三人のふとっちょ
以下はWikipediaより引用
要約
『三人のふとっちょ』(さんにんのふとっちょ、Три толстяка)は、ソ連の作家ユーリイ・オレーシャによる児童文学作品。1928年に発表された。
概要と解説
本作はロシア革命からほどない時期に発表された作品で、この童話と、前年に記された短篇『羨望』により、作者オレーシャの名声は世に知らしめられることとなった。1930年にアナトリー・ルナチャルスキーの批評によると、E.T.A.ホフマンの幻想との接近がこの作より感じられるといい、革命に対する知識人や芸術家のありかたが描写されているという。
オレーシャはファンタジーの手法により、少年少女に革命の意味を伝え、人間らしい生活及び労働の意味について問いかけている。また、歯切れのよい簡潔な表現を駆使するという、詩人であり戯曲作家でもあった作者の才能が存分に発揮された作であるとも言える。
作者自身によって脚色された脚本が、芸術座を始め、たくさんの児童劇場で何度も上演されるようになり、ボリショイ劇場でバレーとしても公演されている。しかし、その後ソヴィエト連邦国内では長らく再版されず、劇の上演も控えられていたが、スターリン没後の1950年代になり再評価されている。1960年には映画化されている。
この作品の日本出版にあたり、オレーシャと親交のあったコルネイ・チュコフスキーはわがことのように喜んだという。また、コンスタンチン・パウストフスキーは、第二世界大戦中の爆撃の中。オレーシャが敵機の接近のたびに、作中に現れる「星の広場」の「星」のモデルとなったランプの破壊を恐れていたとも語っている。
あらすじ
6月のある火曜日の晴れた日、学者のアルネリは、郊外の「三人のふとっちょ」の宮殿のあたりへ植物採集に出かけたところ、街で発生した革命騷ぎに巻き込まれる。争乱を起こした民衆を鎮圧するため、大砲を持ち出した政府であったが、主謀者の一人である、サーカスの綱渡り師のチブールは脱出し、一部の親衛隊の裏切りもあって、まんまと逃走することに成功した。街から無事帰宅し、ことの次第を書き留めようとしたアルネリのところへ、チブールが現れ、アルネリの救援を得ることとなった。
その翌朝、支配者である三人のふとっちょの後継者であるトゥティを、政府を裏切った一部の親衛隊士が襲い、トゥティの大事にしていた人間と等身大の人形を持ち去り、サーベルで突き刺し、破壊した。悲しむトゥティのため、文部大臣の提言で、ふとっちょたちはアルネリに人形の修理を依頼した。
複雑な構造の人形を修理することができず、アルネリは、処罰を覚悟で宮殿に向かったが、人形は途中で馬車から滑り落ち、行方不明になってしまった。人形を捜してさまよったアルネリは、チブールの所属する、知人のサーカスの親方ブリザクのところへと自然に足を向けていた。そこで、アルネリは、人形そっくりの少女、スオクと出会う。そこへ合流したチブールは、アルネリにとある秘策を授ける。
翌朝、人形を修理したアルネリは送り届け、捕縛された革命の主導者の一人、プラスペローの救出作戦が始まった…。
登場人物
日本語訳
- 『人形の秘密』西郷竹彦訳、桜井誠、講談社<世界の名作図書館32 >、1964年(ソンマーフェルスト『ラルーの決心』、ガルシン『信号』収録)
- 『三人ふとっちょ』田中泰子訳、赤坂三好絵、学習研究社<少年少女世界・新しい世界の文学15>、1970年
- 『三人のふとっちょ』、長崎訓子訳、古宮路子絵、小学館世界J文学館、2023年、ASIN B0BVM4S6V3
参考文献
- ユーリー・オレーシャ『愛』工藤正広訳、晶文社、1971年解説「時代・オレーシャ・ことば」文:工藤正広
- 藤沼貴・水野忠夫・井桁貞義編『シリーズ・はじめて学ぶ文学⑤・はじめて学ぶロシア文学史』、ミネルヴァ書房、2003年