保健室の死神
以下はWikipediaより引用
要約
『保健室の死神』(ほけんしつのしにがみ)は、藍本松による日本の漫画作品。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて2009年42号から2011年29号まで連載された。2011年8月現在累計発行部数は80万部を記録している。
概要
藍本の『ジャンプ』連載2作目となる作品で、前作『MUDDY』は異世界を舞台としていたが本作は現代日本の学校を舞台としている。
当初はサスペンスホラー漫画的な要素が強かったが、途中から学園漫画らしいコメディやお色気の要素も多くなり、単行本の帯にて「学園ホラーコメディ」と銘打たれている。また、オマージュ的表現やメタフィクション的なギャグも使用される。
基本的に一話完結となっているが、時折シリアスな内容の長編が出てくることもある。後者は主にストーリーや設定の根幹に関わるエピソードが多い。話数カウントは「第○診」。
2011年、第2回ブクログ大賞マンガ部門大賞を受賞。
ストーリー
常伏中学校の養護教諭として新しく赴任してきたハデス先生は、まるでホラー映画から抜け出してきたかのような怖い顔をしている。アシタバはある不可思議な事件に巻き込まれ、ハデス先生に助けられた。彼は「病魔」を消滅させる力を持っていたのだ。
登場人物
声の項はVOMIC版のもの。
常伏中学校
保健室
派出須 逸人(はです いつひと)
声 - 前野智昭
本編の主人公。26歳。誕生日は12月31日。常伏中学校新任の養護教諭。通称「ハデス先生」。白髪で眉毛がほとんどなく、目の周囲から頬にかけての皮膚に常にひび割れが入ったおぞましい顔立ちをしている。心優しい性格で、保健室を「誰でも気軽に利用できる癒しの空間」にするのが目標と宣言しており、生徒たちと親密になる為、いかなる時も(過剰なまでの)気遣いを怠らないが、その容姿と予想外の行動のために恐がられてしまい上手くいかないことが多い。学校行事の際には「移動保健室」を行っているが、その度に美徳などに見つかって怒られている。また薬品の調合なども行うが、得意かどうかは不明。保健マニアである。容貌のせいで他人に避けられることが多かったためか、食事に誘われるなど友好的な態度を示されると異常なまでに感動・緊張してしまう。一方で女性からのアプローチに対しても鈍感。生徒に対する教育方針は限りなく甘く「アメ10割」。好きな食べ物は特になく、そもそも食に対する関心が極端に薄く、普通なら顔をしかめるような味の食べ物も平然と平らげてしまう。
病魔「冷血」を体内に宿す罹人であり、病魔を喰らう力を宿している。白髪・皮膚のひび割れもこの病魔の作用によるもので、それ以外にも病魔の力の影響を受けにくいなどの特殊な体質を有している。病魔を前にすると皮膚のひび割れが広がり、こうなると逸人自身にも止めることができなくなる。病魔を喰らった直後や感情が高ぶった際には、皮膚のひび割れがなくなったり、黒髪に戻る。病魔を倒した際「咀嚼完了」と告げる。この力を利用して病魔に罹っている人々を助けるために奔走している。その自己犠牲的なやり方は彼の事情を知る者からは危ぶまれているが、逸人自身は考えを改めるつもりはない。
「冷血」を宿す前はイジメを含む理不尽なことを嫌う直情的な正義漢だったが、荊兄弟の劣悪な関係を解消できなかったことから失望し、そこを「冷血」につけこまれ罹人となった。「SICKs」事件後は「冷血」との間に信頼関係が生まれ、完全に腐れ縁の仲となっている。五年後の最終診でも変わらず、一部の生徒には怖がられているものの、病魔から生徒を守るために戦い続けている。
明日葉 郁(あしたば いく)
声 - 三瓶由布子
常伏中学2年生。A組所属。通称「アシタバ(君、さん)」。気弱で少々神経質な性格。いわゆる草食系で、周囲から「地味メン」と言われており、美作には「草」と称されることもある。しっかり者かつ頼まれたらNOとは言えないお人好しではあるせいで、トラブルによく巻き込まれてしまう。あまり目立たないが実は頭脳明晰で、物事の微妙な変化に気付ける深い洞察力と何事も良く考えてから行動する思慮深さを持つ。
逸人と関わり病魔の存在を知ることになる。学校では第1診の一件以来、麓介・蓮太郎とよく行動を共にしており、休み時間や放課後はよく彼らと共に保健室を訪れている。また、第二診以降は真哉とも仲良くなっている。変わり者が多い保健室に出入りする人物たちの中では平均的な常識人で、レギュラーキャラの中では唯一病魔に罹っていない。
藤 麓介(ふじ ろくすけ)
声 - 金野潤
常伏中学2年生。A組所属。得意科目は理数系。苦手科目は美術などの芸術系。運動神経も良い。女生徒に人気のイケメンだが、本人はまったく意識していない。人並み外れて面倒くさがりで授業にもろくに出ない怠け者な性格だが、ほとんどの生徒達から恐れられている逸人に全く怖気づくことがなく、保健室にも平気で出入りするなど神経は太い。寝ていることが多く、保健室には既に彼専用のスペースができてしまっている。郁とは第1診で彼を助けて以来親しくなり、よく一緒に行動している。蓮太郎と下校が一緒になることが多い。複雑な家庭の事情に起因するストレスで「怠惰」に罹るが、兄の山蔵と逸人の活躍により助けられた。以降、家族との確執はそれなりに軟化した模様。
美作 蓮太郎(みまさか れんたろう)
声 - 中田隼人
常伏中学2年生。A組所属。口が悪く高圧的な態度をとることもあるが、包容力があり面倒見が良く友達想いの優しい一面も持つ。またイケてない男子には優しい。試験前は暦に勉強を見てもらっており、成績は中の下程度を維持している。女好きのフェミニストだが、肥満気味な体型とがさつな性格もあって、麓介とは対照的に女生徒に疎んじられている。
その麓介への嫉妬心を病魔「自己愛」につけ込まれ、美少年化して女生徒たちの精気を奪い取っていたところを、逸人に助けられる。その後の経緯を経て郁、麓介、真哉とも仲良くなり、共に行動するようになった。
鏑木 真哉(かぶらぎ まや)
声 - 真堂圭
常伏中学2年生。B組所属。通称は名前を音読みして「シンヤ」。黒髪をストレートロングに伸ばした、スタイル抜群の美少女で、スカートの下にスパッツをはいている。さっぱりとした素直な性格。背の高さや喧嘩の強さ、不器用さなど自身の「女の子らしくない部分」にコンプレックスを抱いている。逸人が赴任した後に転校してきたが、人を見る目に優れており当初から逸人に対して全く恐怖心を抱かなかった。
小学生時代はボーイッシュな容姿で血気盛んであり、空手をやっていたこともあり男子とケンカをすることが多かったが、好きな男子が「男っぽい女は嫌」と言っているのを聞いて女らしくなろうと決意。そのことが災いし、病魔「挑発」に罹っていたが、逸人によって救われる。その後、逸人に恋愛感情を抱くようになり郁たちとも仲良くなった。逸人のことをよく知ろうと持ち前の行動力で郁を巻き込みよく逸人を尾行する。
空手は現在も続けておりその実力は健在。自分に危害を加えるものを反射的に倒してしまう癖がついており、投げつけられた物はなんでも粉砕してしまう。「返し刃」の異名を持つ喧嘩の達人で、喧嘩を挑んできた相手を何度も返り討ちにして隣地区の不良を壊滅させてもいる。また「返し刃」のもう一つの由来は、本人の意に沿わず喧嘩で倒してしまった相手をその場で労わるギャップにもあり、喧嘩相手の男性が真哉に惚れてしまう現象を指す。
生徒
本好 暦(もとよし こよみ)
花巻 美玖(はなまき みく)
常伏中学2年生。A組所属。極度のあがり症でいつも赤面している。極めて消極的で、他人と上手く会話する為に台本代わりのノートを持ち歩いている。失敗するとトイレの個室に籠って大声で自虐する癖(通称・A組花巻の雄叫び)がある。何事にも物怖じせず言いたいことをはっきり言う麓介に憧れているが、なかなか打ち明けることができないでいる。麓介に借りた消しゴムを返すきっかけが掴めず煩悶していた所を病魔「臆病」に罹った。成績は良くルックスも可愛らしいが、目立たないために異性からあまり意識されていない。得意な科目は美術。クラスメートの女子からは「花ちゃん」と呼ばれ、「運命」事件で、メール友達になったアイドルグループ「AKY108」の後前田熱子には「花マッキー」と呼ばれている。林間学校では麓介とペアになるが、緊張でパニックになってしまいことごとく失敗している。
妹尾 龍黄(せのお りゅうき)
鏑木 刀哉(かぶらぎ とうや)
常伏中学1年生。B組所属。真哉の弟。歳の割にちゃっかりした一面がある。落ち着きのある冷静な性格だが、批判がましい面を持つ。幼少時はイジメられっ子で、常に真哉に気遣われながら育ったため、男としてのプライド、強くなって真哉をかばえる存在になりたいという想いを病魔「逃避」の作りだした「Wishing」につけ込まれた。「Wishing」事件以降も、強くなりたいという想いは健在だが、そのために病魔「男気」につけ込まれてしまうなど、なかなか思い通りにはなっていない。龍黄の姉、竜美を「憧れのお姉さん」と慕っており、逸人も「命の恩人」として素直に慕っている。五年後の最終診では、バイクに乗るヤンキーに変貌した。
安田 貢広(やすだ みつひろ)
常伏中学2年生。A組所属。蓮太郎の友達。アイドルオタクで『AKY108』の後前田熱子のファン。スケベな言動が多く「稀代のエロリスト」と称されたりする。「春酔」事件を経て、全校生徒に「変態」として認知される。病魔「覗見」「過保護」に罹り、「盲進」発生の原因でもあるが、いずれもスケベな性格が災いするなどし、散々な目に遭っている(通常、一人が複数の病魔に罹ることはまれである)。そのため、周囲からは「よっぽどコリないバカ(麓介談)」や「一緒にいるとヒヤヒヤして仕方ない(郁談)」など非難され、一周年を祝うセンターカラー「全員集合イラスト」において一人だけ「謹慎処分」を下された。主にお色気を中心とした話に登場することが多い。登下校時や休み時間などは蓮太郎が郁達と交流する前は蓮太郎・暦と一緒に行動していて、その後は1人でいるか、蓮太郎にくっついていることが多い。化学部に所属していて、いつか媚薬を作るのが夢らしい。
淀橋 貞夫(よどばし さだお)
山田 可音(やまだ かのん)
早坂 駈(はやさか かける)
機本 真綿(はたもと まわた)
蝶間林 薫子(ちょうまばやし かおるこ)
軽部 俊輔(かるべ しゅんすけ)
鳶岡 カイト(とびおか かいと)
宗方 量(むなかた りょう)
日暮 ふるえ(ひぐれ ふるえ)
御手本 学(おてもと まなぶ)
教師
三途川 千歳(みとがわ ちとせ)
声 - 小寺麻未
常伏中学校長にして逸人の恩師。ゴシック・アンド・ロリータ風の格好をした小柄な女性。年齢不詳で素性には謎が多く、逸人曰く背格好は十年以上前から変わっていない。可憐な外見とは裏腹に、男勝りのさばけた性格をしており、口調も男性的。派手なデコレーションを施した愛車で、一般道路を時速100キロ近くで走行する豪快さや、病魔関連の事件を調査したり社会的に揉み消すことのできるコネクションを有する。また動物と会話することができる。生徒を病魔から守るため、逸人を常伏中学校の養護教諭へ推薦した。学生時代に病魔にとり憑かれた逸人にとっての数少ない理解者。「波動拳」を撃ちたいという野望を持っていたり、『週刊少年ジャンプ』を創刊号から愛読しているなど、漫画やゲームに造詣が深い。ウイッグ収集を趣味にしており、劇中の髪型は定まっていない。
教頭先生
才崎 美徳(さいざき みのり)
大海原 航(おおうなばら わたる)
サロン・ユグドラシル
蛇頭 鈍(へびず にぶる)
サロン「ユグドラシル」の経営者兼スタイリスト。逸人の同級生で旧友。ウェーブのかかった髪で右眼が隠れており、蛇柄のネクタイを着用しているグラマーな美女。 気だるげな話し方をする。女の子や子どもが好き。本業のサロンを営む傍ら、病魔に悩む人間の治療もしている。彼女の役目はカウンセリングを通して患者を「催眠状態」にすることであり、病魔の捕獲は相棒の経一が行う。経一と共に逸人を病魔から解き放とうとしているが、病魔を利用して大事な人を護ろうという自己犠牲的な考え方を頑なに変えようとしない逸人に業を煮やし、袂を分かっていたが、「SICKs」事件後は逸人の意思を尊重するようになり、「冷血」には出来る限り感情を食べるなと頼んでいた。
伊賦夜 経一(いぶや けいいち)
サロン「ユグドラシル」の従業員兼用心棒。鈍と同じく逸人の旧友の色黒で筋肉質な青年。感情を露骨に顕わしてしまう熱血漢で、クールな鈍とは正反対の性格。後先考えず突っ走るタイプなので、知り合いからは結構ぞんざいな扱いを受けているようである。「抽出銃」を用いて病魔退治をするのが生業で、その反動に耐えるだけの屈強な体つきを持っているが、肝心の「抽出銃」を忘れるなどドジな面もある。男らしさについて悩む刀哉の相談にのるなど面倒見の良い一面も持ち、子供好き。しかし、昼間からパチンコに行くなどの行為からニート扱いされることもある。鈍に好意を寄せており事あるごとにアプローチするが、適当にあしらわれている。しかし、後に生活改善をしたことで鈍と婚約し、子沢山の父親になる。
SICKs
「救済団体」を標榜する、罹人で構成されている集団。自身の欲望を解放した状態こそが人間の幸福の在り方だと主張し、常伏町に病魔を氾濫させようと暗躍している。メンバーは、カナダの学者ジョン・アラン・リーが提唱する「6つの愛」を名乗っている。
元々は、普通の枠に収まらないために孤独を感じていた明羅のために、「普通でないために苦しんでいる人たちと友人になる」ことを目的に、真理也が結成を発案した。事件解決後、解散したかどうかは明らかになっていない。
狂愛(マニア) / 荊 明羅(いばら あきら)
SICKsのリーダー格である、長髪の男。宿している病魔は「忘失」。人間に病魔を宿すことで救おうと考えている。
当初は「真理也の偽者」として登場。プライドが高く、独り善がりな性格。SICKsのメンバーを道具同然に扱うことは勿論、唯一の理解者である兄・真理也に対する非道な行いも躊躇なくできる。
中学時代、多方面で活躍する天才として持て囃されていたが、天才ゆえの孤独感から生じたストレスを兄への虐待で解消していた。「明羅」としての人生から逃れるため、「忘失」で他人の記憶を消し、「真理也」としての人生を送っていた。真理也の発案で結成されたSICKsを、「普通」の排斥のために利用するが、逸人らによって失敗、「忘失」を喰われ廃人同然となる。
友愛(ストーゲ) / 王 宇宙(ウォン ユジュウ)
美愛(エロス) / 美咲 ひかる(よしざき - )
遊愛(ルダス) / 艶堂 瞬(えんどう しゅん)
利愛(プラグマ) / 豪徳寺 利貨子(ごうとくじ りかこ)
神愛(アガペ) / 荊 真理也(いばら まりや)
SICKsの一員である、長髪の少年。宿している病魔は「自己犠牲」。自己犠牲の精神を持つ、温和な性格の持ち主。
中学時代は、弟・明羅や不良などに暴行される日々を送っており、その際に逸人と出会い、友人となった。他人のストレスを暴力で解消させることができる強い肉体を望み、「自己犠牲」に罹る。明羅のためにSICKsを結成したが、暴走する彼を見て口を閉ざすようになった。「自己犠牲」の影響で成長が止まり、現在では幼児のような姿となっている。事件解決後「自己犠牲」は手放したと思われるが、最終診でも子供の姿のままだった。
五年後の最終診では常伏中学校で療治の助手を務めており、生徒からの人気は高く、「カウンセリング室の天使」と呼ばれている。逸人とは今でも友人として接しており、尊敬している。
常伏中生徒の家族
明日葉家
美作家
妹尾家
姉妹は末っ子の弟の龍黄をぞんざいに扱ったために、「禁欲」の犠牲者となった。「禁欲」事件後に姉妹全員で龍黄への謝罪パーティを催したり、第23診のマラソン大会では姉妹揃って応援に駆け付けるなど、弟のことは大切に想っている様子。なお、両親は海外出張を頻繁に行っている。
妹尾 亀花(せのお きっか)
妹尾家長女。OL。サバサバした姉御肌タイプ。龍黄曰く「超、超、ワガママ」な性格。日頃の龍黄への仕打ちが災いし、「禁欲」の最初の犠牲者となった。料理は得意ではない。
妹尾 竜美(せのお たつみ)
妹尾家次女。大学生。おっとりした優しい性格で料理が得意。4人の中では唯一、龍黄をぞんざいに扱うこともなく、常に気にかけているため、龍黄からも一番好かれている(龍黄曰く「やさしい一番マトモ」)。刀哉から「憧れのお姉さん」として見られている。最終診では、結婚して生家を出たことが明らかになっている。
妹尾 虎子(せのお ここ)
妹尾家三女。外見、性格共にボーイッシュ。龍黄のゲーム仲間。
妹尾 雀(せのお すずめ)
妹尾家四女。15歳。わがまま、頑固、意地っ張りと三拍子そろった性格で、龍黄からはもっとも苦手がられている。毒舌家で、龍黄には口ゲンカで負けたことがない。龍黄にお構いなしで下着姿で家を徘徊したり、勝手に龍黄の部屋で遊んでいたりする。素直でない反面、寂しがり屋の一面も見せており、いわゆるツンデレな性格をしている。最終診では漫画家になったらしく、龍黄にアシスタントをさせていた。
妹尾 竜美(せのお たつみ)
花巻家
その他
枕木 夢路(まくらぎ ゆめじ)
枕木 希実(まくらぎ のぞみ)
屋本 しおり(おくもと しおり)
後前田 熱子(うしろまえだ あつこ) / 田本 香代子(たもと かよこ)
卑川 鉄生(ひかわ てつお)
37歳。占い師に扮して「長所を当てる」と称し、「劣等感」の力で他人から才能を奪っていた男。幼少時から現在にかけて他人から見下され続け、その恨みから「劣等感」が生まれ、その罹人となった。長所を奪われた、彼を見下していた人々の恨みが顔の表面に現れているため普段はマスクで顔を隠している。己の体はもう限界であり、我が子を偉大にする為、他人から奪った才能を操に与えていた。一人称は「私(あたくし)」であるが感情が高ぶると「俺」になる。極度の人間不信で、非常に用心深く、かつ残忍非道な性格の持ち主。郁たち生徒を監禁し、逸人から「冷血」を操に宿らせることに成功するが、その後、「冷血」を取り戻した逸人に「劣等感」を喰われ、そのまま欲望に関する感情をも食われそうになるが、操に呼びかけられ、逸人に諭される。その後は警察に引き渡された模様。
卑川 操(ひかわ みさお)
9歳。鉄生の実娘。鉄生から児童虐待を受けていたが、鉄生を父親として強く信頼し、どんな犯罪行為であっても鉄生に従っていた。多くの戦闘的な才能を鉄生に与えられながら逸人と戦ったが、そのせいで心身ともにボロボロになり、「劣等感」事件後は病院へ搬送された。中性的な顔立ちのため、逸人や鈍には男の子と間違えられていたが、逸人達と再会した時には女の子らしい外見になった。サロン・ユグドラシルに居候した後、九十九の家に住んでおり、とある一件から頼子やしおりと友達になり、彼女らと同じ小学校に通っている。キャラメルが好物で、キャラメルをくれた経一のことを「キャラメルおじさん」と呼んでいる。鉄生から教わったらしく、ピッキングが得意。五年後の最終診では常伏中学1年生になっている。
山田 小音(やまだ このん)
九十九 願造(つくも がんぞう)
真昼間 寝一(まひるま しんいち)
才崎 善徳(さいざき よしのり)
病魔
人々の負の感情から生まれ、「悩み」や「迷い」に精神的に耐えられなくなった人間の心につけ込むモノ。その感染方法上、発症者の望みを具現化させる能力を持つことが多い。言葉巧みに人間に取り入り、やがてその人間を支配する宿主となる。一度病魔に罹った人間が再び取り憑かれるパターンは滅多にないが(逸人曰く、一度罹った人間は精神的に一回り成長することが多いため)、病魔に取りつかれた根源(貢広で言えばエロへの執念)が改善されていなければ再び罹ることもある(空間影響型感染においては別とされる)。稀にだが動物が罹ることもある。作中では以下の種類に大別されている。一部の病魔は亜空間を創造することも可能である(「逃避」の「Wishing」等)。
病魔の種類
変貌型(へんぼうがた)
影響型(えいきょうがた)
空間影響型(くうかんえいきょうがた)
複合型(ふくごうがた)
病魔一覧
名前及び容姿に脚注のついた病魔は、単行本においてそれが明らかになったもの。
病魔名 | 種類 | 感染者 | 影響者 | 形状 | 能力 |
---|---|---|---|---|---|
冷血(クルエル) | - | 派出須逸人 | 病魔感染者 | 髑髏の形状の腹を持つ蜘蛛 | 人間の感情を食らう。感情の権化である病魔を食べることもできる。 |
吐露(カース) | - | 常伏中女生徒 | - | 感染者と同じ顔形 | 感染者の口内に宿り、汚い言葉を吐いて心を汚す。 |
自己愛(ナルキッソス) | - | 美作蓮太郎 | 常伏中女子生徒数名 | 花弁の髪を持つ少年 | 他者を魅了しつつ生気を吸い、感染者の風貌を美しく、内面を醜くする。 |
挑発(プロヴォーク) | - | 鏑木真哉 | 常伏中男子生徒、他 | 人間の腕を象った髪を持つ、ボンデージ衣装の女 | 男性の闘争心を刺激するフェロモンを出す。 |
盗人(スティーラー) | - | 常伏中男子生徒 | - | 風呂敷を背負ったゴブリン | 感染者に盗癖を与える。また他者の目をくらませる。 |
鬼女(ジェラシー) | - | 本好暦 | - | 般若の顔を持つ花嫁 | 感染者の嫉妬を暴走させ、凶暴化させる。 |
臆病(チキン) | 影響型 | 花巻美玖 | 藤麓介 | 幼児の下半身を持つ鶏 | 感染者と特定の人間の記憶を保ったまま、感染者の目的が成功するまで時間を巻き戻す世界を作り出す。 |
禁欲(ストイック) | - | 妹尾龍黄 | 常伏中女子生徒、他 | 阿修羅 | 性欲を喚起する女性の部位を、モザイク柄のブロックで隠す。 |
逃避(エスケイプ) | - | 枕木夢路 | 鏑木刀哉、他 | バクのぬいぐるみ | 逃避願望のある感染者と他者に、各々の願望が再現された夢を見せる。 |
覗見(ピーピング) | - | 安田貢広 | - | 一つ目のカエル | 感染者の目が独立したもの。物体を任意ですり抜け、あらゆるものを覗き見る。 |
五月蝿(パパラッチ) | - | 淀橋貞夫 | - | カメラのレンズ | 感染者の額に憑き、感染者の想像を映像化する。 |
寂声(ロンリネス) | 影響型 | しおり | 明日葉郁、他 | マリオネットを操る、生首のついた手 | 他者を操る人形を生み出す。 |
裁断(ジャッジメント) | 影響型 | 才崎美徳 | 蓮太郎の雪像、他 | 三対の翼を持つ、裁判官の人形 | 周囲の物体を操り、不道徳な行動を行った者に体罰を与える |
過保護(マザーガード) | - | 安田貢広 | - | ヒラメ | 感染者を覆い隠し、周囲の風景に擬態する。擬態までの時間が長い。 |
羨望(エンヴィー) | - | - | 三途川千歳、他 | ハエ | 集合し、キューピッドの形態を取る。潜伏したチョコレートを食べた者を膨張させる。 |
運命(フォルトゥナ) | - | 後前田熱子 | 花巻美玖 | 車輪を背負った女 | 感染者と任意の他者の精神を入れ替える。 |
燃焼(バーン) | - | 早坂駈 | - | 馬の頭とバイクの下半身を持つ男 | 感染者に過剰なエネルギーと運動能力を与える。感染者は動き続けなければ熱量過多で肥大化する。 |
見栄(メイクアップ) | - | 機本真綿 | - | 四肢がメジャーになったアフロヘアーのオカマ | 周囲の人間の衣服や物体を、病魔自身のセンスに応じた形態に変える。 |
怠惰(レイジー) | - | 藤麓介 | 麓介の自室 | ナマケモノ | 感染者の感情を独立させて擬人化し、その感情たちに感染者本体の世話と、妨害者の排除を行わせる。 また病魔自身の意思のままに動く空間を作り出す。 |
悪食(バグ) | - | 学生 | - | 巨大な口を持つ、一つ目の芋虫 | 過剰な食欲と、咀嚼能力を感染者に与える。病魔も食欲の対象に入り、その力は「冷血」に拮抗する。 |
春酔(ヌーディズム) | 空間影響型 | - | 常伏中生徒、他 | 頭にタンポポを咲かせたマンドレイク | 他者の羞恥心を薄れさせ、服を脱ぎたくなったり、脱がせたくする。 |
闘魂(ファイティングオーラ) | - | 蝶間林薫子 | 鏑木真哉、他 | 王冠を被ったブルドッグ | 感染者や他者の強い意志を幻覚に変える。 |
整形(スタイルアップ) | - | 宗方量 | 花巻美玖、他 | 黒人男性と白人女性のスポーツトレーナー | 感染者や他者の体型を変える。 |
劣等感(ユーズレス) | - | 卑川鉄生 | 卑川操、他 | 人面瘡 | 他者から才能(長所)や病魔を奪い、感染者や任意の他者に与える。 |
二枚舌(ライアー) | - | 淀橋常夫 | - | 口のついた舌 | 話術を向上させる。 |
夢想(ドリーミング) | - | 日暮ふるえ | - | 脳がむき出しの少女と兎耳の骸骨 | 感染者の妄想を幻覚として発現する。 |
盲進(ラッシュ) | 空間影響型 | - | 安田貢広、他 | 鎧武者 | 複数の感染者の意志を統一させ、一つの目的を達成させようとする。 |
完璧主義(パーフェクト) | - | 御手本学 | - | キーボードを操る手が生えた立方体 | 感染者を極端な完璧主義に変える。 |
男気(ハードロック) | - | 鏑木刀哉 | - | スカジャンを着たトラ | 感染者に「男の心得」と称して無謀な行動をさせる。 |
蜃気楼(ミラージュ) | - | 岸辺下弦朗 | 蛇頭鈍、他 | 霧状の天狗 | 他者の望む幻覚を見せる。 |
反目(ライバル) | - | 蜂谷夏味 | - | ナメクジ | それぞれが様々な手段を使い妨害しあう。 |
御手本努 | カエル | ||||
本好霞 | ヘビ | ||||
愛嬌(ラブリー) | - | 妹尾雀 | - | セクシーな格好をした猫 | 感染者を異常なほど愛嬌のある性格に変える。 |
責任感(リーダーシップ) | - | 花巻繁 | - | 将校服を着たライオン | 感染者を徹底的な管理主義に変える。 |
堕落(フォール) | - | 真昼間寝一 | - | ウサギの顔を持つバニーガール | 怠惰な人間に取り憑き、とことん堕落させる。 |
想像(イマジネーション) | - | 才崎善徳 | 常伏中生徒、他 | - | 感染者の想像を現実化させる。 |
破壊(デストロイ) | - | 玉越鶏太 | - | 鎖を着けた怪獣 | 感染者に怪力を与え暴れさせる。 |
冬将軍(ホーリーナイト) | 空間影響型 | - | 派出須逸人、他 | サンタクロース | 吹雪を発生させる。 |
忘失(オブリビオン) | - | マニア | 派出須逸人、他 | - | 対象の記憶を失わせる。 |
損得勘定(ゲインバッカー) | - | プラグマ | - | - | 感染者の「生涯の運」を紙幣として具現化し先払いすることで幸運を与える。使い過ぎると、それに見合った不幸が感染者を襲う。 |
隣人愛(クレイドル) | - | ストーゲ | 明日葉郁、他 | - | 他者を異空間へ招き入れる。外の世界に干渉することはできず、感染者の意志なく外へ出ることはできない。また空間内に感染者が望む外界の情報を映し出すこともできる。 |
美意識(ヴィーナス) | - | エロス | 明日葉郁、他 | - | 他者(人間・動物問わず)を自身と同じ姿へと変える。また、自身に病魔の力を集めることで、身体能力を向上させる。 |
刹那主義(モーメント) | - | ルダス | 伊賦夜経一、他 | - | 他者を、感染者の思うがままに一瞬だけ操ることができる。ただし、同じ対象に連続使用はできない。 |
自己犠牲(サクリファイス) | - | アガペ | 派出須逸人、他 | 荊が巻かれた聖人 | 感染者に自身の成長と引き替えにどんな傷でも一瞬で治す能力を与える。 |
虚言癖(ビッグマウス) | - | 淀橋夢有 | - | 無数の口 | 感染者の流した噂(UMAやオカルト、都市伝説など)を現実化させる。 |
用語
学校
物語で出てきた学校を述べる。
常伏中学校(とこふしちゅうがっこう)
比良坂学園(ひらさかがくえん)
紺翠女学院(こんすいじょがくいん)
根多切中学校(ねたきりちゅうがっこう)
病魔関連
罹人(かかりと)
思念体
Wishing
怠惰の庭
サロン・ユグドラシル
抽出銃(サンプリングガン)
抽出された病魔は、他者を封じ込める思念体の鏡「虚像の姿見」から作られた「抽出ボトル」に封じ込められる。
魔煙草(エビル・シガレット)
編集者
- 服部雄二郎
書誌情報
藍本松 『保健室の死神』 集英社〈ジャンプ・コミックス〉、全10巻
- Vol.1 ウワサのハデス先生 2010年2月9日第1刷発行(2010年2月4日発売)、ISBN 978-4-08-870005-2
- Vol.2 アンチ・ハニー・トラップ 2010年4月7日第1刷発行(2010年4月2日発売)、ISBN 978-4-08-870030-4
- Vol.3 チョコレート・コンプレックス 2010年6月9日第1刷発行(2010年6月4日発売)、ISBN 978-4-08-870055-7
- Vol.4 サロン・ユグドラシル 2010年8月9日第1刷発行(2010年8月4日発売)、ISBN 978-4-08-870092-2
- Vol.5 ウワサのあやしい占い師 2010年10月9日第1刷発行(2010年10月4日発売)、ISBN 978-4-08-870117-2
- Vol.6 波乱の林間学校 2010年12月8日第1刷発行(2010年12月3日発売)、ISBN 978-4-08-870152-3
- Vol.7 白熱!町内運動会 2011年3月9日第1刷発行(2011年3月4日発売)、ISBN 978-4-08-870179-0
- Vol.8 再会 2011年5月7日第1刷発行(2011年5月2日発売)、ISBN 978-4-08-870225-4
- Vol.9 追憶 2011年7月9日第1刷発行(2011年7月4日発売)、ISBN 978-4-08-870260-5
- Vol.10 まだまだウワサのハデス先生 2011年10月9日第1刷発行(2011年10月4日発売)、ISBN 978-4-08-870287-2
ヴォイスコミック
原作第2話・第3話にあたるストーリーが集英社のヴォイスコミック「VOMIC」として、2011年2月にジャンプ専門情報番組『サキよみ ジャンBANG!』にて放送され、同年3月からVOMIC公式サイトで配信された。
キャスト
読み切り版
赤マルジャンプ2009SPRINGに掲載。Cカラーの作品。発表から10年以上の時を経て『青 -藍本松短編集-』上巻に収録された。
あらすじ
常伏中学校転入一週目の明日葉郁は、体育の時間、サッカーボールが顔に当たってケガをしたことにより保健室に行くように担任に言われる。しかし、その保健室には奇怪なオーラの養護教諭がいて……!?