不能犯 (漫画)
漫画
原作・原案など:宮月新,
作画:神崎裕也,
出版社:集英社,
掲載誌:グランドジャンプ,
レーベル:ヤングジャンプコミックス,
発表期間:2013年4月17日 - 2020年11月4日,
巻数:全12巻,
話数:全83話,
以下はWikipediaより引用
要約
『不能犯』(ふのうはん)は、宮月新原作、神崎裕也作画による日本の漫画作品。『グランドジャンプ』(集英社)にて、2013年10号から2020年23号まで連載された。2018年に実写映画化作品が公開。
あらすじ
宇相吹正は、とある電話ボックスに依頼人が殺して欲しい相手の連絡先と理由を書いた手紙を貼ると、完璧に始末してくれることから、SNS上では「電話ボックスの男」と呼ばれていた。彼の犯行は、マインドコントロールによって精神的に追い詰め、ショック死させることから、警察では実証不可能な犯罪であることから「不能犯」と呼ばれていた。
ある事件で刑事・多田友樹は宇相吹の身柄を確保し、事情聴取を実行するも逮捕に至らず、多田と宇相吹の行動は平行線を辿り、様々な事件を引き起こすようになる。
登場人物
主要人物
宇相吹 正(うそぶき ただし)
本作品の主人公兼狂言回し。常に黒いスーツを着た経歴不詳の男。
依頼を受けて標的と定めた人間に対し、巧みな心理操作で、思惑通りに動くよう誘導し、最終的に極度の精神異常からのショック死または自殺に追いやったり、あるいは殺人などの犯罪行為を犯させることで破滅に追いやる凄腕の殺し屋で、劇中において依頼された殺しに失敗したことは(標的を殺す前に依頼者が死亡または植物状態になるなどで、依頼自体が無効となったケースを除き)ほぼ皆無である。
ただし劇中で宇相吹に殺しを依頼した依頼者たちのほとんどは、思惑通りの結末を迎えること無く、大抵は依頼完遂後に依頼者自身も何らかの形で破滅または死という悲惨な結末を迎える。
依頼人を選別している事が幾度か描かれており、明言はされていないが破滅を招く依頼人から優先的に仕事を受けている様子がうかがえる。
その心理操作能力は文字通り天才的なもので、口先だけで人の猜疑心、焦燥感、恐怖心、欲望を極限まで掻き立てるばかりか、意図した内容の幻覚、幻聴を見せたり、果てはその人物の“本能”を刺激することで人間離れした腕力、握力、抱擁力、などを引き出させるといったことさえもこなしてしまう。そうした優れた心理操作能力によって決して自身は手を汚すことなく殺しを完遂し、証拠も出さないため警察からは「不能犯」と呼ばれ、警察の沽券を脅かす要注意人物として警視庁捜査一課からもマークされている。
「マンションの大家に家賃の滞納で説教され頭が上がらない」「ターゲットの近くにいる邪魔な人間は酸素を睡眠ガスと誤認させて眠らせるにとどめる」など「殺しとは無縁」の相手に対して能力を用いて命を奪うことはしない。また仕事と身を守る以外に能力を使うことは殆どなく、金銭的・物質的な利益に全く興味はない。
異性に対しては第一話で夜目美冬と肉体関係を持っているが、それ以降は一切関心を示す描写が無い。
嘘をつくことに何ら躊躇しない一方「約束」した事は必ず守る。しかし殆どの場合、その「約束」の裏に秘められた事情を相手は気付かずに破滅を招いている。
1回の殺しについて具体的な報酬などの話題が触れられることはほとんどないが、ある依頼では依頼者が手に入れた2000万円の半額の1000万円を報酬として手に入れている。また、殺しのルールとして“子供、赤ん坊を標的とした殺しは受けない”“依頼人が死なない限り、依頼をキャンセルすることはできない”と掲げている。この2つに加え、「正義の権力」編(8巻)以降は“多田刑事を標的にした殺しは請け負わない”ルールを追加した。
無類の猫好きで大量の猫を飼っており、猫たちにはこれまで自分が殺してきた人物の名前を名付けている。住んでいるマンションでは「宇田川」「宇野」などの偽名を名乗って借りている。決め台詞は「愚かだね… 人間は」(たまに「哀れだね」「悲しいね」など変化する事がある)。
黒いスーツのいで立ちに、片目が隠れるほどの長い前髪とパーマがかったぐしゃぐしゃの髪型で、ニヤッと不気味に笑うことから初対面の相手にはほぼ気味悪がられる。性格はどう見ても陰気そのものだが、本人は陽気を自称しており、好きな番組はお笑い番組。初対面の人間相手にギャグを披露したこともあるが、相手に気味悪がれている状況で当然ウケる筈もなかった。また、上述の赤ん坊殺しを依頼した依頼人である赤ん坊の母親を事故死させた直後にどこか寂しげな表情で、ぬくもりが残っている内に赤ん坊を母親の遺体に抱かせるなど、歪ながらも慈悲のような振る舞いを見せたこともある。
都内のボロマンションに大量の猫と暮らしており、あまり殺しの依頼が入らないらしく家賃を数か月滞納することはザラで、水道を止められたこともある。「復讐の覚悟」編でそのマンションが燃えてしまったため、しばらくは猫たちと共にホームレス生活を送るが、「浮気心」編で依頼者たちが心中事件(宇相吹による殺し)を起こして事故物件になってしまった高級マンションの一室を月2万円という破格の家賃で契約し、引っ越した。
甘党でパンケーキを食していることが多く、一方で酒を苦手としており、よく牛乳を飲んでいる。
一度殺しの依頼を受けたら必ず遂行しており、宇相吹が殺人をやめるには上述のルールにもあるとおり“依頼人が死亡する”か“宇相吹を殺す”しかないとのこと(最初に百々瀬を殺害しようとした時は依頼人の精神が崩壊し、結果的に「依頼を完遂した」ので殺害する必要がなくなった)。
しかし次第に多田への執着から、宇相吹本人も自覚するほど行動に影響が出るようになる。多田を守るために依頼と関係無い殺しをした時には「自分がルールを破った」事に驚き、またその事実に喜んでいた。
南条が「依頼者を殺す」「標的を宇相吹より先回りして殺す」という執拗な妨害を行ったときには依頼も無いのに殺意が湧くことをありえないと否定していたが、それについては南条を「最高の敵」として依頼なしでの殺害を「最大の敬意の表明」だと述べている。
そのような心境の変化から、ついに精神操作能力を喪失し「不能犯」ではなくなってしまうが、南条の裏切りで精神的に疲れ果てていた多田が「自分の正義」を曲げた事で能力を取り戻す。
最終的に百々瀬を守ろうとした多田によって刺されて転落するが、何の痕跡も残さずその姿を消す。
劇中、最後の登場は治療中の多田が、周囲の人間が異様な姿に見える事に驚愕した時に「自分と同じ景色が見えている」と幻影となって伝えた場面である。
多田 友樹(ただ ともき)
本作品のもう一人の主人公。警視庁杉並北署配属のノンキャリア刑事で、階級は巡査部長。宇相吹のマインドコントロールが効かない数少ない人物。片想いの相手であった美冬の死を通じて宇相吹の能力に気付き、宇相吹による連続殺人事件を阻止するため奔走する。特技は剣道。
性格は真っ直ぐで超が付くほどの馬鹿正直。困っている人や間違った道に進もうとする人間を見ると、助けたり説教せずにはいられない性格で、物語冒頭で「それが馬鹿を見る羽目になる」とよく宇相吹に忠告されており、実際にその実直な態度で接した熱い想いが事件の被害者(依頼人)に届くことはなく、ほとんど破滅的な末路を迎えている。
当初は交番勤務だったが、ある時不良万引きグループを管轄外まで追いかけ回して逮捕したことがあり、上司に叱責されはしたものの、その功績で所轄に転属し刑事になった。
当初は所轄の杉並北署だったが、ある事件を契機に本庁の「宇相吹事件専従捜査班」に百々瀬共々転属になる。
捜査班が成果なく解散した後、南条の策略で宇相吹から離される事になるが、それに対し宇相吹は「処刑教室」にてマインドコントロールをかけた女子中学校の生徒について「多田が自分を追いかける限り殺害を延期する」と少女達を人質にする。
その後「宇相吹を追う連続殺人鬼X」を追うことになるが、その正体が尊敬していた南条だと知って大きな精神ダメージを受けてしまう。
そこで宇相吹が力を失い、更に殺人容疑で逮捕されたことで「宇相吹の潔白の証拠」を百瀬から示されてもあえて見逃し、結果として宇相吹の復活に手を貸してしまうことになり、警察を辞職しひとり宇相吹の殺害を決意しモッズコートを着て宇相吹を追い求める。
そして「人質」となった女子中学生を監禁して立てこもった南条を「宇相吹を殺すための実験」として殺害しようとするが、かつて尊敬していた南条を殺せず、逆襲され泣き叫んで逃げ惑う事になる。
南条が宇相吹に殺害された後、対面した宇相吹から自分を殺すように要求されるが、駆けつけた百々瀬に制止される。そこで「百々瀬が闇にのみ込まれる前に宇相吹を殺す」と本心を吐露したところ、百々瀬からは「ただの多田センパイが好き」だからと止められる。
その時に宇相吹が百々瀬を殺害しようとした事で宇相吹を殺し、更に自分の首を切って自殺を図るが、懸命の治療で一命を取り留める。
数年後、百々瀬と結婚し探偵業を営む姿が描かれるが、宇相吹の問いかけた「人間の正体」について悩んでいる。
百々瀬 麻子(ももせ あさこ)
本作品におけるヒロイン。多田の後輩。階級は巡査。多田同様、宇相吹による連続殺人事件を阻止するため奔走する。物語途中、本庁の宇相吹事件捜査課の方針に耐えかねた多田が辞職するも、こっそりと彼が提出しようとしていた辞職届を隠し持っていた。多田共々本庁に転属になる。
捜査班の解散後、多田に近づく南条を幾度か疑うものの、南条にはぐらかされてしまう。
更に宇相吹に近づく事を恐れる多田の頬を平手打ちして活を入れる事もあった。
多田が警察を辞めてからは、自ら宇相吹に対面していた。宇相吹は闇に呑まれない彼女を強いと認めつつ「決断しないズルい強さ」だと評していた。
最終的に宇相吹を刺した多田が自らの首を切ったのを助け、退院後に結婚、数年後には子供を授かっている。結果的には二度、宇相吹にマインドコントロールされて二度とも助かった唯一の人物である。
保坂 篤史(ほさか あつし)
宇相吹に接触した探偵。多額の借金を抱えている。日常では味わえない刺激を求めて探偵になったものの、浮気調査や芸能人のスキャンダル調査など刺激のない依頼ばかりに辟易していたところ、ある調査をきっかけに知り合った宇相吹の殺人にとても感動して、あの殺人をもう一度見てみたいという危険な願望から宇相吹に接触しようと何度も試みるが、当の宇相吹からはことごとくかわされる。
「偽装の家族」編にて宇相吹のかけたフェイントによって、彼が次の殺しのターゲットにすると踏んでいた人物に殺されそうになるが、その際に正当防衛から相手を殺してしまったことで、「殺人を見るのではなく、自ら殺すことでより大きな刺激を得られる」と、殺しの快楽に目覚めてしまい、「宇相吹 正」を自称するなどして暴走。
さらに当の宇相吹から「これ以上、貴方と絡んでいても無価値」だと屈辱的な言葉で嘲られたことから、宇相吹本人に対して逆恨みを懐き、本物の宇相吹を殺害して自らが成り代わるべく、彼の自宅マンションに放火し、偶然居合わせていた多田を襲うも、火災に巻き込まれて両目を失明する。
宇相吹への復讐のために結夏に利用されるが、瀧を刺して共々階段から転げ落ちて死ぬ。
夜目 美冬(やめ みふゆ)
多田の上司で第1話のキーパーソン。階級は警部補でキャリア組。かつて高校生だった河津村の息子を誤認逮捕し、その結果彼を自殺に追い込んでしまったという過去を持ち、現在もその罪悪感からか薬を常飲しなければならないほどに精神的に不安定気味となっている。
自分の担当する殺人事件の容疑者に浮上した宇相吹を執拗に追うが、自身の過去への罪悪感や葛藤に付け込んだ宇相吹のマインドコントロールにかけられてしまい入浴時に自分の手首を切ってしまう。なおこのとき宇相吹と肉体関係を結んでいるが、これは劇中で示された宇相吹の最初で最後の女性関係である。実際には出血自体は死に至るほどのものではなかったが、大量出血したと思い込んで、そのまま湯船で意識を失い、死亡してしまう。全ては河津村の依頼によるものであった。
実際に登場したのは第1話のみであったが、彼女の死は部下の多田や、姉の結夏のその後の人生にも大きな影響を与えることとなり、その後の話でも多田や結夏のモノローグや幻覚などで頻繁に登場する。
夜目 結夏(やめ ゆいか)
夜目美冬の姉。心理カウンセラー。警察官になった妹を支えるために渡米してカウンセラーのキャリアを積んでいたが、その間に美冬が起した誤認逮捕や自殺騒動により、妹を支えられなかったことを深く後悔。その後、妹を死に追いやった宇相吹への報復のために彼を殺害すべく来日。宇相吹との接点が強く、彼のマインドコントロールが通用しない多田を宇相吹殺害の『武器』として利用すべく、誘導するなどして暗躍するが、ある事件がきっかけで多田が宇相吹に関する記憶を失ってしまったことで計画が頓挫し、代わりに宇相吹に陥れられて両目を失明しながらも、彼への報復心を失っていなかった保坂に目をつけ、彼を多田の代わりの『武器』に仕立て上げる。万全の状態で宇相吹と遂に直接対峙するも、自身の計画を先読みしていた宇相吹に逆に嵌められ、彼に呼び出されていた瀧を保坂が宇相吹と間違えて刺殺してしまう。そして、一連の行動は全て宇相吹のマインドコントロールにかけられたものであったことを告げられ、全てが宇相吹の掌で踊らされていたことを思い知らされた絶望と敗北感、そして瀧をも巻き込んでしまった罪悪感に耐えかねて保坂が使用したナイフで喉を切って自殺するという、皮肉にも妹と同じ顛末を迎えることとなった。
しかし、最後に多田宛てに遺書を残しており、その文面には自らの敗北を踏まえて、宇相吹を殺してしまったら彼の思い通りになることから、多田に『宇相吹を殺さないで』という宇相吹の意図とは逆のことが書かれており、遺書を読んだ多田は彼女の遺志を受け継ぐべく、宇相吹を殺すのではなく逮捕することで己の信ずる『正義』を証明することを誓った。
瀧 真秀(たき まほろ)
精神科医。結夏の恩師にして上司。マインドコントロールという常人では成し得ない方法で殺人を繰り返す宇相吹の手口を調査する多田に対し、精神学的観点からの見解を述べたり、助言を入れるなど物語の序盤から度々協力していた。
結夏が帰国してからは、彼女と多田を引き合わせたり、宇相吹に関する記憶を喪失した多田を診察するなどしていたが、その中で結夏が復讐に命をかけていることを見抜くと、彼女の心が破綻する前に元の彼女に戻すべく、密かに宇相吹に接触。『彼女に殺されないでくれ』という依頼をするが、その結果、宇相吹へ結夏の思惑を知らせる形になり、更に宇相吹から遠回しに唆され、結夏にこれ以上復讐に固執するのを止めさせようと『宇相吹に固執し続けた者の末路』の例として彼女を保坂に引き合わせた結果、自身の意図とは反対に、彼女の燻っていた復讐心を一気に再燃させてしまった。
遂には自らも結夏の裏をかこうとした宇相吹の策略に巻き込まれる形となって、保坂に刺された上、その衝撃で一緒に階段から転落して死亡してしまう。
南条 伸太朗(なんじょう しんたろう)
江戸川署から杉並北署へ転属してきた刑事。階級は警部補。37歳。髪を染め顎鬚を生やし、Tシャツの上にジャケットを羽織るなどカジュアルないで立ちで、フレンドリーな性格だが優秀。本庁から戻ってきた多田とコンビを組む。しかし、その目的は多田を宇相吹から興味を無くさせ、宇相吹を精神的に壊すためのものだった。宇相吹のことは下の名前の「正」と呼んでいる。
缶入りのブラックコーヒーを愛飲しており、彼に絡むキーアイテムにもなっている。
かつては少年係に属しておりパトロール中に宇相吹と出会い少しずつ親しくなり世話をするようになるが、補導した少女が宇相吹に殺されたことで逆上し宇相吹を刺し殺す。その結果心が壊れかけたものの宇相吹への怒りや恐怖を閉じ込めることで平静を保つようになる。しかし宇相吹が生きていたことを知って封じ込めていた感情を抑えきれなくなり、以降は殺人をも躊躇なく行えるようになる。その一方で自ら殺した相手の死を心から悲しんだり、遺族の前で涙を流すなどの二面性がある。
宇相吹の見たい闇に共鳴する能力があり、宇相吹の標的を先回りして殺すことで宇相吹を追いつめようとする。
施設に寄付をしたり遊び相手を務めることで子供たちから懐かれているが、その資金は補導を装って連れ込んだ家出少女を殺して奪った金である。
「不能犯を追い求める連続殺人鬼X」として次々に殺人を犯し、宇相吹から殺されかけるが、寸前で殺人鬼の正体を見抜かれた警察に逮捕される。
しかしそれに備えて手なずけていた家出少女による宇相吹への依頼で同僚の赤井を脅迫して脱走する(赤井はその場で殺害した)。
更に伊達の残した情報から宇相吹の正体を「次々に体を入れ替えている存在」だと考え、次の対象を多田に選んだと見当をつけた(これについて宇相吹は一笑に付して否定している)。
そして多田に対する「人質」にされている女子中学生らを監禁して立てこもり多田を呼びつけ殺害しようとしたが、そこに現れた宇相吹の精神操作により自らを刺して死亡した。
その最期に対し宇相吹は傍らにコーヒー缶を供えつつ、南条こそが「人間の正体が強さなのか脆さなのか知りたくなったキッカケ」であり「最高の敵(とも)」だったと評した。
有馬 美世子(ありま みよこ)
精神科医。初登場は「処刑教室」で校医としてだった。5年前に医大生であった事から年齢は二十代後半と思われる。
カルトに入れ込んで精神を病み家庭を崩壊させ、家をゴミ屋敷にしてしまった母親を元に戻すため、力を失った宇相吹に協力を求めその力を取り戻そうとする。
そして母親を救いたい一心で、殺人を犯し全てを捨ててまで宇相吹の力を取り戻させる。宇相吹は約束通りに母親の洗脳を解いて正気に戻すが、その結果として自分のしてきた事を理解した母親が罪の意識から自殺してしまったのを留置場で聞いて狂乱し、その後の登場は無い。
なお宇相吹はこの結末を予想しつつ、普段とは異なる沈痛な表情を浮かべており、有馬に対し感謝していた模様である。
警察関係者
宇相吹事件専従捜査班
宇相吹正の殺人を解決するために警視庁本庁が設立した宇相吹事件の捜査班。捜査を担当するキャリア組だけで構成された宇相吹事件専従捜査班第一班の宇相吹事件専従捜査本部と、事務作業を担当する宇相吹事件専従捜査班第二班に分かれる。第二班は捜査の邪魔になった刑事を閉じ込めておく所謂島流し先で、地下室で事件のデータ処理などをさせられている。
「正義の権力(ちから)(8巻)」編にて人望のない蒲生が諏訪部に嫉妬したことによって解体の命令を出したことで解体させられてしまう。
宇相吹事件専従捜査本部
諏訪部(すわべ)
警視庁本庁所属のキャリア組で「宇相吹事件専従捜査班」で指揮を執る。階級は警視。宇相吹の逮捕に執念を見せるが、彼のやり方は宇相吹が殺人を犯したところを抑えて決定な証拠として逮捕する方針で、時には人命を軽視した発言をしたこともある。傲岸不遜で多田・百々瀬をあからさまに見下す性格などと相まって、激昂していたとはいえ呼び捨てで呼ばれるほど多田とは相性がとても悪い。「正義とは権力(ちから)」がモットー。
ある事件を契機に多田・百々瀬を「宇相吹事件専従捜査班」への転属を命ずるが、それは捜査に邪魔な多田・百々瀬を班の事務処理をさせるのが目的で、本質は島流し同然の左遷だった。
違法捜査をするなど問題が多い人物ではあるが、宇相吹の逮捕への執念は本物であり、榎本のいうところによると一課の人心を掌握している。
宇相吹事件専従捜査班の解体後は違法捜査が上層部にばれて査問されることとなり、失脚する。
各事件および各話の登場人物
「冤罪の償い」編(1巻)
「姉妹の裏切り」編(1巻)
夢原 優(ゆめはら ゆう)
この話における宇相吹の依頼人。26歳の風俗嬢。10歳のころに両親が離婚し、会社を経営していた父親に引き取られた。離婚後に父親の会社が倒産し、日々DVにおびえる日々を送っていた。風俗嬢になったきっかけは父親の借金の返済だが、父親が死んでも未だに続けている。
ある時SNSで双子の姉の唯を偶然見つけ、彼女の家を調べ近況報告とお祝いの言葉を書いて送ったが返事もなく、結婚式に招待もされないので唯を妬み、“唯を直接殺すのではなく、自分と同じ生き地獄を味合わせるため”に、克明を唯に殺害するように宇相吹に依頼する。
後に、宇相吹から渡された姉からの結婚式の招待状と唯の手紙を受け取って真実を知り、自分が取り返しのつかないことをしてしまった罪悪感に耐えかねて責任を取り、首吊り自殺をする。
夢原 唯(ゆめはら ゆい)
優の双子の姉で大手デザイン会社勤務の26歳。榊克明と婚約中でハワイでの挙式を翌月に控えている。
帰宅途中で「貴女を殺しに来ました」という宇相吹と出くわし、恐怖さながら自ら運転する車でその場から逃げ、その後車をガードレールに衝突させてしまうが、この時から宇相吹のマインドコントロールは始まっていた。
克明が勤める病院に入院するが、宇相吹のマインドコントロールにより食事も薬にも手を付けず、遂には克明が同僚の看護師と浮気をしていると強く思い込み、注射器で克明を殺害してしまう。
その後は、瀧の勤務する病院に転院して治療(公判は延期中)を続けていたが「宇相吹の闇」編(4巻)にて再登場。自分から婚約者と妹、そして自分が手にするはずだった幸せを全て奪い去った宇相吹へ強い恨みを抱いていた。別の病院に転院すべく多田と百々瀬の護送を受けるが、その直前に多田と瀧の会話を聞いていたことから、多田が宇相吹のマインドコントロールが通じない人間であることを知り、多田に宇相吹を殺害させるべく、百々瀬を人質にして強引に彼らを宇相吹の下へ向かわせて対峙させる。しかし一向に動かない多田に痺れを切らし、最後の手段として宇相吹の目の前で首に万年筆(百々瀬を人質にするために使用したもの)を突き立てて、それを宇相吹の手に握らせることで、宇相吹を殺人の現行犯に仕立て上げると、多田に宇相吹を処刑台に立たせることを託し、息を引き取った。
榊 克明(さかき かつあき)
唯の婚約者で榊総合病院の長男で次期院長。33歳。
宇相吹にマインドコントロールされ事故で入院した唯を励まし、懸命に治療するが同僚の看護師と対面で話をしているところを、唯にキスをしていると誤解され、“あの看護師に心変わりをして邪魔になったから私を殺そうと車に細工した”と強く思い込んだ唯に刺殺されてしまう。
実は宇相吹に優の殺害を依頼していた。唯はこれまで生活で深く傷ついた優を想い、一緒に暮らそうとしていたが、克明は唯に一方的な恨み妬みを抱く優と同居などすれば、自分たちの家庭をメチャメチャにされると猛反対していたので唯は返事を出せずにいた(宇相吹に優の殺害を依頼したのも同様の理由からだった)。言うなれば夢原姉妹にボタンの掛け違いを生じさせ、今回の悲劇を引き起こした元凶といえる。
それでも唯は優を結婚式には招待するつもりで自分の車のダッシュボードに招待状を用意していた。
「家の中の真実」編(1巻)
羽田 健(はねだ けん)
鳥森 広志(とりもり ひろし)
「中年男の恋」編(1巻)
鈴本(すずもと)
真美(まみ)
「家族を愛しすぎた男」編(1巻)
「親失格」編(1巻)
我妻 雅(あづま みやび)
我妻 春樹(あずま はるき)
「神待ちサイトの悪魔」編(2巻)
別所 清志(べっしょ きよし)
大家(おおや)
「課長の椅子」編(2巻)
成瀬(なるせ)
サプリメントの会社で営業二課の係長。独身。成績トップで人当たりも良く、次期課長も時間の問題と噂されているが、本人は昇進の重圧に耐え切らず、乗り気でいれずにいる。
バーで宇相吹と会い「休みたい」と愚痴を漏らしたことでヤドクガエルの毒を盛られたとマインドコントロールされ、原因不明の疾病でしばらく休職するが、復職したときは同期の戸塚に課長昇進の辞令が出ていた。宇相吹に詰めよるも、本心では課長になりたくてたまらない内心を看破され、釣りに行っていた戸塚を海に突き落として殺し、課長昇進の辞令を取り戻すも、全ては道重による策略であることが知り、権力欲が暴走して公衆の面前で彼女を縊り殺す凶行を行ったことから、全ての犯行が暴かれ逮捕される。その後は取調室において「もっと良い椅子に座りたい」とゴネるが、取り調べ担当の刑事から「そんな椅子にはもう一生座れないよ」と皮肉を返された。
「夫の素顔」編(2巻)
「隠したい過去」編(2巻)
加島 夏美(かしま なつみ)
風間 雅之(かざま まさゆき)
矢崎(やざき)
風間の大学の後輩で、風間の会社がチェーン展開する寿司屋の板前をしている。夏美の元客だと脅して、夏美をレイプし、さらにその現場を撮影して動画にすることで彼女の弱みを握った。
夏美から依頼を受けた宇相吹によってマインドコントロールをかけられ、目につく人間が次々に巨大な魚に見えてしまう幻覚に悩まされることとなる。結局その状態のまま職場に出たところ、店の外に宇相吹の姿がいるのを見つけ、彼と目が合った直後、同僚から「手を止めるな」と叱咤されて慌てて魚を捌こうとしたが、気がつくと丁度視察のために店を訪れていた風間の首を刺してしまっており、なぜこのようなことになってしまったのかわからないまま彼を殺してしまい、殺人の現行犯で逮捕される。
実は夏美の客だったというのは嘘で、実際には彼女の働いていた店に行ったことさえなく、実際は風間から彼女の過去を教えてもらった。消費者金融に借金があり、風間からその借金建て替えと追加報酬を引き換えに、『夏美の本当の姿』をビデオカメラで撮るように依頼されていたのが事の真相だった。
その後「被害者の風間と魚を間違えた」と正直に警察に主張するが、受け入れてはもらえなかった。それでも多田はその取り調べの場で矢崎の証言から、彼が宇相吹にはめられたことに気付いた。
「別れの理由」編(2巻)
葉月(はづき)
宇相吹行きつけのカフェの店員。最近借金までして入れ込んでたホストに別れを切り出され、恨んでいたところ宇相吹が殺し屋であることを知ってリョウの殺害を依頼する。リョウの死を知った後、「リュウが手渡していたお金は元を辿れば自分のもの」と考えて、お金を渡していた子供の母親の元へお金を回収するために宇相吹のマインドコントロールで本物と錯覚したオモチャのナイフを手に乗り込んでいくが、そこで待ち受けていた宇相吹から真実を知らされ、最後は子供の母親の手で『正当防衛』として撲殺される顛末を迎えた。
ちなみに宇相吹が彼女の勤めるカフェの行きつけになったのはこの依頼のためであり、去り際に店で食べていたケーキを「毎日通うのが苦痛だった」くらいに不味いと酷評していた。
リョウ
「強い男」編(2巻)
勇人(ゆうと)
藤沢(ふじさわ)
園田 理沙(そのだ りさ)
高校3年生、陸上部所属。藤沢と恋愛関係にあるが、ある日学校で性交していたところを勇人に見られ、それを藤沢にセクハラされていることと思い込んだ勇人が宇相吹に藤沢の殺害を依頼する現場へ同伴させられてしまう。その場では勇人に真実を話すことが出来なかったが、その後に宇相吹が本当に藤沢を殺害しに来たのを見て、藤沢と自分は恋愛関係にあると主張するが宇相吹から依頼をキャンセルする条件として"依頼を止めるには依頼人を殺すしかない"というルールを提示され、勇人の元へ駆ける。
そして、勇人に包丁を向けながらも真実を打ち明けるが、当の勇人から初めからすべて知っていたこと、そして幼少期から好意を抱いていたことを打ち明けられる。そこへ現れた宇相吹から勇人の本当の依頼内容が"藤沢と理沙の殺害"であったことを告げられる中、自ら突きつけていた包丁に刺さりに来る形で勇人に抱きつかれ、自身への執念から怪力を発揮した勇人によって背骨をへし折られて殺される。
「正義の味方」編(3巻)
牧原 こずえ(まきはら こずえ)
2年前に多田が刑事になるきっかけとなった不良万引きグループの少女。
更生したように装って多田の前に現れるが、実際は多田を逆恨みしており、多田を罠にはめて警察職を失脚させるつもりだったが、そこへ別の依頼人からに殺しの依頼を受けた宇相吹が現れ、ガソリンと称した水をかけられ、焼死したと思い込まされたまま、狂乱した末ショック死してしまった。
なお、彼女自身は当時は不良グループからいじめられ、万引きも半ば強引に加担させられていたが、結局警察は自分の言い分を聞き入れてくれずにそのまま不良グループと共に高校を退学となったと語っていたが、宇相吹によると多田に逮捕された後も不良たちとつるんで、最近では美人局をしており、今回の依頼はその被害者からだった。
「賭ける男」編(3巻)
桜井(さくらい)
会社員で妻子持ち。子供は病気が重く、すぐにでも手術をしなければ死ぬと言われているが、手術費用として1500万円必要で、貧乏なので手術を受けられずにいる。くじ運の強い迫田に頼んで「当たったら半額渡す」という条件で宝くじを買ってもらい、それが2000万円当たるが、迫田が渡さないことから、独り占めされたと思い、金を取り戻すべく宇相吹に追田の殺害を依頼する。
迫田が殺された後、彼から取り戻した宝くじを換金するが、2000万円のうち、半額の1000万円を宇相吹に依頼料として徴収されてしまう。残りの500万円を工面すべく、1000万円を元手に競馬で当てようと考えるが、全て擦ってしまった。そこで後述の真実を知り、責任を取る形で迫田と同じ死に方をし、自身にかけていた生命保険から息子の手術代を工面し、それによって息子の命は救われた。
「傑作の代償」編(3巻)
遠野 栄太郎(とおの えいたろう)
29歳の彫刻家志望の男。バイク死亡事故の現場を目撃して閃いた作品が、奨励賞を受賞して彫刻家の仲間入りを果たす。美大のころから春日と付き合っており、大賞を取れたら彼女の両親に報告にいく予定である。コンクールの応募作品に悩んでいたところ、宇相吹に会う。その後目の前で都合よく人が死ぬ現場を目撃して、それを閃きに大賞を取る。指輪を持って春日の元へ行くが、審査委員長の堀ノ内早春と一緒に歩いているところを春日に裏切られたと思う。その後宇相吹から真実を知るが、放心状態であり、彼の耳に届くことはなかった。
その次話の「いじめられっ子の夢」にも登場。一連の事件のショックから半ば精神崩壊を起こした状態となりながら執拗に作品制作に没頭しており、その様子を見た多田は彼もまた宇相吹に壊された被害者と痛嘆した。また、自身の部屋にあった宇相吹の殺しの依頼を受ける際に使用するメモの燃えカスがきっかけで、多田は次の宇相吹への依頼者を特定することとなる。
春日(かすが)
「いじめられっ子の夢」編(3巻)
梶 優子(かじ ゆうこ)
「家政婦の献身」編(3巻)
浅尾 玲子(あさお れいこ)
資産家 大河内家に派遣された家政婦。当初は欲がなく「愛情込めてお世話した人が喜んでくれるならそれだけで満足」と述べるほど、献身的かつ誠実で実直な性格の持ち主であったが、ある日現れた宇相吹から、大河内からの個人的な謝礼として破格の札束を手渡されながら、マインドコントロールをかけられ、以後、毎日手渡される謝礼に欲に目が眩み、次第により多くの謝礼を欲して、とうとう肉体的なサービスまでも用いるなど、より多額の謝礼を得るために、なりふり構わない行動に走り始めてしまう。
しかし、身体まで捧げた自身のサービスに対して謝礼が500円しか渡されなかったことに激昂し、大河内邸に乗り込んで、彼を絞殺してしまうも、我に返った直後、現れた宇相吹からこれまで手渡されていた謝礼が新聞紙の切れ端を幻覚で札束に見せられていただけであったことや、「大河内さんから殺しの依頼を受けていた」ことを聞かされ、全ては自身に遺産を相続させるのを阻止するために大河内の娘である敏子が仕向けたことと思い、金に目がくらんだばかりに取り返しのつかないことをしてしまったと絶望。その後は自宅アパートで首吊り自殺を遂げてしまう。
大河内 巌(おおこうち いわお)
浅尾の派遣先の大豪邸に住む資産家。高齢と病気によって意思疎通が困難であり、浅尾の介助を受けながら生活していたが、ある日を境に宇相吹を通して彼女に多額の謝礼を渡すようになる。その後、金の亡者と成り果てた彼女の暴走によって、絞殺されたかに思われたが、実は浅尾に仕掛けたマインドコントロールで、浅尾が殺害したのは娘の敏子であった。
この話における宇相吹の依頼人で、本当は意思疎通ばかりか会話も流暢にできる。一連の出来事は全て彼が自分の遺産を相続させるに相応しい人間であるか見極めるための『テスト』であり、自身は浅尾が素直に謝礼(と思い込んでいた紙くず)を返してきていたら、本当に遺産を相続させるつもりでいた。彼曰く、まだまだ『テスト』を受けさせたい血縁者が沢山いるとのことで、その後も宇相吹に協力を求めながらもそれを楽しんでいるかのように狂笑していたが、その後の動向は不明。
(他の依頼者たちと趣旨が異なるものの)宇相吹の依頼者の中で、最終的に自身の思惑通りに事を運ぶことのできた数少ない人物。
「不幸を呼ぶ女」編(3巻)
久米(くめ)
この話のキーパーソン。尚子がパート勤務する会社の主任。真面目で面倒見がよく、尚子の1人息子の宗樹(むねき)の保育園に迎えに行くのを任されるほど、信頼される人物。久米の工場で宇相吹の噂がされていて、それを聞きつけ個人で接触をする。尚子に惚れており、尚子の看病疲れから解放するために彼女の旦那である宏次の殺害を依頼する。その後尚子と再婚するが、事件から半年後、尚子の依頼を受けた宇相吹により、食べていた弁当の中身をムカデと思い込まされ、ショック死する。尚子のために闇に堕ちる覚悟を本気で決めていたが、宇相吹が散々釘を刺してまで忠告していた闇に堕ちる覚悟はあるのか?の意味を“尚子の幸せのために、宏次を殺した罪を背負う覚悟があるか?”という意味に思い込んで、彼女の心に潜んだ禍々しい本性には最期まで気付くことはなかった。
国分 尚子(こくぶ なおこ)
1人息子がいるパート主婦。1年前に旦那が何者かによって襲われ、会話もままならないほどの全身麻痺が後遺症として残っている。日に日にやつれており、旦那を襲った犯人も捕まらないどころか、手がかりすらないので周りから同情されている。これまでも大学入学前に両親を事故で亡くし、進学を諦め、就職先では体を壊して解雇されるなど不幸続きの半生を送っている。宇相吹によると尚子はミュンヒハウゼン症候群であり、親からは育児放棄され、友人もいなかった幼少期に骨折をして入院した時に、親や教師クラスメイトから同情されたことで快楽を覚え、以降、周囲から同情を買うために、自ら幸せの絶頂の時に敢えてそれを壊すようなことをして、『不幸な女性』であることを自作自演していた。宏次も久米も、尚子にとっては最初から周囲から同情を買うための“生贄”にしか思われていなかった。また、宇相吹は両親の事故死も尚子が仕組んだことだと見立てている。その後の動向は不明だが、最後のコマでは息子の宗樹を次の“生贄”にしようと考えていることを示唆していた。
国分 宏次(こくぶ ひろつぐ)
「探偵の誤算」編(3巻)
保坂の依頼人
保坂に仲井戸秀樹の妻と名乗る依頼人の中年女。夫の秀樹の様子が怪しく、保坂に依頼し調査してもらっていたところ、同じ会社の渡瀬文佳(わたせ ふみか)との浮気の証拠を掴む。保坂に3000万円払うから殺してほしいと依頼して後日、宇相吹を紹介してもらい、「仲井戸と愛人を殺してほしい」と依頼する。依頼通り仲井戸と愛人の渡瀬を殺した後、2人を殺した証明として宇相吹が2人の所持品を持って現れてくるが、その中に渡瀬と赤ん坊が写っている写真を見せられる。「3日間も誰にも見てもらえないなら、赤ん坊は死んでいるだろう」と宇相吹に脅され渡瀬のマンションに急行し、部屋に入ると寝かされていた赤ん坊の人形を自分が殺したと思い込みベランダから投身自殺する。
仲井戸の妻と名乗っていたのは仲井戸に騙された結果であり、実際は仲井戸には別居中の妻がいた。周囲にも再婚したと吹聴していたのでそう信じ切っていたが、実際は婚姻関係はなく仲井戸の愛人のひとりであり、仲井戸の愛人を殺してほしいの依頼通りに死ぬことになった。ちなみに写真の赤ん坊は渡瀬の甥である。
「親の愛」編(4巻)
江口(えぐち)
萩原(はぎわら)
江口がパート勤務するスーパーマーケットの店長。1人息子の修平を育てるシングルファザー。江口が忘れた手帳から学が修平をいじめる証拠写真を偶然見つけ、学の殺害を宇相吹に依頼する。宇相吹・萩原が江口と邂逅した時、当初江口からは誤解で学の殺害を依頼したと思っていたが、萩原は最初から修平をいじめる主犯が学だと分かった上で殺害を依頼した。宇相吹が学がそろそろ中毒死すると嘯くので、狂乱になった江口に包丁で心臓を刺されて死ぬ。自分を修平がいじめられていることに気付かなかったことを自分で責めていたが、自らの命を持って修平を守ったことになってしまった。結果として自己犠牲を払う形となったものの、自身の思惑通りに事を運ぶことができた。
江口 学(えぐち まなぶ)
「スキャンダル」編(4巻)
川島 仁(かわしま ひとし)
この話の依頼人。職業は芸能マネージャー。猫嫌い。宇相吹のマインドコントロールが効かない人間であり、宇相吹としては多田以外に『自分を殺せる人物』として一目置かれる。担当である杏奈とのキス写真を保坂に撮られ、口止め料として1000万円要求されていた。「密会現場の盗撮に関わる人間を始末して事態を収束させたい」と保坂の殺害を宇相吹に依頼する。その後、スキャンダル写真の真実と自分の依頼内容の本当の意味に気づき、『依頼をキャンセルするためには自分を殺すしか無い』という、宇相吹の誘導を前に、激しい葛藤の末に灰皿で宇相吹を殴り殺そうとするが、人殺しという極度に異常な心理状態に陥ったことで、暗示に対する抵抗力が失われ、マインドコントロールが効いてしまい、その結果、宇相吹と錯覚して杏奈を殴り殺してしまい、そのショックから投身自殺する。
依頼者である川島が死亡したため、保坂の殺害は取りやめになったものの、宇相吹からは今まで消えていった「(マインドコントロールが)通じない人たち」と同じだったとして深く失望されることとなった。
田中 杏奈(たなか あんな)
杏那(あんな)という芸名で、事務所一押しとして売り出し中のアイドル。まわりに内緒で川島と付き合っている。川島は彼女のアイドル生命を守るために『密会現場の盗撮に関わる人間を始末』することを依頼したものの、実は川島と隠れて付き合うことに嫌気が差し、スキャンダルが発覚して引退してもいいと思っているが、当の川島が煮え切らない態度なため、保坂に依頼してわざとスキャンダル写真を撮らせていた。杏奈としては、そのまま盗撮した写真を週刊誌に売りつけてもらいスキャンダルを確立させる腹積もりだったが、スキャンダル写真だけではあまり稼げないと考えた保坂の独断によって川島が強請られたことで、自らの意図が拗れる形となった。
自分たちの前に宇相吹が現れ、全ての真相が明らかになると、宇相吹から自らも密会現場の盗撮に関わる人間として殺しの対象に加えられたことを告げられると、泣きながら川島に助けを求めるが、既のところで宇相吹のマインドコントロールにかかってしまった川島から宇相吹と錯覚され、殴り殺される形で依頼通り死ぬ。喫煙者。
「顔」編(4巻)
百合子(ゆりこ)
折坂 真理恵(おりさか まりえ)
百合子の店に『澪(みお)』という源氏名で入店してきた新人のキャバクラ嬢。学生時代はソフトボール部。美人で会話も上手なので客の受けも良いが、内心で客の悪口を言っているなど、本性は悪い。実は百合子とは高校の同級生で同じ部活であり、理不尽な難癖をつけて百合子の顔を金属バットでフルスイングして鼻を骨折させ、彼女を整形依存に陥らせた。バッティングセンターに来ていたところ、宇相吹が現れ恐怖に駆られて、逃げ惑っているところ他の客が打っているバットのフルスイングを受け、病院に入院する。
鼻を潰されたので治すための整形手術を受けるが、包帯が取れる前に宇相吹のマインドコントロールで整形前の百合子と同じ顔にされたと思い込み、かつて自らが百合子にさせたように整形依存症になった上、無計画に整形手術を重ね過ぎた結果、顔面崩壊し、妖怪のような悍ましい形相へと成り果てるという因果応報な顛末を迎える。
形成外科を転々とする真理恵の前に宇相吹が現れ彼の名刺を貰い、自身を陥れた百合子への報復を決意するという、“復讐は復讐を生む”という付箋が置かれたシュチュエーションで話の幕が閉じる。
11巻の再登場時には宇相吹への復讐だけに凝り固まっていたが、百合子への復讐は依頼しなかったのか、既に完遂されているのかは不明である。
「偽装の家族」編(4巻)
野々村 栄子(ののむら えいこ)
野々村 利昭(ののむら としあき)
野々村 梓(ののむら あずさ)
「復讐の覚悟」編(5巻)
「浮気心」編(5巻)
加納 拓生(かのう たくお)
不動産の営業マン。現在では黒い短髪にメガネをかけた真面目な風貌であるが、3年前までは金髪やアクセサリーを身に着けた、今とは正反対の印象のヤンキーであった。
新人である小早川の教育係となって、手取り足取り教えていたところに部屋を探しにきた宇相吹が現れる。
宇相吹に認知的不協和解消の心理と指摘されてから、小早川を強く意識するようになる。段々欲求が抑えられなくなり、元々の病的な女好きの性格を蘇らせ、小早川にキスするが、同時に長い間抑えていた性欲の反動のためか、常人外れな怪力で彼女を両手で抑え過ぎてしまい、そのまま顔を潰してしまう形で殺してしまう。
その後、宇相吹に揺動された由紀乃の手で自身も撲殺されることとなる。
加納 由紀乃(かのう ゆきの)
拓生の妻。今から3年前に合コンで出会った拓生によって処女を奪われるが、自身の元来の性格であった猛烈なほどに独占欲や執心、嫉妬心の強い性格によって強く束縛し、彼の病的な女好きの性格を草食の性格に変えてしまう。
拓生に対する束縛は半ば狂気的で、職場に女性がいるだけでヒステリックを起こすほどで、小早川に欲を起こさないように宇相吹にテストの意味で小早川の殺害依頼をする。
最終的に拓生が小早川を殺してしまう結果となったが、由紀乃にとってはどちらでも良く、「拓生が塀の中に入ることで異性と触れ合う機会を断たれるならそれで良い」と思っていたものの、宇相吹から女刑事(百々瀬)が拓生を逮捕しにくると聞いたことで独占欲が暴走し、拓生の元へ駆けつけ彼を撲殺すると、自分は薬物自殺を遂げた。
小早川 加菜(こばやかわ かな)
「旧友」編(5巻)
杉田 いずみ(すぎた いずみ)
百々瀬の高校の同級生。旧姓は黒沢(くろさわ)。公園でホームレスの炊き出しのボランティアをやっている。
本当は専業主婦なのだが、子供が産めない体なので、掌を返した杉田家(夫、義両親)にきつく当たられ、今ではいない者として扱われている始末。居場所を探すためにホームレスのボランティアに所属して陽一とは恋人ではあるが、同時に自分の孤独を癒すための共依存の関係であり、宇相吹からは「傷ついた自尊心を癒やすための道具」にしか思っていなかったことを指摘されている。
宇相吹に自分を孤独に陥れる人間を皆殺してほしいという依頼をして、百々瀬と杉田家の人々の殺害を依頼する。
依頼通り夫と義両親を「ネイルガンで全身に釘を打ち込まれる」錯覚を見せつけながら空砲を打ち込むことでショック死に追いやる形で殺害(同じく標的であった百々瀬はマインドコントロールで交通事故を誘発するように誘導させられるが、居合わせていた結夏の機転によって難を逃れた)してもらい、陽一と共に新しい生活を初められると喜ぶも、その陽一が自分に内緒で職を探して更生しようとしていたことを知り錯乱。初出勤に出向こうとする彼に「ひとりにしないで」と叫んだことで、彼もまた依頼内容であった自分を孤独に陥れる人間の一人と見做した宇相吹の手で陽一を殺され、自身はその数日後に再起不能なまでに精神崩壊した状態で所属していたボランティア団体によって発見、保護された。
結果的に彼女を救えなかったことを知った百々瀬は、深い無力感に苛まれ、宇相吹と渡り合えるのは多田しかいないことを痛嘆させられるのであった。
伊川 陽一(いがわ よういち)
「輝き」編(5巻)
淳(あつし)
多田が入院している病院で同じく重度の心臓病で入院している母親の息子。甘えん坊で所謂マザコンであり、母親の勧めで剣道をしているが本人はまったくやる気がない。
母親を勇気付けるため人肌脱いだ多田が稽古を付け、それなりに実力はついたものの、次の大会の対戦相手がインターハイ常連の実力者のため、尻込みしていたが多田に檄を飛ばされ試合に挑む。
結局試合は勝ったものの、それは相手を5万円で買収した八百長試合であったため、それをネタに強請られてしまい、口封じのために宇相吹に殺しの依頼をする。結果的に自身の思惑通りに事を運ぶことこそできたものの、淳自身は取り返しのつかないことをしてしまった後悔と罪悪感に押しつぶされ、手術室の前で母親の手術が終わるのを、ただ泣きながら待つだけだった。
「ある男の理想」編(6巻)
坂口(さかぐち)
多田の交番勤務時代の先輩で階級は巡査。当時から刑事志望で、地道の検挙を重ねるなど努力家。保坂に殴られて一時記憶喪失になった多田の治療の一環で、一時外出するため同行するための警察官として登場する。一軒家を購入し、多田を誘う。結夏の許可もあり、家にあげてもらい坂口の家族全員で多田と結夏をもてなす。
息子のテニスのコーチにいそしんだり、家族サービスに熱心になるなど、多田の知っていた坂口とは変化が見られる。しかし本質は努力しても刑事になれなかった彼のやりきれない思いを、家族にぶつけていただけにすぎず、妻の些細なミスでも暴力をふるうほど激しく叱責したり、息子に対しても苛烈なスパルタ指導など、"完璧な自分の家族"を強要していた。
坂口の娘が結夏に渡した折り紙が「ママをたすけて」のSOSになっており、それを利用した結夏によって坂口の子供の依頼によって宇相吹に狙われることになる。
坂口の娘のSOSの折り紙を多田から知らされ、帰宅して妻を殴りながら問い詰める。業を煮やした坂口はそばにあったドライヤーを手に取り、コードで絞殺しようとするがそれは宇相吹のマインドコントロールで、気が付いた時にはそれで自分の首を絞めていた。そこへ宇相吹が現れ、今回の殺しの依頼の全容を打ち明けられると、多田は自らの出世が坂口を変えてしまったことに激しい動揺を受けるもそれでも尊敬する先輩として守ろうとするが、その守るという発言が逆に彼の自尊心を深く傷つけ、多田が宇相吹を殺すつもりで持っていた包丁を奪い、自ら首を深く切り、自殺してしまう。
死の直前には多田に対して「お前に助けられるなんて、死んでもごめんだ」と長年抱えていた劣等感と嫉妬心、憎悪を顕にする一方で、宇相吹に自らの殺しを依頼した子供たちに対しては、元を辿れば自分が子供たちをここまで追い込んでしまったことを自覚したのか「自分の意志でこう(自殺)したんだ。お前たちは何も悪くない」と寛恕する言葉を言い残した。そのため、妻も子供たちも坂口の死に嘆き悲しんだ。
宇相吹によると、坂口は「補償の防衛機制」であり"多田の中途半端な正義感で生み出された歪んだ人間"であるとのこと。
この事件を通して多田は宇相吹に関する記憶を完全に取り戻すこととなった。
坂口美弥子(さかぐち みやこ)
坂口の妻。夫から裏で苛烈な暴力を受けながらも、夫を一途に愛し続け、元々温厚で真面目だった夫が変貌する原因になった多田を内心憎んでいる。
後に「正義の権力」編(8巻)に再登場。夫の死によって多田への憎悪はさらに増長して遂に殺意の域に達し、より屈辱的に死なせるために、多田が執心している宇相吹に殺させようと考え、宇相吹に対し多田の殺害を依頼しようとするが、宇相吹からは新たに「多田刑事は殺さない」というルールを制定してまで、依頼を頑なに断られてしまう。
それでも多田殺害を諦めきれず、闇サイトの殺しを請け負う犯罪集団を雇い、多田を拉致させる強硬手段に出るが、それを察知した諏訪部ら捜査一課の宇相吹専従班に利用されることとなる。その後、宇相吹と多田の前に現れ、多田をナイフで刺殺しようとするが、宇相吹にマインドコントロールと共に水をかけられ、炎で焼かれる幻覚を見せつけられながら錯乱・ショック死する。
宇相吹は咄嗟に多田を守るために依頼対象でない彼女を殺害することで、初めて自ら殺しのルールを曲げたことに困惑しながらも、喜びを覚え、自分という存在を壊していく多田に対してますます興味を懐き、珍しく「楽しいね…人間は…」と感想を呟くのだった。
「過ちの代償」編(6巻)
相澤 涼子(あいざわ りょうこ)
一児の母である主婦。20歳で上司だった15歳上の光明(みつあき)と結婚し、娘の愛莉を儲けるが、遊びたい欲求が抑えきれずSNSで相手を見つけては浮気をしていた。夫が愛莉に対する態度が日に日に冷たくなってきたり、夫に年々似てこないので、娘は当時の浮気相手との間に出来てしまった子供だと不安が募っており、さらに最近学校で噂になっている黒いスーツの不審者(宇相吹)のことを知り、実際に彼の姿を目撃すると、愛莉を不貞の子と疑心を抱く光明が雇った殺し屋であると考えるが、その矢先に現れた田沼から、その正体と愛莉の実の父親であることを打ち明けられ、愕然となる。
真実を突きつけた田沼にヨリを戻そうと迫られるが、目の前で田沼は宇相吹に殺され、彼から一連の依頼の全容を打ち明けられる。そして、その依頼人が愛莉であった上に、娘の残酷かつ陰湿な本性を知り、「この子は誰…?」と恐怖に震えることとなった。
田沼(たぬま)
「教師の栄光」編(6巻)
貫井 拓真(ぬくい たくま)
西杉並高校バレーボール部顧問兼監督。"腑抜けの貫井"とあだ名されるが、実は5年前まで北練馬高校のバレーボールの名監督であり、熱血指導で無名の公立高校を全国優勝に導く存在だった。しかし、本性は泣く子も黙る暴力教師で過去に部員を1人(佐山の兄)、暴力に耐えかねて自殺に追い込んでいるが、当時の部員たちは貫井を恐れて真実を明らかにすることができず、学校側もそれを鵜呑みにしてしまったために何の責任も追求されずに他校に転任し、その後、西杉並高校に赴任した。現在の学校に赴任後、指導方針を一転させた理由は明らかになっていないが、佐山は「兄を殺したことが少しは堪えていたのか?」と推測している。
学校に現れた宇相吹に「蛭川を殺しにきた」と言うので、慌てて部室に駆け付け蛭川らを逃がそうと試みるが、蛭川らには相手にされず、逆に羽交い絞めにされ服を脱がされる悪戯をされるが、宇相吹のマインドコントロールによって暴力教師時代の威勢と、自身の拳が殴った衝撃で指がほとんど欠損し、骨がむき出しになるほどの強烈な怪力を発揮して、蛭川を殴り殺してしまった。蛭川の凄惨な遺体と、自身に恐怖して錯乱しながら逃げる蛭川の仲間たちの様子を目の当たりにして我に返ったところで、宇相吹と共に現れた佐山から、彼が5年前に自殺に追いやった生徒の血縁者であることを明かされ、茫然自失となった。その後は蛭川の仲間が通報した警察に逮捕される。
佐山(さやま)
西杉並高校バレーボール部1年、今回の依頼人。他校からスポーツ推薦が来るほどの実力者だが、貫井のためにわざわざ推薦を断ってまで西杉並高校に入学している。練習の邪魔になる蛭川の殺害を宇相吹に依頼する。
実は5年前に貫井の暴力に耐えかねて自殺した生徒 山神 祐介(やまがみ ゆうすけ)の弟であり、佐山は母方の姓。依頼も死んだ兄の無念を晴らすため。依頼通りに貫井に蛭川殺害の汚名を着せることで逮捕に追いやり、これで彼の犯した罪を白目の下に晒されるのを期待していたが、貫井逮捕後、ネットニュースを見て兄の仇を取ったことに満足するが、同時にコメント欄に貫井に同情するコメントが多く、自らの本当の目的であった『貫井の過去の罪を世の中に知らしめる』ことは果たせなかったことに、悔しさの慟哭を上げた。
「夫婦の絆」編(6巻)
源(みなもと)
源 早苗(みなもと さなえ)
源家の妻。長年夫の暴力やギャンブルに苦しめられながらも息子や世間体のために離婚せずに耐えていたが、旦那が倒れる数日前に家に指輪が届き、結婚20年目の記念として用意されたものと悟ったことから、植物人間となったどうしようもない旦那を憎みきれず、介護している。
実はこの話の宇相吹の殺しのターゲット。実は暴力に耐えながらも、食事に洗剤や害虫を混ぜ込むなど陰湿な仕返しをしていた。それを見てしまった夫は自身の命を守ることと、不倫相手との新しい人生を歩むために宇相吹に自身を殺すよう依頼していた。自身へのプレゼントと思い込んでいた指輪も不倫相手に贈るためのものだった。
旦那が植物人間となったことで依頼を降りることにした宇相吹から全てを明かされた結果、抑えていた憎悪を爆発させて旦那を滅多刺しにして殺害し、自身も自暴自棄になって宇相吹が本来殺しに使うために用意していた“毒物”(と思い込まされた栄養ドリンク)を飲んで死ぬ。
「通じない男」編(7巻)
田ノ上(たのうえ)
伊達 春夫(だて はるお)
元警視庁江戸川署の刑事。多田と同じく、宇相吹の能力が"通じない"人間である。10年前に女子大生を刺殺して住居侵入・傷害致死の罪で起訴され、その後精神疾患を起こし医療刑務所に収監される。物語の時点で出所していた。正義感が強く、融通も効かない性格のため、刑事仲間からは孤立していたが、宇相吹からはそこを見込まれることとなった。
10年前の事件の真相は、宇相吹を捜査する中で、痴情のもつれから彼に友人の女子大生を殺害するように依頼をした女性と接触し、目標とされた女子大生の部屋に駆けつけると、丁度そこで殺しを行おうとしていた最中の宇相吹と鉢合わせ、制止しようとするが、揉み合いの中で、自身が“通じない”人間であることに気づいた宇相吹から試されるかのように、部屋にあった包丁で自分を殺してほしいと頼まれ、「貴方が僕を殺さなければ、僕がこのまま彼女を包丁で刺し殺す」と究極の選択を迫られる中、自身の信じてきた正義に対して迷いを起したことで宇相吹のマインドコントロールにかかってしまい、女子大生を刺殺してしまったという経緯であったが、その後、宇相吹に殺しを依頼した女性も罪悪感に耐えかねて精神を病んで自殺してしまい、結局伊達一人が殺人の汚名を背負う結果となり、宇相吹からもこの結果に心底失望された。
多田・田ノ上と初めて会った時はまともに目も合わせてもらえないほど、精神が衰弱していたが、多田の献身的なアプローチで10日である程度の会話ができ、自身が逮捕されるきっかけとなった事件の真相を語れるまで回復した。しかし、伊達が再起することで過去に個人的に犯していた悪事が露呈されることを危惧した田ノ上によって、諏訪部に密告。作戦のため伊達が殺害した女子大生の両親に宇相吹を使って伊達の殺しを依頼され、最終的に宇相吹事件専従捜査班の監視を逆手にとった宇相吹の策略でマインドコントロールされた田ノ上によって警棒で撲殺される。宇相吹にとっても伊達とは10年ぶりの再会だったが、既に伊達への興味は失っており、「彼は僕の中ではとっくに終わった人―――ただの塵だ」と珍しく冷酷な表情を顕にしながら吐き捨てるのだった。
一方で、息を引き取る直前に多田に娘の写真と「あるもの」が隠されたロケットペンダントを託しながら「宇相吹に勝ちたいなら「覚悟」を決めろ…! 正義のために悪になる覚悟を…!!」という助言を遺し、この助言は後々に宇相吹と対峙する多田に大きな影響を与えることとなる。
「見て見ぬフリ」編(7巻)
森尾(もりお)
「少女の夢」編(7巻)
マドカ
4人組バンド、「RAPPORT(ラポール)」のボーカル。大学の仲間で結成してプロを目指そうと励んでいるものの、バンドとしての実力が今一つ足らない状態。レコード会社のプロデューサー・周防(すおう)からソロデビューの話が来ているが、メンバーを裏切れない気持ちがあって悩んでいる。新曲の練習中に宇相吹が現れ、「君たちを殺しに来た」と言うのでソロデビューを納得させるために周防が雇ったと思い込んでいたが、宇相吹が録音していた他のメンバーが自分の陰口をいっていた音声を聞いて仲間割れ。宇相吹に「周防さんの依頼通り3人を殺せば?」と発言した途端、宇相吹が猫に餌をあげるために現場からとんぼ返りした。直後、激昂したドラマーとベーシストのカナ・レイラに殴り殺される。
「ヒーローの条件」編(8巻)
秋元(あきもと)
「絆の在り方」編(8巻)
貴樹(たかき)
宇都宮家の養子。16歳。1歳のころに児童施設の前で捨てられ、その後子供のいない宇都宮夫婦に引き取られる。素行が悪く高校も停学中だが、引き取られた宇都宮夫妻には感謝している。ある日自分を捨てた本当の母親から手紙が届き、場の空気から不審に思って義両親の跡をつけていたら宇相吹に実の母親の殺害を依頼していて、宇相吹に殺害に同行させてほしいと頼む。しかし、実の母親への殺意はなく一回会って問い詰めて殴りたいという理由である。
実母の住むアパートへ宇相吹と乗り込み、殴ろうと向かうが、当の実母は酒で体を壊して重体であった。うわ言で実母が泣きながら謝罪しているのを見て貴樹も涙を流し、復讐は頓挫。実母の死を見届けた後は、家に向かうが義両親の依頼で貴樹も殺すことになったと宇相吹に告げられ、飲んでいるコーヒーに毒を入れたと錯覚させられ、毒が回りきるわずかな時間で義父を金属バットで殴り殺す。その場にいた義母についてその後は明確になっていない。
倉木 紀子(くらき のりこ)
「忘れられた男」編(9巻)
大畑 清(おおはた きよし)
今回の宇相吹のターゲット。現役中は仕事熱心に働いていたが、昨年の定年退職していて、物忘れが段々激しくなっている。宇相吹に連れられて来たSMキャバクラで隣に座ったキャバ嬢と一晩セックスをした後、キャバクラ嬢から殺しのキャンセルの条件のひとつである"依頼人を殺す"の通り、妻を殺したつもりだったがなぜか昔の不倫相手を殺していた。
数年前に車で大事故を起こしていて入院しており、記憶障害はその後遺症。事故前は無茶苦茶な生活をしており、不倫相手のマンションに毎日のように通っていた。妻が殺しの依頼をしていたと勘違いしていて、実際は何もかもが忘れていく自分が嫌になり、妻を忘れてしまう前に自分を殺してほしいと自分で宇相吹に依頼していた。
最期に宇相吹の問いかけに本来の目的を忘れてしまったので宇相吹にオモチャのピストルで殺される。
「大切な我が子」(9巻)
土井 育美(どい いくみ)
専業主婦。玩具メーカー開発の旦那と1人息子の章太郎と3人家族。ママ友のグループに注意されたりと忘れ事が多い人物。高杉に何かと注意されるので「子供と静かに暮らしたいだけ」とストレスを抱えており、子供との生活の邪魔になる者の抹殺を宇相吹に依頼する。
実は元は旦那のいた会社に開発スタッフとして携わっていたが、夫とできちゃった婚をして退職。育美のいう子供とは自分が開発した玩具のことであり、それは元上司に手放しで認められる代物であった。邪魔になった高杉・夫・章太郎の始末を宇相吹に依頼していた。真実を知った夫に撲殺され、夫も直後に自殺する。息子の章太郎は現場検証時に「子供が助かったのが不幸中の幸い」と言及されている。
「過去との対峙」(9巻)
「処刑教室」(9巻)
「真剣なお付き合い」編(10巻)
「Crossing the line」編(10巻)
「予言の自己成就」編(10巻)
「A Confession」編(10巻)
「The someone behind」編(11巻)
「トイレの殺し屋」編(12巻)
書誌情報
- 宮月新(原作)、神崎裕也(漫画)『不能犯』 集英社〈ヤングジャンプ・コミックス〉、全12巻
- 2014年1月09日発売、ISBN 978-4-08-879730-4
- 2014年9月19日発売、ISBN 978-4-08-879890-5
- 2015年4月17日発売、ISBN 978-4-08-890137-4
- 2016年2月19日発売、ISBN 978-4-08-890366-8
- 2016年11月18日発売、ISBN 978-4-08-890417-7
- 2017年9月19日発売、ISBN 978-4-08-890750-5
- 2018年1月19日発売、ISBN 978-4-08-890852-6
- 2018年6月19日発売、ISBN 978-4-08-891021-5
- 2019年2月19日発売、ISBN 978-4-08-891214-1
- 2019年10月18日発売、ISBN 978-4-08-891393-3
- 2020年8月19日発売、ISBN 978-4-08-891682-8
- 2021年1月19日発売、ISBN 978-4-08-891767-2
スピンオフ
- 原案:宮月新、著:ひずき優、原作:宮月新・神崎裕也、集英社オレンジ文庫
- 小説 不能犯 女子高生と電話ボックスの殺し屋 2018年2月20日発売、ISBN 978-4-08-680181-2
- 小説 不能犯 墜ちる女 2019年1月18日発売、ISBN 978-4-08-680236-9
- 小説 不能犯 女子高生と電話ボックスの殺し屋 2018年2月20日発売、ISBN 978-4-08-680181-2
- 小説 不能犯 墜ちる女 2019年1月18日発売、ISBN 978-4-08-680236-9
映画
同名タイトルの映画が、2018年2月1日に公開。PG12指定。
あらすじ(映画)
登場人物(映画)
- 宇相吹正 - 松坂桃李
- 多田友子 - 沢尻エリカ
- 百々瀬麻雄 - 新田真剣佑
- 川端タケル - 間宮祥太朗
- 赤井芳樹 - テット・ワダ
- 若松亮平 - 菅谷哲也
- 前川夏海 - 岡崎紗絵
- 木島功 - 水上剣星
- 鳥森広志 - 小林稔侍
- 羽根田健 - 忍成修吾
- 羽根田桃香 - 水上京香
- 櫻井俊雄 - 今野浩喜
- 夜目美冬 - 矢田亜希子
- 河津村宏 - 安田顕
- 木村優 - 真野恵里菜
- 夢原理沙 - 芦名星
- 榊克明 - 久保田秀敏
- 西冴子 - 堀田茜
- 加島夏美 - 永尾まりや
- 矢崎太一 - 鈴之助
- 風間雅之 - 森岡豊
- 荒川晋平 - 松本享恭
- 上野琢巳 - 松澤匠
- 箕輪修 - タイチ
- 看護師 - 松元絵里花
スタッフ
- 原作 - 『不能犯』(集英社「グランドジャンプ」連載 原作・宮月新 / 画・神崎裕也)
- 監督 - 白石晃士
- 脚本 - 山岡潤平、白石晃士
- 音楽 - 富貴晴美
- 主題歌 - GLIM SPANKY「愚か者たち」(UNIVERSAL MUSIC)
- 製作 - 岡田美穂、村田嘉邦、勝股英夫、水野英明、木下暢起、三宅容介、森川真行
- エグゼクティブプロデューサー - 吉條英希
- 企画・プロデュース - 中畠義之、森川真行
- プロデューサー - 大畑利久、石塚清和
- 共同プロデューサー - 宮城希、清家優輝
- ラインプロデューサー - 小泉朋
- 撮影 - 高木風太
- 照明 - 豊見山明長
- 録音 - 石貝洋
- 美術 - 中川理仁
- 装飾 - 藤田徹
- VFXスーパーバイザー - 鹿角剛
- スタイリスト - 中井綾子、長瀬哲朗(沢尻エリカ担当)
- ヘアメイク - 村木アケミ
- 編集 - 和田剛
- 音響効果 - 岡瀬晶彦
- スクリプター - 阿保知香子
- 助監督 - 吉村達矢
- 制作担当 - 鍋島章浩
- 配給 - ショウゲート
- 制作プロダクション - ファインエンターテイメント
- 製作 - 「不能犯」製作委員会(関西テレビ放送、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、エイベックス・ピクチャーズ、BigFace、集英社、ポニーキャニオン、ファインエンターテイメント)
関連商品
ノベライズ
- 映画ノベライズ 不能犯(著:希多美咲、原作:宮月新・神崎裕也、集英社オレンジ文庫、2018年1月19日発売、ISBN 978-4-08-680174-4)
CD
- 映画「不能犯」オリジナル・サウンドトラック(音楽:富貴晴美、エイベックス・クラシックス、2018年1月31日発売、AVCL-25955)
DVD
- 不能犯【DVD豪華版】(エイベックス・ピクチャーズ、2018年7月13日発売、EYBF-12000/1)
- 不能犯【DVD通常版】(エイベックス・ピクチャーズ、2018年7月13日発売、EYBF-12003)
Blu-ray
- 不能犯【Blu-ray豪華版】(エイベックス・ピクチャーズ、2018年7月13日発売、EYXF-12002/B)
ドラマ
同名タイトルのdTVオリジナルドラマが2017年12月22日より配信された。全5話。
地上波ではカンテレにて、1話から4話までが2018年1月17日から4週にわたって放送された。
あらすじ(ドラマ)
登場人物(ドラマ)
宇相吹正 - 松坂桃李 : 殺し屋。思い込みの力(マインドコントロール)だけで人を殺す。
多田友子 - 沢尻エリカ : 刑事。不可解な事件を追う。
荒川晋平 - 松本享恭 : 多田友子の部下の刑事。
木島功 - 水上剣星 : 木島ファイナンス代表。
上野琢巳 - 松澤匠 : 木島ファイナンス社員。
箕輪修 - タイチ : 木島ファイナンス社員。
第1話「隠したい過去」
第2話「賭ける男」
第3-4話「神待ちサイトの悪魔」
第5話「騙す女」
スタッフ(ドラマ)
- 原作 - 『不能犯』原作:宮月新/画:神崎裕也(集英社)
- 監督 - 内藤瑛亮
- 脚本 - 山岡潤平
- 音楽 - 富貴晴美
- プロデュース - 上田徳浩、堀切八郎
- プロデューサー - 内部健太郎、松村尚
- 制作 - カンテレ、ファインエンターテイメント
- 製作著作 - エイベックス通信放送
放送日程
- 第1話「隠したい過去」 2018年1月17日
- 第2話「賭ける男」 2018年1月24日
- 第3話「神待ちサイトの悪魔」(前編) 2018年1月31日
- 第4話「神待ちサイトの悪魔」(後編) 2018年2月7日
- 第5話「騙す女」 ※dTV配信のみ
ソフト化
- dTVオリジナルドラマ「不能犯」(DVD、エイベックス・ピクチャーズ、2018年7月13日発売、EYBB-12004)