乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ
漫画:乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ
作者:大西巷一,
出版社:双葉社,
掲載誌:月刊アクション,
レーベル:アクションコミックス,
発表期間:2013年5月25日 - 2019年4月25日,
巻数:全12巻,
話数:全60話,
漫画:乙女戦争外伝I 赤い瞳のヴィクトルカ
作者:大西巷一,
出版社:双葉社,
掲載誌:月刊アクション,
レーベル:アクションコミックス,
発表期間:2019年11月25日 - 2020年3月25日,
巻数:全1巻,
話数:全5話,
漫画:乙女戦争外伝 II 火を継ぐ者たち
作者:大西巷一,
出版社:双葉社,
掲載誌:月刊アクション,
レーベル:アクションコミックス,
発表期間:2020年6月25日 - 2021年4月24日,
巻数:全2巻,
話数:全10話,
以下はWikipediaより引用
要約
『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』(おとめせんそう ディーヴチー・ヴァールカ / Dívčí válka)は、大西巷一による日本の漫画作品。15世紀の中央ヨーロッパで起きたフス戦争を題材とする。
『月刊アクション』(双葉社)の創刊号である2013年7月号から2019年6月号まで全60話連載された。単行本は同社のアクションコミックスで全12巻。
概要
大西は自身のWebサイトにおいて『乙女戦争』と書いて「ディーヴチー・ヴァールカ」と読むが、「おとめせんそう」と読んでもかまわないとしている。タイトルの「乙女戦争」はチェコの古い伝説であり、本作が「女の子が主人公となって積極的に戦う戦争」という意味を持たせるために付けられている。戦争と少女という題材を扱っており、性暴力や性奴隷などの描写も多い。
フス戦争は、銃が実戦で組織的、かつ大量に集中運用された始めての戦争であり、その戦場に立つ少女兵を描いている。大西は西洋の処刑や拷問を描いた『ダンス・マカブル〜西洋暗黒小史』といった中世ヨーロッパの歴史物への造詣が深いが、本作でも表紙に描かれる少女兵のかわいらしさからは想像もつかない残酷な試練の連続が描かれている。
大西は、フス戦争を題材に採り上げた理由として以下をインタビューで答えている。
2014年には本作コミックス3巻と、百年戦争を描いたトミイ大塚の『ホークウッド』(メディアファクトリー)6巻の発売を記念して「中世どっきり残酷フェア」が開催され、協力書店へのポスター掲出、それぞれの作品の見どころをまとめたチラシの配布、コミックス購入者へ抽選で両者の直筆カラー色紙のプレゼントが行われた。
2015年に川崎市産業振興会館で「第6回中世ヨーロッパ関連総合展示会 PolarisMedievalFestival」が開催された際には、大西も参加しサイン会を行っている。甲冑を着用し、競技用ポールウェポン、ロングソードなどで戦う「甲冑格闘技STEEL!」を開催する日本アーマードバトル・リーグと本作が2016年にスポンサー契約を交わしている。コミックス9巻初版の巻末には「甲冑格闘技STEEL!」の広告も掲載されている。
前日譚である『乙女戦争外伝I 赤い瞳のヴィクトルカ』が『月刊アクション』にて2020年1月号から同年5月号まで連載された。後日譚にあたる『乙女戦争外伝II 火を継ぐ者たち』が同誌2020年8月号から2021年6月号まで連載された。
あらすじ
1420年、フス戦争が勃発した翌年のボヘミア王国(現在のチェコ共和国)。カトリック派聖ヨハネ騎士団のフス派狩りによって家族を虐殺され、自らも陵辱された12歳の少女シャールカは、通りすがりのフス派の英雄ヤン・ジシュカに倒れていたところを拾われる。
ジシュカに誘われて彼の傭兵隊に加わったシャールカは、ターボルと名付けられたフス派が集う拠点の山で出会った2人の少女ガブリエラとターニャとともに、新兵器「笛(ピーシュチャラ)」を扱う「天使隊」の一員となる。彼女らを含めて農民兵を主体とする2千人のターボル軍を結成したジシュカは、総勢10万におよぶカトリック派十字軍に包囲されたプラハへ進軍し、敵将の神聖ローマ皇帝ジギスムントに宣戦布告する。
プラハ近郊で始まったヴィトコフ丘の戦い(英語版)にて、突撃してくる敵の騎兵に対し、ターボル軍は荷車と笛を組み合わせた「ワゴンブルク戦術」を用いて少数ながらも圧倒し、見事に十字軍を撤退に追い込み勝利する。こうして、シャールカは勢い付いたフス派の仲間たちと共に、反カトリックの戦いに身を投じ成長していく。
登場人物
シャールカ
本作のヒロイン(主人公)。初登場時西暦1420年で12歳であったので、生年は西暦1408年と推定される。誕生日は不明。ボヘミア王国の農民の一人娘。家族は両親だけで兄弟姉妹はいない。両親を殺害された後は血縁のある家族は事実上の夫であるヨハンとの間に儲けた一人娘のクラーラのみ。7巻時点14歳。8巻で16歳。10巻で22歳。最終の12巻で30歳になっている。名前は伝説の「乙女戦争」の主要人物の名前からとられている。
異端(フス派)狩りの名目で住んでいた村が騎士団に襲われ、両親と住んでいた村の人間を皆殺しにされる。自身もレイプされたが一人だけ生き残り、彷徨っていたところをヤン・ジシュカ率いる傭兵団に拾われ、少女兵として戦場に立つことになる。各地を転戦するうちに貴族の少年ヨハン・フニャディと出会い、好意を持たれる。その後、神聖ローマ帝国に捕えられた際に絞首刑の判決を受け、彼女を助けようとする彼と話し合う中、老刑吏から「妊娠中の女性は刑の執行が延期される慣習がある」という助言を受け、生き延びる為ヨハンとの子作りに挑む。ヨハンを受け入れる間際に強姦時の恐怖が甦りそうになるが、亡き親友ガブリエラの幻影にヨハンの優しさを思い出す様励まされ恐怖を克服。何の苦痛も無く彼を受け入れ、処刑回避の為、そして子宝を授かる為に連日子作りに励み、互いの子を為したいという気持ちが通じ晴れてヨハンの子を身籠る。その間にヨハンが皇帝に働き掛けて恩赦を受け、釈放後長女・クラーラを授かった。その後はヨハンと共にクラーラを育てながら事実上の夫婦生活を送っていたが、娘をヨハンに預けて仲間たちの元へ戻ることを選んだ。シャールカ自身は以前から将来は多くの子供を産みたいと漠然とながら望んでいたので、ヨハンとの行為はその夢を叶えるためのものでもあったが、続けての妊娠はしなかった。出産後は母乳も出るようになったものの、元々身体の線が細かったことや若年であったこと、当時の栄養事情の悪さなどが重なってお乳の出が悪かったようである。
ジシュカの存命中、ヴィルヘルム・フォン・シュヴァルツを決死の嘆願で助命するも、それが仇となってジシュカ死後にヴラスタをヴィルヘルムに殺されるなどの悲劇を招いてしまう。その後、戦闘中に濁流に呑まれて行方不明となり、その際のショックで記憶喪失になって旅の踊子一座に拾われて売春婦マリーとして生き延びていた。なお、売春婦としての生活で妊娠と堕胎を繰り返し、子供が作れない体となった。欧州各地を興業する過程でフランスの救国の英雄であるジャンヌ・ダルクとも面識を持つが彼女の処刑を阻止することは叶わなかった。記憶が甦った後はかつてのフス派の仲間たちに合流し、ヨハンとも9年ぶりに再会。自分を救う為に体を交え、子を設けたヨハンへの愛情は健在で再会後は会えなかった9年間を埋めるようにヨハンと愛し合う。和平が叶ったら娘の元へ行きたいと願っていたが和平の実現は成らず、フス派が壊滅した最後の戦いで、踊子一座での仲間だったエリーザが馬に撥ねられた際、彼女が持っていたクロスボウから誤射された矢を左目に受けて撤退中の馬車から落とされ、そのまま戦場に取り残されてしまう(エリーザは撥ねられた際に頭を打ち、生存はしたが記憶喪失となった)。しかしヨハンの密命を受けたヴィルヘルムに救われて戦場を脱出、サーラとイスクラたちのいる傭兵団の元に送り届けられ、左目を失明したが生き延びた。
その後はサーラたちと共に傭兵団の一員となっていたようだが、フス戦争終結から4年が経過した1438年、領内に攻め込んできたオスマン帝国軍の兵士に襲われていたクラーラを助けたことで15年ぶりに愛娘と、さらにはヨハンと4年ぶり二度目の再会を果たし、物語は完結する。以降はヨハンの庇護の下で娘・クラーラとようやく平穏な日々を送れるようになったと推定される。
フス派
ミクラーシュ(フシネツのミクラーシュ)(チェコ語版)
フス派の聖職者。各地で迫害されるフス派住民の避難所としてターボルの街を建設し、指導者兼代表者となった。温厚篤実な性格で、ターボルの住民全員に慕われている。
元傭兵で、かつてはジシュカの右腕を務めていたほどの実力者だったが、終わりの見えない戦乱と流血に倦んで引退、プラハで生活する中でフスと出会い、その教えに深く帰依していった。
ターボルの住民達を戦争に動員しようとしたジシュカによって殺害されるが、死の間際に彼を赦し、シャールカにジシュカの以後を託して息を引き取った。
実在の人物ではあるが本作での描写はほぼ創作であり、史実とは以下のような差異がある。
・史実のミクラーシュは、ヴァーツラフ4世の政治顧問を務めた(この時に軍事顧問であったジシュカと知己を得たと思われる)宮廷人兼聖職者であり、傭兵であった事実はない。また、政治顧問としてヴァーツラフ4世にフス派の公認政策を取らせたのも彼である。
・フス派としては、ジェリフスキーにも匹敵する過激派。政治顧問を辞してターボル派を立ち上げたのも最初から軍事クーデターが目的であり、ジシュカはその部下兼軍事指揮官として招かれてターボル派に加わっている。
・作中で描かれた、プラハでフスと出会って彼に帰依する逸話は、本来ジシュカの逸話である。
・史実ではヴィシェフラトの戦い直後の、1420年12月に落馬事故で死亡している。この時までにミクラーシュの非妥協的な態度の為ターボル派と他の穏健フス派との亀裂が広がっており、それを憂いたジシュカによる謀殺ではないかとの推測が、作中でのジシュカによるミクラーシュ殺害のエピソードになったとの事。
ヤン・イスクラ
プロコプ
ヤン・ジェリフスキー(英語版)
ヴラスタ
リーゼロッテ
チャペク(サーンのヤン・チャペク)(チェコ語版)
ヴィクトリーン(ポシェブラディとクンタートのヴィクトリーン・ボチェック)(チェコ語版)
イジー
フヴェズダ(ヴィーツェミリツのヤン・フヴェズダ)(チェコ語版)
ペトル・フロマドカ(チェコ語版)
ヤクプ
アンブローシュ(チェコ語版)
プロクーペク(チェコ語版)
天使隊
プロコプがターボルの少年少女達を集めて結成した聖歌隊。讃美歌で味方を鼓舞し、また自ら銃を取って戦う戦闘部隊でもある。
ガブリエラ
ターボルに辿り着いたシャールカの最初の友人となった少女。生真面目で勉強熱心な性格で、読み書きを習得しており、シャールカに文字を教えたり、フス派の讃美歌兼進軍歌の『汝ら神の戦士たれ』を作詞している。
行動を共にするうちにシャールカに恋愛に近い感情を抱くようになるが、プラハでペストに罹患。隔離施設で孤独と恐怖に苛まれていた所でアダムに出会い、アダム派に転向してしまう。シャールカと再会した後、彼女をアダム派に入れ、ミサで自身とカーニシュの性行為を見せたり、心的外傷を負っているシャールカとレズ行為を行ったこともある。ターボル軍とアダム派の戦闘中に負傷し、その治療で食べた黒麦の影響で流産してしまう。その後、シャールカから「みんなの所ヘ帰ろう」と説得されるがまだアダムの洗脳から醒めていなかったため彼女を石で殴打した。さらにアダム派の生贄の儀式でシャールカを殺そうとするが手が止まり、意識を失ってしまう。目が覚めても自慰行為に耽ってしまうのでプロコプは彼女の手に手枷を付けて拘束していた。
アダム派の粛清の後、シャールカの献身的な看護により奇跡的に回復するが、その直後にミクラーシュ殺害の真相が露見することを恐れたジシュカの命を受けたイスクラに殺害された。
ラウラ
天使隊第一期メンバー。
カトリック派によるフス派への苛烈な弾圧が行われていた村からジシュカの傭兵部隊によって救出されるが、その時の体験からカトリック派への憎悪に燃え、戦場で嬉々として敵兵を殺害する復讐鬼と化してしまう。
そのため、復讐と戦いの手段を教えてくれたジシュカに心酔し、ジシュカのターボル派離脱の際も彼に従いオレープ派に移籍した。
深刻な人間不信に陥っていたが、ターボル派で過ごす日々の内に徐々に再び心を開くようになり、最終的にはオレープ派でロハーチと結ばれる。
リパニの戦いでは重傷を負いつつも生きながらえるが、その後シオン城の戦いでカトリック派に捕えられ、ロハーチと共にプラハで絞首刑に処された。
サーラ
天使隊第一期メンバーで、結成時最年少。
元々はキクロプ隊の従軍娼婦の娘で、母親を亡くした後同じ従軍娼婦であったマルケータに義理の妹として引き取られていた。マルケータがイスクラと義理の姉弟であるため、イスクラの義理の妹となる。
信仰心が篤く、最初は戦いで敵を殺すことに懐疑的であったため天使隊の他のメンバーとは距離を置いていたが、ジシュカ暗殺未遂事件の際に紅星騎士団長のグスタフにマルケータが殺害された事をきっかけに、イスクラと共に兵士としてターボル派及び天使隊に再加入した。
その後、シャールカに代わって何度かジシュカの『眼』を務める中で稀有な観察力と戦術眼の持ち主であることが判明。ジシュカ死後もリパニの戦いまでターボル派の作戦参謀として戦い抜く。
その中で徐々にイスクラに恋心を抱くようになり、フス戦争後もイスクラの設立した傭兵団『黒い翼』の参謀として彼を支え続けた。1444年、招待されたハンガリー国王の宴会で発生した暴力沙汰に巻き込まれ、フニャディ・ヤーノシュの長男ラースローに胸を刺されて死亡した。
アネタ
天使隊第一期メンバーで、結成時最年長組の一人。名前の由来は『お姉さんキャラだから』(ただしチェコにAnettaという女性名はちゃんと実在している)
最初期は年齢の割にやや頼りないところもあったが、戦いの中で少しずつリーダーシップを身につけていった。第5巻でシャールカとアダム派のミサに参加した際、ワインに仕込まれた薬物の影響で信者の男と性行為に及んでしまう。しかし、正気に戻ると自身の行いを後悔し、ガブリエラにアダム派のミサをいかがわしい乱交と抗議した。
一度結婚して天使隊を引退するが、三回結婚して三回とも夫と死別してしまい、3人の子供を抱えて生活のために兵士に復帰、積極的に略奪遠征に参加するようになる。
その子供たちもヴルタヴァ河の氾濫で生命を落としすべてを喪ってリパニの戦いに参加。最後は自ら車陣に火を放って敵軍を道連れに生命を絶った。
フランチシュカ
モニカ
マルシュカ
ヤロスラヴァ
ミリアム
ヘレナ
アレクサンドラ
ドロテア
ボヘミア貴族
ヴァルテンベルクのチェニェク(チェコ語版)
ロジュンベルクのオルトジフ(チェコ語版)
シュヴァンベルクのボフスラフ(ドイツ語版)
リヒテンブルクのヒネク=クルシナ(英語版)
神聖ローマ帝国
ヨハン・フニャディ
後のハンガリー摂政フニャディ・ヤーノシュの若き日の姿。トランシルヴァニアのフニャド(フネドアラ)城出身の貴族。シャールカより1歳年長の聡明な少年で、シャールカが唯一本気で愛し合った男であり、後に彼女の事実上の夫となる。西暦1407年生まれの初登場時13歳。10巻で23歳。最終の12巻で西暦1438年時点で31歳。その才覚をジギスムントに見出されて彼の小姓となり、軍使役や連絡将校などを務める。本来はフス派とは敵対する立場の人間ではあるが、シャールカと幾度か遭遇し好意を抱く。シャールカが神聖ローマ帝国に捕らえられた際にはシャールカとの話し合いの際、老刑吏から「妊娠中の女性は処刑を回避される」という助言を受け、彼女もそれを望んだ事で、シャールカ助命の為のみならず愛し合う為彼女との子作りに挑み、互いの子を為したいという気持ちが通じて無事妊娠させる。恩赦後の西暦1423年、ヨハン16歳時に娘クラーラを授かり父親となった。クラーラの名前は「光」「明かり」を意味し「ドイツ語」でも「チェコ語」でも意味が通るとして、ヨハンが名付けた。出産時はまだ未婚につき婚外子の庶子ながら長女になる。以後はシャールカと事実上の夫婦生活を送っていたが、シャールカがフス軍に戻ったためクラーラを養育しながらシャールカを探すことになる。シャールカの出産後もクラーラを養育しながら夫婦として度々彼女を抱き、いずれは正式に妻に迎えようと考えていたが、シャールカが記憶を失い行方不明となっている間にハンガリー貴族の娘(史実での名はシラージ・エルジェーベト)と政略結婚させられてしまう。その後、フス派と教会側の和平の使者に付き添う形でシャールカの元を訪れて9年ぶりにシャールカと再会することが出来た。政略結婚の正妻よりも愛し、娘を産ませたシャールカへの愛情は健在で、再会後に会えなかった9年間を埋める様にシャールカと愛し合う。和平が叶ったら娘・クラーラと共に暮らしたいと望んでいたが、仲間を見捨てられないシャールカを連れ帰ることは出来なかったものの、ヴィルヘルムにシャールカ救出を秘かに依頼していたため、シャールカは左目を失いこそしたものの戦場を脱出し生還した。
フス戦争終結から4年後の1438年に領国に攻め込んできたオスマン帝国軍の襲撃部隊から娘・クラーラを助けに行く途上、娘を助けたシャールカと4年ぶり二度目の再会を果たした。ちなみに政略結婚した正妻との間にも1433年にクラーラにとっては10歳年下の異母弟になる長男ラースローを授かっている。(史実では更に5年後の1443年、正妻との間に次男マーチャーシュを授かる。)
クラーラ(フニャディ・クラーラ)
ヨハンとシャールカの間に生まれた娘。10歳年下の異母弟ラースローがいる。神聖ローマ帝国に捕らわれたシャールカが処刑を逃れる為、ヨハンの子を孕むべく彼との子作りに挑んだ際に授かり、恩赦が下りた後に西暦1423年父・ヨハン16歳、母・シャールカ15歳の時に誕生した。名前は父親であるヨハンが命名し「ドイツ語」でも「チェコ語」でも通る「光」「明かり」を意味する。生後しばらくはシャールカに育てられていたが、シャールカがフス軍に戻る際に別れ、以後は父親であるヨハンの下で養育されている。ヨハンは出産時は未婚につき庶子扱いだが第1子で長女になる。両親にとって彼女は互いの最愛の相手との間に授かった娘であり、特に幼くして肉親を失った母シャールカにとっては唯一の血族である。最終巻の12巻では西暦1438年時点で15歳になっており、本編最終話にてフス戦争終結から4年後に領国に攻め込んできたオスマン帝国軍の襲撃を父のヨハンに知らせようとして途中で兵士に捕まり、母親と同じように犯されそうになったところを傭兵団に加わっていたシャールカに助けられ15年ぶりに母親と再会した。成長してからはヨハンから貴族の血筋と聡明さ・勇気を受け継ぎ、シャールカの幼い頃の面影をよく映した美しい娘となった。父親のヨハンの事は「父上」と呼んでいる模様。赤ん坊の頃に生き別れていたので、最終回でのシャールカとの再会時には自身の母親と気付けなかった。生き別れてからもシャールカには度々その消息を心配する姿があり、本当に愛し合った男性との間の唯一の娘として深く愛されていた。
余談になるが、当時の「庶子」の扱いは様々なケースがあり、完全に嫡子と同等に扱われることもあれば、認知されず完全に縁を切られる場合もあった。クラーラの場合は誕生前からヨハンが認知し、フニャディ家が家臣をつけて領内に住まわせているようなので、のちに母親のシャールカ共々、家族の一員に迎え入れられたと推定される。
外伝Ⅱ「火を継ぐ者たち」では主人公で西暦1440年時点で17歳に成長している。母親のシャールカのことは母上と呼んでいる。
アルブレヒト・フォン・ハプスブルク
エリーザベトの婚約者の青年貴族でオーストリア公。5巻でエリーザベトと結婚するが、彼女の事をローマ王そして神聖ローマ皇帝位を得るための手段としか思っていない節があり、後に自分に対する扱いの酷さに憤激したエリーザベトが出奔する事態を引き起こした。
カトリック派の軍事指揮官の一人として度々フス派の軍と戦うが、作中ではお世辞にも有能とは言えず毎回大敗しては散々な目に遭いつつも悪運強く生き延びる。
当初はぎくしゃくした夫婦仲も結婚後10年を経てある程度は改善したらしくエリーザベトとの間に娘二人を授かるが、エリーザベトが三人目の子を身ごもった直後の1439年10月、オスマン帝国との戦争に出征中陣中で病死した。
エリーザベト
ヘレーネ・コッターナ
ヴィルヘルム・フォン・シュヴァルツ
ザヴィシャ・チャルニをモデルにした創作人物。
ドイツ騎士団再建を目指す高潔な人物であり、敵対していたシャールカを戦火から救ったこともある。ジギスムントの隠し子であり、そうと知らずにバルバラと関係を持った際には、義理とは言え、義母と息子とが関係をもったことに悩む。一度はフス派に敗れ捕らわれるが、シャールカの嘆願により助命される。しかし、このシャールカによる助命が結果的に仇となり、その後に舐めた辛酸とバルバラへの忠誠から、丸腰の女性をも手にかける冷酷な人物へと変貌した。
フス派との戦いで右腕を失いながらも戦い続け、最終話ではヨハンからシャールカ救出の密命を受け、生存を確認したが、近くにいた少女兵に撃たれて致命傷を負ってしまう。だが、かつて助命嘆願をしてくれた恩に報いるため、最期の力を振り絞ってシャールカをサーラとイスクラの元に送り届けた後、それを見届けながら息を引き取る。
ハインリヒ・フォン・ストラニコツェ(フラデツのインドジフ)(チェコ語版)
ボヘミア南西部、ストラニコツェに所領を持つ聖ヨハネ騎士団のホスピタラー。怪力の巨漢。カトリック派としてフス戦争に参戦し、ボヘミア南西部のフス派を支持する村々を襲撃していた。
物語冒頭でシャールカの住む村を襲撃して男性全員を殺害、生き残った女性も凌辱してシャールカ以外を死に至らしめた。
その後、彼を追ってきたジシュカの傭兵部隊とスドムニェルシ村近郊で交戦。車陣戦術で守りを固めたジシュカを攻めあぐねて劣勢に陥るが、その怪力を生かして荷車を破壊し陣内に突入、更にヴラスタを追い詰めるもシャールカの放った一弾に利き腕を撃たれ、降伏に追い込まれる。捕虜となった後身代金の支払いを申し出るが赦されず、車引きの刑にかけられて死亡した。
史実のスドムニェルシの戦いで戦死した実在の貴族、フラデツのインドジフがモデルであるが、作中での役どころの故かドイツ名に改変されている(ハインリヒはインドジフのドイツ語形)。
なお、故人の名誉の為に追記しておくと、史実では作中と異なりインドジフの方がプルゼニから撤退したジシュカを追撃した結果としてスドムニェルシの戦いが生起しており、その途中で無関係の村を襲撃した事実は無い(もっともこの追撃自体がジシュカとの休戦協定違反なのだが)。
ボスコヴィツェのヤン・フシェムベラ(チェコ語版)
ポーランド・リトアニア連合
ジクムント・コリブート
ポーランド国王ヴワディスワフ2世の甥でリトアニア大公の一門に属する青年貴族。ジギスムントのボヘミア王位を拒否したボヘミア貴族達がヴワディスワフ2世へのボヘミア王位提供を打診した際、ヴワディスワフ2世が自身に代わり推薦したリトアニア大公ヴィータウタスの代理としてボヘミアに派遣された。
作中ではいささか軽挙妄動的な人物として描かれているが、それでもボヘミア摂政として一度はフス派内の軍事衝突を未然に防ぐことに成功するなど、軍事的にも政治的にもそれなり以上の指導力はある模様。
婚約者のアレクサンドラをヴィルヘルムに殺害された上、ジギスムントの政治工作により一度は帰国を強制されるが、マレショフの戦い後ヴワディスワフ2世とヴィータウタスの承認を得ずに再度プラハに入城し、フス派各派の支持の下ボヘミア王位を宣言した。
フランス王国、百年戦争関係者
レオン
ヘンリー・ボーフォート
外伝Ⅰ『赤い瞳のヴィクトルカ』関係者
シュテルンベルクのペトル・コノピシュツキー(チェコ語版)
ヴァーツラフ4世
用語
笛
杖状の筒であり、火縄を使って着火、弾を発射する原始的な銃。マスケット銃や拳銃の原型にあたる。
ヤン・ジシュカはピーシュチャラを装備させることで、非力な女、子供が鎧に身を包んだ騎士と渡り合える戦術を編み出した。
装甲馬車
初期は荷車の下をかいくぐるといった攻略方法もあったが、後に底面にも板を設置するなど改善されている。ヴィルヘルムは自身と乗馬の能力をもって、上方を飛び越えて内部を攻撃する形で一度は装甲馬車戦術を破った。この他にも装甲馬車と装甲馬車の間が弱くなるといった問題もあったが、後に並べ方を工夫して改善されている。
天使隊
アダム派
書誌情報
- 大西巷一 『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』 双葉社〈アクションコミックス〉、全12巻
- 2014年1月10日発売、ISBN 978-4-575-84332-3
- 2014年5月10日発売、ISBN 978-4-575-84404-7
- 2014年11月22日発売、ISBN 978-4-575-84532-7
- 2015年5月9日発売、ISBN 978-4-575-84618-8
- 2015年11月12日発売、ISBN 978-4-575-84710-9
- 2016年5月12日発売、ISBN 978-4-575-84797-0
- 2016年11月11日発売、ISBN 978-4-575-84882-3
- 2017年5月12日発売、ISBN 978-4-575-84973-8
- 2017年11月10日発売、ISBN 978-4-575-85057-4
- 2018年7月12日発売、ISBN 978-4-575-85182-3
- 2018年12月12日発売、ISBN 978-4-575-85252-3
- 2019年6月12日発売、ISBN 978-4-575-85320-9
- 大西巷一 『乙女戦争外伝I 赤い瞳のヴィクトルカ』 双葉社〈アクションコミックス〉、全1巻
- 2020年5月12日発売、ISBN 978-4-575-85447-3
- 大西巷一 『乙女戦争外伝 II 火を継ぐ者たち』 双葉社〈アクションコミックス〉、全2巻
- 上巻 2021年1月12日発売、ISBN 978-4-575-85534-0
- 下巻 2021年7月12日発売、ISBN 978-4-575-85603-3