七夕の国
以下はWikipediaより引用
要約
『七夕の国』(たなばたのくに)は、岩明均による超能力とミステリーを取り込んだ伝奇SF漫画。『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に、1996年第38号から1999年第6号にかけて不定期連載された。
1997年から1999年にビッグコミックス(小学館)より全4巻が刊行され、2003年に同社より上下2巻の「完全版」が刊行されている。
2024年7月より、Disney+にて実写ドラマが配信予定。
物語
「あらゆるものに小さな穴を開ける」というちょっとした超能力のような特技を持つ大学生・南丸。幼い頃、祖父から教わったこの力のおかげで、漠然と自分を特別な人間と思い込みながら育ったが、穴といってもせいぜいペン先でつついた程度のもの。実際にはこの「不思議だが何の役にも立たない能力」を持てあます怠惰な学生であり、4年生になっても就職活動もろくにせず呑気に毎日を過ごしている。
そんなある時、同じ大学の民俗学教授・丸神正美から突然の呼び出しを受け、研究室を訪ねた。当の丸神は不在であったが、研究室のメンバーと交流を重ねるうち、丸神も自分と似たような能力を持つらしいこと、丸神家と南丸家が東北地方のある豪族を共通の祖先にもつ可能性があること、当地の合戦場跡から穴の開いた甲冑や人骨が多数見つかっていることなどが分かってくる。
同じ頃、かつて「丸神の里」と呼ばれたその土地、現在のA県丸川町において奇妙な殺人事件が発生した。頭部が大きなスプーンで抉り取られたような死体だったことから注目を浴び、ワイドショーでも取り上げられるほどのニュースになっていた。自分の力と何か関係があるのか?気になった南丸は、失踪した丸神の消息をつかむ目的を兼ね、研究室のメンバーと共にその町を訪れる。そこで地元の人々や様々な出来事と関わるうち、徐々に力の正体を知っていくととなる―。
登場人物
南丸 洋二(みなみまる ようじ)
本作の主人公で、通称「ナン丸」。大学4年生で「新技能開拓研究会」というサークルの部長を務めている。上述の通り自身が「超能力者」であるが故の部長だが、その超能力というにはあまりにも微妙な実情から、一部の後輩からは馬鹿にされている。楽天的でのんびりした性格だが、根はしっかりとした考えを持つ常識人。
丸神の里を訪れた後出会った東丸高志から力の本当の出し方を教わり興奮するが、力を悪用した詐欺の片棒を担がされるなど徐々にトラブルに巻き込まれていく。力の正体を知ってしばらくは「こんなすごい能力、何か実践的に運用しなければもったいない」とばかり考えていたが、様々な人の思惑、利害、欲望などを目の当たりにする体験を経たことで、結局は「こんな物に人間が振り回されるべきではない」という考えに至る。
外部の勢力に加担し数々の事件を起こした丸神頼之と丸神山で対峙し、心のもやもやにケリをつけるという頼之との問答の末に幸子を救った。力を多用し始めて以降額が変形しかけ一時期バンダナを装着していたが「力を使わないでいたら自然に消え」てしまったため、最後は初期の素顔だけに戻った。
丸神 正美(まるかみ まさみ)
丸神 頼之(まるかみ よりゆき)
丸神家当主。里の神官を務めていたが、4年前に突如失踪。外部の勢力と手を組むという禁忌を犯し、一連の騒動を巻き起こした張本人。里の人間からは大変畏れられており、奔放な高志も頼之の言うことは素直に聞いた。「窓の外に手が届き、見ることができる」数少ない能力者であり、特に「手が届く」能力に関しては代々の神官の中でもずば抜けた能力を誇っていて、航空機や船などを丸ごと消し去るほど巨大なものから、小型のものを複数同時に操ることまで自在に行え、失踪までは里の希望の星として人々の期待を一身に背負う身だった。
おそらくは幼少時よりその能力を多用した影響からか、人間とはまるでかけ離れた容姿をしており、常にコートやマスクで全身を隠している。また手の変異も作中最も強い部類で、完全に機能する第六指が発生している。ただし自身を宇宙人呼ばわりした相手に「俺はこれでも日本人だぜ」と事もなげに言い返すなど、容姿による疎外感は特に感じていないようで、里の人間からも違和感なく受け入れられている。
物語のクライマックスで、「窓の外」を死ではなく新しい世界への入り口と解釈し、積年の鬱屈した感情から解放される為に極大の「窓の外」を作り向こう側へ行こうとする。その際幸子も一緒に行きかけたが、南丸が思いとどまらせ、結局頼之一人が消滅した。幸子が寸前に思いとどまったことに対して悪感情を抱くことはなく、消滅する寸前にも南丸も含めて「気が変わったら、あとからおいで」と言い残した。
作者の初連載「風子のいる店」に登場する有沢風子に似た風貌で描かれているが、性格も異なる別人物である。
東丸 高志(ひがしまる たかし)
東丸 隆三(ひがしまる りゅうぞう)
江見 早百合(えみ さゆり)
多賀谷 守(たがや まもる)
早野 源一郎(はやの げんいちろう)
八木原(やぎはら)
謎の男
先生
能力
この作品の舞台となる「丸神の里」の住民の多くは、「窓の外を見る」能力を持ち、また一部の人間は「手が届く」能力を持っている。その2つを持つものが丸神の里の神官になる資格を持つとされる。なお、丸神の里の能力者の大半は、窓の外は見ることが出来ても手が届かない者ばかりである。
丸神正美教授は、その能力を丸神の里の住民に与えた者を「カササギ」と仮称している。カササギの正体は不明であるが、宇宙人であることが作中で暗示され、あるいは作中の人物がそう推測している。「窓の外を見る」能力は、人間にカササギへの忠誠心を強制的に植え付けるためのものであり、「手が届く」能力はカササギに忠誠心を植え付けられた人間に与えられた武器であると教授は推測している。
「窓の外を見る」能力
この能力を植え付けられた丸神の里の人間は、カササギが里に作った人工地形を忠実に守り続け、また毎年夏至をはさんだ7日間に「七夕祭り」を行い、カササギの来訪を待ち続けた。タイトルにある「七夕」との関連性は、物語の後半まで語られなかった。
「手が届く」能力
東丸幸子によれば「手が届く」能力を持つ者は6人いる。早野が示した系図にはそのうち4人が記されており、丸神頼之、東丸隆三、東丸高志、そして幸子と高志の母親である。幸子と高志の母親は作中には登場せず名前も不明である。
この能力を使い続けると、額には血マメのようなものが出来て、次第に大きくなって宝石状となる。やがて目つきが変わり耳が尖っていき、能力使用時のイメージ通りに小指の外側に親指のような指が生え始め、手の甲には異様な陥没状の皮膚変化が起きる。そして最後には人間とはとても思えない容姿にまで変化する。ただし、南丸洋二は血マメ状の物ができた段階で能力を使うのをやめ、結果として元に戻った。
「窓」によって削られた(消された)物体や人間がどうなるかは、作中でも明らかになっていない。丸神教授は「窓」によって消す行為を「『窓の外』に突き落とす」と表現し、ダストシュートに例えている。だが丸神頼之は、「窓」の正体を、カササギが人間に与えてくれた「玄関」で、今までは何人もの人間を無傷でカササギの元に運ぶだけの能力が育たなかっただけではないか、自分にはその能力があると推測し、「窓」によって自らを消し去った。
書誌情報
- ビッグコミックス(1997年 - 1999年、小学館、全4巻)
- 1997年6月30日発売、ISBN 4-09-184541-X
- 1998年3月30日発売、ISBN 4-09-184542-8
- 1998年9月30日発売、ISBN 4-09-184543-6
- 1999年2月26日発売、ISBN 4-09-184544-4
- ビッグスピリッツコミックススペシャル(小学館、全2巻):作者インタビューなどが追加されている。
- 完全版 上巻 2003年11月刊行 ISBN 978-4-09-187731-4
- 完全版 下巻 2003年11月刊行 ISBN 978-4-09-187732-1
- 小学館文庫 全3巻、解説:内田樹
- 2011年12月15日発売、ISBN 978-4-09-196117-4
- 2012年1月14日発売、ISBN 978-4-09-196118-1
- 2012年2月15日発売、ISBN 978-4-09-196119-8
- 完全版 上巻 2003年11月刊行 ISBN 978-4-09-187731-4
- 完全版 下巻 2003年11月刊行 ISBN 978-4-09-187732-1
配信ドラマ
2024年7月より、Disney+内の「スター」にて独占配信予定。主演は細田佳央太。
キャスト
南丸洋二
スタッフ
- 原作 - 岩明均『七夕の国』(小学館刊)
- 監督 - 瀧悠輔、佐野隆英、川井隼人
- 脚本 - 三好晶子、安里麻里、瀧悠輔
- 脚本協力 - 大江崇允