冬嵐記
以下はWikipediaより引用
要約
『冬嵐記』(とうらんき)は、小説家「槐」(えんじゅ)が『小説家になろう』において2022年3月から連載している歴史小説。「福島勝千代一代記」と銘打たれたシリーズ作品の第一部に当たり、第一章に該当する部分が、大幅な加筆の上『新紀元社』から2024年2月に発行された。
作品概要
日本の戦国時代中盤、西暦1520年頃の今川氏家臣の『福島家』(くしまけ)を舞台とした歴史転生小説。
現代人である四十路の主人公が、史実では後北条氏の武将北条綱成の幼児期に転生し、当時の複雑な遠江と駿府、信濃情勢に翻弄されながら厳しい幼児期を生き抜いていく。単行本の紹介文は「戦国時代に迷い込んでしまった現代人による、ヘルモード・サバイバルから始まる戦国成長物語」。
主人公である勝千代は転生前は元理科教師で、「高校で世界史を選択したので、この時代の知識は中学生レベル、自身の事も、今いる地域の状況も全くわかりません」。福島家中の親族同士の争い、さらには主家である今川家中での勢力争いに巻き込まれていく勝千代は、やがて自らの特技と知性、多少の現代知識で後継者としての地位を築いていく。
登場人物
年齢は「冬嵐記」中の1519~20年で推定。原則として作中での呼び名を見出しとし、官名、幼名などを本文に入れる。
福島家
- 主人公。御屋形様(今川氏親)の側室となった、福島正成の長女(一姫様)の息子で、産まれてすぐに福島家の跡継ぎとして養子に出される。幼少時からの虐待により身体は小さく、あちこちに傷跡と、腕と肩に大きなやけどの跡が残るが、御屋形様の面影を如実に受け継いでおり、「同じ鋳型を作って作り上げた、年代の違う双子」と言うくらいに似ている。三半規管が弱く馬酔いする。
- 渋沢など知っているものからは、一姫様の面影が確かにあると思われている。正装は紫紺の直垂に鮮やかな青の胸紐。作中で数え年六歳、つまり四歳児。中の人は40代半ばの中学理科教師で、不慮の事故により勝千代の中に転生。30年以上習った書道が特技で、草書も篆書も問題なく読み書きできる。頭髪が寂しい人だった疑惑有り。受験では世界史を選択したため、日本史については中学教科書レベルのおぼろげな知識しかない。史実では福島正成の子とされ、後北条家の武将、北条綱成として大活躍するが……。
「よいのだ、お勝が無事であれば、それだけでワシは」
- 上総介。福島家の当主。「ぱっちりした大きな二重、鼻筋の通ったなかなかの男前。ふさふさとした頭髪」の持ち主。弟が4人いる。実際には勝千代の祖父だが、養子として勝千代を貰っているので父上。三十代半ば。鬼福島と呼ばれるほどの稀代の武士で、身体も声もでかい。パワーこそ力の脳筋だが頭の回転は速く、いわゆる武力特化型。勝千代への愛情は人一倍深い。居城は掛川下土方にある高天神城。
- 正妻の養勝院は一の姫を産んだ後に死去。朝倉家(越前の方ではなく伊勢家家臣)の人だった。側室三人も、勝千代が産まれる2年ほど前に家督争いが高じて「もみ消せないようなやらかし」を起こし、全員福島家からは放逐された。当時産まれていた庶子三人も、遠方の親族に養子として出されている。
- 正成の庶子。非常に活発な子供らしい子供。正成に生き写しの大柄な体格と明るい笑顔の持ち主。丸一歳は年下にも関わらず勝千代より背が高い。史実の北条綱房か。
- 正成の側室で幸松の母。下にもう一人娘(幸)がいる。この時代の女性としてはがっちりした肩幅と二木や土井よりも高そうな背丈で、ちょっと怖い感じの美女。やんちゃ坊主である息子幸松への躾は大変厳しい。実家は福島家の馬周り衆を勤める家柄。
- 正成の庶子。年齢差は不明だが少し年上か。甘やかされたバカボンで、母に言われる通り自分こそ福島家の嫡男だと思っている。後に兵庫介と共に福島家北棟に乗り込み、刀で勝千代に襲いかかった挙げ句、早田に右手首を切り飛ばされる。その後の消息は不明だが、寺に行ったとも養子に出したとも幽閉したとも言われていない。
- 正成の側室で千代丸の母。勝千代を手ひどく虐待する。後に正成危篤との誤報に惑わされ、兵庫介と共に福島家北棟に乗り込み、処罰として福島家から追放される。出入り商人である宗田屋の出身。
- 志郎衛門、正成の弟(次男)。分家を立て、駿府で文官として仕える。尋問や監査など今川家中の内務専門。眉間のくっきりした縦皺には筆が挟める位。容貌は正成とはあまり似ていないが、怒ったときの雰囲気はそっくり。
「おお、勝千代殿! この誠九郎が勝千代殿のぶんも捕まえてさしあげますからな!」
- 氏は川久保(養子)。正成の弟(三男)で、源九郎の双子の兄。正成同様の巨躯の持ち主。三十歳を少し過ぎたくらいで奥二重の切れ長の目をしている。片腕にやけどの跡がある。もじゃ髪。
源九郎
- 髪の毛のない方。正成の弟(四男)で、柳原家に婿養子に入った。顔の上部三分の一と側頭部に酷い火傷の後がある。誠九郎、源九郎二人のやけど跡は、幼い頃に寝所に油を掛けられ殺されかかった勝千代を庇って負ったもの。
- 兵庫介。福島正成の弟(五男)で、勝千代の叔父。高天神城の城代を勤める。正成が国境線防衛に走り回って不在が多いのを良いことに勝千代を虐待していた。
- パパ正成危篤との誤報に惑わされ、当主とその嫡男のみが立ち入る事を許される福島家の北棟に分家一族を率いて乗り込むが、田所と渋沢配下の兵達に制圧されさっさと逃げ帰る。後に今川館からの口出しで、孫に当たる時丸の家老職に正式に着任するが、福島家への影響力は大幅に減少した。
- 松原殿とも呼ばれる。兵庫介の娘で、御屋形様の側室の一人。時丸を産んでいる。
- 正成の庶子で氏は中村。越前朝倉家に養子に出された。6年前に10歳前後とあり、作中では15,6歳か。福島家中からあまり良い印象は持たれていない。曳馬城に潜入(?)し、福島家が松平と結託して謀反を企むという内容の文を奥平に送った
- 36歳 嫡子。現在の福島家当主。父上。
- 34歳 正成と同腹→分家して江坂家を建てた。
- 32歳 もじゃ髪のほう、継室腹。
- 32歳 髪のないほう。忠成と双子→柳原家に婿養子。
- 32歳 元服まで庶子だったが、後に正成父の最後の正室の子となる。
今川家
- 氏親、修理大夫。駿河今川家の第九代当主、駿河、遠江二カ国の守護。勝千代・彦丸兄弟とは、同じ鋳型の年長コピーというくらい容貌が似ている。祖父の代に失った遠江国を尾張守護の斯波氏から取り戻すなど優れた主君だったが、最近発作(脳卒中か)を起こし病床にある。
- 実子庶子を問わず子には冷淡で、感心はほとんど無く放置状態、娘達の婚姻先も母親の桃源院に任せきりだった。勝千代の双子の兄である彦丸が亡くなった衝撃で、初めて親としての情が沸き始め、それが余計に御台様をいらだたせている。
- 史実では伊勢盛定の娘・北川殿(桃源院)の息子で、伊勢宗瑞 (早雲) の甥。北条氏綱は父方の従兄弟にあたる。
氏親の息子達
- 御台様の子。勝千代の2歳上。1513年生まれ。史実の今川氏輝。
- 側室(正成の娘)の子で勝千代の双子の兄。御台様に養育されていたが、第一章で死亡。1515年生まれ。史実の彦五郎。【18-6感想】
- 彦丸の双子の弟。1515年生まれ。史実の北条綱成。【18-6感想】
- お江与(松原殿)の子。「彦丸様と同い年」なので1515年生まれ。教育係の僧侶が感心するほどに利発で優秀な子。恐らく史実の玄広恵探。
- 御台様の子、史実の今川義元。1519年生まれ。
- 御屋形様(氏親)の正妻。中御門家の出身。作中では嫡男の龍王丸と娘、まだ産まれたばかりの芳菊丸の母親。多分25歳くらい。史実の寿桂尼。
- 御屋形様の母親。「どう見ても四十代の美しい女性」。後に福島家の勢力を削ぎ、勝千代を陥れようとする陰謀の黒幕と判明する。史実では伊勢盛定の娘、宗瑞(北条早雲)の姉とされる。1450年代生まれといわれるので、物語中ですでに……70?!
- 勝千代の双子の兄、母親は福島正成の長女。御屋形様に生き写しの容姿。つまり勝千代も同じ鋳型の年少コピー。聡明で幸松にも優しかったが、1520年頃に死亡。後に鴆毒と言われる希少な毒物で毒殺された事、それが桃源院の陰謀によるものと判る。
- 御屋形様の庶子の一人で母はお江与。福島兵庫介の孫にあたる。彦丸/勝千代兄弟と同い年の産まれ。
朝比奈家
- やすよし。又太郎、備中守とも。遠江衆の重臣で掛川城主。さらっさらの見事なストレートヘアの持ち主。まだ20代前半だが、正室に中御門家(寿桂尼の実家)の娘を貰って今川家の外戚、準一門衆となっている。家中皆が「いいところに雇われている」シュッとした雰囲気を醸し出すお家柄。家の規模としては朝比奈家は福島家よりずっと大きい。後に正室が引き起こした事件を知り絶望するが、メフィストフェレス勝千代の説得()により翻心する。史実の朝比奈泰能。
- やすもち、泰以。泰能の叔父だがそれほど年は離れていない。曳馬城攻略において朝比奈軍の大将を勤める、普通の戦闘狂。止めねじが10本くらい無い状態が通常運転。ひょろりと線が細く、背の高い男。顔に大きな赤いあざがある。兵糧攻めに遭い、一日におにぎり一個の苦難を耐え忍んだ怒りを東三河の国人、牧野氏にぶつける。主君であり甥っ子の泰能のことを、とてもとてもかわいがっている。
- 史実の朝比奈泰以。弱冠15歳で家督を継いだ泰能を後見人として補佐し、1513年の斯波氏との戦いには甥の名代として朝比奈軍を率い参戦し、井伊直平らと戦っている。
- 泰能の正室で中御門宣秀の娘。派手好きで気の強い性格。京で東宮に言い寄るなど色々とやらかしたあげく、半ば放逐される形で下向し朝比奈家に嫁入りした。兄二人と共に朝比奈家の譜代家臣を押さえて執政を牛耳っている。
- 今川館からの指示に従い、勝千代を殺害するためうっかり少数で寒月様(※)の屋敷を襲撃(1回目)するが失敗し、寒月に厳しい叱責を受ける。この時点では寒月が居ることを知らなかったと主張。後に本願寺派の僧侶鏡如にそそのかされ、朝比奈家の家臣に命じて約50名で襲撃(2回目)してしまう。朝敵となりかねない事件を知った泰能自らの手により、兄二人と共に処刑される。
「朝比奈に害を成すお方を、これ以上殿の御正室と認めるわけに参らぬ!」
- 五郎衛門。掛川の城代。ちょび髭。押しが今ひとつ弱く、お公家さんの正室やその兄弟に良いようにされてしまう。後に覚醒し、城代権限で正室と兄弟を地下牢に押し込めた。
- 朝比奈家の老臣。妻が泰能の乳母を務めた。篠山御前とは無関係。
- 朝比奈の配下で曳馬城近くの本陣の軍の大将となった。いかにも武辺者といった顔立ちの男。
福島家の配下・関係者
- 高天神城の下女で、幼少の勝千代をただ一人で親身に世話している。舌を切られていて話すことが出来ず、利き手の指も半分以上無い。しかし漢字交じりの文書を書き、懐刀で段蔵に襲いかかろうとするなど、かつてはある程度の地位ある武士の妻だった模様。勝千代が救出された後に病死。
- 後に佐吉の生き別れとなった母親だったことが判明する。父親は大和国の関を守る役目の武士だったが、恐らく伊賀の忍びに襲撃され殺された。
- 多賀。福島家に雇われている忍び(一の組頭)で、勝千代のお付きの人兼専用運搬係になる。見た目は武士では無く薬師風。薬草に詳しく、とても苦い薬湯を勝千代に毎日飲ませている。薬師としても一流で勝千代の体調によって薬湯の成分を変えるなど、とてもきめ細やか。ただし口直しの白湯は出してくれない。
- 常森。福島家に雇われている忍び衆の頭領。風魔一族ではあるが、雇用主によって立場を変え、親族と敵味方として対立することもなんとも思わないプロ集団の一人。当代の風魔小太郎と「小太郎」襲名を争って戦ったライバル。外出していない時は勝千代の居室の天井裏で正座している。
- 福島家に雇われている忍び衆の女性。多分まだ10歳そこそこ。
- 福島家に雇われている忍び。隠し里に居た子供の中で最年長。楓とは幼なじみ。
- 正成に付き従う、中年で体格のがっしりした忍び衆の一人。勝千代が隠し里にいた頃、外の仕事から干菓子を土産に持ち帰ったが、隻腕となっていた。
- 庄助、正成の側近。裏鹿城の雪崩で怪我をした。後に勝千代の側仕え兼専任給仕係となる。下級武士か。とにかく声がでかい。良く通る声の持ち主のため、もはや音響凶器。
- 八兵衛、正成の側近。裏鹿城の雪崩で肩を脱臼した。後に勝千代の側仕え兼着替係となる。とても正直者でちょっとした小芝居も苦手。
- 定正、小五郎とも。細目の男。正成の側近で福島家の上級武官の一人(勝千代不在の場合に代理として命令できる立場)。ただし陪臣のため、今川館の奥に上がれる身分では無い。渋沢と同位か。爬虫類顔とかひどいことを言われているが「息を吸うように悪意をばらまき、周囲を引っ掻き回して楽しむタイプ」なので仕方がないね。そのような性格を気にも掛けず、使い倒す正成に忠誠を尽くしている。破壊工作、謀略などが得意でそれなりに腕も立つが、極めてキレやすい性格。嫌味煽りを言わせれば第一級。
- 福島家の上級武官の一人。ジャニーズで大河ドラマの主役を張れるレベルの男前。国宝級の(勝千代比)美貌と低く渋い声の持ち主で、至る所で女衆に言い寄られている。ほぼ全身黒に近い墨色の装束を好んで身につける。実は特攻タイプ。
- 彦左衛門。福島家の家宰。狐顔。出入り商人と結託して横領しまくり、その金を兵庫介に横流ししていた。
- 福島家家臣の一人。幸松付きで戸田の配下にある。お葉殿の甥で幸松の従兄弟。まったく空気の読めない男。後に千代丸の手首をたたき切った咎で早田家の家督を追われ、下級武士として正成と共に前線へ。
- 栄三郎。福島家家臣の一人で勘定方の下役人。二木の家の近くに住んでいるらしい。八十貫(約一千万円に相当)の親の借金のかたに、妹のお糸を妾に出すように井坂から脅迫されていた。
- 柴垣の妹で福島家の女中。十代半ばの別嬪さん。勝千代の手配で南に嫁入り予定。
- 喜佐次郎。戸田の下っ端として収賄汚職等に手を染めていた。井坂家に婿養子として入ったにも関わらず、糸を妾にしようとして養家から追い出されそうになる。
- 渋沢家の武官。小柄な体格で見た目はかわいらしいベビーフェイスだが、誰にでも遠慮無く牙を剥く狂犬。元服してから戦場で過ごすことの方が多く、命じられた勝千代の「お守り」担当を不服に思い、妙蓮寺の住職を縛り上げた興如の一派を奥に引き入れてしまう。この件で渋沢から折檻され、福島家に「出向扱い」となった。
「お、お可愛らしくて大変よろしいかと存じます!」
- 勝千代の警備担当兼見張り役として、渋沢から使わされた谷の同僚。がっちりと大柄な体格。
- 江坂志郎衛門の配下で、ひょろりと背高で色白な、エノキ茸を連想させる男。拷問とか尋問とかのプロ。弟は福島家の組頭で、日焼けしたこげ茶エノキ。
「朝比奈家、謀反! 聞いておろう、影共ども! 疾く駿府へ伝達じゃ!!」
- 福島家の家臣、渋沢と同格の上級武官。馬術の名手でもあり、多分馬廻り衆を率いている。派手な赤染鎧で揃えた暴走集団のおじいちゃん。戦闘狂。孫の志沢が、叔父兵庫介に同調して福島家に乗り込んだあげくに切腹、家も取りつぶしとなった事を恥じて自らも所領を返上し切腹しようとするが、勝千代に誑か……引き留められて翻心。一族ごと勝千代のストーカー軍団となる。
- 御屋形様の側仕えでまだ若い男。逢坂家の分家。二木曰く「一度も戦場に立ったことの無い腰抜け」。逢坂老の孫。
- 福島家の家臣。正成が出陣したのをきっかけに新たに勝千代の側付きとなる。まだ少年の域を脱したばかりの年頃でやや小柄。人当たりの良いにこやかな好青年。前職は公事方ではあるが、正成の小姓として槍を振り回したこともある。世話焼きで、薬湯の後に白湯を出してくれる。弟がいる。
- 側付きの三浦の弟、まだ少年。
- 福島家の家臣で、正成が出陣したのをきっかけに新たに勝千代の側付きとなる。背が高く寡黙な男。影が薄い。
- 福島家の家老。少々テカリのある額の持ち主で、温和な中間管理職といった雰囲気の男。
- 福島家出入り商人。家宰の戸田と結着し、今川家から送られていた勝千代の養育費を全て着服していた。桂殿は宗田屋の出身。
- 堺の大商人。たまたま掛川城の城下町に訪れていて偽の疫病騒動に巻き込まれたことから、勝千代と知り合いになる。まだらに白い頭髪と日焼けした顔をした中年の男性。
- 日向屋の一番若い番頭。20代前半。息子が居ない日向屋の跡継ぎ候補として別の大店から引き抜かれたが、堺で聞き込んだ勝千代に関する「福島家のぽっと出の養子が我儘で商人を罪に落とした」という悪評をぺらぺらと吹聴し、田所弟に躾されたあげく福島家出入り禁止となる。
- 日向屋の副番頭。十年以上前から日向屋に仕え、「手代から副番頭まで手堅く勤め上げた」男だが、実は伊賀の忍び衆。福島家の庶長子(亀千代)が養子先の越前朝倉家から逃げ出し、曳馬城に居ることを勝千代に伝える。後に生き別れとなったヨネの息子だったことが判明する。(「身内が随分とお世話になりまして」)【33-3】
岡部家
- 今川家の武将で駿河衆。信濃国境にある城(裏鹿城を想定)の城代。岡部家では代々嫡男以外の子を駿府に置き、長ずれば文官あるいは女官として今川館へ出仕させる習いとなっていた。今川館の奥に仕えていた長女が彦丸に関する「何か」を目撃したため、次男を人質にされ、指示されるままに勝千代と父の殺害を試みたが失敗。雪崩に巻き込まれ、恐らく四肢切断の重傷を負う。後に家督を嫡男の一郎太に譲り引退。
- 高司郎。岡部親綱の側近で、家宰的な人物と思われる。親綱の正室の兄であり、一郎太、奈津達兄妹の伯父に当たる。渋めの男前で、やたらと低く良い声の持ち主。
- 岡部の嫡男。家族が駿府で人質に取られていることを勝千代に告げる。多分勝千代より6,7歳年長。後に父親の回復が見込めないことから岡部家の家督を継ぐ。
- 岡部の娘。御屋形様の側室の誰かに仕えていたが、彦丸・勝千代兄弟を狙う陰謀に巻き込まれて人攫いに姉と共に買われ、朝比奈の城下町で勝千代に拾われる。後に掛川城下の寒月の屋敷に仮住まいするが、そこで刺客に襲われ姉志乃が殺されたことからPTSD的な症状を発し、万事と共に実家の岡部家へと引き取られる。
- 岡部の長女で本名は志乃。14,5歳で薙刀の名手と言われている。今川家の二の姫と呼ばれる女性に仕えていたが、彦丸・勝千代兄弟を狙う陰謀に巻き込まれ、人買いにさらわれて如章の寺で座敷牢に閉じ込められていた。後に掛川城下の寒月の屋敷に仮住まいするが、刺客に襲われ死亡。
- 卍じゃないまんじ。サンカ衆(野盗集団)の一員で、裏鹿城をおそった集団の若頭。福島正成の薬籠をそれと知らず渡されており、福島家を陥れようとする陰謀に巻き込まれた事を知る。後に奈津に付き従い、下級武士として岡部家に仕える。
公家・僧侶
- 派手派手しい真っ白な銀髪と真っ白なひげの壮年男性。現職の正三位・権大納言。京に嫌気して掛川に下向中。官位階位ともに、駿河遠江二国で最上位の人。
- 史実の一条房家。関白・一条教房の次男で、公家でありながら大名として家を興した土佐一条氏の初代当主。自称詐称当たり前のこの時代に、「正式な」官位をもぎ取ってきて土佐の国人衆に与え服従させる豪腕の持ち主。
- 「一生懸命働いて引退しようと京都に戻ったのに、めちゃくちゃ高い役職に就けられて、プッツンきて唐突に引退宣言して京を去った、という私の中での妄想ですw 家出中です。知り合いがいたらおうちに連れ戻されるかもしれないと、あえて知人が少ない場所にいます。心の休養中。お勝ちゃん「かわええ」と、孫見てる気分でいます。」【14-5感想】
- 藤波家。見た目ははんなりとした穏やかなイケメン。まだ20代前半で、白地の狩衣を好んで着用する。掛川城城下町まで極悪坊主の如章を追跡して来た。藤波家の嫡子の弟という触れ込みだが、多分やんごとなきところの庶子。藤波家は位としては半家だが代々伊勢神宮の神職をつとめるため、伊勢国にそれなりの所領を持ち裕福な家。現在の当主は高名な書家でもある。
- 東雲の配下その一。白灰色の狩衣を着ている。やんごとなきところに仕える忍び衆(八瀬童子)。東雲の配下には、鶸の他にこの忍び衆が十数名居る模様。史実では比叡山延暦寺の雑色で、天皇家の棺を担ぐ人々とされる。
- 浄土真宗本願寺派の僧侶。極悪坊主。各地で貧しい家々の水瓶に下剤など毒物を混入し、病人が出たように装い疫病を封じ込めるためのお焚き上げと称して住民を閉じ込めたまま焼き殺し、裕福な武家と商人だけを金銭を取って逃がす(後で脅迫するため)マッチポンプ集金を行っていた。
- 今川館の黒幕の伝手から「勝千代の命を奪い、次いで父に浅手とは言えない手傷を負わせる」事を請負い、上記の手口を勝千代達が宿泊していた宿屋でやろうとしたが失敗し、朝比奈に捕らえられる。消息不明。
- 浄土真宗本願寺派の僧侶で、山科本願寺の御宗主(実如)からの使者として高天神城を訪れた。60歳くらい。雅号は泗水。如章絶対殺すマン。ごま豆腐が作れる。囲碁が(対勝千代)めちゃくちゃ強い。
- 本願寺派の僧侶(大僧正)。キンキラで福々しいまん丸の顔をしている。政所執事伊勢氏の庶子と名乗り権勢を高めていた。今川館の策謀により、篠山御前をそそのかして寒月館を襲撃させた黒幕と判明し、後に本願寺派から破門される。
- 伊勢氏=伊勢貞親と仮定すると、伊勢盛定の義理の兄となるため伊勢宗瑞、桃源院の義伯父にあたる。
- 本願寺派の僧侶(中僧正)。鏡如のおつきの僧侶で一回り小柄。
その他の今川家家臣
- おくだいら。今川家家臣。井伊谷城を見張るために管理されている、三岳城城代。
- 「やり手の銀行員か公務員、しかもけっこうな上役という雰囲気をしていて、見るからに能力高めのナイスミドル。整えられた口髭と、きれいに撫でつけられた髪には、三分の一ほど白髪が混じっているが、端正に整った容貌が、彼を年寄りというよりも渋めで知的な男のように見せている。だがその薄い唇と、ひん曲げた角度がいかにも胡散臭い。」
- 中年になってようやく三岳城城代の地位を手に入れたアンラッキー男。福島家の軍勢が掛川城に移動せず、曳馬城近くの本陣に居ることについて、誠九郎叔父達を責め立てた。後に亀千代(正成庶長子)の企みで、福島家が謀反のために本陣に軍を集めたと信じ込んでいたと語る。四半時の間号泣できる特技の持ち主(泣き奥平)。史実で該当しそうな奥平氏が見当たらないが、そういう不運な中間管理職はどこにでもいたのだろう。
- 小五郎。奥平の配下で、三岳城に居残る優秀な陣代。下級武士でありながら曾祖父の時代まで遡れる、綺麗な経歴の持ち主。実は三河の国人、松平氏の配下。曳馬城攻防戦で本陣の井伊家部隊を襲撃しようとしたが、勝千代が「徳川四天王」として歴史に名高い榊原某氏のことを思い出し、警戒させていたおかげで事前に捕縛された。後に奥平の配下数十名と共に脱走、行方不明。
「やはりそれがしには、総大将は少々重荷だったやもしれませぬ」
- 清房、彦九郎とも。人の良さそうな丸顔に、やや頭髪のさみしい丸い頭の持ち主。結構上背も肩幅もある。今川家の馬周り衆として御屋形様の側近であり、彦丸のことをよく知っている。先代か先々代に分枝した朝比奈分家の娘が奥方。史実では鎌倉時代から興津(現在の清水港付近)を本貫地として持つ駿河衆。
- 興津の配下。現代風に顎周りのひげだけを整えた伊達男。寒月様の屋敷の警備責任者をしていたため、勝千代についてあることないことを東雲や寒月様から耳にしている。
- 今川家の奥(御屋形様や御台様、およびそのご家族のみが暮らす領域)で仕える御伽衆。京との取次と折衝を行いかなりの権限を持つ。東三河の国人衆をそそのかして勝千代に毒を食ませようとする。
国人衆他
「戦わずして勝つとは、こういうものなのですな」
- 遠江国人で井伊谷城の城主。年の頃は40歳くらいで、四角い顔立ちに、人のよさそうな丸い目。狸を連想させるちょっと丸みを帯びた体格の持ち主。実は筋肉モリモリの興津タイプの武士。7年ほど前に今川家との戦いで敗北し従属国人となったが、まだ家臣ではない。史実の井伊直平。直虎の曾爺に当たる。
小次郎
- 井伊次郎の嫡男。父にあまり似ていない、涼やかな顔立ちの好青年。将棋が好き。
- 井伊次郎の次男。ちょっと喧嘩っぱやく迂闊なところがある。
- 遠江にある曳馬城主、飯尾家の次男。まだ若い男で勝千代にビビっている。曳馬城への攻撃から逃げ延びたが、重傷を負い後に死亡。父親の飯尾殿も曳馬城の地下牢から引き出され、奥平と共に今川館に連れて行かれてそこで死亡している。
- 田三郎、東三河の国人で牧野家の当主。かなりの高齢。曳馬城を占領する三河兵達を引かせるため、朝比奈家の軍が牧野家の城を攻撃する間で討ち取られた。今川館と通じ、今川方から最前線の興津の砦に行くはずだった兵糧をネコババしていた。東三河で最大勢力の国人。史実ではこの少し後に松平清康(家康祖父)に服属→今川家(義元)に帰属→家康配下となる。
- 牧野家の家老。大林家の養子だったが、実子の嫡男が生まれたため冷遇されていた。曳馬城の井戸に毒を投げ入れて城を奪った。出自は庵原家の吉野という男の四男で、すでに30代中頃。片目と片足の膝から下、手の指の半分を失っている。後に襲撃され、さらに重傷を負うがGの付く虫並みの生命力で生き延び、「勘助」という偽名を貰う。実は史実の山本勘助。
- 曳馬城へ進軍する途中で「おっかさんのおっぱいでもしゃぶってろ」と勝千代を罵倒した少年達。【38-1】
- 三河国人(久野)の嫡男、14,5歳か。勝千代に執拗な悪意を向ける。今川館の奥に仕える、御伽衆の後藤から「冗談交じりに、邪魔なものはこれで始末すれば良いと言われ」て鴆毒を渡されたが、後で少年Bにパスした。久野氏は今川が遠江に侵攻したときに今川方についたが、重視も重用もされていないことを不満に感じていた。
- 三河国人(原氏)の嫡男、12,3歳。背が高く分厚い体つきをしている。曳馬城の井戸に投げ込まれたのと同じ、鴆毒という毒物を勝千代に振りかけようとした。