半グレ (小説)
以下はWikipediaより引用
要約
『半グレ』(はんグレ)は、草下シンヤによる日本の小説。
「東京の闇を描いたピカレスク小説」というキャッチコピーで出版された。
山本隆一郎により、本作を原作とした『半グレ―六本木 摩天楼のレクイエム―』が『ヤングチャンピオン』(秋田書店)にて、2020年20号より連載中。
あらすじ
就活の結果が思うように出ず、悪戦苦闘していた伊南真は「エスコーポレーション」という社員数5人程度のイベント会社から内定を得る。サーファーのような社長や季節外れの日焼けをした専務、更には社会人らしさが感じられない社員達に戸惑いつつも、一応大きなイベント設営にも携わっている実績もあり、その会社に入社する決意を固める。しかし、その会社には想像もつかないような裏の顔があり・・・
登場人物
主要人物
伊南 真(いなみ まこと)
本作の主人公。
仕事一筋だった父を過労で亡くし、女手一つで自身と妹のために身を粉にして働く母に報いようとしたものの、就活が思うように上手くいかず「エスコーポレーション」という小さなイベント会社に就職することとなった。
元々は普通の学生だったが、「エスコーポレーション」への就職とオーナー・乙矢との出会いにより、裏社会へ足を踏み入れることとなる。堀の逮捕後は社長を任され、そこで頭角を現してロンダリング以外にも詐欺といった様々な犯罪行為を行うようになる。しかし、その過程で彼女の真由美、親友の広志は自身の側から離れていき、更には自身の逮捕中に母を亡くしてしまう。環状連合に出入りしていたメンバーも次第に減っていき、元々少し冷めていた性格だったこともあって次第に乙矢のような何事にも極端に冷めた性格へと変貌していくが、乙矢のことのみは別格扱いをして憧れを抱いている。
その後も乙矢に対しては強い憧れのような感情を抱くようになるが、最後は加藤を呼び寄せて乙矢を殺害させ、いつか自分も誰かに殺されるまでの間は乙矢の代わりとして生きていくことを決意したところで物語は終わる。
乙矢 恭一(おとや きょういち)
本作のキーパーソンで真に大きな影響を与えた人物。
「エスコーポレーション」のオーナーにして、「環状連合」OBの一人。豊富な人脈を持っているようで、詐欺や薬物など様々な非合法の手段で稼いだ金をロンダリングしており、会員制のバーなどを多数所持している。一見すると優男のような印象だが、極めて無機質で冷めた性格であるため、普段は誰にでも敬語で話す。しかし、稀に感情が表にでると口調も変わるほか、現役時代は「環状連合」のリーダーを務めており、当時は極めて凶暴な性格で「ヤバい」「危険」などと評されていたらしく、当時の関係者は誰も正面から対立することはなかったと言われている。また、不愉快なことを感じると左人差し指の爪を右親指の腹で撫でる癖がある。
本人曰く、出自は一般家庭で両親と兄がいるらしいが、家族については「あいつら気持ち悪いんだよ」と言っており、特に母親のことは幼少期の経験から非常に毛嫌いしている。また、結婚して子宝にも恵まれていた時期があったが、子供が目の前で事故死してしまったことで離婚した。そして、表と裏社会の狭間にいるうちに「自分の子供はこの汚い世の中を見ずに死んで良かったのではないか」と感じたらしく、それ以来何事にも極端に冷めた無機質な性格になった。しかし、現在でも子供の墓参りは欠かさず行っており、子供に対する思いが全くないわけではない。
自身の無機質さの加速や警察の締め付けなどで多くのメンバーが連合を去る中、様々な危機を乗り越えて台頭を見せる真に目をかけるようになり、「期待通りに育ってくれた」とまで評価するようになる。その後は子供の墓参りに訪れた際に真が呼び寄せた加藤に襲撃されるが、何故かそれを分かっていたかのように抵抗を見せることなく致命傷を負い、最期は真の「これが望んだことですか」という問いに答えることなく息を引き取った。
「環状連合」および関係者
門脇 勝(かどわき まさる)
「環状連合」OBの一人。現在は暴力団「刃率会」に属する不良(ヤクザ)。
堂々たる巨体と威圧感の持ち主。かつては連合内でも乙矢と一、二を争うほどの喧嘩の実力者だったらしく、現在でも乙矢や他のOBとは交流がある。整形にハマっているらしく、様々な部位を弄っているが周りからの評判は悪く、真からも「まずは痩せるべきだ」と思われている。
連合が警察による厳しい監視の目に置かれている状態にもかかわらず、監禁事件を起こすなど危機管理に欠けており、極道の身分もあって周りからは邪魔者扱いされるようになっている。しかし、自身はそれに気づいていないばかりか、冷めた性格の乙矢を疎ましく思っており、真からは「あんたのほうがいらないんだよ」と毒づかれる始末だった。更には乙矢を追い出して連合の乗っ取りも画策しており、佐久間のシノギも妨害していた。最初は真に協力を呼びかけるも拒否され、報復としてユリカを使って真の弱みを握ろうとするも、二重スパイだった彼女によって連合の乗っ取りや新垣を間接的に死へ追いやったことが露見し、逆に自身が連合を追放された。
その後は刃率会の力で報復を仕掛けようとするが、よりによって刑事に恫喝をしてしまい、それから程なくして刃率会からも破門された。破門後は日雇いで食いつなぐ日々を送っており、それを見た乙矢によって比怒羅の加藤が仕切る詐欺グループにタタキ(強盗)をやらされる形で弱みを握られる末路を迎えた。
佐久間(さくま)
本山(もとやま)
「環状連合」OBの一人。上場企業社長の息子であり、アパレル会社を経営している。
連合内では珍しく表の仕事をしており、比較的常識的な性格だが、乙矢曰く「商売はあまり上手くない」。元々は渋谷で遊んでいたところ、偶然乙矢らと知り合って仲間入りしたらしい。離島アイドル・新垣優と付き合っていたが、彼女が精神に不調を抱えてしまったことで別れている。
しかし、別れた後でも新垣のことは気にかけており、彼女が比怒羅に拉致された際には真と共に救出に向かったが、結果的に新垣は自殺してしまい、自身もそれを機に連合を去った。
その後は厳しい状況ながらもアパレル会社を続けており、自分が作った服が売れることを生き甲斐として仕事に打ち込んでいる模様。真のことは新垣の一件から友情を感じているようで、彼に対して「表の仕事を一緒にやろう」と誘っており、連絡を待っていると告げた。
前田(まえだ)
「環状連合」OBの一人。「エスコーポレーション」の専務。
常に日焼けをしており、身体には刺青を彫っている。総合格闘技のジムで肉体を鍛えており、威圧的な部分もあるが、真に対してフォローする一面もある。
詐欺によって父親を亡くしており、同じく父親を亡くしている真とはウマが合う部分もあった様子。しかし、父を死に追いやったのは当時詐欺で稼いでいた乙矢であると判明し、乙矢へ復讐するために連合入りしていたとともに、乙矢の側で力をつける真が邪魔になり警察へ売っていた。しかし、真は証拠不十分で釈放され、その件がバレた後はその場から逃走して連合を去った。
その後の動向は不明だが、佐久間によると都内の漫画喫茶を転々とする生活を送っている模様。
堀 孝(ほり たかし)
曽根(そね)
川西 ユリカ(かわにし-)
新垣 優(あらがき ゆう)
離島出身の若手アイドル。物憂げで儚げな印象を持たせるが、川西と同じく環状連合に出入りして薬物パーティーに興じている。本山とは恋人関係にある。
しかし、ある時期から次第に精神が不安定になり、本山とも別れて芸能の仕事も上手くいかなくなってしまう。実は不注意で捜査官に薬物を服用していることがバレてしまったことで連合の捜査に協力するように迫られており、それが原因で不穏な行動や言動が目立っていた。そして、連合に対する捜査の目を逸らすために比怒羅が仕切るクラブで違法薬物取引の証拠を掴んだことで拉致されてしまったが、真と本山によって救われる。しかし、2人が駆けつける前には既に輪姦されており、その動画が流出したことで「もう島にも帰れない」という書き置きを遺して自殺した。
松井(まつい)
比怒羅
加藤 正二(かとう せいじ)
環状連合と対立する反社会組織・比怒羅のトップ。金髪に耳まで裂けた口元の傷という如何にも凶悪な容姿で、刃率会の若頭と繋がっている。
作中の十数年前に起きた「飛鳥山戦争」で環状連合と全面対決となり、乙矢とのタイマンでは彼の脇腹をナイフで刺して腎臓を一つ失わせているが、自身は口を裂かれている。そのため、乙矢を非常に恨んでおり、隙あらば殺そうとしているが、真からは「中身は子供のまま」と言われているように、裏社会で成功を収めている現在の乙矢とは大きな差が開いてしまっているため、当の乙矢からはあまり相手にされていない。
新垣の件をキッカケに真を拉致して暴行を加えるが、ケツ持ちの極道同士の手打ちによって手を引かされる。その際に真を迎えにきた乙矢に悪態をつくも相手にされなかった。その後は乙矢の命令で動いた門脇によって自身の詐欺グループがタタキに遭い、それを教えた真の手引きで乙矢を襲う。乙矢に致命傷を負わせて逃亡しようとするが、最期はその呆気なさに失望と怒りを覚えた真に刺殺された。
安食組
安食 徹(あじき とおる)
千木良(ちぎら)
その他
母
伊南 夏樹(いなみ なつき)
真由美(まゆみ)
用語
エスコーポレーション
環状連合(かんじょうれんごう)
現在は違法薬物取引や特殊詐欺などをメインに行なっているほか、OBには政治家や芸能人の子供もおり、東京の裏社会に深い人脈を築いているため、準暴力団組織に指定されている。
比怒羅(ヒドラ)
比怒羅の中でも新宿に根を張る「新宿比怒羅」は躊躇なく人を刺すことで知られ、極道からも避けられるほど。
飛鳥山戦争(あすかやませんそう)
乙矢や門脇たちが「比怒羅狩り」と称して比怒羅メンバーを捕まえては五厘刈りにしていたことが事の発端で、それに怒った加藤ら比怒羅の幹部たちが環状連合メンバーをナイフで刺したため抗争が激化。結局、両者からそれぞれ代表者5名を出してタイマン対決となり、負けた方が解散することとなったが、警察の介入で有耶無耶となったため両チームとも存続している。
この抗争で乙矢と加藤は殺し合い寸前にまで発展し、乙矢は脇腹を刺されて腎臓を一つ失い、加藤は口を裂かれている。
刃率会(はびきかい)
八潮会(やしおかい)
安食組(あじきぐみ)
千木良連合(ちぎられんごう)
書誌情報
小説
- 草下シンヤ『半グレ』彩図社、2020年3月13日発売、ISBN 978-4-8013-0440-6
漫画
- 草下シンヤ(原作)・山本隆一郎(漫画)『半グレ―六本木 摩天楼のレクイエム―』秋田書店〈ヤングチャンピオンコミックス〉、既刊8巻(2023年11月20日現在)
- 2021年6月18日発売、ISBN 978-4-253-30521-1
- 2021年8月19日発売、ISBN 978-4-253-30522-8
- 2021年12月20日発売、ISBN 978-4-253-30523-5
- 2022年5月19日発売、ISBN 978-4-253-30524-2
- 2022年9月20日発売、ISBN 978-4-253-30525-9
- 2023年2月20日発売、ISBN 978-4-253-30526-6
- 2023年6月20日発売、ISBN 978-4-253-30527-3
- 2023年11月20日発売、ISBN 978-4-253-30528-0