小説

喪神の碑


題材:超能力,

舞台:宇宙船,宇宙,



以下はWikipediaより引用

要約

『喪神の碑』(そうしんのいしぶみ)は、津守時生による日本のライトノベル。イラストは小林智美が担当している。1990年から1991年にかけて、角川スニーカー文庫(角川書店)から刊行された。全5巻。

概要

オイリクス星の軍を追い出される形で、突然職を失った18歳の少年ロヴ。戦艦勤務の経験を生かして再就職しようとしたがなかなか見つからず、やっと決まった再就職先は、奇妙な船長が率いる民間船だった。

変わり者ばかりの船員や船長達と交流するうちに、ロヴは船長たちが抱えた複雑な事情を知っていき、彼らとの信頼関係を築き始める。だが、楽しいだけではない冒険の終わりは……。

主な登場人物
黄金のイルカ号

ロヴ・ジョナサン

主人公。地球系オイリクス人で四方に跳ねる赤毛が特徴。寄港先であるヤド星で、いきなり故郷の軍を追い出され、再就職先を探していた。好奇心旺盛な性格で感情の起伏が激しい。軍での階級は少尉で、所属は情報部だが後述する超能力故の配属であり、感情に流されがちなため冷静な対応を必要とする情報部将校には向かない。
求人の条件に食い違いがあったものの、あるアクシデントからなし崩しに欠員となっていた副砲撃手として採用される。
実は潜在的に「精神共鳴(サイコ・レゾナンス)」という受動テレパシーを持つESP系超能力者であり、マリリンやラフェール人の真意を確かめるための情報収集役として、上司であるO2に送り込まれた。しかもその際、O2によってマインドコントロールを施され、銀河連邦宇宙軍の情報部に籍を移されている。
普段は超一流テレパシストであるO2が施した心理操作による行動指針に基づき、無意識に彼専用のスパイカメラとして動いているが、それはラフェール人テレパシストであるマリリンに見抜かれており、彼の影響下にも置かれたことで、マリリンとO2を繋ぐか細い「糸電話」の役割にされ、たまにO2に体を乗っ取られる。
度々マリリンの精神波に同調し、彼の記憶にあるラフェール星のビジョンを見たり、ラフェール星の王宮に残されていたラフェール人の残留思念に引きずられるなど、特殊な体験が多い。
マリリアード・リリエンスール

通称:マリリン。27歳。「黄金のイルカ号」のオーナーにして船長。鋼を思わせる銀色の瞳と長い黒髪を持つ美青年だが、特殊な事情から主に女性言葉で話し、しぐさも女性のそれであることが多い(笑い方が「ほほほ」、笑う時に口元に手の甲を当て、小指を立てるなど)。ただし、怒りで我を忘れているような時は男言葉。戦闘中は髪を三つ編みにしている。ロヴやカラマイとは10歳くらいしか離れていないが、父親のように彼らを可愛がり、たくましく成長させてきた。
故郷であるラフェール星を滅ぼした、強力な伝染病・シタン病に冒されている。女系王朝だったラフェール王家の生き残りの王子で、先祖返りであるため、一般的なラフェール人とは似つかぬ体躯とエンパシーより強力な能力であるテレパシーを有し、パスワードなしでコンピュータにアクセスできるほどの実力を持つが、シタン病が進行するため滅多なことでは使わない。
シタン病の進行を抑えるべく、アトリという観葉植物の葉をハーブティーにして定期的に飲んでいるが、超能力を使うたびに進行させ、一度は消化器官の一部を炭化させてしまうなど、その身体は徐々に死に向かっている。また、シタン病の影響で、髪がかなり硬質になり、光をよく反射する上、切ろうとして刃物を当てても、刃物の方が刃こぼれしてしまう。
作中中盤で、前述の「シタン病抑制剤」の副作用で視力を失ってから、それを補うべくテレパシー能力が上がり始める。
フミ・キザキ

女性クルー。重力に逆らうように伸びた栗毛が特徴の地球系人類だが、初登場時は六芒人に変装していた。武器の扱いに長ける元宇宙海賊で、前歴を消すため死んだことになっている。砲撃手で砲撃や射撃の腕は良い。
クルーの中ではマリリンとの付き合いが一番長い。20歳まで無法者達の世界で育ち、海賊船の船長をしていたこともあるためか、鉄火な性格。
オルガ・シオ

女性クルー。27歳。学都惑星・玲藍(れいらん)の医学系大学を出ている船医(専門は内科)。ラフェール星滅亡に関するある事情から、ラフェール星とラフェール人にある思いを抱いている。
のんびりとした口調でしゃべるのが特徴(早く喋ると舌を噛むらしい)。4つ年下のフミとは仲がよい。
続編である『三千世界の鴉を殺し』にも登場。すっかりおばあちゃんなったそうだが、恩師であるサラディン曰く、『笑顔は全く変わらない』。
ロアン・ガブリオッティバダルギーシュデム

男性クルー。フミの次にマリリンとの付き合いが長い友人で、六芒人の操縦士兼メカニック。名前が長すぎるため、滅多にフルネームで呼ばれない。実家はフィラルの名門。
実はラフェール人滅亡を狙う組織「ウロボロス」に所属し、内通のため元の職場を辞めて乗り組んだ。フミに気があったが、その想いはほとんど届かず、内通者であることが判明した際、一旦は小型艇の格納庫までたどり着くも追い詰められ、組織幹部による処罰を受けるよりはと拳銃自殺。
イアラ・メグ

地球系の退役軍人で、O2ですら知っているほどに名の通った「戦艦ティダムの鬼少将」の異名を持つ中年女性。女性ながら少将まで昇進し、戦艦の艦長を20年務めた女傑で、大抵は軍隊調のしゃべり方をするが、女性らしさも失っていない。
夫はラフェール人外交官で、彼が仕事でラフェールに戻った時に悲劇が重なった。そのためラフェール人13人の世話を命じられる。軍人だった名残から射撃の腕はそこそこ。
彼女が軍を辞めてまで乗り組んだのは「夫を殺した組織に復讐するため」。2人の子供がいるが、どちらも成人している。彼女からすれば、上の子供と年が近いこともあり、ロヴたちを可愛がるマリリンも「かわいい」と言う対象らしい。
当初は航海士だったが、ソ・トト成人後は操縦士に移動。
ソ・トト

男性クルー。繭を作って羽化するように成人するアスラ人。本人曰く、名前は「ソ族のトという男の6男」という意味。
幼年期の外見年齢はロヴと大差ないが、長命な種族ゆえ、実年齢は彼の3倍はあるらしい。成人後の姿は「サイケデリック・モヒカン野郎」と評される(カラー口絵では黄土色の肌に、カラフルな髪が逆立っている)。また、幼年期と比べて性格が好戦的になり、言動にけたたましさが加わった上、笑っても怒っても凶暴さを強調するような顔になる。髪の色は感情によって(不機嫌なら青や紫系統に、興奮していると赤やオレンジ系統に)変化する。
当初は通信士だったが、成人後は「外見が通信相手に恐怖を与える」と言われ、副砲撃手に移動。
シドロ、モドロ

船の管理コンピュータ。メインコンピュータがシドロ、サブコンピュータがモドロである。音声とスクリーンに文章を映し出すことで船員と意思疎通が可能。どちらもコンピュータでありながら、感情を持っているかのような描写をされる。また、ラフェール星のオドロとある程度同調するよう改造されている。
シドロは衛星や宇宙港のコンピュータに侵入し、“説得”することも出来る。しかし、ウロボロスの内通者に1度初期化された。

ラフェール人

ラフェール星壊滅時、別の惑星に渡って暮らしていたため生き残ったうちのごく一部。

ナヴァルフォール・シェルモージュ

マリリンの母方の叔父(祖父が祖母を亡くした後再婚した、祖母の末妹との子供)で、ラフェール星を離れていたため生き残ったラフェール人の1人。彼も先祖返りのため、一般のラフェール人とは似つかぬ体躯の持ち主。15歳から留学していた学都惑星・那藜(なあか)の副学長で、総合芸術学の教授でもある。ラフェールの王族であったことや彼が発する威厳から、学都では「大公」と呼ばれる。
1度はマリリンと敵対するも、20年前の伝言を受け取ってからは彼と和解し、最終的に那藜からカイユへ渡ってきた。しかし、彼が連れてきた人物の1人がウロボロスの関係者であり、事件を起こす。
ユーフェミア姫

ナヴァルフォールの娘でマリリンの母方の従妹に当たる少女。マリリンに逢いたいがため、父親の反対を押し切り黄金のイルカ号が運ぶ「積荷」の世話を担当する人間の1人として乗り込んできた。
古い口約束ではあるがマリリンと婚約関係にあり、マリリンを異常に慕う。ソ・トトが成人してからは通信士としてブリッジのメンバーになる。
テレパシーはあまり強くなく、「王家の星」を描けるほど使うと体調を崩す。しかし、マリリンの余命があと幾ばくもないことから、彼の使命を引き継ぎ、カイユ生まれの子供たちや共に移住した有志の新たな女王としての責務を果たす道を選ぶ。
カラマイ

姫の守役の青年。王家の影の部分を担う「黒衆」である彼の一家はナヴァルフォールに従っていたため、生き残った。祖父ナヤンはナヴァルフォールに仕える黒衆の長で、幼い頃に父を事故で亡くしている。肩までの、癖のない黒髪が特徴。年が近いロヴとはよい友人関係を築く。ソ・トトが成人してからは航海士としてブリッジのメンバーになる。
「黒衆」以外の人間と接しているうちに、最初から傾向はあったものの自分の意思をはっきりと口に出すようになり、黒衆の掟によって殺されかけるが、それを知ったマリリンに救われた。
エルルーシア

復活させたラフェール人の子供達の養育役を務めるべく、惑星クラリサで黄金のイルカ号に乗り込んだラフェール人の一人で中年の女流画家。「マリリンが自分達のために犠牲になろうとしている」と思っていた。その想いは「私とラフェール人たちの関係は、どちらかの一方的な犠牲ではなくギブアンドテイク」と断言したマリリンによって否定された。カイユにたどり着いて以降はユーフェミアの世話を主に担っている。
その後大気圏突入という危険な賭けをして侵入してきたウロボロス一味が捕虜として軟禁され、内通者の手によって脱走した際、ユーフェミアを狙ったマイヤによって偶然殺されてしまう。

ウロボロス

マイヤ・テリング

オルガの弟でテロリスト。外見はオルガに良く似ている。ラフェール星の一件が、家族が不幸になった原因と考えていて、ラフェール人に敵意を抱いている。
“皆殺し(ジェノサイド)マイヤ”の異名を持つウロボロス幹部の一人。唯一の肉親となったオルガに、少々ゆがんだ執着心を持っている。
キラ

青い肌とメタリックブルーの髪を持つ、青鱗人(せいりんじん)の女性。常に首元を覆うロングドレスを着ている、ウロボロス幹部の一人。種族的特徴として、好戦的で拷問が大好きという快楽殺人者。
ジョイ・マディソン

高級化粧品などを扱うバーンスタ社という企業の社長だが、ウロボロス幹部の一人で通称は“J”。ソル太陽系地球生まれという純粋な地球人だが、地球を離れ、六芒太陽系フィラルに本社があるバーンスタ社の社長にまで上り詰めた。彼がひそかにマリリンの髪の一部を入手したため、続編である「カラワンギ・サーガラ」に、ある人物が登場する。
ソランシア・ミナ

六芒人の女性。あまり美人とはいえない顔立ちだが、戦士と女性というふたつの要素が共存する体躯の持ち主。普段からテレパシーで周囲をスキャンする癖のあるO2が読み取れないほど強い意志を持つ。ウロボロス幹部の一人。マリリンより5歳年長で、かつてマリリンから「エルファルーラ」を贈られた。見事な赤毛と感情表現の豊かさなど、ロヴと共通する部分も持つ。

その他

サハティ博士

黄金のイルカ号の積荷である「ラフェール人の人工受精卵」を管理する科学者の一人。人体細胞学の権威。「溢れる知性とやや欠けた品性が自分にとっては完璧」と豪語する初老の男性。彼とマリリンの笑声の2重唱は「笑い声だけで世界征服できる」と評されるほど気持ち悪い。
オリビエ・オスカーシュタイン

通称:O2(オーツー)。30歳。白髪と黒のスクリーングラスに隠された美貌が特徴。銀河連邦軍情報部に所属する超A級テレパシストで、ロヴの上司。オイリクス軍時代は少佐だったが、現在は大佐(オイリクス軍へは潜入捜査が目的だったため、階級を偽っていた可能性も)。現在は連邦宇宙軍の「停戦監視官」に就いている。エスパー法と呼ばれる法律に基づいて、殺人などの犯罪に超能力を使用できないよう暗示がかけられているが、何度もその能力で敵を葬っては暗示に逆らって生き延びてきた。
ロヴの特殊能力を生かすべく、彼に精神操作を施して一旦軍をやめさせた張本人。同時に記憶操作でロヴの記憶を隠蔽していたことも判明。
母の研究過程で生まれた「デザイナーズ・チャイルド」であるため、地球人・ラフェール人・フィラル人という本来混血が不可能な遺伝子の組み合わせで生まれた。ヒエラルキーの上下に関係なく、他者をいじめるのが好きという変人。だがマリリンに出会ってから、ロヴと精神を共鳴させる彼の中に少しずつ変化が訪れる。
作中でウロボロスに捕らえられた際の拷問が元で1度死亡しているが、マリリンがオドロの医療システムに放り込んだことで先ラフェール人に近い肉体を得て復活。
以降、続編『カラワンギ・サーガラ』、続々編『三千世界の鴉を殺し』にも登場。
オスカーシュタイン夫婦

学都惑星・那藜(なあか)に住むO2の両親。夫は那藜の学長で、彫像集めが趣味。婦人は半身不随の上、喋ることが出来ないが、接触テレパシストであることを生かし、テレパシーに反応する車椅子(人工声帯を使ったマイクなどのシステムが組み込まれている)を使って生活している。
また、婦人の専門は遺伝子工学。人類と超能力に関する研究の過程で、遺伝子レベルから計算した「デザイナーズ・チャイルド」のO2を生んだ。その際、交流の深いナヴァルフォールから遺伝情報を提供してもらったことで、O2とマリリンはまとう色彩こそ違えど、よく似た美貌の持ち主であり、O2もラフェール人の脳裏に「王家の星」を描く。
O2がマリリンから得た情報によってウロボロスが那藜の掌握を狙っていることを知らされ、脱出しようとした矢先、その一味によって公邸ごと爆殺されてしまった。

用語

六芒人、地球人という種族名に関しては、続々編に当たる『三千世界の鴉を殺し』を参照。

黄金のイルカ号
名前のとおり、イルカのような流線型をした優美な外観と一流ホテル並みの内装を誇る民間船。しかし、そのフォルムにまぎれてかなりの武装が隠されており、エイのような姿をした艦載機に「ノルカ(1号機)」「ソルカ(2号機)」「ヤルカ(3号機)」という名がついている。
精神共鳴(サイコ・レゾナンス)
精神感応能力の一種で、他者が発するテレパシーに共鳴し、結果的にそれを増幅する。「虫の知らせ」も同類である。ロヴは潜在的にその能力を持っていたため、O2によって遠回しにマリリンの監視役にさせられた。
六芒(ヘクサ)太陽系
太陽の周囲を6つの惑星が回っている星系。第2惑星フィラルと第4惑星ラフェールに主権がある(カイユが第2のラフェールに決まってからはカイユ)。
各惑星の亜空間には先史人類の遺産が封印された状態で残されていて、マリリンがカイユの封印を解いた時、同調したロヴによって他の惑星の封印も解かれた。
フォス星
六芒(ヘクサ)太陽系第1惑星。高温のガス雲に覆われている。惑星改造計画では1度も顧みられたことがない。ガス雲の中にはエネルギーシールドで大気が遮蔽された状態の、球形の空間があり、廃墟が点在する浮遊大陸がある。
フィラル星
六芒(ヘクサ)太陽系第2惑星。続編『カラワンギ・サーガラ』などを含め、六芒人(ヘクサノーツ)とは主にこの星の出身者や、その混血を指す(『三千世界の鴉を殺し』では、差別用語であるため「フィラル人」と呼ばれることも)。
六芒人はまだ歴史の浅い地球系人類と仲が悪く反発しあっていて、ラフェール星滅亡が引き金となって始まった第3次銀河大戦と呼ばれる宇宙戦争が終結して1年が経った時、ウロボロスの策により六芒(ヘクサ)系人類の多い惑星政府が次々と銀河連邦から離反した。
ファナン星
六芒(ヘクサ)太陽系第3惑星。最高峰からは広大な高原地帯が望める。
ラフェール星
六芒(ヘクサ)太陽系第4惑星。ラフェール人の故郷。女子にのみ王位継承権がある王朝を築いていた(ゆえに王家直系の唯一の生き残りであるにも拘らず、マリリアードには継承権がない)。シタン病が蔓延し、王家を含めた住民の中にまだ生存者がいたにも拘らず、同じ星系にあるフィラル星や他星系への伝染を恐れた銀河連邦の議決によって、地殻振動弾を打ち込まれ、壊滅した。
地殻振動弾が打ち込まれたとき、地下で眠っていた、先ラフェール人の遺産であるコンピュータ・オドロが起動。マリリンと、同じく黒髪の姉・ユーフェミアや女王がいた王宮を乗せて亜空間に逃れたが、管理するデータベースに被害が出てしまい、マリリンが女性として認識される羽目になった上、先史人類に関する情報の一部も失われた。
カイユ星
六芒(ヘクサ)太陽系第5惑星。意図的にラフェール人を復活させるにあたり、第2のラフェール星として選ばれたため、改造が施された。続々編『三千世界の鴉を殺し』では、この星を出身地とするラフェール人を「新生ラフェール人」と呼ぶことがある。先史人類の遺産としてレーザー砲を吸収・反射させるエネルギーシールドがある。
エリノア星
六芒(ヘクサ)太陽系第6惑星。氷に覆われているが、その下にはドームで寒気から護られた都市の廃墟がある。ここには感情を炎に、超能力を音にして封じる機能があり、マリリン曰く「力を制御できない者が一時的に送られる場所」だったらしい。

ラフェール人
ラフェール星の住人。一般的に、男女関係なく金髪あるいは銀髪と中性的な美貌を持ち、体格差もあまりないため、神人の末裔、天使の末裔と呼ばれる。基本的に争いを好まない穏やかな種族で、芸術方面に才能を持つ者が多い。平均寿命は200年。ラフェール星壊滅時、他種族と結婚するなどして別の惑星で暮らしていた5千人だけが生き残った(O2は「異分子だけが生き残った」と表現)。
たまに生まれる黒髪の子供は攻撃的な一面を持つため「忌み子」として蔑まれ、赤子のうちに家族から引き離された上で、王家の人物の護衛や暗殺などの「王家の影の部分」を担う黒衆として教育されてきた。黒衆ばかりで血族婚を繰り返したため、王家のように一族を形成しており、独特の掟も存在する。なお、直系王族が黒髪であった場合、たいてい「死産」として暗殺されてきたが、マリリアードの7番目の姉以降は、軟禁されるような形で育てられ、基本的にその存在を無視されていた。王家だけは多産であったのか、マリリンの上には16人もの王女がいたが、そのうち何人かが黒髪で、少なくとも4人が「処分」されているらしい。
種族の特徴として、中性的な美貌の他に、ほとんど全員がエンパシーと呼ばれる微弱な精神感応能力を有することが挙げられる。その能力ゆえに他者の表層意識や感情を読み、意見をすり合わせることに長けており「生まれながらの外交官」と呼ばれることも多いが、ナヴァルフォールなど一部の者以外は星を出ようともせず、精神ネットワークに依存して「消極的な滅亡」への道を歩み続けていた。また、王家に近い血筋の者が超能力を使うと、「王家の星」と呼ばれる六芒星をラフェール人の脳裏に描くことがある。
先ラフェール人(先史人類とも)
現在一般的なラフェール人とは少し異なり、体格がフィラル人に似ているラフェール人。強力なテレパシー能力を持ち、当時としては高度な文明を築いた。作中では男性の先祖返り例として、大柄な体躯とエンパシーより強力なテレパシーを有するマリリアードとナヴァルフォールの2人が確認されている。かつて六芒(ヘクサ)太陽系の全惑星に住んでいたが、なぜかラフェール星に一部の人々を残して去ったらしい。フィラル人の神話に登場する「神人」であるとされる。彼らの遺産は「王家の星」を描けるほどに強いテレパシー能力を持つ者にしか扱えない。
シタン病
ウロボロス(後述)という組織が、ラフェール星に意図的に撒き散らした病気。ラフェール人が持つ、超能力系の遺伝因子に反応して発病する。その症状は、生きながらに体が炭化し、縮んでいくというもの。遺体は真っ黒でミイラ状になる。体のどの部分から炭化が始まるのかは人により異なる。痛みはとてつもなく、それによってショック死、あるいは発狂する者もいたらしい。完治させることは出来ず、かろうじて、アトリの葉に含まれている成分が病気の進行を抑制する効果を持つと分かっているだけである。
ウロボロス
メンバーに軍人が多い秘密組織。滅亡させたラフェール人の復活を阻止すべく、マリリン一行をしつこく狙う。O2は軍の別筋から、この組織についての捜査を命じられていた。終盤で構成員が「J(マディソン)派」「ソランシア派」「ボス派」の3つに分裂する。
アトリ
一種の観葉植物。この葉に含まれる、とある成分がシタン病の進行を抑制する。そのため、マリリンは定期的にハーブティーや液体状の薬として摂取しなければならない。ただし、副作用として視力を失う。失明後はあまり長く生きられない。液色は薄紫で爽やかな香りがする(この香りはすでにマリリンの体臭になっている)。
エルファルーラ
バーンスタ社が販売している香水。商品名には、六芒(ヘクサ)太陽系共通言語で「神の寵愛」という意味がある。六芒(ヘクサ)太陽系出身の男性には、プロポーズの時にこの香水を贈るという慣例があるが、これはバーンスタ社の商法が根底にある。イアラは、夫だったラフェール人から贈られたらしい。

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