光の小次郎
以下はWikipediaより引用
要約
『光の小次郎』(ひかりのこじろう)は、水島新司の野球漫画。『週刊少年マガジン』(講談社)にて1981年から1984年まで連載された。
単行本は講談社コミックスで全19巻。のち講談社漫画文庫で全13巻。
概要
プロ野球機構そのものを全てオリジナルで作っていることが特徴である。12球団も全チームオリジナルで、チーム名はメジャーリーグベースボールの実在チームから取られている。
江川事件をモチーフに、高校生だった主人公が、プロ入り後も自分の信念を貫く姿を描いている。物語は、好きな球団へ入りたいことから、ドラフト制度に立ち向かうところから始まる。
2012年、『ドカベン ドリームトーナメント編』にて、新田小次郎、山本武蔵、日照続、緒方勤が再登場しているが、本作の世界は作中で完結し、他の作品とは共有していないため、4人の登場はファンサービス的なものである。
物語
160キロの速球を投げる投手・新田小次郎(にった こじろう)。全国高等学校野球選手権大会では準優勝。ドラフト会議では全12球団から1位指名を受ける。
交渉権を獲得したのは武蔵オリオールズ。希望球団ではなかったので、最初は入団拒否し、浪人生活を送る。しかし、翌シーズンにコミッショナー交代によりドラフト制度が廃止されたことを受けて、自らの意思でオリオールズを選択、入団する。シーズン1年目の前期に2度の完全試合を含む16勝をマーク。
同年のオールスターゲームでたまたま、本人も意図しない「光の直球」を投げたことが契機で、何とかして「光の直球」もう一度投げようと試行錯誤するが、その影響で後期は大スランプに陥り、一時二軍に落とされてしまった。結局シーズン終盤にようやく「光の直球」をマスターするが、今度はその球を受けられる捕手がいない(球が光ることでハレーションを起こしてしまい捕球できない)という問題に直面してしまう。
登場する架空球団
実在する球団をモデルとしている部分もあるが、全てオリジナルの架空球団である。親会社も細かく設定され、実際のプロ野球界よりおよそ20年余り早く、ほぼ全国に渡って球団が配置されているのも特色である。
球団名に親会社名ではなくフランチャイズの地名が比較的多く採用されているのも特徴。また実際の日本プロ野球界では球団経営に直接関わっていない業種の企業(ビール会社、観光業、海運業、造船業、化粧品会社、製薬会社、紡績会社)が親会社になっている。12球団全てにペットマークを設定している。
ワイルド・リーグ
パシフィック・リーグを元に設定されている。当時の同リーグに倣い、前・後期制が採られていた。また指名打者制度もある。
- 武蔵オリオールズ(親会社・武蔵乳業 本拠地・小金井スタジアム)
- 札幌ブルワーズ(親会社・北斗ビール 本拠地・札幌ドーム)
- 新宿メッツ(親会社・新宿建設 本拠地・新宿スタジアム)
- 大阪ドジャース(親会社・浪花新聞社 本拠地・ドジャース球場)
- 高知ロイヤルズ(親会社・帝国観光 本拠地・ロイヤルスタジアム)
- 博多パイレーツ(親会社・平和海運 本拠地・博多球場)
延長戦の規定は引き分けが無く、決着が付くまで行うこととされていた。原作内でも2度、延長17回の試合が描かれている。オリオールズが前期優勝を遂げた新潟白山球場での対ブルワーズ戦ではスコアレス(0-0)の状態で延長17回裏に入るところ(先頭打者新田小次郎)で夕立ちが降り、この球場には照明設備が無いため日没により試合続行不可能となり、サスペンデッド・ゲームとなった。(現在の日本プロ野球の規定ではサスペンデッド・ゲームの規則は適用されず、コールドゲームで引き分けとなる)翌日試合再開後、新田が初球をセンターバックスクリーンにホームランを放ち、サヨナラ勝ちで前期優勝を決めた。
エキサイト・リーグ
セントラル・リーグを元に設定されている。
- 東京エンゼルス(親会社・エンゼル化粧品 本拠地・東京スタジアム)
- 名古屋カージナルス(親会社・尾張製薬 本拠地・カージナルスタジアム)
- 神戸ホワイトソックス(親会社・三宮紡績 本拠地・神戸スタジアム)
- 広島レッズ(親会社・広島新聞社)
- 千里エキスポズ(親会社・千里電鉄)
- 横浜マリナーズ(親会社・ヨコハマ造船)
延長戦の規定は試合時間が3時間を経過したら延長戦の場合は新しいイニングスには入らない(仮に同点で9回を終了し、その段階で試合時間がすでに3時間を超えている場合はその時点で引き分け)こととされていた。作中で、エンゼルスが、緩慢プレイで引き分け(以上)を狙う描写があり、当時の日本プロ野球界の引き分け規定に関しての、水島の批判的な気持ちが表現されている。
登場人物
武蔵オリオールズ
「ワイルド・リーグのお荷物球団」と評されている。本拠地も東京都小金井市にあるなど、『野球狂の詩』の東京メッツに似たイメージの球団。
新田小次郎(にった こじろう)
本作の主人公。投手。左投左打。新潟県の日本海高校出身。3年春の甲子園大会で100イニングス無失点優勝。夏も決勝まで無失点で準優勝の成績を引っさげ、博多パイレーツを志望球団として「逆指名」。1981年ドラフト会議で全球団のドラフト一位指名を受け、武蔵オリオールズが交渉権を得るが、ドラフト制度に反発し、1年浪人。志望チームであった博多パイレーツから「三角トレードでの入団」の打診もあったが、その提案も拒否している。
1983年、コミッショナー交代によるドラフト制度廃止に伴い、武蔵オリオールズへ入団。背番号は「1」。新人で開幕投手となり、前期シーズンは16連勝無敗、完全試合2回、一試合19奪三振の記録を達成するも、後期シーズンは160kmの「光の直球」に拘った結果、一転して大不振に陥る。
基本的に、抜群の伸びのストレートと切れの良いカーブだけで勝負する速球派投手だが、実際には器用な選手で、フォーク、チェンジアップ、スライダー、シュート、ナックルを投じることもできる。また。打者としても傑出した能力を有し、指名打者を使わずにバッターボックスに立ち、プロ初打席初本塁打を記録するなど、優れた実績を残している。
キャラクターの描写は、『男どアホウ甲子園』の藤村甲子園のスペックに江川卓のクレバーなイメージを加味している。特に序盤のストーリーは江川事件に対する作者の怒りが下地となっていた。
『ドカベン ドリームトーナメント編』での設定は「肩の故障が長引き、ついには治らず、クビになったのは6年も前」と里中に解説され、2006年に自由契約となっている。2009年以降は女池少年野球クラブの監督をしており、肩は回復していたが、この時点での最高球速は140キロに留まっていた。しかし、新潟ドルフィンズの岩田鉄五郎監督と五利一平ヘッドコーチの説得により、ワンポイント専用のストッパーとして現役復帰する。
伊達正次(だて しょうじ)
日照続(ひでり つづき)
指名打者・外野手。右投右打。背番号「4」。1974年にプロ入りした当時は投手だったが、1976年に肩の大怪我で野手転向。1978年にオリオールズへ移籍し、2番・指名打者のレギュラーとなる。
プロ10年目の打撃職人で、打撃技術は一流だが、ボールに力負けするため長打力はない。しかし、風に逆らわない右打ちの技術で堀田の盗塁を援護するなど、数々のテクニックを持つ。イメージ的には大熊忠義と得津高宏が混ざっている。
当初は指名打者を「打つだけ」と評した小次郎に反発していたが、小次郎の打者としての実力を認めて引き下がった。
『ストッパー』では引退し、大阪ガメッツの2軍監督を務めている。「再生屋」の異名を持ち、不振に陥っていた軟投派クローザーの三原心平を中堅手へコンバートしている。ただし、キャラクターのみの流用であり、本作と『ストッパー』の世界観は共通していない。
『ドカベン ドリームトーナメント編』では、小次郎と同じく新潟ドルフィンズに選手として在籍。岩田鉄五郎の代走として登場した。
馬場(ばば)
札幌ブルワーズ
「実力1位」「オーナーが意欲的」と評されている。
島津志津雄(しまず しずお)
網走(あばしり)
新宿メッツ
立地条件は武蔵オリオールズより良いはずだが、東京エンゼルスをヤンキースの立場にしているためか、「赤字続き」と評されている。
軍司巌(ぐんじ いわお)
国友力(くにとも ちから)
火鳥竜(ひとり りゅう)
大阪ドジャース
「地味だが地力あり」と評されている。近鉄バファローズと南海ホークスのイメージが混じっている。
通天閣(つうてんかく)
高知ロイヤルズ
博多パイレーツ
監督の玄海を筆頭に、一癖二癖ある選手が多い。「海賊軍団」とよばれている。
福岡時代末期に「山賊野球」を謳っていた太平洋クラブライオンズと金田正一監督時代のロッテオリオンズのイメージが混じっている。
玄海(げんかい)
海峡又市(かいきょう またいち)
清見(きよみ)
中州力造(なかす りきぞう)
獅子王(ししおう)
東京エンゼルス
エキサイテッド・リーグの覇者にして、日本一の人気球団。読売ジャイアンツがモデル。
阪東勇(ばんどう いさむ)
三塁手。右投右打。背番号「3」。六年連続本塁打王を記録している、エンゼルス不動の4番打者。1981年シーズンも48本塁打でMVP。ただし、シーズン記録の55本は軍司に塗り替えられている。作中世界の打者の最高峰に位置づけられているキャラクターのため、長嶋茂雄、王貞治のイメージが入り混じっている。
神津史(こうづ ふひと)
一塁手。左投左打。背番号「1」。二年連続首位打者に輝いた3番打者。1981年シーズンは打率.358、35本塁打を記録している。一本足打法とダウンスイングから王貞治のイメージが強いが、アベレージヒッターの性格が強調されているため、巨人時代の張本勲のイメージも混じっている。
その他
緒方勤(おがた つとむ)
草野球チーム、レッド・ウイングスのエース兼1番バッター。浪人時代の小次郎と10試合を戦う。