円環少女
以下はWikipediaより引用
要約
『円環少女』(サークリットガール)は、長谷敏司による日本のライトノベル。イラストは深遊が担当。角川スニーカー文庫(角川書店)より2005年8月から2011年2月まで刊行された。『このライトノベルがすごい!2012』作品部門で4位を獲得した。
概要
異世界から訪れる犯罪魔法使いたちを相手に、人知れず日夜治安維持のために戦い続ける非公式公務員の青年、武原仁と魔法使いの少女、鴉木メイゼル、そして滅びたはずの魔法大系を使える少女、倉本きずなを中心に21世紀初頭の日本を舞台に繰り広げられるバトルファンタジー。練りこまれた設定と複雑な人間模様、シリアスなストーリー、泥沼の愛憎劇などが混在する。
この作品の特徴として超能力が登場する多くの他作品が「超能力者=超越者」であるのに対して、本作では地球人が魔法を観測すると魔法が破壊される「魔法消去」という現象が起こるため、多くの魔法使いが一般人に観測される事を恐れて身を隠しながら活動する(=一般人の方が超能力者より優位に立っている)という設定にある。また、地球人は自分たちが破壊する魔法を知覚することができないため、現代の日本を舞台にしながら一般人が魔法を知らないことの不自然さが解消されている。千を越える異世界のそれぞれに魔法大系があり、魔法使いは自分の生まれた世界に由来する魔法大系しか使うことができないため、使用できる能力に制約がついている。登場人物に変態、変人が大量に登場していることも特徴。
最終巻の発売後、作者のブログでは書ききれなかった設定などが公開され、イラスト担当の深遊のブログでラフ等を公開している。
2018年10月31日発売の『ザ・スニーカー LEGEND』では、描き下ろし短編『運命のレール』が掲載された。
ストーリー
魔法使いたちから、この世は「地獄」と呼ばれている。この世の外側にある幾千の魔法世界にとっての自然現象である魔法を、この世界の人間は消し去ってしまうからだ。彼らにとってこの世界の人間は糞溜めの底の糞であり、そして「悪鬼」である。元の世界で罪を犯した魔法使いたちは、自らの犯した罪を償うため「刻印魔導師」とされ「地獄」へ落とされる。そこで協会に敵対する魔導師を100人倒すことで、彼らの罪は許される。しかし未だかつてそれを成しえた者は無く、誰もが志半ばで血溜りに伏していた。
「円環大系」の少女魔導士・鴉木メイゼルも、そんな刻印魔導師の一人である。幼すぎる彼女には、その試練はあまりにも辛い。しかし彼女は、その過酷な試練へ真っ向から立ち向かう。
バベル再臨
煉獄の虚神
グレンはこの世界を魔導師のものとするため「悪鬼」の殲滅を宣言する。だがケイツは、魔法世界で生きてきた兄が自分を差し置いてこの世界への憎悪を語るのが許せず、王子護ハウゼンに雇われて刺客となる。仁とメイゼル、そしてケイツは反目しながらも共闘し、グレンを討つ。
よるべなき鉄槌
魔導師たちの迷宮
太陽がくだけるとき
裏切りの天秤
公館陥落
運命の螺旋
メイゼルの母イリーズは、才能のない魔法使いでも連携することで高位魔導師に匹敵する力を発揮できる技術を広め、円環世界に革命をもたらした人物だった。《九位》は他の超高位魔導師たちとともにイリーズに立ち向かい、彼女を追い詰めた。イリーズは死と引き換えに、戦争で生じたゆがみの修正に現れた《神》を殺し、円環世界を《大崩落》に陥れた。メイゼルは母の罪を背負わされ《地獄》に送られたのだった。
会議の休憩中、円環魔導師が会場を襲撃する。仁とメイゼルが辛くも《雷神》クレペンスを撃退する一方、聖騎士に囲まれたきずなは自らの魔法で敵を殺して生き残る。聖騎士将軍アンゼロッタは、きずな確保のため京香に協力を持ちかける。申し出を拒もうとした京香にアンゼロッタが示したのは、太平洋上に浮かぶ島アトランチスと、その住人を自称する王子護の姿だった。
新世界の門
真なる悪鬼
荒れ野の楽園
作戦が失敗した後、きずなは仁に戦いを捨てて平穏に暮らそうと持ちかけるが、仁は彼女ではなくメイゼルを選ぶ。未来から操られて大勢の魔法使いが暴れだすが、《運命の化身》を発動したきずなによって、グレンやイリーズら、この歴史では死んだものたちが別の歴史から現れて対抗する。魔法消去が復活をはじめ、魔法使いによる混乱は一旦収束する。
“最後の魔法使い”となった遠未来のきずなによって舞花のもとに送り込まれた仁は、再演魔術の《増幅器》と化した妹と死闘を繰り広げ、相討ちとなる。歴史改変の力の源が消え、この世界は魔法使いと魔法消去者が共存する新時代を迎えるのだった。
登場人物
メインキャラクター
武原 仁(たけはら じん)
「沈黙」(サイレンス)、「真なる悪鬼」(トゥルー・デーモン)
本作の主人公。24歳。この時代唯一の「真なる悪鬼」であり、魔法消去を自分の意志で任意に発動・沈静できる先祖返りの悪鬼。格闘、銃器の扱いに長けており、精密な狙撃も得意とする。その発砲音より早い無音の死から、「沈黙」と恐れられている。
魔導師公館所属の専任係官として活動していたが、メイゼルと出会い幼い彼女を守るためコンビで動くようになる。しかし私生活での彼女の保護、監視のために無免許でメイゼルの通うことになった私立御陵甲小学校の6年1組の副担任をすることになってしまった。現在は公館を解雇され、単なる無免許教師となっている。
東郷との決闘、そして死をキッカケに「魔法使いが魔法使いらしく生きる世界を作る」という誓いを立て、魔法使いの支援を目的としたNPOを設立し、その代表に収まった。さらに東郷亡き後に残された《鬼火衆》を率い、「大将」「親分」と慕われている。ただし、《鬼火衆》たちは職が無く、自分も《公館》を解雇されている現状は変わらないために家計は火の車になっている。NPOとしては《公館》からの依頼という形で魔法世界に関わり、傭兵のような状態に。
銃を攻撃魔法、魔法消去を防御魔法に見立てた魔法使い戦術を用いて戦う。《公館》離脱後は、王子護から渡された神人遺物《剣》を多用するようになる。
終盤では再演の神降臨により全ての地獄特有魔法が弱まっていく中、意図的に魔法消去の自然秩序と「チャンネルを合わせる」ことで実時間を遡って作用するほどの効力を持つ最強の魔法消去を会得した。その後、高い武技を持つ真なる悪鬼であることから増幅器に対する刺客に選ばれ、「最後の魔法使い」となったきずなの手によって人類の死滅した極遠未来へ送られる。そこで再演の増幅器と化した妹・舞花に最後の戦いを挑む。
鴉木 メイゼル(あぎ メイゼル)
円環大系高位魔導師
本作のヒロイン。刻印魔導師の少女。本名メイゼル・アリューシャ。円環世界における最強の魔導師・「憎悪の女王」イリーズ・アリューシャの一人娘であり、彼女の素性を知る人物からは「アリューシャの姫」などと呼ばれる。「神童」と呼ばれ、グレン・アザレイも天稟を認めるほど、魔術の才能に恵まれている。
幼いながらも魔法使いとしての誇りが強く、歴史上誰も為したことのない「百人討伐」を目指す。一方で小学生「鴉木メイゼル」としてのパーソナリティも強く、誇り高い魔法使いであることにもかかわらず、仁たち悪鬼に一切の偏見や憎悪を抱かない。
仁に立場の差を超越した愛情を抱くが、生来から嗜虐的な性癖を持つので、どこか歪んだ愛情表現で仁を悩ます。
誕生日は6月20日。本来は12歳前後であるが、年端もいかぬ少女を刻印魔導師とすることに対する批判を封じるため、「協会」の資料上は25歳となっている。この13年の年齢差は円環世界において時間が止まっていた間の時差を、協会側が修正せずに公館に提出したためだと考えられる。
最後の戦いの後、増幅器の破壊のために未来へと向かった仁に会うために、「もう」人間のいない世界の終わりと「まだ」人間のいない世界の始まりを繋げるという離れ業を成し遂げ、その瞬間まで時間を遡り仁と再会を果たした。メイゼルはこうして円環のように繋がった世界が円環世界の始まりかもしれないと推測している。
倉本 きずな(くらもと きずな)
再演大系魔導師
本作のもう一人のヒロイン。17歳の女子高生。60年前に滅んだはずの再演大系を使える唯一の人物。その力の危険性から「公館」に保護される。家事全般が得意で料理は絶品。人を惹きつける魅力を備えた少女。
公館に保護されてからは十崎家で暮らすようになり、家事全般を引き受ける母親的ポジションに落ち着く。メイゼル、京香、そして仁と4人で囲む食卓は、仁に「もう取り戻せないはずの何か」を思い出させる。
仁は「普通の少女」でありながら魔法の世界に巻き込まれたきずなを大切に思い、一方できずなも仁に好感を持つが、きずなの父親を仁が殺したという事実が二人の関係に爆弾を作っている。
「賢者の石」を巡る闘争の中、遂に仁の父親殺しの事実を知ってしまい、それからは仁に複雑で凄まじい憎愛を抱くようになる。
唯一魔導士という最高の資質と神の辞書という最高の環境を得たが故か、魔法使いとしての経験が浅いにもかかわらず、高度な概念魔法を使える。しかし経験の浅さゆえに、細かい魔法を組み合わせて狙った効果を出すということができず、もっぱら概念魔術による力押ししかできない。後に、舞花が再演魔導師となったために唯一魔導師という最高の資質は失われた。
多くの者から「最後の魔法使い」と呼ばれるが、それはきずなが文字通りこの世界で最後の魔法使いになるまで生き続ける魔法使いであるため。再演大系によって「増幅器」が設置されてしまったこの歴史では、増幅器の干渉を受けてしまい未来へと移動することはごく短い時間しか不可能になった。それゆえ増幅器を破壊するには自分が人類最後の一人となり、人類が全て死に絶えた時代に召喚される増幅器へ向けて自身の死の瞬間に刺客を送り込むしかない。そしてその刺客には、魔法消去によって再演魔術を完全に無効化でき、かつ魔法によって増幅器の元へ送るためにその魔法消去を停止させることのできる仁が選ばれ、それを防ごうとする未来からの干渉を相手に戦い続け「最後の魔法使い」となったきずなは仁を増幅器の元へ送った。
魔導師公館(ロッジ)
専任係官
定員12名だが、激務に加えて損耗が激しく、また不敗の象徴である必要性から量よりも質が重視されており、作品開始時点では7名で構成されている。
神和 瑞希(かんなぎ みずき)
八咬 誠志郎(やがみ せいしろう)
「破壊」(アバドン)
「公館」が擁する、もう一人の地獄の魔法使い。「協会」に最も嫌われた忌み子であり、同僚の専任係官からも苦手とされる事が多いので、よほどの重大事件でないと招集されない。仁とは例外的に相性が良く、プライベートでも友人付き合いをしている。胸板が見えるほどはだけさせたピンクのドレスシャツというトンチキな格好に、気障な言動を好むが、その奇矯な言動がまったく浮つかない貴人のような繊細な容貌をしている。自身の能力を抑えるため悪鬼である美人女医と美人秘書を連れて行動することもある。
仁と共に東郷に師事していた時期があり、彼のことを「先生」と呼ぶ。そのため魔法使いとしては例外的に武術を使うが、素手により行うそれは仁のものより数段上である。
東郷 永光(とうごう ながみつ)
「鬼火」(ウィスプ)
40歳前後。専任係官を19年間務める古参。その長期にわたるキャリアで、自然に人材が集まり、配下の刻印魔導師は鬼火衆という集団を形成している。豪快な性格だが大雑把ではなく、沈着冷静な態度を崩さない。盲目ながらも剣術の達人であり、総髪茶筅の髪型に和装姿という格好もあって、もはや武人としか言いようのない佇まいを見せる。かつて、仁と八咬の格技師範だったことがある。
公館の新体制とそれによる刻印魔導師の迫害に反発し離反。公館本部を焼き払い、古い時代の公館の者である己の死に場所として《協会》がひた隠しにしていた武蔵野迷宮深層への討ち入りを行う。そしてその行動により迷宮内に存在していた核製造施設の発見と破壊の成功に貢献するも、最深部にて現れた《九位》の手にかかり死亡。
オルガ・ゼーマン
聖痕大系高位魔導師 「茨姫」(いばらひめ)
高位魔導師でありながら、「協会」を離れて「公館」の専任係官を務める変り種。白金色の長髪に、おっとりとした仕草の上品な女性だが、やたらと言葉の端々で地球を「肥溜め」、地球人を「喋るウンコ」と表現する。これは地球を地獄、地球人を悪鬼と蔑む魔導師全般の感覚からすれば特異ではなく、むしろその「喋るウンコ」にすら同情を寄せる度量の広い人物と言えるかもしれない。魔法を効率的に発動させるために、自らの痛覚を刺激する拘束衣「茨」を着込んでいる機械化魔導師。専任係官に志願したのは、自身の罪を浄化するために苦行を積みたいという理由なのだが、作品における描写からは被虐性欲者にしか見えない。
「公館」の嘱託科学者である溝呂木京也の助手でもある。
刻印魔導師
スピッツ・モード
鬼火衆
「鬼火」東郷永光率いる精鋭刻印魔導師集団。東郷の人徳に惹かれて、自然に有能な人材が集まっている。《九位》の手にかかり東郷が殉職したため、現在は武原仁と彼が代表を務めるNPOの指揮下にあり、彼を「大将」、メイゼルを「姐さん」と呼んで慕う。また、住居も仁のアパートの別室に陣取っており、食事では仁の部屋に全員が集まる。
虎坂井 レイ(こざかい れい)
綾名 ネリン(あやな ねりん)
相似大系魔導師 「人形使い」(ドールメイカー)
本名はネリン・イスパイダ。生まれつきの顔面奇形のため、包帯をぐるぐる巻きにして自分の顔を隠している。両親からも愛されなかった孤独を癒すため、814人の人間を洗脳して自分の家族にした大量誘拐犯として、地獄に墜とされた。愛情に餓えていた彼女は、自分を人間として扱ってくれる東郷を慕い《鬼火衆》に入るが、同時に家族を求めることを止めることができず、他の刻印魔導師17名を洗脳して自分の子供にしていった。
グレン・アザレイ抹殺のために、浅利ケイツを脱獄させるようにと多額の報酬で《協会》に依頼される。危険を冒しても大金を得ようとしたのは、顔を整形して家族と共に穏やかに暮らすことが目的だった。だが《協会》のグレン抹殺作戦が失敗に終わり用済みとして見捨てられる。その後、覚悟を決めて自首するが、口封じのために《協会》のフィリップ・エリゴルに誘い出され殺害される。
瀬利 ニガッタ(せり にがった)
賢猟大系魔導師 「砂の猟犬」
元密偵の女魔導師。仲間を裏切ったことが原因で地獄行きになった。軍服を着こなし、ガスマスクを付けて口元を隠した犬気質の持ち主で、序列に従っていないと気がすまない変態。メイゼルが通う小学校にこっそり住み着きメイゼルに自分の御主人になってもらおうとするが、拒絶され捕らえられて公館に引き渡される。さすがに軽犯罪だったので処刑されることもなく人格矯正のため《鬼火衆》の預かりとなる。しかしメイゼルと再会すると《鬼火衆》を離脱し、彼女の犬として飼われることを選ぶ。その後、円環魔導師の核開発施設を発見したため攻撃を受け、瀕死の状態で情報を持ち帰り力尽きる。
最終決戦で《運命の化身》によって別の歴史から呼び出されたが、戦闘には参加せず犬小屋の掃除だけして帰っていった。
マランキシュ
その他の公館職員
溝呂木 京也(みぞろぎ きょうや)
かつての公館関係者
武原 舞花(たけはら まいか)
「蛇の女王」(アスタロト)
仁の妹。3月生まれ。4月生まれの兄とは同学年。いつの頃からか魔法を使えるようになるが、小学生の時に病気にかかり学校に登校できなくなる。自宅療養しながら過ごしていたが、病状の悪化を悟り、病巣を魔法に置き換えて延命を試みた。だが、魔法で作り出した臓器は魔法消去の影響を受け、家から出ることも兄以外の人に会うことすらできなくなる。さらに14歳の時に両親が失踪したため、自宅を借家として貸し出した金で、兄と二人でアパート暮らしを始める。後、兄が王子護から渡された名刺を頼りに魔導師公館に連れて行かれ、ついに魔法で病魔を克服する技術を習得した。その代価として彼女は公館の専任係官として活動するが、東京地下の核爆発を食い止めるために死亡。
死した後、魔法化した体の断片のみが残っている状態だったが、王子護がその中の一つを捕獲し「万有なる化身」によって眼の中に取り込み育てた結果8歳前後の姿で復活した。その状態で仁の部屋の住人のひとりとなり、本来ならば自分の方が歳上なのにもかかわらず、メイゼルのことを「メイゼルお姉ちゃん」と慕う。一方で、きずなのことは蛇蝎の如く嫌う。現在は魔法を使えない。
実は神聖騎士団の内通者。自らをあえて幼い姿で復活させたのは、歪みの無い状態の肉体を手に入れるため。歪みのない肉体は魔法消去の影響を受けにくいし、歪みである魔法大系を自分で選択できるからである。神聖騎士団をきずなの元に送り込んで追い詰め、きずなをそそのかして自らを再演秩序に同調させる魔法を使わせることで再演大系の魔法使いとなる。そして幻影城でバベルの再演を行い、地獄に「神」を召喚する。
神を召喚した後、完全な安定に至らなかった再演大系を安定させるため、人間が死に絶えた未来へと飛び再演秩序と意識を同調させることで「増幅器」となる。増幅器は過去からの干渉を受けることなく、「人間を救う秩序」である再演の神の代行者として人類の総数を増やす方向へと歴史を修正する。だが「最後の魔法使い」によって送り込まれた仁によって増幅器は破壊され、「人間を救う秩序」は人類が絶滅したことで崩壊した。
協会
「九位」(ノーヴェ)
円環大系最高位魔導師
「協会」の最高意思決定機関「三十六宮」の一宮
メイゼルの所属する円環世界の最高権力者にして最強の魔導師。メイゼルに地獄行きの決定を下したのも彼女である。防御力の向上と、電子操作に長けた円環魔法の力を最大限に発揮させる方法を突き詰めた結果、円環大系の超科学によって体をサイボーグ化させた機械化魔導師となっている。超高位魔導師としては極めて珍しい「俗物」であり、わかりやすい“野望”のために活動し、効率的であるならば通常の高位魔導師なら取らないような手段も行う。
本名はグラフェーア・トリア。彼女の兄はイリーズの夫であり、メイゼルにとっては叔母にあたる。もともと義姉イリーズに羨望と嫉妬の入り混じった感情を抱いており、サイボーグ手術を頼んだ結果、機械むき出しの体にされたのを機に敵対。トリア家秘伝の魔法を取引材料にするという、なりふり構わぬやり口で超高位魔導師たちを集め、イリーズを死に追いやった。
《地獄》で核戦争を起こそうと陰謀をめぐらせるが、アトランチスでの戦いで仁とメイゼルに敗れて捕縛される。その後再演魔術の操り人形と化すが、《運命の化身》で現れた別歴史のイリーズによって解放されると、メイゼルに改めて敵対宣言をして退いた。
ベルニッチ・シファキス
精霊大系高位魔導師
顎髭の中年男。尊大な態度を崩さぬ協会の調整官。地球人や刻印魔導師への嫌悪や侮蔑を隠そうともしないが、専任係官の実力自体は評価しており、グレンなどの才能には敵であっても敬意を示すなど、独特の美意識を持っている。地球の文化等を見下しているが、仕事でならある程度公私を弁えることができる。自身も一流の魔術師であり、瀕死の重傷を負った仁に魔術的な治療を施したこともある。「協会」の非主流派に属しており、「九位」達協会主流派とは影で牽制し合っているが、現在非主流派は主流派に押されており、ベルニッチはその矢面に立たされているため、苦しい状況にある。それでも「三十六宮」たる「九位」に対しては最大限の敬意を払っており、不敬な発言に対しては怒りも見せる。
第1巻から登場しているにもかかわらず、仁も長らく本名を知らなかったが、第9巻にしてようやくフルネームとイラストが登場した。
セラ・バラード
錬金大系高位魔導師「無双剣」
常に全裸の美女。スピッツ・モードの義姉でもあり、神和瑞希に対して義弟を死なせたとして、個人的に復讐心を抱いていた。協会の代表として「九位」と共にグレンとの話し合いに赴き、交渉決裂後グレンに挑むが、格の違いを見せ付けられ敗北、撤退する。後にグレン討伐よりも神和瑞希に対して私情で戦いを挑むが、きずなの仲立ちもあり瑞希と和解する。その後は協会には戻れなくなり地獄にとどまって流浪者となっていた。一時は寒川典子の家に匿ってもらっていたが追い出され、後に戦力不足となった「公館」に傭兵として雇われる。現在は一人では生活できないため、エレオノールの家できずならと一緒に世話になっている。
フィリップ・エリゴル
アラクネ・ショージァ
ニコデマス・ユリー
ユリア・シュバール
クレペンス
イリーズ・アリューシャ
円環大系最強魔導師 「憎悪の女王」
故人。メイゼルの母。最も純粋な“魔法使い”と言われる魔法史に残る天才。見た目は普通の人間だが、全身を機械化しており、監視衛星や地上のレーダー基地、天文台など様々な機器からデータを受けて観測でき、さらにそれらの機器越しに魔法を使用できる。超高位魔導師ですら一人では太刀打ちできないほどの桁外れの実力を誇る。
夫を奪った者たちへの復讐と、円環世界の法則が本当に円環なのかを確かめるために革命を起こし、戦争を起こした。七人の超高位魔導師たちとの決戦の末に敗れるも、円環世界の《神》を殺すことには成功する。その結果、円環世界の基本法則は螺旋であることを明らかにしたが、その代償として円環世界は崩壊した。全人口の3割を失った民衆の怒りは彼女の死だけでは収まらず、メイゼルを地獄に落とすことになる。
最終決戦で《運命の化身》に召喚されて別の歴史から現れたイリーズは、円環世界を制し《協会》と戦争を繰り広げる《絶望の大神》になっていた。さらに強化された魔法で《雷神》クレペンスを一蹴すると、この世界のメイゼルを励まし、操られた《九位》を解放して帰っていった。
神聖騎士団
エレオノール隊
エレオノール・ナガン
ニコライ・バルト
機械化聖騎士師団
正式名称「マシーナリー・ナイト・デイヴィジョン」。アンゼロッタ・ユーディナによって設立された。機械で音を再生し魔法を効率良く使用したりするなど、科学と魔法を組み合わせて戦う新設の師団。現在は試験中の実験部隊。
アンゼロッタ・ユーディナ
聖騎士将軍 「至高の人」(ザ・ワン・オブ・スプレマシー)
わずか二十代で聖騎士将軍へと上り詰め、機械化装備を作り上げた、魔法世界にその名を轟かせる天才魔導師。当代最強の聖騎士の一人にして最高の神音魔導師でもあり、「三十六宮」にも匹敵する圧倒的な実力を持つ超高位魔導師。漆黒の髪の美女。神音魔法を使い限定的ではあるが相似大系に近い魔術を完成させた天才。複数の音を同時に聞き分けることにより、同時に複数の魔法を使うことができる。
再演魔導師であるきずなと「賢者の石」を狙い、五千名の機械化聖騎士師団を率いて東京に侵攻する。
仁は彼女とメイゼルが似ているような気がしていたが、魔法に詳しい別歴史のきずなによると、アンゼロッタはメイゼルの螺旋同位体で、普通の生まれではないらしい。
リュリュ・メルル
ジェイク・フェニックス
聖霊騎士
ユーグ
その他の神音魔導師
倉本 慈雄(くらもと しげお)
神音大系高位魔導師 元団将
倉本きずなの父。普段は楽器を作る事が趣味のトラック運転手として生活していた。きずな本人は実の父と思っていたが、実際は幼い彼女をさらって育ててきた神音魔導師。
本名は「マルク・フェルゼー」。かつては「慈悲深き剣(カヴァリエーレ・デイ・ミゼリコルディア)」と呼ばれていた。
娘に対しては深い愛情を持って育てていたが、あくまでも二番目に大切な存在であり、自分にとっての一番大切な願いのために、娘と協力者、さらにかつての弟子グレアム・ヴィエンなどを利用し計画を実行に移す。
彼の目的は3000年前のバベルで死亡した女性騎士を救うこと。3000年前、神聖騎士団は「神の門」の召喚実験を行っていた。完全索引から「神の門」を構成する神音を引き出そうとする試みは、実験に参加していたある騎士が恋の神音を引き出してしまったことで失敗に終わり、想い人である女性騎士は完全索引をめぐる戦いで命を落とした。失敗の原因を作ってしまった騎士はその神音を楽器に残し、それを手に入れた倉本滋雄はその気持ちを共有することになり、歴史を改変して彼女を救うためバベル再演を実行し、その悲願を叶えるための神音を手に入れることに成功したが仁との戦いで命を落とした。
連合
犯罪魔導師
「協会」の敵となった魔導師。「公館」にとっても治安維持のために倒さなければならない。メイゼルたち刻印魔導師は、犯罪魔導師の認定を受けた者達を百人倒すことで自由の身が保障される。
グレン・アザレイ
相似大系超高位魔導師 「神に近き者」
協会が独占した知識や利権を解放するため、地獄を悪鬼から開放することを目的に訪れ、たった一人で協会や公館に真っ向から戦いを挑む。相似世界に革命を起こし、魔法使いの誰もが夢見た「悪鬼」掃討を実現させようとした英雄。
協会に大して真っ向から反逆し、相似世界で最高位魔導師《不死王》スセラミス・エラド・マナとその取り巻きを皆殺しにして地獄にやって来た。
相似魔術は高位な者ほど曖昧な相似であっても相似弦を結ぶことができるが、彼は原子や分子の単位で相似を見いだすことが出来る。
地獄で初めて会った双子の弟ケイツを気にかけるが、兄への愛憎入り混じるケイツは仁と共闘することを選び、彼らに敗れて死亡した。
最終決戦で《運命の化身》に召喚されて別の歴史から現れたグレンは、奮戦の末に倒れたケイツを救うと、自分の歴史では兄を救って命を落とした弟を称え、彼が目覚める前に去っていった。
ジェルヴェーヌ・ロッソ
ワイズマン警備調査会社
王子護 ハウゼン(おうじもり ハウゼン)
浅利 ケイツ(あさり ケイツ)
相似大系魔導師
メイゼルが最初に戦った犯罪魔導師。基本的に臆病で自身の手に負えない恐ろしい相手からはまず逃げようとするが、稀に魔法使いとしての矜持に熱い面が顔を出す。
本名はケイツ・アザレイ。グレン・アザレイの双子の弟だが、相似世界では一卵性双生児は「同じ人間」との誤認が発生して体機能が同調してしまい、その結果二人とも死んでしまう。それを防ぐためケイツは生まれてすぐに他の世界に送られたが、その世界の魔法が使えない彼は周囲になじめず犯罪者となり、ついには地獄行きを宣告される。刻印魔導師としての過酷な生活に耐えられずアメリカに逃亡するがそこでも真っ当な生き方ができず、腐りきっていたところを王子護ハウゼンに拾われ、日本に送り込まれてグレン戦争に利用される。
きちんとした魔法教育を受けられず、ほぼ自己流かつ低レベルな相似魔法しか使えなかったが、グレンに出会った際、相似魔術の才能をグレン自身と相似にされた。それで以前とは比較にならないほどの魔術行使が可能になったが、威力に見合う技術は備えていない。
その後ワイズマンのシニアマネージャーに就任しているが、どう見てもお飾りの役職。しかし本人は大真面目である。最終決戦ではスセラミス派の相似魔導師からリュカを守って奮戦し倒れるが、自分たちを操る再演魔術を見抜いて最期の力で反攻を仕掛け、極限未来で戦う仁に逆転の隙を与える。その後《運命の化身》で現れた別歴史のグレンによって蘇生。人殺しを嫌い、魔術で多くの人を癒したケイツは、いつの間にか周囲の他人から惜しまれる存在になっていた。
リュカ・エラド・マナ
ベルナー・ヒルタ
悪鬼(地球人)
魔法消去能力を持つ人々。魔法使いからは「悪鬼(デーモン)」と蔑まれている。
私立御陵甲小学校
寒川 紀子(さむかわ のりこ)
天瑞 岬(てんずい みさき)
一般の人々
寒川 淳(さむかわ あつし)
蓮寺 公直(はすでら きみなお)
用語
魔法世界
地獄と悪鬼
魔法
神
魔法使い、魔導師
魔炎
魔導師公館(ロッジ)
刻印魔導師
協会
魔法世界と地獄を結ぶ神人遺物「門」のほとんどを独占するが故に権勢を誇っている。
神聖騎士団
地獄に神を光臨させるという「神意」を果たし、神意に反する神敵を滅ぼす事が彼らの使命。ただし大儀のためには小事は全て切り捨てる事が当然であるという考えが浸透しており独善性が強い。その事も相まって「公館」とも相容れない存在になっている。
騎士の階級は下から聖騎士(平騎士)、上級聖騎士(士官以下、下士官まで)、聖騎士将軍(准将以上)の3段階しかないため、階級だけで実力を測ることは困難である。
現在はアメリカと手を結び、国内で起こる犯罪魔導師の取締りを行なう等、公館と同様の仕事もしながら協会の完全排除の機会も窺っている。
最初から神音世界を統一していたわけではなく、かつては反神聖騎士団派の勢力も存在していたが、再演大系の協力を受け、神音大系では確立されていなかった不死の魔法「聖霊騎士」の技術を確立したことから神音世界の最大勢力となった。
ワイズマン警備調査会社
武蔵野迷宮
私立御陵甲小学校
連合
アトランチス
大崩落(ビッグフォール)
魔法
地獄(地球)を除く総ての異世界では自然秩序(物理法則)がある部分において歪んでおり、魔法使いは観測する事でその歪みを見極め、自然を操作する事ができる。それが「魔法」である。
魔法はそれぞれの世界の秩序の歪みにつけこんで発動する。世界毎に自然秩序の歪みは違うため、一口に魔法と言ってもその性質は世界毎に異なり、各世界は必ず一つの魔法大系をもつ。
魔法使いの肉体は故郷の歪んだ秩序を受け継いでおり、観測によって故郷の歪んだ秩序を世界に上書きする。これが魔法の起点であり、魔法使いは己の肉体の持つ歪んだ秩序に基づいて魔法を行使する。例えば円環世界の住人は、「周期運動が不安定」な故郷の歪んだ秩序を世界に上書きし、その歪みを利用して周期運動を操る。そのため、それぞれの世界の魔法は、そこの住人にしか使えないし、他の世界の魔法(異なる秩序に基づいた魔法)はどんなに努力しても習得できない。たとえ自然秩序の異なる異世界に行っても(たとえ地獄でも)故郷の秩序が上書きされるため、故郷の魔法が使えるし、それしか使えない。この肉体の持つ歪んだ秩序は非常に強固なものであり、一生変わることがない。神でさえも生まれ持った秩序を引き剥がすことも、他の秩序を与えることもできないとされている。この強固さ故に、魔法使いの肉体を他の魔法使いが観測しても、秩序を上書きすることができない。そして秩序の上書きができないものに魔法をかけることはできないため、他人の肉体に直接魔法をかけることは(原則的に)できない。子供は基本的に母親の魔法大系を受け継ぐが、絶対ではない。
また唯一地球だけは、完全に物理現象が安定しているため、その性質を受け継いでいる「悪鬼(地球人)」が魔法を観測すると歪みが強制的に安定させられ、魔法は魔炎を上げて崩壊する。これが魔法消去である。
本編に登場する魔法は、各大系ごとに異なる性質を持っており「魔力型」と「索引型」に大別される。さらに地球人が発現させる分類不可能な特殊な魔法である「カオティックファクター」も存在する。
共通して見られる魔法
いくつかの魔法・魔法理論は、大系の別を超えて、全て、あるいは複数の魔法大系で共通して見られる。下記にその一部を紹介する。
化身(アバター)
螺旋同位体
客観的にいえば、魔法大系以外の要素が全く同一の人物(たち)のことである。
アンロゼッタと最初の神人とシェルベーヌがメイゼルの螺旋同位体である。また舞花の複製も舞花の螺旋同位体である。
円環大系の破滅の化身を円環大系本来の秩序である「変化を伴う螺旋」で発動すると現れるらしい。螺旋の化身は螺旋同位体がいないと完全な形では発動できない。秩序を変質させる反動に耐えるためには、一つの魔法秩序・一人の自分では足りず、複数の魔法秩序・複数の自分を以て支える必要があるからである。メイゼルが螺旋同位体をもつのはこのためらしい。
また、蛇の女王の輪廻の化身によって生まれる術者の複製も螺旋同位体である。
再演魔法的に観測すると、人としての「索引」が全く同一である。
同じ時間軸に複数の同一人物は存在できない。
この制約ゆえに、同じ聖霊騎士を複数人同時に召喚することはできないし、術者のいる時間軸で生きている人物を運命の化身で召喚することはできない。
概念魔術
魔法構造体/魔法生物
術者が制御しなくても生物のように勝手に動く魔法であり、便利だが暴走の危険もある。
魔法の組み合わせ/分業
高度な魔法が単純な魔法の組み合わせであるということは、単純な魔法をバラバラに発動してから統合しても高度な魔法が発動するということでもある。故に複数人で単純な魔法を使用し、それらを組み合わせることで、高度な魔法を発動することもできる。これは最終産物である高度魔術の側から見れば「高度魔術を複数人で役割分担して生み出す」こと、つまり魔法の分業化に他ならない。単純な魔法しか使えない雑魚魔導師でも、分業で高度な魔法を使えるし、高度な魔法を使える魔法使いなら分業でさらに高度な魔法を使用可能になる。また並列処理の原理で魔法の発動を高速化することもできる。
また後述の多重発動も分業と同じように、より強力な魔法をより高速で発動可能である。
因果大系・神音大系・円環大系・天盟大系などで発達しており、これらの魔法世界では魔法使いの社会化が促進されている。
多重発動
上記の組み合わせと併用することで、より高度な魔法をより短時間で発動することもできる。
神音大系・天盟大系で確認されている。
不死魔術
それは不老化による寿命の克服であったり、自身の体を魔法構造体に置き換えることでの高い生命維持能力であったりする。
中でも不老化による永遠の命は魔法使いにとって魅力的なものだが、魔法大系がどれほど発達しようと自然秩序の性質的に手に入らない場合もある。しかし手に入らないならばなおのこと欲望を掻き立てられるらしく、永遠の命を手に入れるために強引な手段がとられることも少なくない。
魔法的転移(テレポート)
この魔法があるため、魔法使いの逃亡や侵入を阻止するのは非常に難しい。
自力で世界間を移動する場合もこの魔法が使用されている。
大系の枠を超えた魔法
「結果」を先に記述して原因を世界から引き出す「概念魔術」や、術者自身を記述する「化身」はその応用である。
それを極限まで突き詰めれば、全ての魔法世界をひとつの自然秩序で記述することさえ可能である。その域に達した魔法は、他の魔法世界の自然秩序そのものさえも、自身の自然秩序で記述できるようになる。本来大系が違うということは、魔法の基盤となる自然秩序そのものが異なるということであるため、どんなに努力しても他大系の魔法を使うことはできない。しかしながら「他の自然秩序を自分の自然秩序で記述できる」ということは、異なる自然秩序そのものを自分の自然秩序の下で再現できるということであるため、大系の枠を超えて、他の大系の魔法を使用(再現)したり、他の大系の魔法そのものを直接操作したりできるようになる。
例えばアンロゼッタは(限定的にとはいえ)相似大系の秩序を神音大系の秩序で記述し、相似魔法を神音魔法で再現している。これは魔法使いにとってさえ奇跡と呼べる領域であり、この魔法の犠牲者となった魔法使いは、殺されるとわかっているにも関わらず、喜びのあまり笑いながら死んでいった。神人大系、つまり再演大系も枠を超えた領域にあるらしい。
抽象概念
唯一魔導士
魔力型の魔法使いにはこのような最高の資質というものは存在しないらしい。
神の辞書/完全索引/極点
魔法大系
本項では、魔力型 索引型 カオティックファクターを、それぞれ五十音順で記載する。
魔力型
魔力型魔法は自然秩序の乱れを「魔力」として感知しそれを取っ掛かりに自然を操作する魔法である。
魔力型の攻撃魔法は「自然物・自然現象を操って敵にぶつける」というものが多く(例:円環大系の人工稲妻・相似大系の人工津波)、自然のエネルギーを魔法に取り込めるので出力が高いし、もともと自然界に存在している物をぶつけているので、魔法消去にも比較的耐性がある。ただし、「魔力」を見出せるものしか操れないので、できることとできないことがはっきり分かれてしまう融通の利かないところもある。例えば円環大系であれば、どんなに極めても周期性から抜け出すことはできない。
因果大系(いんがたいけい)
円環大系(えんかんたいけい)
完全大系(かんぜんたいけい)
混沌大系(こんとんたいけい)
精霊大系(せいれいたいけい)
相似大系(そうじたいけい)
錬金大系(れんきんたいけい)
索引型
索引型世界においては、万物はイデア・《索引》が存在するが故に存在できる。たとえば《火の索引》という自然法則が存在するから、火が存在できるという順序で世界は成り立っている。この万物を存在せしめているしくみ自体に働きかけることで、万物を実体化させる魔法が索引型魔法である。
索引型世界においては万物と《索引》は対応関係を持ち、《索引》を観測するとそれに対応した物が実体化する。たとえば黄金と対応した《索引》を見つけたらその《索引》を観測するたびに何度でも黄金を生み出せる。そのため無から有を生み出すことも可能である。しかし《索引》を観測すると術者の意思にかかわりなく魔法が発動してしまうので、暴発の危険に常にさらされている。またどの《索引》が何に対応しているかは基本的に試してみるまでわからないので、《索引》探しが大変な場合もある。なお魔法は索引の媒質中に出現する。例えば音を索引とする神音大系では音の媒質中(主に空気中)に魔法が現れるし、術者のイメージを索引とする宣名大系は術者のイメージ内に魔法が出現する。
理論上は、世界に存在しうるありとあらゆる物と現象を生みだせる魔法であり、魔力型と比べると万能性が高い。とはいえ、索引を発見できればの話であるので、実際になんでもできるわけではないが。
賢猟大系(けんりょうたいけい)
再演大系(さいえんたいけい)
再演魔導師は世界の歴史を一冊の本として感覚する。過去全ての人間の仕草・行動を「文字」として記述した「本」である。再演魔法は本に記された過去の出来事を演じる行為を《索引》として、本の中の「文字」を、つまり過去の人間の行動・仕草を書き換える魔法である。ゆえに直接操ることができるのは「人間の仕草・行動」だけであり、他の魔法大系のように自然を操ることはできないし、人間の心を操ることはできない(魔法使いに魔法を使わせて間接的に自然を操作したり、行動を介して間接的に心の動きを誘導することはできる)。
強い再演魔法で大きく歴史を変えると、時間の流れは枝分かれして、新しい時間軸が生じる。本に記述されているのは「術者のいる時間軸」の歴史だけであり、他の時間軸の歴史は記述されていないため、他の時間軸に属する人間を再演魔法で観測・操作することはできない。
未来から投射される攻撃を防ぐ方法は魔法消去くらいしか無いため、非常に恐れられている。
魔法使いへの直接干渉に特化した唯一の魔法大系。60年前に一つの国家に荷担した再演大系は「連合」の魔法使いたちを操り戦争を行った。だがそれによってこの魔法を危険視した「連合」によってその痕跡の全てを徹底的に消された。
魔法消去者を除くすべての人間にとって天敵と呼べる魔法であり、多くの悲劇を生み出してきた。再演魔導士自身さえその例外ではなく、未来からの再演魔法に操られ、苦しめられてきた。
索引型魔法とされているが、実際はカオティックファクターの一種。舞花によって召喚された「真なる神」が、「再演の神」として顕現したことでその影響力を格段に高める。それによって唯一の弱点であった魔法消去を克服し、ほぼ無敵の魔法となる。
運命の化身
概念魔術
1.望んだ結果以外の未来を破壊することで、望みの結果を世界に押し付ける魔術。その際再演の神の修正によって砕いた未来のかけらである賢者の石が発生する。正確には未来が破壊されているわけではなく、元の時間の流れから枝分かれして分離しているだけらしい。
いかなる望みも叶える万能な魔法だが、「結果」に至るまでの「過程」は保障されないし予測できない。「生き延びたい」と望めば、敵も味方も犠牲にして生き残る、ということもありうる。
応用として、「術者が攻撃された未来」を破壊し、「術者が攻撃を『偶然』回避した未来」を選択することで、攻撃を無効化する「不可侵聖域」という防御魔法もある。
2.光輝ある破滅 「こうしてこうなった」という結果を人間に押し付けて無理やり実行させる魔術。
結果が先に決まっているため、普通であれば実行不可能なことをやらせることもできるが、引き換えに対象の生命が削られる。
再演魔術師はこれによって戦場に光輝ある英雄を生み出し、そして生命を奪って破滅させてきた。故に光輝ある破滅と呼ばれる。
3.戒律石版 世界を示す「本」に無理やり偽ページを挿入することで、一定時間・一定範囲内の人間に偽ページに書かれた行動を押し付け操る魔術。
本来再演魔術は過去を演ずる行為から《索引》を引き出すという手順を踏まなければならないため、一度に操れる人数は限られており、操りきれない人数での飽和攻撃には弱いが、戒律石版はその手順をすっ飛ばして、大量の魔術を一括行使し、大量の人間を操ることができる。
神音大系(しんおんたいけい)
聖痕大系(せいこんたいけい)
宣名大系(せんめいたいけい)
他の索引型魔法のように物を直接実体化させるのではなく、「対象物を他の物に変える」という形でしか魔法が発動しないため、他の索引型魔法と違い何かを生み出すには他の何かを犠牲にしなければならない。これらの理由から(揶揄をこめて)“亜”索引型と呼ばれている。ただし化身の性質上、通常の魔法では不可能とされる人体への直接干渉が例外的に可能であり、殺傷力は高い。また奇跡の自由度が非常に高く、通常の魔法では不可能とされる抽象概念を扱うことさえできる。
貪欲の化身(アバター・ヴォラスティ)(アバター・アブリス)
魔法的転移(テレポート)
ものを魔法の転移門に変えて、空間をつなげる魔法。転移門はふたつ一組であり、通過した物体をもう一方の転移門へと瞬間移動させる。
転移門の索引に加えて、場所を示す索引も必要となる。
天盟大系(てんめいたいけい)
ことばは様々な意味をもつため、抽象概念と同じく「観測によるゆれ」の影響を受けやすく、イメージを固定するのが難しい。そのため、イメージを固定するために、しりとりで言う言葉の現物を指差しながらしりとりを進める必要がある。そのため「愛」や「理解」のような意味の広い抽象概念をしりとりにつなぐのは非常に難しい。また、天盟大系魔道士の母国語は常に観測されてゆれやすいので、彼らにとっての異国語である日本語でしりとりを進めることが多い。
しりとりに使う現物を個人で所有するよりも集団で共有した方が効率がよいため、魔法世界としては例外的に早期から社会化が進んでいた。しかしそれゆえに集団心理に惑わされて戦乱の絶えない世界になってしまい、かつては「三十六宮」の一つという高位世界だったのにもかかわらず、現在は凋落した。集団戦法の祖というべき魔法大系であり、集団を利用した分業魔法や多重発動といった高度技術が発達している。
インマラホテプ
カオティックファクター
《地獄》にのみ存在する、魔力型にも索引型にも分類できない魔法の総称。自然秩序の歪みをもたないはずの《地獄》に存在する魔法のため、「魔法は自然秩序の歪みに基づくものである」という魔法の原則を揺るがす存在であり、混沌因子(カオティックファクター)と呼ばれている。なぜか地獄由来の神話・伝説を具現化したような魔法が多い。
実はカオティックファクターも自然秩序の歪みに基づくものであり、観測者たる人間が信仰によって地獄の安定した秩序を歪ませることで生まれたが、救済のイメージを一つに定められなかったために、歪んだ自然秩序/神/魔法大系が一つに選択されずに複数重ね合わせた状態で存在している。故に地獄は数ある魔法世界の中で唯一複数の魔法大系を持つ世界となっている。また魔力型にも索引型にも分類できない魔法なのは、カオティックファクターの性質をきめた《地獄》の人間たちに、魔法知識が欠如していた故である。
再演の神が選択されたことで、再演大系が強まり、他の魔法は魔法消去を含めて弱体化・消滅しつつある。その後増幅器が設置されたことで再演大系は更にその力を増し、地獄を征服しようとする協会の軍勢を使い自分たちに抗う者を一掃しようとしたが、きずなが「運命の化身」によってその軍勢を返り討ちにしたことで魔法消去の復活を招いてしまう。人間を救うために過去を改変し続ける未来の再演魔導師達は、この一件を機に奇蹟を拒絶する人間に対して憎悪を抱いてしまい、「人間を救う秩序」としての純粋性を失ってしまう。そして魔法消去は一度自然秩序を再演大系に固定されながら復活した反動で未来に逆流し、再演世界を一気に瓦解させていくことになる。
魔獣使い(アモン)
万物の根源、原初の霧とされる気を発生させ、そこからあらゆる自然物・自然現象を生み出すことができる。動物・水・木材など人間が生きるのに必要なものはなんでもそろえられるので、生活力は高い。魔法消去にはかなり弱い魔法であり、使い手たちは《地獄》にあって《悪鬼》社会とはかなり距離を置いた暮らしをしている。
防御魔法や自己再生魔法を得意としており、防御面は非常に優秀だが、生み出せるものが自然物に限られるため、火力そのものはいまいちであり、強力な防御魔法をもつ魔法使いは倒せない。
気はあらゆる自然物の「設計図」を内包しているため、術者がよく知らないものでも生み出すことができる。
到達の化身
蛇の女王(アスタロト)
術者の体から魔法卵を切り離し、そこから万物とあらゆる現象を生み出すことができる魔法。魔獣使いがあらゆる自然現象を作り出す魔法であるのに対し、蛇の女王の魔法卵は自然ならぬ奇跡(物理法則に従わない超常現象)さえも作り出すことができる。その成り立ちと機能から、魔獣使いの進化系として扱われた。自分の体のパーツを作って置き換えることで、治療や体の強化・改造も可能。また「万物を生み出す」という特性から、「ものを生み出す」魔法である索引型魔法の到達点ともされ、「ありとあらゆるものという概念」の索引がもしあるなら、魔法卵が生み出されるのではないかとも言われている。魔法卵はあらゆるものに分化する世界の万能細胞、世界卵とも言われている。
弱点は世界卵が術者の体の一部であること。そのため使えば使うほど術者の肉体が削られる。また奇跡をつくりだせるということは、逆に言うと世界卵によって生み出されたものは魔法消去の影響を受けやすいということでもある。舞花はこの魔法で自身を治療する際、地球の物理法則からはみ出したパーツを作ってしまったため、魔法消去者に観測されると破壊される体になってしまった。
本当に万物を生み出せる魔法であり、原理的には(大系の枠を超えて)神人遺物を生み出すことさえ可能である。ただし、魔法卵が「設計図」を内包しているわけではないので、「設計図」は自力で用意する必要がある。そのため舞花は、公館や協会と接触して「設計図」を得るまで、魔法を使いこなすことができなかった。
輪廻の化身
破壊(アバドン)
再演大系
カオティックファクターであるにもかかわらず索引型としての法則性を持つのは、地球人の信仰ではなく、地球に住み着いた神音世界人の信仰によって生まれたためである。
「人を救う秩序」ではあるが、再演秩序は何をもって人が救われるかを真に理解しているわけではないため、機械的に人口を増やすことをもって「救い」と定義している。そのためその救いは功利主義的なものであり、大多数を救う代わりに少数に犠牲を強いる。
また「人口を増やす」という性質が再演秩序の中に組み込まれているために、人間が絶滅すると再演秩序は回復不能の矛盾をきたしてしまう。この矛盾を修正するために、再演の神は賢者の石を誘導装置にして人間が絶滅した時間軸を他の時間軸に無理やり合流させてしまう。これは同時に再演魔法によって生じた時間分岐という「時間構造の歪み」を軽減する効果ももたらす。そして再演の神も他の神と同じく「歪みを修正する」という役割を持つことから、人類絶滅(とそれに伴う時間軸の合流)は再演の神にとってある意味「都合の良い」状態となってしまう。結果的に再演の神は「人口を増やそう」とする性質と同時に、「人類を絶滅させよう」とする相反する性質を併せ持ってしまっている。故に再演世界が成立するということは、単に操られるというだけでなく、絶滅の運命が確定してしまうことでもある。
魔法消去
いかなる魔法にも効果があるが、魔法は瞬時に消えるわけではなく、時間経過とともに徐々に減衰・消滅していく、持続的な現象である。そのため消しきれずに不完全ながら魔法が効果を発揮する場合もある。またどんな魔法にも一律に働くわけではなく、出力が小さく、自然秩序から遠い魔法であるほど消しやすい(短時間で消せる)し、その出力が大きく、自然秩序に近い現象であるほど消しにくい(消すのに時間がかかる)。そのため大出力で攻める、あるいは魔法を自然秩序に近づけるというのが、魔法使いの対悪鬼戦の基本である。また、「魔法を制御する魔法」は特に自然秩序から遠いため、魔法消去環境においては魔法はまず制御を失い精度を落とす。魔法を消しきれなかった場合でも魔法消去者は魔法を知覚出来ず、魔法の向こう側を見通すこともできないので、魔法が存在する場所は知覚の空白となり、あたかも光っているかのように錯覚する。魔法消去者が魔法を知覚できないとはいっても観測の力であることには変わりなく、より多くの感覚器官でより強く魔法を感覚するほど消去は早くなるし、逆に再帰迷宮のように五感でとらえられない魔法は消去できない。
地獄に存在する神の中でも「観測した魔法を消去する」という極めて単純かつ強大な力を誇っており、特にチャンネルが合っていなくても勝手に魔法消去という強すぎる電波を受信するため地獄の住民はそのほとんどが魔法消去の悪鬼となる。普段から意識して魔法消去を行なっている者ほどその影響を強く受けるようである。
再演の神が選択されたことでその影響を弱め、消滅しつつある。しかし仁は「意識的にチャンネルを合わせる」ことでより強力な魔法消去能力を手に入れている。その効力は消去を停止してなお未来からの遡行消去で魔法が破壊できるほど。また、未来に自分が使う魔法消去の魔炎を補足することで、適切なタイミングで消去を発動することができる。チャンネルが合っていない普通の魔法消去で上がる魔炎はオレンジ色の光を発するのに対し、仁の強化された魔法消去による魔炎は金色に発光する。
一般的な悪鬼は常に魔法消去を発動させているのに対し、自身の意志でいつでも魔法消去を停止・使用のスイッチのON・OFFが可能な悪鬼。
それぞれの魔法に存在する「最も魔法消去の影響をうけやすいタイミング」を測って効率的に魔法を無効化したり、対象の魔法使いに気づかれずに忍び寄り不意を打ったところで魔法消去を行うことが可能。これらの特徴から通常の悪鬼以上に恐れられている。魔法消去を停止している真なる悪鬼は魔法使いから見たとき同じ魔法使いに見え、魔法消去を発動させている間は真なる悪鬼にも魔法は観測できず、どの程度魔法を破壊できたかわからないという弱点が存在する。また、魔法消去を停止している間は通常の悪鬼と違い魔法の恩恵を受けることができる(ただし、しばらく効果を発揮し続ける類の魔法は魔法消去を発動した瞬間に破壊されるため、重篤な傷の治療魔法をかけられている間などは事実上魔法消去を封じられる)。
「先祖返りの悪鬼」とも言われ、過去にはもっと多くの真なる悪鬼が居たことを仄めかされているが、作中に登場するのは武原仁ひとりのみ。魔法が見えない通常の悪鬼とは違い、奇跡の存在を知っているのに関わらずそれを拒み、挑むことから古来の魔法使いから「真なる悪鬼」と恐れられてきた。「神人」たちからは再演大系の神に唯一対抗できる存在として(再演干渉をシャットアウトでき、かつ魔法による転送・支援を受けられるため)《増幅器》への刺客に想定されていた。
一般的な悪鬼は常に魔法消去を発動させているのに対し、自身の意志でいつでも魔法消去を停止・使用のスイッチのON・OFFが可能な悪鬼。
それぞれの魔法に存在する「最も魔法消去の影響をうけやすいタイミング」を測って効率的に魔法を無効化したり、対象の魔法使いに気づかれずに忍び寄り不意を打ったところで魔法消去を行うことが可能。これらの特徴から通常の悪鬼以上に恐れられている。魔法消去を停止している真なる悪鬼は魔法使いから見たとき同じ魔法使いに見え、魔法消去を発動させている間は真なる悪鬼にも魔法は観測できず、どの程度魔法を破壊できたかわからないという弱点が存在する。また、魔法消去を停止している間は通常の悪鬼と違い魔法の恩恵を受けることができる(ただし、しばらく効果を発揮し続ける類の魔法は魔法消去を発動した瞬間に破壊されるため、重篤な傷の治療魔法をかけられている間などは事実上魔法消去を封じられる)。
「先祖返りの悪鬼」とも言われ、過去にはもっと多くの真なる悪鬼が居たことを仄めかされているが、作中に登場するのは武原仁ひとりのみ。魔法が見えない通常の悪鬼とは違い、奇跡の存在を知っているのに関わらずそれを拒み、挑むことから古来の魔法使いから「真なる悪鬼」と恐れられてきた。「神人」たちからは再演大系の神に唯一対抗できる存在として(再演干渉をシャットアウトでき、かつ魔法による転送・支援を受けられるため)《増幅器》への刺客に想定されていた。
一般的な悪鬼は常に魔法消去を発動させているのに対し、自身の意志でいつでも魔法消去を停止・使用のスイッチのON・OFFが可能な悪鬼。
それぞれの魔法に存在する「最も魔法消去の影響をうけやすいタイミング」を測って効率的に魔法を無効化したり、対象の魔法使いに気づかれずに忍び寄り不意を打ったところで魔法消去を行うことが可能。これらの特徴から通常の悪鬼以上に恐れられている。魔法消去を停止している真なる悪鬼は魔法使いから見たとき同じ魔法使いに見え、魔法消去を発動させている間は真なる悪鬼にも魔法は観測できず、どの程度魔法を破壊できたかわからないという弱点が存在する。また、魔法消去を停止している間は通常の悪鬼と違い魔法の恩恵を受けることができる(ただし、しばらく効果を発揮し続ける類の魔法は魔法消去を発動した瞬間に破壊されるため、重篤な傷の治療魔法をかけられている間などは事実上魔法消去を封じられる)。
「先祖返りの悪鬼」とも言われ、過去にはもっと多くの真なる悪鬼が居たことを仄めかされているが、作中に登場するのは武原仁ひとりのみ。魔法が見えない通常の悪鬼とは違い、奇跡の存在を知っているのに関わらずそれを拒み、挑むことから古来の魔法使いから「真なる悪鬼」と恐れられてきた。「神人」たちからは再演大系の神に唯一対抗できる存在として(再演干渉をシャットアウトでき、かつ魔法による転送・支援を受けられるため)《増幅器》への刺客に想定されていた。
一般的な悪鬼は常に魔法消去を発動させているのに対し、自身の意志でいつでも魔法消去を停止・使用のスイッチのON・OFFが可能な悪鬼。
それぞれの魔法に存在する「最も魔法消去の影響をうけやすいタイミング」を測って効率的に魔法を無効化したり、対象の魔法使いに気づかれずに忍び寄り不意を打ったところで魔法消去を行うことが可能。これらの特徴から通常の悪鬼以上に恐れられている。魔法消去を停止している真なる悪鬼は魔法使いから見たとき同じ魔法使いに見え、魔法消去を発動させている間は真なる悪鬼にも魔法は観測できず、どの程度魔法を破壊できたかわからないという弱点が存在する。また、魔法消去を停止している間は通常の悪鬼と違い魔法の恩恵を受けることができる(ただし、しばらく効果を発揮し続ける類の魔法は魔法消去を発動した瞬間に破壊されるため、重篤な傷の治療魔法をかけられている間などは事実上魔法消去を封じられる)。
「先祖返りの悪鬼」とも言われ、過去にはもっと多くの真なる悪鬼が居たことを仄めかされているが、作中に登場するのは武原仁ひとりのみ。魔法が見えない通常の悪鬼とは違い、奇跡の存在を知っているのに関わらずそれを拒み、挑むことから古来の魔法使いから「真なる悪鬼」と恐れられてきた。「神人」たちからは再演大系の神に唯一対抗できる存在として(再演干渉をシャットアウトでき、かつ魔法による転送・支援を受けられるため)《増幅器》への刺客に想定されていた。
魔法消去は直接観測した場合のみならず、通信機器や記録媒体によって間接的に観測した場合も発動する。これらは間接消去とよばれ、魔法使いの戦闘で利用されることもある。また記録媒体を後で観測した場合や、螺旋の化身のように魔法が大規模で未来にまで影響を及ぼす場合、時間を超えて未来の観測者から魔法消去が発動することがある。これを遡行消去と呼ぶ。その場合、記録した時点・魔法を発動しようとした時点で魔法が消去され、魔炎が上がる。とくに後者は記録媒体も魔法消去者もいない状況で発生しうるため予測しづらい。ただし後述の遡行抵抗に妨げられるため、遡行消去の効果はよほどのことが無い限り、限定的である。
魔法消去は直接観測した場合のみならず、通信機器や記録媒体によって間接的に観測した場合も発動する。これらは間接消去とよばれ、魔法使いの戦闘で利用されることもある。また記録媒体を後で観測した場合や、螺旋の化身のように魔法が大規模で未来にまで影響を及ぼす場合、時間を超えて未来の観測者から魔法消去が発動することがある。これを遡行消去と呼ぶ。その場合、記録した時点・魔法を発動しようとした時点で魔法が消去され、魔炎が上がる。とくに後者は記録媒体も魔法消去者もいない状況で発生しうるため予測しづらい。ただし後述の遡行抵抗に妨げられるため、遡行消去の効果はよほどのことが無い限り、限定的である。
魔法消去は直接観測した場合のみならず、通信機器や記録媒体によって間接的に観測した場合も発動する。これらは間接消去とよばれ、魔法使いの戦闘で利用されることもある。また記録媒体を後で観測した場合や、螺旋の化身のように魔法が大規模で未来にまで影響を及ぼす場合、時間を超えて未来の観測者から魔法消去が発動することがある。これを遡行消去と呼ぶ。その場合、記録した時点・魔法を発動しようとした時点で魔法が消去され、魔炎が上がる。とくに後者は記録媒体も魔法消去者もいない状況で発生しうるため予測しづらい。ただし後述の遡行抵抗に妨げられるため、遡行消去の効果はよほどのことが無い限り、限定的である。
魔法消去は直接観測した場合のみならず、通信機器や記録媒体によって間接的に観測した場合も発動する。これらは間接消去とよばれ、魔法使いの戦闘で利用されることもある。また記録媒体を後で観測した場合や、螺旋の化身のように魔法が大規模で未来にまで影響を及ぼす場合、時間を超えて未来の観測者から魔法消去が発動することがある。これを遡行消去と呼ぶ。その場合、記録した時点・魔法を発動しようとした時点で魔法が消去され、魔炎が上がる。とくに後者は記録媒体も魔法消去者もいない状況で発生しうるため予測しづらい。ただし後述の遡行抵抗に妨げられるため、遡行消去の効果はよほどのことが無い限り、限定的である。
魔法消去は「異世界の歪んだ秩序」「この世界の秩序に従わないもの・現象」をこの世界から引き剥がす力であるため、「この世界(地獄)の秩序に従うもの・現象」は引き剥がすことができない。そのため、魔法で引きおこされる事象に「地獄の自然秩序に従うもの」が混ざっていると、魔法を完全には剥がせなくなってしまう。「魔法消去は時間を超えるが、結果はひっくり返せず、因果の縛りは受ける」とも表現される。
例えば魔法でつけられた傷は「この世界の秩序に従うもの」であるため、魔法消去で消すことはできない。非常に強力な魔法消去であれば遡行抵抗を突破できるが、その場合でも「傷が消える」のではなく、「時間を遡って、傷の原因となった魔法が消える」。
また、「この世界の秩序に従う物体」を魔法で動かしている場合、途中で魔法消去を受けても物体は消えないし慣性は残る。物体も、慣性も、「この世界の秩序に従うもの」だからである。
この遡行抵抗を利用し、魔法に地獄の物理現象を挟み込むことで、魔法に魔法消去への耐性を持たせることができる。例えば円環大系が「魔法消去に強い」と言われるのは、人工稲妻が「電位差による放電現象」という「地獄の物理現象」を挟み込んでいるため、遡行抵抗の恩恵を受けられるからである。
魔法消去は「異世界の歪んだ秩序」「この世界の秩序に従わないもの・現象」をこの世界から引き剥がす力であるため、「この世界(地獄)の秩序に従うもの・現象」は引き剥がすことができない。そのため、魔法で引きおこされる事象に「地獄の自然秩序に従うもの」が混ざっていると、魔法を完全には剥がせなくなってしまう。「魔法消去は時間を超えるが、結果はひっくり返せず、因果の縛りは受ける」とも表現される。
例えば魔法でつけられた傷は「この世界の秩序に従うもの」であるため、魔法消去で消すことはできない。非常に強力な魔法消去であれば遡行抵抗を突破できるが、その場合でも「傷が消える」のではなく、「時間を遡って、傷の原因となった魔法が消える」。
また、「この世界の秩序に従う物体」を魔法で動かしている場合、途中で魔法消去を受けても物体は消えないし慣性は残る。物体も、慣性も、「この世界の秩序に従うもの」だからである。
この遡行抵抗を利用し、魔法に地獄の物理現象を挟み込むことで、魔法に魔法消去への耐性を持たせることができる。例えば円環大系が「魔法消去に強い」と言われるのは、人工稲妻が「電位差による放電現象」という「地獄の物理現象」を挟み込んでいるため、遡行抵抗の恩恵を受けられるからである。
魔法消去は「異世界の歪んだ秩序」「この世界の秩序に従わないもの・現象」をこの世界から引き剥がす力であるため、「この世界(地獄)の秩序に従うもの・現象」は引き剥がすことができない。そのため、魔法で引きおこされる事象に「地獄の自然秩序に従うもの」が混ざっていると、魔法を完全には剥がせなくなってしまう。「魔法消去は時間を超えるが、結果はひっくり返せず、因果の縛りは受ける」とも表現される。
例えば魔法でつけられた傷は「この世界の秩序に従うもの」であるため、魔法消去で消すことはできない。非常に強力な魔法消去であれば遡行抵抗を突破できるが、その場合でも「傷が消える」のではなく、「時間を遡って、傷の原因となった魔法が消える」。
また、「この世界の秩序に従う物体」を魔法で動かしている場合、途中で魔法消去を受けても物体は消えないし慣性は残る。物体も、慣性も、「この世界の秩序に従うもの」だからである。
この遡行抵抗を利用し、魔法に地獄の物理現象を挟み込むことで、魔法に魔法消去への耐性を持たせることができる。例えば円環大系が「魔法消去に強い」と言われるのは、人工稲妻が「電位差による放電現象」という「地獄の物理現象」を挟み込んでいるため、遡行抵抗の恩恵を受けられるからである。
魔法消去は「異世界の歪んだ秩序」「この世界の秩序に従わないもの・現象」をこの世界から引き剥がす力であるため、「この世界(地獄)の秩序に従うもの・現象」は引き剥がすことができない。そのため、魔法で引きおこされる事象に「地獄の自然秩序に従うもの」が混ざっていると、魔法を完全には剥がせなくなってしまう。「魔法消去は時間を超えるが、結果はひっくり返せず、因果の縛りは受ける」とも表現される。
例えば魔法でつけられた傷は「この世界の秩序に従うもの」であるため、魔法消去で消すことはできない。非常に強力な魔法消去であれば遡行抵抗を突破できるが、その場合でも「傷が消える」のではなく、「時間を遡って、傷の原因となった魔法が消える」。
また、「この世界の秩序に従う物体」を魔法で動かしている場合、途中で魔法消去を受けても物体は消えないし慣性は残る。物体も、慣性も、「この世界の秩序に従うもの」だからである。
この遡行抵抗を利用し、魔法に地獄の物理現象を挟み込むことで、魔法に魔法消去への耐性を持たせることができる。例えば円環大系が「魔法消去に強い」と言われるのは、人工稲妻が「電位差による放電現象」という「地獄の物理現象」を挟み込んでいるため、遡行抵抗の恩恵を受けられるからである。
アイテム一覧
本編内で鍵となる重要物や魔法が込められている物等を記載。
神人遺物
神人とは二千年以上前に姿を消した幻の魔法大系とその使い手の事であり、彼らが残した魔法産物は魔法消去されても観測が途切れると自然回復する上、大変高度な特殊能力を持つ。これを神人遺物と呼ぶ。神人は様々な世界にその足跡を残しているが、なぜか《地獄》には特別多くの神人遺物が遺されており、この点でも地獄は重要視されている。
神人の正体は再演大系の唯一魔導師であり、神人遺物は歴史改変によって生じる賢者の石を材料として作成されている。《地獄》に多くの足跡が残っているのは、単純に再演大系が《地獄》で生まれた魔法だからである。
本来魔法は魔法使いあってのものだが、神人遺物は魔法使い無しで魔法を発生させることができる。
賢者の石
その正体は再演大系の「神」による修正力そのものであり、再演魔法によって生じた時間分岐を合流させ、時間構造の歪みを修正する役割を持つ。神人遺物の自然回復や特殊能力も、この神の力を利用したものである。
厳密には実体を持たないものだが、神の力が無尽であるために魔法消去でも消しきれず、魔法使いのみならず悪鬼からも光背と同じく「白い何か」として実体があるように見える。
門(ゲート)
なお、地球上のゲートに関しては例外であり、協会が使えるのは東京地下にある物のみと言われている。また、アメリカにあるゲートは神音騎士団が、ヨーロッパにあるものは「連合」が管理をしている。
剣(スパーダ)
仁が渡されたものは形状変化以外に特殊能力は無い。通常は約八十センチ位の鉄の棒のように見えるが、悪鬼に観測される事で刃渡り一メートル近い本体を現す。
実は未来に降臨する再演大系の神に対抗するために神人たちが用意した仕掛けのひとつで、「最後の魔法使い」によって増幅器に対抗する刺客が最も適した武器を手にすることができるように仕組まれていたもの。「神人遺物には剣型が多い」「ひたすら頑丈」という特徴はこのためのものである。仁の手に渡ったものも神人たちの手引きによるもので、真なる悪鬼にしか使いこなすことができず、他の神人遺物と比べても耐久度が高く、増幅器戦に挑む刺客のために用意された正真正銘仁ひとりのための武器だった。
幻影城
歴史改編を防ぐ力をもつ賢者の石を材料としているため、未来からの再演干渉をある程度防ぐことができる。かつて最初の再演魔導士が未来からの干渉を緩和するために作成した。だが未来からの干渉を受けたことで彼女は幻影城の鍵を作らされた。
地獄とわずかに外れた「この世のどこでもない場所」に存在しており、再演大系魔導士か、幻影城の鍵を持つ者ならば地獄のどこからでも入れるし、どこにでも出られるが、それ以外の者が出入りすることはできない。
魔法具
魔法が込められているアイテム。ここでは便宜上「魔法具」と呼ぶ。通常の魔法と同様悪鬼に観測されると中に込められている魔法が消去されたり品物自体が破壊されたりする
死の翼
魔法使いの弾丸(ウィザードブレッド)
既刊一覧
- 長谷敏司(著) / 深遊(イラスト) 『円環少女』 角川書店〈角川スニーカー文庫〉、全13巻
- 「バベル再臨」2005年8月31日発売、ISBN 4-04-426703-0
- 「煉獄の虚神(上)」2006年2月28日発売、ISBN 4-04-426704-9
- 「煉獄の虚神(下)」2006年3月31日発売、ISBN 4-04-426705-7
- 「よるべなき鉄槌」2006年10月31日発売、ISBN 4-04-426706-5
- 「魔導師たちの迷宮」2007年5月1日発売、ISBN 978-4-04-426707-0
- 「太陽がくだけるとき」2007年11月1日発売、ISBN 978-4-04-426708-7
- 「夢のように、夜明けのように」2008年3月1日発売、ISBN 978-4-04-426709-4
- 「裏切りの天秤」2008年6月1日発売、ISBN 978-4-04-426710-0
- 「公館陥落」2008年12月1日発売、ISBN 978-4-04-426711-7
- 「運命の螺旋」2009年7月1日発売、ISBN 978-4-04-426712-4
- 「新世界の門」2010年2月1日発売、ISBN 978-4-04-426713-1
- 「真なる悪鬼」2010年8月31日発売、ISBN 978-4-04-426714-8
- 「荒れ野の楽園」2011年3月1日発売、ISBN 978-4-04-426715-5