凍りのくじら
以下はWikipediaより引用
要約
『凍りのくじら』(こおりのくじら)は、辻村深月による日本の小説。
2005年に講談社ノベルスより発行された。第27回吉川英治文学新人賞候補作。
あらすじ
「あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう」
そう訊かれたとき、私はいつもこう答えることにしている、「暗い海の底や、遠い空の彼方の宇宙を照らし出す必要があるからだ」と。
「ドラえもん」の作者藤子・F・不二雄を深く敬愛する写真家の父。彼の名を継いだ新進フォトグラファー、芦沢理帆子の高校時代を追う。
学校と、飲み友達と、元彼氏と、病床の母と、行方不明の父と。どんな相手にも合わせてしまう、合わせられてしまう理帆子は、自分を取り巻く個性に名前を与えていく。例えばあの子は「少し・不安」。あの子は「少し・不満」。そして私は、「少し・不在」。藤子先生の創るSFの世界、「少し・不思議」から取り、それぞれの個性にふさわしい名を付ける遊び、「スコシ・ナントカ」。私はどこへでも行ける。誰にでも合わせられる。それが許される。「どこでもドア」みたいに。
でも、一人でいると息苦しい。誰かといても息苦しい。自分の意志など、とうに摩滅してしまっているのかもしれない。私の「少し・不在」は最近いよいよ深刻だ。
ドラえもんへのオマージュが目一杯詰まった、「少し不思議」な物語。
ひみつ道具
章題
各章のタイトルはドラえもんのひみつ道具から採られている。自身の体験を振り返り、家族の幸せの象徴は何かと考えた結果こうなった。主人公・理帆子の人柄から、負のイメージの強い道具ばかりなので、次に機会があれば明るいイメージの道具で構築されたものを書きたいと語っている。
- どこでもドア
- カワイソメダル
- もしもボックス
- いやなことヒューズ
- 先取り約束機
- ムードもりあげ楽団
- ツーカー錠
- タイムカプセル
- どくさいスイッチ
- 四次元ポケット
その他
- 作中で理帆子が「欲しい」と挙げたもの
- 入りこみ鏡
- 逆世界入りこみオイル
- おざしきつりぼり
- ふえるミラー
- 悪魔のパスポート
- ニクメナイン
- ビッグライト
- スモールライト
- すて犬だんご
- オールマイティーパス
- テキオー灯
- きせかえカメラ
- 断ち物願かけ神社
- 入りこみ鏡
- 逆世界入りこみオイル
- おざしきつりぼり
登場人物
芦沢 理帆子(あしざわ りほこ)
県内一の名門進学校F高校の2年生。子どもの頃から本を読むのが大好き。大の「ドラえもん」好きで、父が藤子・F・不二雄を「藤子先生」と呼び尊敬していたのと同じように理帆子自身もそのように呼ぶ。彼が遺した「ぼくにとっての『SF』は、サイエンス・フィクションではなくて、『少し不思議な物語』のSFなのです」という言葉に共感し、それ以来読書以外の場面で、人の個性や物事の性質に「スコシ・ナントカ」の言葉を使うようになる。例えば自分は、どこにいても自分の居場所だと思えず、「少し・不在」。
写真家だった父・芦沢光は、理帆子が小学6年生の頃に、癌の闘病に苦しむ姿を家族に見せたくなくて失踪してしまった。後に、理帆子自身が「二代目・芦沢光」としてその名を継ぐ。
芦沢 汐子(あしざわ しおこ)
別所 あきら(べっしょ あきら)
若尾 大紀(わかお だいき)
松永 純也(まつなが じゅんや)
関連作品
- 「子どもたちは夜と遊ぶ」 - 作中で萩野が月子にプレゼントしたフォトカードは芦沢光の作品。
- 「スロウハイツの神様」 - 環と親交がある写真家「芦沢光」として理帆子が登場する。
- 「ぼくのメジャースプーン」 - ふみちゃんが声を出せなくなった原因が語られる。また、郁也がピアノの上手な少年として苗字だけ登場する。