吉原裏同心
以下はWikipediaより引用
要約
『吉原裏同心』(よしわらうらどうしん)は、佐伯泰英による日本の時代小説シリーズ。光文社文庫より刊行されている。『吉原裏同心抄』についてもこの項にて扱う。
2014年6月より、NHK総合テレビの木曜時代劇枠にてテレビドラマ化された。
あらすじ
幼なじみで、人の妻となっていた汀女と駆け落ちした神守幹次郎は、追っ手を避けながら流れ着いた江戸で、吉原遊郭四郎兵衛会所の用心棒、裏同心として雇われる。幹次郎は、遊女たちに俳句などを教えることになった汀女や会所の面々と共に、吉原に起こる様々な事件を解決していく。
登場人物
主人公
神守幹次郎(かみもり みきじろう)
元は豊後竹田の岡藩で13石を賜る馬廻り役だったが、安永5年(1776年)の夏、18歳の時に納戸頭である藤村壮五郎の妻汀女を連れて脱藩した。その後、藤村の追っ手から身を隠しながらあちこちをさすらい、国を出てから9年後(天明5年、1785年)に江戸に到着した。そして、その翌年、28歳の時の時に吉原遊郭の四郎兵衛会所に、裏同心として雇われた。その報酬は年25両で家賃は会所持ち。大きな事件を解決すれば慰労金が出る。当初は会所が所有する左兵衛(さへえ)長屋で暮らしていたが、後に会所から贈られた浅草田町一丁目の家に引っ越す。
子どものころ、実家が貧しくて道場に通うことができなかったが、7歳の時、旅の老武芸者から薩摩示現流の手ほどきを受け、以後独学で修行を続けてきた。また、脱藩後に立ち寄った金沢では、小早川彦内が道場主を務める眼志流居合の道場に通い、示現流の弱点を補う居合術も身につけた。「横霞み」「浪返し」「白浪崩し」「流れ胴斬り」「漣」などの技があり、幹次郎は、居合で相手を仕留めた際、半ば無意識に技名をつぶやく。
腰に差している大刀は、先祖が戦で倒した騎馬武者から奪ってきたものと伝えられる無銘の刀だが、浅草東仲町の研ぎ師松久は、後鳥羽上皇の二十四人番鍛冶の1人、豊後の刀鍛冶行平(ゆきひら)の若いころの作と鑑定した。身幅広く、先反りの2尺7寸(81.8センチ)の長剣。
また、ある事件解決の報償として、四郎兵衛から美濃の刀鍛冶和泉守藤原兼定(かねさだ)の鍛った刀をもらう。刃渡り2尺3寸7分(71.8センチ)、黒漆塗りの鞘に黒革巻の柄(つか)、竹に雀の鍔拵え、刀身は地鉄小板目、刃文大五の名刀。
面番所に遠慮して、会所に出入りするときには、かたくなに裏口を利用していたが、吉原が大火で消失し、再建されて後は、表玄関から出入りするようになった。
ヒロイン
汀女(ていじょ)
幹次郎の妻。父・野村継彦が藤村壮五郎に15両の金を借りて返せなくなり、半ば身売り同然に、18歳も年上の藤村の妻となったが、嫁して3年後に幹次郎と駆け落ちした。幹次郎とは同じ長屋に住んでいた幼なじみで、汀女の方が3歳年上のため、昔から幹次郎には「姉さま(あねさま)」と呼ばれていたが、2人が連れ添うようになった後もそう呼ばれている。汀女は幹次郎を「幹どの」と呼ぶ。
俳句、連歌、漢詩と素養豊かで、字も達筆。駆け落ち後は人前で俳句を披露することをやめたが、吉原では3日に一度の割合で遊女たちに俳句や和歌、華道、香道、習字などを教え、手紙の代筆なども行っている。これは、遊女たちと接することで、事件を芽のうちに発見するという意味がある。四郎兵衛は、幹次郎の役目が手足とすれば、汀女の役目は耳目であるとたとえた。通常は幹次郎のみが裏同心と呼ばれているが、実は夫婦2人で一役である。
また、長屋でも吉原関係者の子どもたち相手に寺子屋を開いている。吉原再建後は、吉原での手習い塾の他に、浅草並木町で引き続き営業することになった料理茶屋山口巴屋で、多忙な玉藻の後見をしながら、馴染み客相手に俳諧の塾も開くこととなった。後には、料理茶屋の差配も任される。
駆け落ちしたのが21歳で、会所に雇われたのが31歳の時。
薄墨太夫(うすずみだゆう)
吉原一の人気を誇る三浦屋の花魁。幹次郎に好意を抱いており、2人きりのときには突然口づけするなど大胆な行為に及ぶことも。薄墨の夫への想いを知っている汀女とも仲が良く、2人は本当の姉妹のようだと吉原内で評されている。汀女の手習い塾では最も古い弟子の1人であり、代教格として手伝いをしている。
吉原炎上の際、幹次郎が炎に包まれた三浦屋から薄墨を背負って救出した。その姿は、読売でも大々的に報じられた。
元は表御祐筆の役をいただく170石の旗本の娘で、本名は加門 麻(かもん あさ)。親が病にかかって治療費を得るために苦界に落ちた。吉原炎上の後に、幹次郎夫妻に本名を教え、汀女は薄墨と2人きりの時には本名で呼びかけることにしている。25巻「流鶯」で、長年のひいき筋であった札差・伊勢亀半右衛門の末期の希望により、身請けされる形で借財がすべて返済され自由の身となる。
四郎兵衛会所
仙右衛門(せんえもん)
哥次(うたじ)、保蔵、宮松、梅次、市之助、新三郎、金次、光助、参五郎、虎太郎、竜吉、宗吉、源八、玉三郎
吉原遊郭
玉藻(たまも)
小吉(しょうきち)
吉原関係者
足田甚吉(あしだ じんきち)
おはつ
久平次(くへいじ)
周左衛門(しゅうざえもん)
町奉行所
村崎季光(むらさき としみつ)
山村信濃守良旺(やまむら しなののかみ たかあきら)
池田長恵(いけだ ながしげ)
幕府関係者
一橋治済(ひとつばし はるさだ)
松平定信(まつだいら さだのぶ)
お香の方(おこうのかた)
田沼意次
岡藩
藤村壮五郎(ふじむら そうごろう)
肥後貫平(ひご かんぺい)
津島道場
その他
身代わり左吉(みがわりさきち)
柴田相庵(しばた そうあん)
六郷政林(ろくごう まさしげ)
作品リスト
吉原裏同心
- 「吉原裏同心」読本 2014年6月12日発売 ISBN 978-4-334-76751-8
吉原裏同心抄
新・吉原裏同心抄
吉原裏同心
各巻は5章に分かれている(序章と終章が付属する第1巻を除く)。そして、各巻ごとに1つの事件、テーマを取り扱いながら、各章ではそれと関連して、あるいはそれと平行して個別の事件を取り扱うという形式を取ることが多い。たとえば、第2巻では、全体として香瀬川太夫の足抜き事件を取り扱い、第1章は掏摸一味の事件、第2章は赤穂浪士子孫による踏み倒し事件、第3章は香瀬川同様に姿を消した春駒の捜索、第4章は同じく姿を消した市川の捜索、そして第5章で解決……という具合に話が進んでいく。なお、13巻と14巻は、1つの大きな事件を2冊通して扱ったシリーズ初の試みである。
テレビドラマ
2014年6月26日から9月18日まで12回シリーズで木曜時代劇(NHK総合テレビジョン)で放送された。
小出恵介は時代劇初主演、また林隆三の遺作となった。第一回の殺陣に時代劇には珍しいワイヤーアクションを採用している。
90分拡大版の『吉原裏同心〜新春吉原の大火〜』が2016年1月3日にNHK総合テレビジョンの正月時代劇枠にて放送された。
キャスト
- 神守幹次郎 - 小出恵介
- 汀女 - 貫地谷しほり
- 四郎兵衛 - 近藤正臣
- 薄墨太夫 - 野々すみ花
- 仙右衛門 - 山内圭哉
- 藤村壮五郎 - 皆川猿時
- 玉藻 - 京野ことみ
- 柴田相庵 - 林隆三
- お芳 - 平田薫
- 佐吉 - 三宅弘城
- 村崎季光 - 石井愃一
- 長吉 - 沼田爆
- 清次 - 若葉竜也
- 千歳 - 尾上紫
- 若竹 - 菜葉菜
- 夕霧 - 近野成美
- 豊春 - 定松直子
- 水無月 - 松之井綾
- 正琴 - 児玉陽子
- 千代 - 富田エル
- 弥助 - 大賀太郎
- 寅五郎 - 山元隆弘
- 泉蔵 - 松本淳
- 慎之助 - 石野理央
- 岡っ引き - 千葉清次郎
- ひかる - 鈴木里奈
- ほたる - 萩倉悠月
ゲスト
複数回登場の場合は括弧()内に表記。
第一回
- 中野信一郎 - 上遠野太洸
- 初音 - 水野絵梨奈
- 佐々木友之進 - 車邦秀
- 脇屋勘兵衛 - 尾関伸嗣
- 篠崎 - 市瀬秀和
- 甚吉 - 坂本真
- 汀女の父 - 櫻井正一
第二回
- 梅園 - 奥菜恵
- 島田藤兵衛 - 山口馬木也
- 宗助 - 川村亮介
- 弥七 - 七枝実
- おくに - 近藤里沙
第三回
- きく - 富田靖子
- 喜助 - 天宮良
- 村山信濃守 - ダンカン
- 太平 - 森下能幸
- 代田 - 真実一路
第四回
- おかん - 高橋由美子
- 幸助 - おかやまはじめ
- 栄蔵 - 加藤武
- 徳蔵 - 近童弐吉
- 喜兵衛 - 真鍋誠志
第五回
- 谷平 - 柳沢慎吾
- おけい - 宮武美桜
- 庄助 - 冨家規政
- 吉野 - 小倉百代
第六回
- 鞆世 - 黒谷友香
- 雛菊 - 徳永えり
- 茂蔵 - 半海一晃
- 清右衛門 - 市川しんぺー
- 正五郎 - 三浦祐介
- 春日 - 遠谷比芽子
- 諒庵 - 堀本能礼
- 貞三 ‐ 山崎大輔
第七回
- 間宮鋭三郎 - 辻本祐樹(幼少期:菊地飛翔)(第六回)
- 加門麻 - 仲愛理
- 間宮慶一郎 - 水原光太
- 伊勢亀 - 真夏竜
- 三浦屋 - 中平良夫
第八回
- 香取屋武七 - 篠井英介
- 香取屋公太 - 浜田学
第九回
- 柳里/おちよ - 星野真里
- 徹三郎 - 千葉哲也
- 圭次 - 成河
- 幸造 - 永田耕一
第十回
- 小春 - 馬渕英俚可
- 文吉 - 内野謙太
- 義左衛門 - 湯江健幸
- 又一 - 和田洋一
- 儀助 - 野村昇史
第十一回
- 中林与五郎 - 豊原功補
- 溝呂木六兵衛 - 村野武範
- 溝呂木忠也 - 佐野和真
- 亀田満右衛門 - 野添義弘
最終回
- 勘助 - 原田大二郎
- 矢部新造 - 田中幸太朗
- 松下源左衛門 - 山田明郷
- 岡藩江戸家老 - 山野史人
- 甚五郎 - 青山草太
〜新春吉原の大火〜
- 香瀬川太夫 - 安達祐実
- 平助 - 山田純大
- 源次 - モロ師岡
- 近江屋庄右衛門 - 野間口徹
- おけい ‐ 藤原薫
- 若松屋丹右衛門 ‐ 野村昇史
- 杉野屋藤兵衛 ‐ 春海四方
- 市川 - 朝倉あき
- 孝之助 ‐ 久野雅弘
- 鈴音 - 小松彩夏
- おこま ‐ 安澤千草
- 竹越繁千代 ‐ 小豆畑雅一
- 大村左近 ‐ 上杉祥三
- おさよ - 麻生祐未
- 太兵衛 - 本田博太郎
スタッフ
- 原作 - 佐伯泰英『吉原裏同心』
- 脚本 - 尾崎将也
- 音楽 - 林ゆうき
- 主題歌 - 小田和正「二人」
- 語り - 貫地谷しほり
- 演出 - 西谷真一、佐藤峰世、田中英治、川野秀昭
- 殺陣指導 - 車邦秀
- 制作統括 - 佐野元彦(NHKエンタープライズ)(第一回 - 第六回)、城谷厚司(NHKエンタープライズ)(第七回 - 最終回)、原林麻奈(NHKドラマ制作部)
- 制作 - NHKエンタープライズ
放送日程
話数 | 放送日 | サブタイトル | 原作 | 演出 |
---|---|---|---|---|
第一回 | 6月26日 | 希望の光 | 流離 | 西谷真一 |
第二回 | 7月 | 3日守りたい人 | ||
第三回 | 7月10日 | 許せぬ奉行 | ||
第四回 | 7月17日 | 年季明け | 無宿 | 佐藤峰世 |
第五回 | 7月24日 | 父と娘 | 遣手 | |
第六回 | 7月31日 | 隠しごと | 初花 | 田中英治 |
第七回 | 8月 | 7日いいなずけ | 無宿 | 西谷真一 |
第八回 | 8月21日 | 覚悟あり | 佐藤峰世 | |
第九回 | 8月28日 | 明日の幸せ | 田中英治 | |
第十回 | 9月 | 4日姉の願い | 佐藤峰世 | |
第十一回 | 9月11日 | かたき討ち | 川野秀昭 | |
最終回 | 9月18日 | 我が町 | - | |
平均視聴率 8.4%(視聴率は関東地区、ビデオリサーチ社調べ) |
関連番組
- 誕生!廓(くるわ)の用心棒〜帰ってきた吉原裏同心(2015年12月30日)
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