
完成作について、出崎の演出スタイルは大まかなあらすじを覚えると一気に勢いでカット割りを仕上げ、それに伴い様々な改変も行うというものだったため、当初の柏原が執筆した脚本から大幅にストーリーが変更されている。このことについて、後にシナリオディレクターの飯岡順一は、柏原の洒落た台詞が生かせずベタな人情芝居になったことに不満な思いがあったと語る一方で、当の柏原は「(改変されることは)よくあることだ」と気にしておらず、完成作にも納得していたという。
あらすじ
急激な情報技術の発達により、今やルパン三世の記録はネットワークを介して全世界の警察に共有される事態となっていた。盗みもしにくくなり、記録を盗んだり抹消しようとしても50年はかかると予測したルパンは引退を宣言し、最愛の女性ジュディとの甘い生活を夢見る。次元は旧友の泥棒ルースターの頼みを受け、彼がかつて盗み出し、自由の女神像に隠したという世界最大のダイヤモンド「スーパーエッグ」を手に入れようとする。当初、引退宣言したルパンは次元の誘いを断るものの、ジュディが3億ドルの借金を残して別の男と逃げてしまったため、泥棒稼業に復帰する。一方、アラスカで修行中の石川五ェ門は謎の襲撃者に狙われている美女イザベルを助け、彼女の護衛役となる。
ルースターと会うルパンらであったが、同じく「スーパーエッグ」を狙う謎の襲撃者の一団に襲われ、唯一詳細な隠し場所を知るルースターは殺されてしまう。そこでルパンは、探す時間を稼ぐため自由の女神像ごと盗んでしまう。像の中にはコンピュータの扱いに長けた天才少年マイケルが潜んでおり、コンピュータの演算結果によりルパンが女神像を盗むと予測していたという。マイケルの助言によって像をグランド・キャニオンに隠したルパンは、さらに彼より世界中のデータの消去や改竄ができる「ニューウイルス」と呼ばれるコンピュータウィルスの存在を教えられる。マイケルの狙いはこのウィルスの確保であり、ルパンもまた自分のデータを削除したいため、マイケルと手を組むことを決める。そしてルパンはついにスーパーエッグを手に入れる。
一方、スーパーエッグやイザベルを狙っていた謎の集団はスリーメイスンと呼ばれる世界的な秘密結社であった。実は彼らの狙いも「ニューウイルス」であり、スーパーエッグやイザベルはその鍵であった。総帥シルバーマン(No.1)は、後手に回っている幹部のジミー・カンツ(No.3)を叱咤し、謎の魔術でアジトに潜入してきた峰不二子を操り人形にしてしまう。
銭形警部の介入もある中で、ルパン一行は五ェ門と合流し、宝石商を名乗るイザベルからスーパーエッグの購入を打診される。ルパンは取引に乗り、スーパーエッグを引き渡そうとするが、シルバーマンに操られた不二子によってイザベルを奪われてしまう。また、その際にイザベルがマイケルの生き別れた母親だと判明する。
イザベルの正体はニューウイルスを開発した天才技術者で、スリーメイスンのNo.2であった。数年前に彼女は組織を裏切り、ニューウィルスの情報を隠したスーパーエッグを持って出奔していたため、彼らに狙われていた。しかし、捕らえられたイザベルは逆にカンツを篭絡してしまい、彼と共にシルバーマンを殺し、自らNo1となって組織を乗っ取ってしまう。そんな事態を知らないルパンや五ェ門はイザベルを奪還するためニューヨークにあるスリーメイスンの本部へ潜入するが、彼女の罠によってスーパーエッグを奪われ地下階に閉じ込められてしまう。
ニューウィルスを解放したイザベルであったが地位の簒奪を企むカンツにナイフで刺されてしまう。地下から脱出したルパンは瀕死の彼女を連れて屋上へ逃げる。後を追うカンツは五ェ門による返り討ちに遭って致命傷を負い、最期の悪あがきにニューウィルスを使ってアメリカやソ連の核施設のコントロールを奪って世界を破壊しようとする。ルパンとマイケルは協力して本部コンピュータを操作し、核ミサイルの発射を未然に防ぐ。
脱出するヘリの中でイザベルは息子との再会を喜びながら息を引き取る。マイケルは母に見立てた自由の女神像にバカヤロウと叫ぶ。
登場人物
レギュラー
ゲストキャラクター
マイケル
イザベル / No.2(ナンバーツー)
本作の主要人物でゲストヒロイン。
五エ門がアラスカで出会った美女。淑女だが男を手玉に取り、意のままに操ることにも長けている。謎の集団に追われており、宝石商を名乗って五エ門を護衛役に雇う。その正体はスリーメイスンの元No.2で、また「ニューウイルス」を開発した天才技術者。さらにはマイケルの実母でもあった。
理由は不明だが自らが開発したニューウイルスを、組織が所有していたスーパーエッグをキーにして封印してしまい、出奔していた。しかし、物語中盤で捕まってしまうと、逆にカンツを唆してシルバーマンを殺し、組織を乗っ取ってしまう。そしてニューウイルスを解放したものの、直後にカンツにナイフで刺され、地位を簒奪される。
先述のように男を手玉に取る一方で、実は亡くしてしまった夫(=マイケルの父親)を今でも愛している。今わの際に五エ門が「夫によく似た面影を持っていた」ことを告白し、律儀に守り続けてくれたことに対して心から感謝する。
ジミー・カンツ / No.3(ナンバースリー)
シルバーマン / No.1(ナンバーワン)
ルースター
エド
用語
スーパーエッグ
詳細な来歴は不明だが元はスリーメイスンの所有物であり、イザベルが組織から出奔する際に、ニューウイルスのデータを引き出す鍵にし、持ち出したものであった。このため、スリーメイスンはイザベルと共にその行方を追っていた。
ニューウイルス
スリーメイスンが今後の高度情報化社会に対応し組織の覇権を維持するために開発したもので、直接の開発者はイザベル。しかし、彼女が組織から出奔するにあたって、そのデータは自己暗示により彼女の深層心理内に封印され、解放にはスーパーエッグが必要となっている。
スリーメイスン
絶大な力を持つ古い組織だが、情報化技術の発達により衰退すると予測し、これをコントロールするニューウイルスを開発した。しかし、イザベルが出奔してしまったため、彼女と鍵となるスーパーエッグの行方を捜していた。
声の出演
- ルパン三世 - 山田康雄
- 銭形警部 - 納谷悟朗
- 次元大介 - 小林清志
- 石川五ェ門 - 井上真樹夫
- 峰不二子 - 増山江威子
- イザベル - 駒塚由衣
- マイケル - 田中真弓
- ジミー・カンツ - 津嘉山正種
- シルバーマン - 前沢迪雄
- ルースター - 大木民夫
- エド - 緒方賢一
- ジュディ - 幸田直子
- ジョーンズ - 石塚運昇
- 運転手 - 秋元羊介
- 係員 - 星野充昭
- 保安官 - 伊井篤史
- TVアナ - 稲葉実
- コンピューター - 堀内賢雄
スタッフ
- 原作 - モンキー・パンチ(双葉社刊)
- 監督 - 出崎統
- 助監督 - 篠原俊哉
- 脚本 - 柏原寛司
- 絵コンテ - さきまくら
- 演出助手 - 矢野博之
- キャラクター・デザイン・作画監督 - 古瀬登
- 作画監督補 - 長岡康史、とみたくに、佐藤雄三
- 美術監督 - 中村光毅
- 撮影監督 - 高橋宏固、松嵜泰三
- 編集 - 鶴渕允寿
- 音楽 - 大野雄二
- 音楽監督 - 鈴木清司
- 録音監督 - 加藤敏
- 音響効果 - 糸川幸良
- 録音制作 - 東北新社
- 制作担当 - 高橋伸治、松元文一
- シナリオディレクター - 飯岡順一
- プロデューサー - 安田穣、武井英彦、徳永元嘉
- 主題歌「エンドレス・トワイライト-最後の真珠-」
- 作詞 - 三浦徳子
- 作曲 - 大野雄二
- 唄 - 慶田朱美
- 企画協力:WOrds、飯岡順一事務所
- グラフィック協力 - ビデオ・サンモール
- 企画・制作 - 日本テレビ
- 製作 - 東京ムービー新社
- 作詞 - 三浦徳子
- 作曲 - 大野雄二
- 唄 - 慶田朱美
その他
- 奈良醸造(奈良県奈良市)が2019年に本作に因んだビール「Bye-Bye Liberty(バイバイ リバティー)」を発売している。新作のビールを仕込んでいるときに原作者モンキー・パンチの訃報を知った奈良醸造の醸造責任者は、この新作ビールに使用しているホップが「Liberty(リバティー)」という品種であったことから、敬意を表してTVスペシャルシリーズ1作目のタイトルから名付けた。Bye-Bye Libertyのスタイルはケルシュである。
参考文献
- 『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』DVD付属の冊子。
- 飯岡順一『私の「ルパン三世」奮闘記 アニメ脚本物語』河出書房新社、2015年。ISBN 4309275591。
- 「89年、ルパンのターゲットはコンピュータビールス」『アニメージュ Vol.129』、徳間書店、1989年3月。
- 「出崎統が描くハイテク時代の「ルパン三世」」『アニメージュ Vol.130』、徳間書店、1989年4月。