レイリ
漫画:レイリ
原作・原案など:岩明均,
作画:室井大資,
出版社:秋田書店,
掲載誌:別冊少年チャンピオン,
レーベル:少年チャンピオン・コミックス,
発表期間:2015年11月 - 2018年12月,
巻数:全6巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『レイリ』は、原作:岩明均、作画:室井大資による日本の漫画。『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、2015年12月号から2019年1月号まで連載された。
2019年、シナリオライター(脚本家)と作画家の分業により制作された漫画を対象とする漫画賞である、第3回さいとう・たかを賞を受賞した。
背景
原作の岩明は2001年から2002年ごろからこの作品を構想をはじめ、『ヒストリエ』の連載を抱えながら2013年暮れまでの約12年間の時間をかけてシナリオを作成した。その間に好きではあるが専門分野でない歴史の知識を地道に重ねたという。漫画担当の室井にとっては歴史物は初めてで、連載開始時は戦国武将は5人くらいしか言えなかったと単行本2巻の巻末コメントで語っている。
岩明は当初、「負け組にいたけどそれなりに出世した人物」と、それを調べていたら出てきた「負け組にいたけどもっと出世した人物」を主人公として考えていたが、何か違うと考えた結果、両者の間に位置する「実在する女性」に自由度を与えた上で主人公・レイリを仮託した。当初主人公として考えていた2人は脇役として残した、と単行本1巻の巻末コメントで語っている。
あらすじ
戦国末期、長篠の戦いにおける武田の敗残兵を追う織田の首狩り隊の巻き添えで11歳にして全ての家族を失った主人公の少女・レイリは、岡部丹波(岡部元信)に拾われ、彼を命の恩人と崇敬し、自分を守るために死んでいった家族達と同じように「いつか誰かの盾として死にたい」と思う「死にたがり」の少女として剣の腕を磨きながら育っていく。15歳の時、丹波のもとへ最前線の高天神城への異動を命じる伝令としてやってきた土屋惣三(土屋昌恒)に見いだされ、丹波のレイリを死なせたくないという思惑もあり、ここからレイリの「武田信勝の影武者」としての生活がはじまり、信勝や惣三との人間関係、斜陽の武田家の中での仲間の死を通して「死にたがりの少女」から脱していくレイリの姿を描く。
主な登場人物
レイリ / 零里
1565年生まれ。百姓の娘として生まれる。11歳の時に長篠の戦いで敗れた武田兵を追う首狩りの中で一家が襲撃を受け、父・母・弟がレイリを逃がすために盾となり死亡する。この際、長篠の敗戦で逃亡中であった岡部丹波(岡部元信)に命を救われ、孤児として丹波の下で育つ。15歳になるころには、丹波の家臣との木剣による打ち合いで敵うものがいないほどの剣技の上達を見せ、自分を逃がすために死んだ家族のように「恩人である丹波の盾として死ぬ」ことを生きる目標にする。しかし、丹波が最前線である高天神城に異動になるという命令が出た際に、レイリを戦場から引き離したかった丹波の思惑と、伝令に訪れた土屋惣三(土屋昌恒)に武田信勝の影武者候補として見初められたこととが重なって、丹波と離れ、信勝の影武者としての生活をはじめることとなる。その過程で武田家中の様々な人物との交わりを経て「死にたがり」から脱却し、自分を愛おしんでくれた人達のためにも生きなければならないと考えを改め成長を重ねてゆく。多くの武田家臣が見間違うほど容姿が武田信勝に酷似していることを活かして、真田昌幸から情報を聞き出したり、高天神城で玉砕論に傾く籠城の将たちに脱出するよう促したりするなど暗躍する。影武者生活の中で馬術・弓術・忍びの技なども人並み以上に習得し、重包囲された高天神城に忍び込んだり、家康の背後に計3度も忍び寄るなど武術を活かした活躍も見せる。「レイリ」は百姓の父がつけた名前であるが、漢字表記の「零里」は武田信勝の命名による。
武田家
武田勝頼
甲斐武田氏の当主。父・武田信玄はその死に際し「勝頼では信長に対抗できない、信勝を後継とせよ」と遺言を残したが、当時7歳の信勝が後継に指名されたことを受け入れきれず、信玄の遺言を蹴って家督を相続した。程なく長篠の戦いで大敗、失った家中の信頼を取り戻そうと奮起するが、父や、父が後継として指名した信勝に武将としての劣等感や焦りを抱いていて、信勝の現実的な献策に苛立ちを覚え疎んじたり、強い武田家を目指すばかりに決戦論を主張するなど熟慮に欠ける人物として描写される。
最終巻のあとがきで原作者の岩明は、近年は勝頼の評価を見直す声があるが、自身で改めて検討した末に従来(否定的評価)のままで良いと判断したと述べている。
武田信勝
勝頼の子。祖父・信玄によって勝頼を抜かし後継として指名された。普段は自惚れ屋気質で自分が美少年であり、才覚も信玄をしのぐ天才である「武田の希望の星」と吹聴するような尊大な性格だが、影武者が身代わりとして死んだ際は動揺して涙を見せたり、信長に対する策を求められ「勝てるわけがない」と本音を呟くなど脆い面も見せる。父に信頼を置かない家臣らの期待と、父に疎まれる懸念に板挟みになりながら武田家の命脈を持たせるため様々な策を巡らせている。頭脳明晰で、忍びを用いて情報を集めた結果から織田家中の実情を分析したり、徳川軍に包囲された高天神城を勝頼自ら救援に赴くべきとの主張に対して、武田主力を誘い出すための餌であるため見捨てるべきと主張するなど、鋭い考察を見せる。最後は穴山玄蕃の放った刺客の銃弾を受け、勝頼の身代わりとなって死亡する。
土屋惣三(土屋昌恒)
土屋平三郎(土屋忠直)
岡部丹波(岡部元信)
元今川家の家臣であったが、主家の滅亡後は武田家臣となる。今川時代に桶狭間の合戦後、自分の守る城と引き換えに信長から今川義元の首の返却を求めたエピソードが家康や元岡部隊の雑兵であったレイリの父に知れ渡っており、内外問わず文武両道の武将として評価は高い。長篠の戦いで武田家が敗戦し、その逃走中にレイリの一家が住む家に立ち寄るが、これは間接的にレイリ一家が惨殺されるきっかけとなってしまう。追手が気になり引き返したところで惨殺を知り、生き残っていたレイリを救出して養育することとなる。誰かのために死ぬことを目標として剣技に明け暮れるレイリの危うさを苦慮しており、自身が最前線の高天神城の主将として守備に向かうことになったのを契機に、レイリに決別の意を伝えて土屋惣三に託す。のちに救援を信じて高天神城で粘っていた所に忍び込んできたレイリが訪れ、救援が来ないという決定が秘匿され、捨て石とされていたこと伝えられる。城兵は玉砕論に傾いたがレイリの説得により包囲外の隘路から若手を中心とした選抜隊を逃がすこととなり、逃がす時間を稼ぐ囮部隊を引き受け徳川軍に突撃、死亡する。
横田甚五郎(横田尹松)
穴山玄蕃頭(穴山梅雪)
小山田信茂
武田の重臣。信勝の聡明さに大きな期待を寄せて親密な関係を築く一方、当主・勝頼は担ぐに値しない凡愚と内心軽視している。信勝いわく「家臣の中では最後の頼みの綱」。信勝に「武田が本拠を失った後でも少数精鋭で粘ればどこかの勢力が担ぎ上げる神輿として協力してくれるはずだから、その拠点が必要」との理由で城を求められ、万が一の際は自領内にある岩殿城で命を懸けて守り切ると約束する。しかし、信茂が防衛を誓ったのは信勝であり、彼の死亡とレイリが影武者を務めている事実を把握すると、勝頼を受け入れる義理はないと武田一行の受け入れを拒絶した。その後は史実と同じく、織田家に降伏するも処刑されたことが民の噂としてレイリの耳に入る。
和助
真田昌幸
その他の人物
織田信長
徳川家康
書誌情報
- 室井大資(漫画)・岩明均(原作)『レイリ』 秋田書店〈少年チャンピオン・コミックス・エクストラ〉、全6巻
- 2016年11月8日発売、ISBN 978-4253131353
- 2016年11月8日発売、ISBN 978-4253131360
- 2017年4月7日発売、ISBN 978-4253131377
- 2017年10月20日発売、ISBN 978-4253131384
- 2018年11月8日発売、ISBN 978-4253131391
- 2019年5月8日発売、ISBN 978-4253131407